※本記事は、三井物産株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 企業概要:どんな会社?
三井物産は、総合商社として金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進など多岐にわたる分野で事業を展開しています。全世界に広がる事業拠点と情報力を活用し、商品の売買、製造、輸送、ファイナンスといった各種事業を多角的に行っています。
単体従業員数は5,333名、連結従業員数は55,463名です。同社グループの事業セグメントは、金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進の7つです。
主な国内グループ会社は、三井物産メタルズ(金属資源)、三井エネルギー資源開発(エネルギー)、三井物産プロジェクトソリューション(機械・インフラ)、三井物産ケミカル(化学品)などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
三井物産は、「世界中の未来をつくる」という経営理念のもと、グローバルに事業を展開しています。同社グループは人材を最大の資産と位置づけ、多様なバックグラウンドを持つ社員が活躍できる環境づくりに注力しています。挑戦と創造のDNAを継承し、変化に対応できる人材の育成と、個々の能力を最大限に引き出す働き方を重視していることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が長く、平均年齢も高めであることから、長期的なキャリア形成が可能な環境であることがうかがえます。経験豊富な人材が多数在籍し、安定して働き続けられる傾向にあると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 20,589,000円 |
| 平均勤続年数 | 17.4年 |
| 平均年齢 | 42.0歳 |
| 単体従業員数 | 5,333人 |
| 連結従業員数 | 55,463人 |
| 単体のグループ内比率 | 9.6% |
同社は、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の退職給付制度を導入しています。これらの制度は、同社および一部の連結子会社の役員を除く従業員を対象としています。
退職一時金制度も設けられており、定年時または中途退職時の給与水準および勤務期間に基づいて一時金が支給されます。直近の退職給付債務は2,354億円、年金資産は3,496億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
三井物産は、「人」を持続的な価値創造の源泉と位置づけ、多様なバックグラウンドを持つ人材が自律的に挑戦し、価値創造を担うことを人材戦略の基本方針としています。報酬制度においては、競争力ある水準を維持しつつ、社員一人ひとりの能力発揮、成果、貢献に報いる「Pay for Performance」の考え方を採用しています。月例給は職務・役割や市場水準を勘案し、賞与は会社業績と個人の成果・貢献度を反映することで、企業価値向上への意識醸成を図っています。
同社グループは「グローバルタレントマネジメントポリシー」を策定し、自律的な成長、強い「個」、インクルーシブな人材像を追求しています。中期経営計画2029では、プロフェッショナルな人材がデータ/AIを活用し、意思決定の高度化を通じて価値創出を実現することを重点施策としています。特に「強い『個』の育成」「インクルージョン」「戦略的適材配置」「ウェルビーイング・H&S」を重要テーマに掲げ、自律的なキャリア形成を支援するための投資を行っています。
具体的な取り組みとして、若手からリーダー層までを対象とした体系的な人材育成プログラムや、海外修業生、ビジネススクール派遣などのグローバルな育成機会を提供しています。また、社員の意欲を起点としたキャリアチャレンジ制度や、人事ブリテンボード制度を通じて、自律的なキャリア形成を後押ししています。女性活躍推進では、女性管理職比率の目標設定やリーダー層育成プログラムを実施し、多様な働き方を支援するためリモートワークやフレックスタイム制度、法定基準を上回る育児・介護支援策を導入しています。グローバルデータプラットフォーム「Bloom」の活用やグローバルモビリティプログラムにより、戦略的な適材配置と社員のキャリア形成を深化させています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 65.7% |
| 男女賃金差異(有期雇用労働者) | 56.9% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ 三井物産プラスチック
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業等取得率 | 60% |
| 男女間賃金格差(全労働者) | 68.4% |
| 男女間賃金格差(正規雇用労働者) | 67.7% |
| 男女間賃金格差(パート・有期雇用労働者) | 67.6% |
▼ プライフーズ
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.2% |
| 男性育児休業等取得率 | 100% |
| 男女間賃金格差(全労働者) | 63.7% |
| 男女間賃金格差(正規雇用労働者) | 67.2% |
| 男女間賃金格差(パート・有期雇用労働者) | 84.3% |
▼ 三井農林
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.2% |
| 男性育児休業等取得率 | - |
| 男女間賃金格差(全労働者) | 77.7% |
| 男女間賃金格差(正規雇用労働者) | 78.2% |
| 男女間賃金格差(パート・有期雇用労働者) | 68.6% |
社員エンゲージメント強化
当社(単体)および海外現地法人・海外事務所を対象としたMitsui Engagement Survey(MES)の結果です。
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 回答率 | 91% | 91% | 92% |
