ニチハ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチハ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場。窯業系・金属系外装材を主力とする住宅建材メーカーです。当連結会計年度は、価格改定効果やシェア拡大により売上高は過去最高を更新して増収となったものの、物流費や資材価格の高騰、米国工場の稼働低迷などの影響を受け、営業利益以下は減益となりました。


※本記事は、ニチハ株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチハってどんな会社?

国内トップクラスのシェアを持つ窯業系外装材を主力に、金属系外装材や繊維板なども展開する建材メーカーです。

(1) 会社概要

1956年に日本ハードボード工業として設立され、繊維板の生産を開始しました。1974年に窯業系外装材「モエンサイディングM」の生産を開始し、事業の主軸を形成。1996年には東京証券取引所市場第一部に上場しました。2007年には米国子会社がジョージア州に工場を新設し、現地生産を開始しています。2022年の市場区分見直しに伴い、東証プライム市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で3,158名、単体で1,342名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第2位は保険代理業や不動産業を展開する銀泉、第3位は主要取引先でもある住友林業となっています。特定の親会社は持たず、金融機関や取引先が上位を占める安定した株主構成です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.50%
銀泉 7.69%
住友林業 7.56%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長社長執行役員は吉岡成充氏です。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
吉岡成充 代表取締役社長社長執行役員全体統括、内部監査 1986年住友銀行入行。三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員などを経て2020年ニチハ顧問。2021年6月より現職。
殿井一史 取締役専務執行役員経営企画部・調達本部・財務部・環境室担当 1986年住友銀行入行。2015年ニチハ顧問、常務執行役員などを経て2018年4月より現職。
小島一行 取締役専務執行役員人事部・システム統括部・品質保証部・CS推進部・安全推進室・性能評価センター担当 1987年ニチハ入社。経営企画部長、上席執行役員海外本部長などを経て2018年4月より現職。
岡宗次 取締役常務執行役員技術本部長研究開発部担当 1992年日本セメント入社。2019年ニチハ技術本部副本部長、2023年取締役上席執行役員を経て2024年4月より現職。


社外取締役は、田尻直樹(元住友金属鉱山常務)、西浩明(公認会計士・元トーマツパートナー)、大谷和子(日本総合研究所執行役員)、野下えみ(弁護士・元検察官)です。

2. 事業内容

同社グループは、「外装材事業」および「その他」事業を展開しています。

外装材事業

国内および海外において、窯業系外装材、金属系外装材、外装用付属部材等の製造販売を行っています。主な顧客は住宅会社や建材商社であり、住宅の外壁材として広く利用されています。

収益は主に製品の販売対価として得ています。国内ではニチハが窯業系外装材を製造販売するほか、子会社のニチハマテックス、高萩ニチハなどが製造を担当し、金属系外装材は子会社のチューオーが製造しています。海外ではNichiha USA,Inc.が米国で製造販売を行い、中国子会社等も製造販売を行っています。

その他

繊維板事業、工事事業、FP事業、その他事業で構成されています。繊維板事業では自動車内装材等に使われる繊維板を製造し、FP事業ではウレタン断熱パネルの製造販売や注文住宅販売を行っています。

収益は製品販売や工事請負、サービス提供の対価です。運営は、繊維板事業をニチハマテックス、工事事業を外装テックアメニティ、FP事業をFPコーポレーション、その他事業(営繕・清掃等)をニチハエンジニアリングがそれぞれ担当しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では、経常利益率が低下傾向にあり、コスト増などの影響を受けています。当期純利益(親会社所有者帰属)については、直近で減少が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,210億円 1,286億円 1,381億円 1,428億円 1,485億円
経常利益 122億円 136億円 128億円 119億円 73億円
利益率(%) 10.1% 10.6% 9.3% 8.3% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 104億円 61億円 68億円 51億円 50億円

