※本記事は、株式会社藤商事 の有価証券報告書(第60期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 藤商事ってどんな会社?
同社は、遊技機の開発・製造・販売を行うメーカーです。人気アニメやホラー作品とのタイアップ機種に強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1966年に設立され、当初はじゃん球遊技機の開発等を行っていました。1987年にパチンコ遊技機、2001年にパチスロ遊技機の開発を開始し、事業を拡大しました。2007年にはジャスダック証券取引所へ上場を果たしています。その後、開発・販売体制の強化を目的に株式会社JFJなどの子会社を設立し、グループ体制を構築しました。現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
同社グループの従業員数は連結で458名、単体で458名です。筆頭株主は同社創業者の松元邦夫氏で、第2位は同社取締役副会長の松元正夫氏です。第3位は資産管理会社と見られる松元ホールディングスとなっており、創業家に関連する株主が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松元 邦夫 | 25.27% |
| 松元 正夫 | 20.04% |
| 松元ホールディングス | 13.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は今山武成氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 今山 武成 | 取締役社長(代表取締役) | 1989年同社入社。営業本部、開発本部の要職を歴任し、JFJ代表取締役社長等を経て、2022年4月より現職。 |
| 松元 邦夫 | 取締役会長(代表取締役) | 1975年同社入社。専務取締役を経て、2000年に代表取締役社長に就任。2016年4月より現職。 |
| 松元 正夫 | 取締役副会長(代表取締役) | 1976年同社入社。常務、専務、副社長を経て、2016年4月より現職。 |
| 松下 智人 | 取締役(代表取締役) | 1989年同社入社。開発本部長、オレンジ代表取締役社長、JFJ代表取締役社長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 當仲 信秀 | 取締役 | 日本住宅金融を経て1996年同社入社。経営企画室長、管理本部長等を歴任し、2022年4月より現職。 |
| 市川 雅和 | 取締役(常勤監査等委員) | サン電子を経て1997年同社入社。開発本部開発部長、常務執行役員製造本部長等を歴任し、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、岩松登(元アセットマネジメントOne取締役)、帆足智典(浦野・帆足法律事務所共同経営)です。
2. 事業内容
同社グループは、「遊技機事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) パチンコ遊技機
同社およびグループ会社が開発・製造・販売するパチンコ遊技機を提供しており、全国のパチンコホールが主な顧客です。「リング」シリーズや「とある」シリーズなど、人気コンテンツを活用したタイアップ機や、斬新なギミックを搭載した機種を展開しています。
収益は、パチンコホールへの製品販売代金として受け取ります。運営は主に藤商事が行っていますが、セカンドブランドのJFJ、第3ブランドのオレンジなどが開発・製造・販売に関わり、グループ全体で多様なニーズに対応する体制をとっています。
■(2) パチスロ遊技機
パチンコ同様、同社グループが手掛けるパチスロ遊技機を提供しており、パチンコホールが顧客となります。近年は「スマートパチスロ(スマスロ)」の普及に伴い、新機能やゲーム性を追求した機種を市場に投入しています。
収益は、製品の販売対価としてパチンコホールから受け取ります。運営は藤商事をはじめ、JFJなどのグループ会社が連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間の推移を見ると、売上高は269億円から346億円へと拡大傾向にありますが、直近では前期比で減少しました。経常損益は2022年3月期に赤字となりましたが、翌期以降は黒字を維持しています。当期純利益も同様の傾向で、直近の2025年3月期は29億円の黒字を確保しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 269億円 | 296億円 | 349億円 | 370億円 | 346億円 |
| 経常利益 | 5億円 | -6億円 | 41億円 | 49億円 | 34億円 |
| 利益率(%) | 1.8% | -2.0% | 11.7% | 13.3% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -38億円 | -12億円 | 43億円 | 32億円 | 29億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は370億円から346億円へ減少しました。売上総利益率は52.7%から51.0%へ低下しています。これに伴い、営業利益は49億円から32億円へと減益となり、営業利益率も13.2%から9.2%へ低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 370億円 | 346億円 |
| 売上総利益 | 195億円 | 177億円 |
| 売上総利益率(%) | 52.7% | 51.0% |
| 営業利益 | 49億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 13.2% | 9.2% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が75億円(構成比52%)、給料が12億円(同8%)を占めています。研究開発への投資比重が非常に高いことが特徴です。
■(3) セグメント収益
当期はパチンコ遊技機において新規タイトルの投入やシリーズ機の継続販売により増収となりました。一方、パチスロ遊技機は販売台数が減少し、大幅な減収となりました。全体としてはパチスロの落ち込みが響き、連結売上高は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| パチンコ遊技機 | 237億円 | 270億円 |
| パチスロ遊技機 | 132億円 | 76億円 |
| 連結(合計) | 370億円 | 346億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動により資金を創出し、投資活動で事業基盤を強化し、財務活動で株主還元を行っています。
営業活動では、税金等調整前当期純利益や売上債権の減少などが資金増加に寄与しました。
投資活動では、有形固定資産の取得による支出が資金使用の主な要因となりました。
財務活動では、配当金の支払いが資金使用の主な要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 46億円 |
| 投資CF | -25億円 | -20億円 |
| 財務CF | -11億円 | -12億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客様の繁栄を売ろう ~より良い稼働 より高い信頼~」という企業理念を掲げています。パチンコ・パチスロファンやホールのために、魅力ある商品力と付加価値の高いサービスを提供することで、顧客の繁栄に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、ものづくりの方向性を示すコーポレートスローガンとして「ヒト味違う“オモシロ”さ!」を掲げています。これまでの習慣や常識にとらわれず、斬新な発想やアイデアを積極的に採り入れたものづくりを推進し、遊技者目線に立った機種開発を行う姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、安定した収益の確保を目指し、「経常利益」を重要視する経営目標を掲げています。具体的な数値目標としては、主力事業である遊技機事業において、商品力を高めて稼働実績と販売実績を積み上げることで、中期的な成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「ブランド力の向上」と「人財育成」を最重点課題としています。市場トレンドの先端を行く機種開発に取り組み、パチンコでは「ラッキートリガー」、パチスロでは「スマート遊技機」などの新機能に対応した製品を投入することで、市場環境の活性化に対応し、販売台数の確保を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員がいきいきと働き継続的に活躍できる職場環境づくりやワークライフバランスの実現に向け、育児・介護等に関する支援制度の整備を推進しています。また、多様性の確保については、女性労働者の新規採用に注力しており、国籍・性別・年齢等に関わらず能力・実績によって公正に評価する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.8歳 | 14.3年 | 7894000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 91.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用する労働者における女性労働者の割合(13.89%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制について
主力事業である遊技機事業は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)や関連法令の規制を受けています。法令の改廃や新たな規制の導入、または型式試験への不適合などが生じた場合、新製品の販売スケジュールや業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 市場環境の変化と競合
顧客であるパチンコホールの経営環境が悪化し、遊技機市場が縮小した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、販売時期が他社の人気機種と重なるなどの競合状況によっては、販売台数が計画を下回り、業績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 部材調達と在庫リスク
製品の生産から納品までが短期間であるため、長納期部材を先行発注しています。販売が見込みを下回った場合の棚卸資産評価損や廃棄損の発生リスクがあります。また、部材調達先の限定や災害等による供給遅延が生じた場合、生産活動に支障が出る可能性があります。



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