※本記事は、ヨネックス株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヨネックスってどんな会社?
スポーツ用品の製造・販売を主力とするメーカーです。特にバドミントン用品では世界的なシェアを持ち、テニスやゴルフ用品も展開しています。
■(1) 会社概要
1958年に株式会社米山製作所として設立され、バドミントンラケットの製造を開始しました。1982年に現在の社名へ変更し、ゴルフ事業にも進出しています。1994年に株式を店頭登録(後の東証二部)し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。グローバル展開も積極的に進めています。
連結従業員数は2,752名、単体では1,351名です。筆頭株主は同社創業家に関連する公益財団法人で、第2位はカストディ業務を行う金融機関、第3位は創業家出身の役員(常務取締役)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人ヨネックススポーツ振興財団 | 11.06% |
| NATIONAL FINANCIAL SERVICES LLC | 6.77% |
| 米山修一 | 4.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長はアリサヨネヤマ氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| アリサヨネヤマ | 代表取締役社長社長執行役員 | 米国でのマーケティング職を経て2016年入社。マーケティング本部長などを歴任し、2022年より現職。 |
| 米山修一 | 常務取締役常務執行役員総務本部長ヨネックスジャパン社長 | 1983年入社。開発部長、製商品開発統括などを経て、欧州統括やヨネックスジャパン社長を歴任。2007年より常務取締役。 |
| 岩野美之 | 取締役執行役員生産・技術本部長 | 1991年入社。新潟生産本部での技術開発職を経て、2021年より取締役生産・技術本部長。 |
| ケーシーヨネヤマ | 取締役執行役員マーケティング本部長グローバル戦略室長 | 広告代理店等を経て2019年入社。グローバル戦略室長、マーケティング本部長を務め、2025年より現職。 |
社外取締役は、マイケルモリズミ(株式会社パシフィックIR代表取締役)、大坪富貴子(smartData Japan株式会社代表取締役)、ダンカン隆賢ウィリアムズ(南カリフォルニア大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スポーツ用品事業」および「スポーツ施設事業」を展開しています。
■(1) スポーツ用品事業
バドミントン、テニス、ゴルフ等のスポーツ用品(ラケット、ウェア、シューズ、シャトルコック等)の製造、仕入、販売を行っています。主な顧客は一般消費者やスポーツ愛好家で、各国の有力代理店や子会社を通じてグローバルに製品を提供しています。
収益は、製品の販売による売上が主となります。運営は、同社およびYONEX CORPORATION(米国)、YONEX SPORTS(CHINA)(中国)などの各連結子会社が各地域で担当しています。製造は同社国内工場のほか、台湾、インド、タイ等の子会社が行っています。
■(2) スポーツ施設事業
ゴルフ場、ゴルフ練習場およびテニスクラブの運営を行っています。主な顧客は地域のスポーツ利用者やゴルフ愛好家です。
収益は、施設利用者からのプレー代や利用料、会員権収入などから得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けています。特に直近では1383億円に達し、過去最高を更新しました。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに増加傾向にあり、利益率も高水準を維持しています。増収増益基調が続いており、事業規模の拡大と収益性の向上が両立していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 516億円 | 745億円 | 1,070億円 | 1,164億円 | 1,383億円 |
| 経常利益 | 18億円 | 72億円 | 100億円 | 122億円 | 140億円 |
| 利益率(%) | 3.5% | 9.7% | 9.3% | 10.5% | 10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 35億円 | 62億円 | 73億円 | 116億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。営業利益率も10%台を維持しており、効率的な経営が行われていることがうかがえます。コスト増加を吸収しつつ、利益を拡大させている状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,164億円 | 1,383億円 |
| 売上総利益 | 516億円 | 621億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.3% | 44.9% |
| 営業利益 | 116億円 | 142億円 |
| 営業利益率(%) | 10.0% | 10.3% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が126億円(構成比26.3%)、給料及び手当が46億円(同9.6%)を占めています。売上原価は762億円で、売上高に対する構成比は55.1%です。
■(3) セグメント収益
