ニチハ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチハ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチハは東証プライムおよび名証プレミア市場に上場し、窯業系や金属系外装材の製造販売を主力とする外装材事業と、繊維板や工事等のその他事業を展開しています。直近の業績は、国内の住宅市況悪化や米国での汎用外装材事業からの撤退等により減収となりましたが、価格改定や固定費の削減が奏功し大幅な営業増益を達成しました。


※本記事は、ニチハ株式会社の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチハってどんな会社?


窯業系外装材などの製造販売を主力とし、国内のみならず米国など海外でも事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1956年に木材資源の高度利用を目的として日本ハードボード工業が設立され、1974年に窯業系外装材の生産を開始しました。1988年にニチハへ商号を変更し、1996年には東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後も国内外での工場新設や企業買収を進め、事業規模を拡大しています。

現在の従業員数は連結で2,902名、単体で1,324名です。株主構成を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位には銀泉、第3位には事業会社である住友林業が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.77%
銀泉 7.88%
住友林業 7.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は吉岡成充氏が務めています。社外取締役の比率は30.7%です。

氏名 役職 主な経歴
吉岡成充 代表取締役社長社長執行役員全体統括、内部監査 1986年住友銀行入行。三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員等を経て、2021年より現職。
殿井一史 取締役専務執行役員経営企画部・財務部・環境室・物流部CLO担当兼 財務部長 1986年住友銀行入行。三井住友銀行本店営業第十部長等を経て、2018年より現職。
河内一弘 取締役常務執行役員生産本部長システム統括部・安全推進室担当 1987年同社入社。いわき工場長、高萩ニチハ代表取締役等を経て、2025年より現職。
岡宗次 取締役常務執行役員技術本部長研究開発部担当 1992年日本セメント入社。日本ファインセラミックスMMC事業部事業部長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、田尻直樹(元住友金属鉱山取締役専務執行役員)、西浩明(西浩明公認会計士事務所所長)、大谷和子(日本総合研究所執行役員)、野下えみ(ふじ合同法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「外装材事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 外装材事業


同社グループの主力であり、窯業系および金属系の外装材や外装用付属部材の製造販売を行っています。主に国内の住宅・非住宅市場に向けた販売のほか、米国などの海外市場において製品を提供しています。

収益は、国内外の顧客に対する製品の販売代金から得ています。製品の製造は同社のほか、ニチハマテックス、高萩ニチハ、チューオーなどの子会社が担い、販売は主に同社や米国法人のNichiha USA,Inc.などが担当しています。

(2) その他事業


繊維板事業、工事事業、FP事業など、外装材に関連する周辺領域や独自の建材領域を展開しています。具体的には、繊維板やウレタン断熱パネルの製造販売、外装工事などを含みます。

収益は、製品の販売や工事の施工代金などから得ています。事業の運営は、繊維板事業をニチハマテックスが、工事事業をニチハガイソウが、FP事業をFPコーポレーションがそれぞれ担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にありましたが直近で減少に転じています。一方、経常利益は資材価格の高騰などにより減少傾向が続いていましたが、当期は価格改定効果などにより大幅な増益に回復しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,286億円 1,381億円 1,428億円 1,485億円 1,437億円
経常利益 136億円 128億円 119億円 73億円 102億円
利益率(%) 10.6% 9.3% 8.3% 4.9% 7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 101億円 90億円 81億円 27億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高が減少したものの、原価率の改善により売上総利益は増加しています。また、販売費及び一般管理費を抑制したことで、営業利益と営業利益率はともに大きく向上しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,485億円 1,437億円
売上総利益 509億円 516億円
売上総利益率(%) 34.2% 35.9%
営業利益 70億円 94億円
営業利益率(%) 4.7% 6.5%


販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が161億円(構成比38.0%)、給料及び賞与が42億円(同10.0%)を占めています。売上原価は921億円で、売上高に対する原価率は64.1%となっています。

(3) セグメント収益


外装材事業は、国内外の住宅市況の悪化や米国での汎用外装材事業からの撤退により減収となりましたが、価格改定の効果により大幅な増益となりました。その他事業は、工事事業を中心に堅調に推移し増収増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
外装材事業 1,389億円 1,341億円 97億円 120億円 8.9%
その他 96億円 96億円 0.5億円 2億円 1.7%
調整額 - - -28億円 -28億円 -
連結(合計) 1,485億円 1,437億円 70億円 94億円 6.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行いながら手元資金で投資を賄う健全型のキャッシュ・フローです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 104億円 82億円
投資CF -30億円 -38億円
財務CF -80億円 -66億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「素晴らしい人間環境づくり」をコーポレートスローガンに掲げています。グローバルな視点で地球環境問題や社会的な課題の解決に積極的に取り組み、社会の持続的な発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「お客様本位の姿勢」「創意開発」「明るい風通しのよい職場づくり」を経営方針として定めています。多様性のある人材を新たな価値創造の源泉と考え、社員一人ひとりの人権や個性を尊重し、能力を最大限に発揮できる環境の整備に取り組む文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年度をターゲットとする長期ビジョン「Challenge Global to 2030」を掲げ、グローバルに通用する企業を目指しています。第一次中期経営計画(2024〜2026年度)における最終年度の数値目標は以下の通りです。

* 連結売上高:1,610億円
* 営業利益:165億円
* ROE:9%
* ROIC:8%

(4) 成長戦略と重点施策


目標達成のため、非住宅市場などの新規市場開拓や、米国におけるコマーシャル市場への集中といった構造改革を進めています。また、高付加価値品の拡充や適地生産の拡大による収益性の向上、カーボンニュートラルの実現に向けた環境対応にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


長期ビジョンの実現に向け、グローバル人材や次世代リーダーの育成に注力しています。定年後も意欲的に働ける「ニチハシニアプロフェッショナル制度」の導入や、育児等の支援充実により、多様な人材がいきいきと活躍できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.8歳 17.6年 7,222,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 60.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 61.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職女性数(41名)、有給休暇消化率(67.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅着工の動向による影響


同社製品の多くは国内住宅産業向けであり、窯業系外装材は業界内シェアの大部分を占めるため、住宅着工戸数の減少が業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として非住宅市場や海外市場の開拓に注力しています。

(2) 原材料・エネルギー価格等の変動


塗料やセメントなどの原材料およびエネルギー価格の高騰や調達困難が業績を圧迫するリスクがあります。調達先の多様化や代替材料への切り替えといった合理化策を通じてリスク低減を図っています。

(3) 大規模な自然災害の影響


工場が東南海地震等で被害を受けるリスクや、サプライチェーンの寸断によって生産が停止するリスクがあります。建物の補強工事や人的被害対応の訓練を実施し、不測の事態に備えています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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