※本記事は、ヨネックス株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヨネックスってどんな会社?
バドミントンやテニス用品などのスポーツ用品の製造・販売をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1958年にバドミントンラケットの製造・販売を目的として米山製作所を設立したことに始まります。1969年にテニスラケットの製造を開始し、1982年に現在のヨネックスへ商号変更するとともにゴルフ事業に進出しました。1994年には東京証券取引所市場第二部への上場を果たし、国内外で事業基盤を強化しています。
現在の同社グループは、連結従業員数2,980名、単体従業員数1,467名の体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主はスポーツ振興を目的とする公益財団法人であり、第2位には資産管理業務等を行う金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人ヨネックススポーツ振興財団 | 11.06% |
| NATIONAL FINANCIAL SERVICES LLC | 6.77% |
| 米山修一 | 4.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長はアリサヨネヤマ氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| アリサヨネヤマ | 代表取締役社長社長執行役員 | 2016年同社入社。マーケティング本部副本部長等を経て2022年4月より現職。 |
| 米山修一 | 常務取締役常務執行役員総務本部長ヨネックスジャパン社長 | 1983年同社入社。製商品開発部長、欧州統括等を経て2022年4月より現職。 |
| 岩野美之 | 取締役執行役員生産・技術本部長 | 1991年同社入社。新潟工場技術開発総括等を経て2021年6月より現職。 |
| ケーシーヨネヤマ | 取締役執行役員マーケティング本部長グローバル戦略室長 | 2019年同社入社。宣伝部次長、グローバル戦略室長等を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、マイケルモリズミ(パシフィックIR代表取締役)、大坪富貴子(smartData Japan代表取締役)、ダンカン隆賢ウィリアムズ(南カリフォルニア大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スポーツ用品事業」および「スポーツ施設事業」を展開しています。
■スポーツ用品事業
バドミントン、テニス、ゴルフ等のスポーツ用品やスノーボード等の製造、仕入、販売を展開し、競技に特化したラケットからウェア、シューズ、ストリングスまで幅広い製品を扱っています。主に一般消費者や代理店向けに製品を提供しています。
製品・商品の販売代金が主な収益源です。事業の運営は同社が行うほか、YONEX TAIWAN CO.,LTD.やYONEX INDIA PRIVATE LIMITEDなどの製造子会社、そして海外販売を担うYONEX SPORTS(CHINA)CO.,LTD.をはじめとする各国の連結子会社が担っています。
■スポーツ施設事業
ゴルフ場、ゴルフ練習場及びテニスクラブなどのスポーツ施設の運営を行っており、地域のスポーツ普及に貢献する場を提供しています。
施設利用者からのプレー料金や利用料が主な収益源となります。本事業の運営は、スポーツ用品事業と同様に同社が直接主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、力強い拡大傾向にあります。経常利益も売上の増加に伴って順調に伸長し、利益率も10%前後で安定して推移しています。当期利益についても高水準を維持しており、盤石な収益基盤と持続的な成長力がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 745億円 | 1070億円 | 1164億円 | 1383億円 | 1636億円 |
| 経常利益 | 72億円 | 100億円 | 122億円 | 140億円 | 163億円 |
| 利益率(%) | 9.7% | 9.3% | 10.5% | 10.1% | 10.0% |
| 当期利益 | 35億円 | 62億円 | 73億円 | 116億円 | 101億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益および営業利益のいずれも順調に増加しています。各利益率も前年と同水準をキープしており、原材料価格の上昇などを吸収しながら安定した収益性を保っていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1383億円 | 1636億円 |
| 売上総利益 | 621億円 | 725億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.9% | 44.3% |
| 営業利益 | 142億円 | 165億円 |
| 営業利益率(%) | 10.3% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が259億円(構成比46.3%)、給料及び手当が86億円(同15.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のスポーツ用品事業において、アジアや日本での売上が全体を牽引しています。特にアジアでは中国市場等でのバドミントン用品の販売好調が寄与し、大幅な増収を達成しました。一方でスポーツ施設事業は、天候不順などの影響により売上は微減となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 580億円 | 641億円 |
| アジア | 680億円 | 856億円 |
| 北米 | 64億円 | 74億円 |
| ヨーロッパ | 54億円 | 61億円 |
| スポーツ施設事業 | 6億円 | 6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で安定的に資金を獲得しつつ、借入による調達を合わせ、将来の成長に向けた積極的な投資に振り向ける「積極型」の状況にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 130億円 | 95億円 |
| 投資CF | -58億円 | -100億円 |
| 財務CF | -26億円 | 45億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.6%となっており、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、企業活動の基盤となるパーパス(存在意義)として「独創の技術と最高の製品で世界に貢献する」を掲げています。また、ミッション(使命)として「スポーツと人、人と人をつなぎ、よりよい未来を創造する」を定め、質の高い製品の提供にとどまらず、スポーツを通じて人々の可能性を広げ社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、中長期ビジョンの実現を支えるコーポレートカルチャー(企業文化)として、「世界のお客様のために楽しみながら競い合う」という価値観を掲げています。パーパスやミッションへの理解を深めながら「ヨネックスらしさ」を再認識し、多様な人財がそれぞれの力を発揮して、従業員一人ひとりが挑戦と成長を続けられる環境づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期ビジョン「グローバル成長戦略 Global Growth Strategy(GGS)」を推進し、持続的な成長と資本効率の向上を目指しています。より多くの世界のお客様へスポーツの楽しさと価値を届ける基盤づくりの目線として、2030年に向けて以下の数値目標を掲げています。
* 売上高年平均成長率(CAGR):7〜10%
* 営業利益率:10%以上
* ROE:13%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は中長期ビジョンの実現に向け、東アジア地域に加えて北米のテニス事業やインドのバドミントン事業といった重点領域での事業基盤強化を進めています。また、DTC(直接販売)戦略やデジタル技術によるお客様との接点拡大に加え、国内での新工場建設や海外拠点の拡充による製造基盤の強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営戦略の実現には従業員一人ひとりの挑戦と成長が不可欠であると考え、人財を重要な基盤と位置づけています。新たな評価・報酬制度の定着を通じて公正かつ透明性の高い処遇を実現し、次世代を担う人財育成に努めています。また、ワークライフバランスの推進や子育て支援など、多様な人財が安心していきいきと働ける環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.7歳 | 13.3年 | 6,412,452円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 31.2% |
| 男性育児休業取得率 | 53.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 83.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 57.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員数(63名)、管理職に占める中途社員比率(34.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境と競争激化のリスク
国内では少子高齢化に伴う需要減、海外では市場の成熟による顧客ニーズの急速な変化や、成長市場における参入障壁の低さによる競争激化のリスクがあり、適切に対応できない場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外展開における地政学的リスク
同社の売上高の約7割は海外市場が占め、特にアジア(中国向け等)への依存度が高くなっています。各国の外交・安全保障上の動向、通商政策の変更、物流の停滞等が発生した際、事業活動や収益に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 原材料調達とサプライチェーンのリスク
国内外から原材料等の調達を行っているため、原材料価格の高騰や、自然災害等による供給停止リスクがあります。また、サプライチェーン全体での人権・環境対応が不十分と見なされた場合、取引先との関係に影響を与える可能性があります。



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