| 社員エンゲージメント | 73% | 75% | 75% |
| 社員を活かす環境 | 69% | 71% | 72% |
| 戦略・方向性の理解・共感 | 81% | 80% | 78% |
| リーダーシップに対する信頼 | 73% | 75% | 74% |
| スキル・能力の発揮機会 | 76% | 77% | 79% |
| 自発的離職率(単体) | 1.08% | 0.96% | 1.11% |
人材戦略
強い「個」の育成
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 人材開発・研修の費用 | 30.5億円 | 31.5億円 | 32.1億円 |
| 海外派遣研修者数(単体従業員) | 209名 | 210名 | 201名 |
| 日本派遣研修者数(海外採用従業員) | 17名 | 12名 | 14名 |
| DX人材(累計認定者数) | 231名 | 592名 | 1,679名 |
インクルージョン
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| キャリア採用比率 | 41% | 41% | 32% |
| 女性採用比率(新卒+キャリア採用) | 43% | 40% | 39% |
| 女性従業員比率 | 30% | 30% | 31% |
| 女性管理職比率 | 9.2% | 11.0% | 12.0% |
| 海外採用社員ライン長比率 | 18% | 19% | 21% |
| 男性育児休業取得率 | 70% | 91% | 93% |
| 男性育児休業取得日数 | 45.0日 | 42.4日 | 41.6日 |
戦略的適材配置
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 人事ブリテンボード活用者数(累計異動者数) | 613名 | 661名 | 698名 |
| 海外採用社員国外転勤者数 | 81名 | 104名 | 110名 |
ウェルビーイング
健康
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 健康診断受診率 | 100% | 100% | 100% |
| プレゼンティーズム | 12.3% | 12.2% | 12.4% |
労働安全衛生
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 当社(単体)労働災害件数 | 1件 | 0件 | 0件 |
| 当社(単体)死亡災害件数 | 0件 | 0件 | 0件 |
| 連結重傷災害件数(自社従業員) | 4件 | 10件 | 10件 |
| 連結重傷災害件数(コントラクター従業員) | 0件 | 1件 | 3件 |
| 連結死亡災害件数(自社従業員) | 1件 | 0件 | 0件 |
| 連結死亡災害件数(コントラクター従業員) | 1件 | 2件 | 2件 |
働き方(単体)
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 有給休暇年間平均取得日数 | 13.6日 | 13.2日 | 13.4日 |
| 有給休暇年間平均取得率 | 70.3% | 69.0% | 70.3% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
三井物産は、金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進といった多岐にわたる分野で事業を展開する総合商社です。全世界に広がる事業拠点と情報力を活用し、商品の売買、製造、輸送、ファイナンスなど多角的な事業活動を行っています。資源・インフラ開発プロジェクトの構築や、環境・新技術・次世代燃料、ウェルネスに関連する事業投資、デジタルを活用した価値創出など、幅広い取り組みを展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、多岐にわたる事業領域で収益を上げています。各事業本部が担当事業領域ごとに地域本部やブロックと連携し、全世界で事業活動を展開しています。商品の売買や製造、輸送、ファイナンスといった事業を多角的に行い、資源開発からインフラ、生活関連まで幅広い分野で価値を創出しています。
生活産業
食料や消費財の製造・販売、売買、ウェルネス関連事業を展開しています。多岐にわたる商品の製造・販売・売買から収益を得ており、直近の期では収益が増加しました。
エネルギー
石油・ガスの資源開発、石油・ガス、石炭及び関連製品の売買、次世代電力事業を行っています。資源開発や製品売買、電力事業が主な収益源であり、直近の期では収益が減少しましたが、売上総利益は増加しました。
化学品
化学品や住生活マテリアルの製造・販売、売買を手掛けています。化学品や住生活マテリアルの製造・販売・売買から収益を得ており、直近の期では収益が減少しました。
金属資源
鉄鋼及び非鉄金属原料の資源開発、原料・製品の製造・販売、売買を行っています。資源開発や原料・製品の製造・販売・売買が収益源ですが、直近の期では収益が減少しました。
機械・インフラ
機械・設備の製造・販売、売買、リース、ファイナンス、発電などのインフラ事業を展開しています。機械・設備の製造・販売・売買、リース、ファイナンス、インフラ事業が主な収益源であり、直近の期では収益が増加しました。
鉄鋼製品
鉄鋼製品の製造・販売、売買を行っています。鉄鋼製品の製造・販売・売買から収益を得ており、直近の期では収益が減少しましたが、売上総利益は増加しました。
次世代・機能推進
情報通信事業、物流関連事業、保険事業、金融関連事業、不動産関連事業、メディア関連事業など、多岐にわたるサービスを提供しています。直近の期では収益が増加しました。
同社グループは日本だけでなく、シンガポール、アメリカ、オーストラリアなど世界各地で事業を展開しており、海外からの収益も大きな割合を占めています。そのため、豪ドルや米ドルといった資源産出国の通貨や主要通貨の為替変動が、連結子会社や持分法適用会社の現地通貨建ての売上総利益に影響を及ぼすことがあります。また、エネルギー価格の変動も経営成績に影響を与える要因となっています。なお、単一顧客に対する収益の集中は見られません。
