藤商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤商事は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、パチンコ遊技機およびパチスロ遊技機の開発、製造、販売を主力とする企業です。直近の業績は、新規タイトルの市場投入などを行いましたが、販売台数が計画を下回り、売上高は235億円と減収、当期利益は20億円の赤字と減益になりました。今後の回復が期待されます。


※本記事は、藤商事の有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 藤商事ってどんな会社?


パチンコ・パチスロ遊技機の開発、製造、販売を手がけ、独創的なゲーム性を持つ機種を提供する企業です。

(1) 会社概要


1966年10月にじゃん球遊技機の開発などを目的として大阪府に設立されました。1987年にパチンコ遊技機、2001年にはパチスロ遊技機の開発を開始して事業を拡大しました。2007年2月にジャスダックへ株式上場を果たし、2013年3月にはサン電子と資本・業務提携契約を締結しています。

従業員数は連結で473名、単体でも473名です。大株主については、筆頭株主が創業家で役員の松元邦夫氏、第2位も創業家の松元正夫氏となっており、第3位は創業家の資産管理会社とみられる松元ホールディングスです。経営陣の持株比率が高いことが特徴です。

氏名 持株比率
松元 邦夫 25.25%
松元 正夫 20.03%
松元ホールディングス 13.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松下智人氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
松下 智人 取締役社長(代表取締役) 1989年4月同社入社。開発本部長などを経て、2025年4月代表取締役専務執行役員。2026年4月より現職。
松元 邦夫 取締役会長(代表取締役) 1975年3月同社入社。専務取締役を経て、2000年3月代表取締役社長に就任。2016年4月より現職。
松元 正夫 取締役副会長(代表取締役) 1976年4月同社入社。常務取締役、専務取締役などを経て、2012年4月代表取締役副社長。2016年4月より現職。
今山 武成 取締役(代表取締役) 1989年3月同社入社。営業本部長や開発本部長を経て、2022年4月代表取締役社長。2026年4月より現職。
中村 敏幸 取締役 2001年4月同社入社。営業本部長などを経て、2024年4月オレンジ代表取締役社長。2025年6月より現職。
當仲 信秀 取締役 1996年4月同社入社。経営企画室長や管理本部長などを歴任。2016年6月取締役管理本部長を経て、2022年4月より現職。
市川 雅和 取締役(常勤監査等委員) 1997年4月同社入社。開発部長や製造本部長などを経て、2022年4月執行役員社長付。2022年6月より現職。


社外取締役は、岩松登(元みずほ銀行ALM部長)、帆足智典(帆足法律事務所 代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「遊技機事業」を展開しています。

遊技機事業


パチンコ遊技機およびパチスロ遊技機の開発、製造、販売を行っています。多様化するファンのニーズにマッチした独創的で斬新なゲーム性を持つ機種を提供しており、パチンコホールなどを顧客として、魅力ある商品力を備えた遊技機を安定的に供給しています。

収益源は、パチンコホールに対する遊技機の販売代金です。事業の運営は同社が主体となって行っており、製品の製造は同社の名古屋事業所で行われています。また、セカンドブランドやサードブランドとして、子会社のJFJやオレンジも遊技機の開発、製造、販売を担い、同社が部品を供給しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期から2024年3月期にかけて300億円台後半まで成長し、利益も高水準で推移していました。しかし、直近の2026年3月期は販売台数の減少などが影響し、売上高は235億円に減少し、経常利益・当期利益ともに赤字へと転落する厳しい結果となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 296億円 349億円 370億円 346億円 235億円
経常利益 -6億円 41億円 49億円 34億円 -37億円
利益率(%) -2.0% 11.7% 13.3% 9.8% -15.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -12億円 43億円 32億円 25億円 -21億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の346億円から235億円へと大幅に減少しました。売上総利益率は51.0%から51.3%と横ばいを維持したものの、売上高の減少をカバーできず、営業利益は前期の32億円の黒字から39億円の赤字へと大幅に悪化しました。固定費の負担が収益を圧迫しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 346億円 235億円
売上総利益 177億円 121億円
売上総利益率(%) 51.0% 51.3%
営業利益 32億円 -39億円
営業利益率(%) 9.2% -16.6%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が92億円(構成比58%)、給料が13億円(同8%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


キャッシュ・フローの状況は、営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスの「事業検討型」です。本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 46億円 -49億円
投資CF -20億円 3億円
財務CF -12億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は90.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「お客様の繁栄を売ろう ~より良い稼働 より高い信頼~」という企業理念を掲げています。パチンコ・パチスロファンやパチンコホールの顧客にとって魅力ある商品力を備えた遊技機と、付加価値の高いサービスの提供を通じて、顧客の繁栄に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は「ファンファースト」の価値観を重視しています。ファンの声に真摯に耳を傾け、これまでの習慣や常識にとらわれない「ヒト味違う発想」で斬新なアイデアを積極的に採り入れたものづくりを推進しています。常にファンを第一とした製品開発に取り組むことで、企業価値の持続的な向上を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、安定した収益の確保を目指しており、「経常利益」を重要視する経営指標として掲げています。主力事業である遊技機事業の充実を図ることで、さらなる成長と業績の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期的な成長戦略として、遊技者目線に立った機種開発によって商品力を高め、稼働実績と販売実績を積み上げることを重視しています。パチンコ遊技機では独自の機能を強みに販売を進め、パチスロ遊技機では市場投入機種数を増加させる方針です。「ブランド力の向上」と「人財育成」を最重点課題として取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


目指すべき将来像として「ファンから最も支持されるメーカー」を掲げ、人材を最重要の経営資本と位置付けています。「ファンファースト」の行動指針を浸透させるとともに、社員一人ひとりが相互に成長できる仕組みづくりや、継続的に活躍できる職場環境の整備、ワークライフバランスの実現に向けた支援を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.1歳 14.5年 6,525,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 38.5%
男女賃金差異(全労働者) 67.0%
男女賃金差異(正規雇用) 69.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法規制の変更リスク


主力事業である遊技機事業は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」などの規制を受けています。法令の改廃や新たな規制の制定、型式試験や検定が長期化したり適合に至らなかったりした場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(2) 同業他社との競合と市場環境の変動


遊技機市場は1機種当たりの販売台数が減少傾向にあり、厳しい競争環境にあります。他社の話題機種と販売時期が重なり計画未達となるリスクや、社会環境の変化によるパチンコホールの経営悪化に伴い需要が低下するリスクが存在します。

(3) 部材調達の遅延と棚卸資産の評価損


製品の生産期間が短いため、調達に長期間を要する部材を先行手配しています。部材の供給遅延が生じるリスクがあるほか、新製品の販売が計画を大幅に下回った場合、多額の棚卸資産評価損や廃棄損が発生する可能性があります。

(4) 製品の不具合と知的財産権の侵害


販売した遊技機に重大な不具合が発生した場合、多額の回収費用や信用低下のリスクがあります。また、他者の知的財産権の侵害や、キャラクターなどの使用許諾料の高騰も、収益を圧迫する懸念材料となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。