アジア地域が最大の収益源となっており、売上・利益ともに全体を牽引しています。日本地域も堅調に推移し、大幅な増益を達成しました。北米やヨーロッパも増収を記録していますが、利益規模はアジアや日本に比べて小さくなっています。スポーツ施設事業は安定していますが、全体に占める割合は限定的です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 510億円 | 580億円 | 16億円 | 37億円 | 6.4% |
| アジア | 548億円 | 680億円 | 89億円 | 97億円 | 14.3% |
| 北米 | 55億円 | 64億円 | 3億円 | 6億円 | 8.8% |
| ヨーロッパ | 45億円 | 54億円 | 5億円 | 5億円 | 8.9% |
| スポーツ施設事業 | 5億円 | 6億円 | 0.2億円 | 0.2億円 | 2.8% |
| 連結(合計) | 1,164億円 | 1,383億円 | 116億円 | 142億円 | 10.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金を元手に、投資活動を行いつつ、借入金の返済や株主還元を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 125億円 | 130億円 |
| 投資CF | -74億円 | -58億円 |
| 財務CF | 8億円 | -26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、2024年4月に新たに「パーパス(存在意義)」として「独創の技術と最高の製品で世界に貢献する」を、「ミッション(使命)」として「スポーツと人、人と人をつなぎ、よりよい未来を創造する」を定義しました。これらを指針として、世界中の社員が共通の価値観のもとで行動することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「世界のお客様のために楽しみながら競い合う」というコーポレートカルチャーの実現を目指しています。社員一人ひとりの挑戦と成長を支えるため、パーパス&ミッションや価値観への理解を深め、「ヨネックスらしさ」を再認識し実践する取り組みを進めています。また、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様性を認め合う組織づくりを行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期ビジョン「グローバル成長戦略 Global Growth Strategy(GGS)」において、2030年に向けた数値目線(2026年3月期~2031年3月期)を設定しています。
* 売上高年平均成長率(CAGR):7~10%
* 営業利益率:10%以上
* ROE:13%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「グローバル成長戦略(GGS)」に基づき、地域構成のバランス化(北米テニス、インドバドミントンの重点化)、マーケティングの再構築、DTC(直販)とデジタル戦略の推進、IT変革、ものづくりの進化を重点施策としています。特にインドでは現地生産体制を強化し、市場拡大を図っています。また、IT戦略による業務効率化やデータ活用、グローバルな製造体制の強化にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「世界のお客様のために楽しみながら競い合う」カルチャーの実現に向け、多様な人財が能力を発揮できる環境づくりを進めています。新たな評価・等級・報酬制度を導入し、社員の挑戦が成長につながる仕組みを整えるとともに、多様性のある組織を目指してDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.1歳 | 14.0年 | 6,012,472円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.6% |
| 男性育児休業取得率 | 37.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 57.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員数(47名)、管理職に占める中途社員比率(30.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化と競争激化
国内では少子高齢化による市場縮小の懸念があり、若年層の人口減少が売上減少につながる可能性があります。海外では市場の成熟に伴い消費者の嗜好変化が加速しており、これに対応できない場合や競合他社に遅れをとった場合に業績が悪化するリスクがあります。また、市場拡大地域では低価格競争が激化する可能性もあります。
■(2) 海外展開および地政学的リスク
連結売上の約7割を海外が占め、特に中国など特定地域の比率が高くなっています。各国の外交・安全保障、通商政策の変更、物流停滞やサプライチェーンの分断などが生じた場合、事業活動や収益性に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 知的財産権と模倣品リスク
同社ブランドの模倣品が中国や東南アジアを中心に増加しています。各国の法整備は完全ではなく、模倣品の製造・販売を防止できない場合、ブランド力の低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。



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