| セグメント | 収益(2025年3月期) | 収益(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 生活産業 | 3兆3,397億円 | 3兆4,096億円 |
| エネルギー | 3兆9,675億円 | 3兆2,307億円 |
| 化学品 | 2兆9,795億円 | 2兆9,336億円 |
| 金属資源 | 1兆9,419億円 | 1兆9,216億円 |
| 機械・インフラ | 1兆4,837億円 | 1兆5,232億円 |
| 鉄鋼製品 | 6,536億円 | 6,268億円 |
| 次世代・機能推進 | 2,954億円 | 3,475億円 |
| その他の事業セグメント | 14.4億円 | 20.6億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、過去5年間で収益が変動する傾向にあります。直近の期では収益が減少しましたが、売上総利益は増加に転じました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、過去2期連続で減少しています。一方で、営業活動によるキャッシュ・フローは各期で安定して資金を創出しており、本業におけるキャッシュ創出力は維持されていると言えるでしょう。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 収益 | 11兆7,576億円 | 14兆3,064億円 | 13兆3,249億円 | 14兆6,626億円 | 13兆9,952億円 |
| 売上総利益 | 1兆1,414億円 | 1兆3,962億円 | 1兆3,197億円 | 1兆2,884億円 | 1兆3,282億円 |
| 売上総利益率 | 9.7% | 9.8% | 9.9% | 8.8% | 9.5% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 9,147億円 | 1兆1,306億円 | 1兆637億円 | 9,003億円 | 8,340億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 280.81 | 360.91 | 352.80 | 306.73 | 291.12 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり収益は前期から減少しましたが、従業員1人あたり売上総利益は増加しています。これは、収益全体が減少する中でも、事業活動における粗利の創出効率が向上していることを示しています。組織全体の生産性向上への取り組みが、利益面で成果を上げている傾向が見られます。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり収益(連結) | 260.0百万円 | 252.3百万円 |
| 従業員1人あたり売上総利益(連結) | 22.8百万円 | 23.9百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、本業で資金を生み出しつつ、将来に向けた積極的な投資を行っている状況です。これにより、財務基盤を強化しながら事業成長を目指していることが示されています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本は当期で8兆7,677億円となり、前期から増加しています。自己資本比率は当期42.1%で、前期の44.9%から減少しました。これはプライム市場の非製造業平均24.2%と比較して高い水準を示しています。ROE(自己資本利益率)は当期10.2%で、前期の11.9%から減少しましたが、プライム市場平均9.4%を上回っています。手元資金である現金及び現金同等物は当期9,827億円を確保しており、前期から微増となりました。これらの財務指標は、同社グループが安定した財務基盤を維持していることを示しており、事業活動を継続するための資金的な余裕がある状態です。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 自己資本 | 7兆5,466億円 | 8兆7,677億円 |
| 自己資本比率 | 44.9% | 42.1% |
| ROE(自己資本利益率) | 11.9% | 10.2% |
| 現金及び現金同等物 | 9,774億円 | 9,827億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは当期9,529億円のプラスとなりましたが、前期の1兆175億円から減少しています。これは主に持分法適用会社からの配当金受取額の減少や、営業活動に係る資産・負債の増減による資金支出が増加したことなどが影響しています。
投資活動によるキャッシュフローは当期△1兆335億円のマイナスとなり、前期の△1,620億円からマイナス幅が大きく拡大しました。これはRhodes Ridge鉄鉱石事業や石油・ガス生産事業、豪州鉄鉱石事業などへの有形固定資産の取得による支出が大幅に増加したためです。
その結果、フリーキャッシュフローは当期△806億円のマイナスとなり、前期の8,555億円のプラスからマイナスに転じました。これは本業で得た資金を上回る規模の積極的な投資を行っていることを示しています。財務活動によるキャッシュフローは当期269億円のプラスとなり、前期の△7,496億円のマイナスからプラスに転じました。これは長期債務の増加による収入が長期債務の返済による支出を上回ったことなどが要因です。同社グループは、将来の成長に向けた大規模な投資を積極的に進めている段階にあると言えます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 1兆175億円 | 9,529億円 |
| 投資CF | △1,620億円 | △1兆335億円 |