(2) 損益計算書

直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加していますが、売上原価率の上昇により売上総利益率は横ばいから微減となっています。営業利益は減少しており、販売費及び一般管理費の増加などが利益を圧迫している状況がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,428億円 1,485億円
売上総利益 507億円 509億円
売上総利益率(%) 35.5% 34.2%
営業利益 102億円 70億円
営業利益率(%) 7.1% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が174億円(構成比40%)、給料及び賞与が41億円(同9%)を占めています。物流コストの負担が大きい構造となっています。

(3) セグメント収益

主力の外装材事業は売上高が増加しており、事業全体の成長を牽引しています。その他事業については、売上規模は横ばいから微減で推移しています。全体として外装材事業への依存度が高い収益構造となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
外装材事業 1,332億円 1,389億円
その他 96億円 96億円
連結(合計) 1,428億円 1,485億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ニチハのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、償却前利益の計上や法人税等の支払い、仕入債務の減少などにより増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出が減少したことで使用額が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いがあったため、使用額が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 69億円 104億円
投資CF -60億円 -30億円
財務CF -71億円 -80億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは「素晴らしい人間環境づくり」をコーポレートスローガンとして掲げています。このスローガンのもと、環境と調和した快適な住環境の創造を通じて社会に貢献し、持続的な成長を目指しています。

(2) 企業文化

「お客様本位の姿勢」「創意開発」「明るい風通しのよい職場づくり」を経営方針としています。顧客のニーズを第一に考え、常に新しい価値を創造し続けるとともに、従業員が活き活きと働ける開かれた職場環境を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標

2030年度をターゲットとする長期ビジョン「Challenge Global to 2030」を掲げています。その実現に向けた「第一次中期経営計画(2024年度~2026年度)」では、最終年度の数値目標として以下を設定しています。
* 連結売上高:1,610億円
* 営業利益:165億円

(4) 成長戦略と重点施策

長期ビジョン実現のため、国内外での市場開拓と収益性向上に注力しています。国内では縮小する住宅市場に対し、商業施設や中高層ビルなどの非住宅市場を開拓。海外では米国事業の拡大に加え、カナダやアジア等への展開を進めます。また、高付加価値品の販売強化や生産合理化により収益性を高めるとともに、カーボンニュートラルなどのマテリアリティへの取り組みも強化します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人的資本経営の推進」をマテリアリティの一つに掲げ、持続的成長を支える人材の育成・活用に注力しています。具体的には、次世代を担う社員やシニア層が活躍できる処遇改善を実施するとともに、グローバル人材育成に向けた研修の拡充や健康経営を推進しています。また、ダイバーシティ推進として女性活躍支援や定年後再雇用者の活用も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.2歳 17.5年 7,051,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 25.9%
男女賃金差異(全労働者) 59.7%
男女賃金差異(正規雇用) 65.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 67.0%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅着工の動向による影響

主力製品である窯業系外装材の多くは国内住宅産業向けであり、国内シェアも高いため、業績は国内の新設住宅着工戸数の動向に強く影響を受けます。人口減少等により着工戸数が減少した場合、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(2) 原材料・エネルギー価格の変動

製品製造に必要な原材料やエネルギー価格が短期間に大きく変動する傾向があり、これらが高騰したり調達困難になったりするリスクがあります。販売価格への転嫁が不十分な場合、業績が悪化する可能性があります。

(3) 大規模な自然災害の影響

南海トラフ地震等の大地震が発生した場合、名古屋工場や主要子会社の工場が被災し、生産設備に重大な影響が出る可能性があります。また、国内経済の停滞により需要が悪化するリスクもあります。

(4) 為替変動の影響

海外子会社との取引や連結決算における円換算において、為替相場の変動が業績や財政状態に影響を与える可能性があります。特に急激な変動や、海外事業比率の変化により影響が大きくなる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ニチハの転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

ニチハの2026年3月期3Q決算は、米国住宅事業の撤退完了と国内非住宅の14.0%増収が鍵。構造改革で不採算部門を切り離し、高付加価値領域へ舵を切る同社の変革期を分析。「なぜ今ニチハなのか?」という問いに対し、再成長を担うグローバル人材や非住宅提案の専門性が求められる背景を整理します。