| 財務CF | △7,496億円 | 269億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 8,555億円 | △806億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、鉄鉱石、原料炭、銅、原油、天然ガス・LNG等をはじめとする各種市況商品の生産及び売買を重要な事業分野としています。これらの商品価格は需給の不均衡や景気変動、為替変動等の要因により乱高下する可能性があり、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼすリスクがあります。
また、中東情勢やロシア・ウクライナ情勢、米中関係等、国・地域間の政治的・社会的緊張の高まりによる地政学的リスクも認識されています。これにより、同社グループが展開する事業の業績が悪化したり、継続が困難になったりする可能性があり、エネルギー市況や資源価格の変動、物流の停滞、事業運営コストの増加等を通じて事業活動に影響を及ぼすことが示されています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、「人」を持続的な価値創造の源泉と捉え、人材の確保と育成、評価、報酬等の人材マネジメントに取り組んでいます。しかし、事業分野や国・地域によっては求められる人材が不足し、事業価値創出機会の逸失や安定的なオペレーションに支障をきたす可能性があります。このような人的資本の制約は、同社グループの事業展開と経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼすリスクとして認識されています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
三井物産は、グローバルな事業展開を通じて社会課題の解決に貢献し、未来を創造することを目指す総合商社です。同社グループは、変化の激しい時代において、持続的な成長と企業価値向上を追求する独自の企業文化を築いています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
三井物産は、「大切な地球と人びとの豊かで夢あふれる明日を実現し、「世界中の未来をつくる」こと」を経営理念に掲げています。同社グループは、2030年、そしてその先に目指す中長期のあり姿実現に向けた道筋として、中期経営計画2029「2030年、そしてその先へ 信頼とイノベーションで未来をつくる」を策定しました。
再現性ある価値創出の仕組みに基づき、ポートフォリオを継続的に良質化し続けることを目指しています。プロフェッショナル人材とAIの探索力を融合させ、飛躍的な価値を生み出す「非線形のCombinatory Value」の実現を通じて、企業価値向上と社会課題解決の好循環を確立する方針です。ステークホルダーから信頼され続ける存在を目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、「挑戦と創造」のDNAを継承し、常に時代の潮流を先取りしてさまざまな分野や国で新たな事業を創出してきました。最大の資産は人材であり、「人」こそが持続的な価値創造の源泉であると考えています。
「三井物産グループ行動指針—With Integrity」やサステナビリティ関連方針等に従い、サステナビリティを重視した経営を行っています。社会課題の解決を通じ新たな価値創造を続けるために、変化に即応し未来の戦略をつくることができる人材を育て、それぞれの力を引き出すことを重視しています。
グローバル共通の基本方針「グローバルタレントマネジメントポリシー」では、「自律的な成長」「強い「個」」「インクルーシブ」な人材を求めています。多様な個性を有する従業員が、自分らしく自由に発想し、異なる考えを受け入れ、最大限に力を活かすことができる会社を目指しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
中期経営計画2029では、「差別化された競争力」「変革を続ける収益基盤」「強い個による価値創造」をCorporate Strategyとして新たに設定しています。これらの取り組みを支えるため、「サステナビリティ経営」「ウェルビーイング・Health & Safety」「人材戦略」を重点テーマに定めています。長期視点で経営基盤を継続的に強化していく方針です。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
三井物産は、コーポレート・ガバナンス体制の構築において、透明性と説明責任の向上、そして経営の監督と執行の役割分担の明確化を重視しています。監査役会設置会社として、社外取締役や社外監査役の参画を得た各種諮問機関を通じて、実効性の高いガバナンスを実現しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
三井物産の株主構成を見ると、筆頭株主は信託銀行であり、複数の機関投資家が上位に名を連ねています。特定の創業家や事業会社が経営に強い影響力を持つような資本構成ではありません。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.12% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505104 | 10.42% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.27% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は17名(男性12名・女性5名)で構成され、女性役員比率は29.0%です。代表取締役社長CEOは堀健一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 堀 健一 | 代表取締役 社長 CEO | 1984年4月同社入社。執行役員、経営企画部長兼韓国三井物産理事、ニュートリション・アグリカルチャー本部長などを経て、2021年4月より現職。 |
| 安永 竜夫 | 代表取締役 会長 | 1983年4月同社入社。執行役員、機械・輸送システム本部長を経て、2015年4月社長、CEOに就任。同年6月代表取締役、社長、CEO。2021年4月より現職。 |
| 中井 一雅 | 代表取締役 副社長執行役員 CSO | 1987年4月同社入社。執行役員、プロジェクト本部長、CSOなどを経て、2026年4月より現職。 |
| 福田 哲也 | 代表取締役 専務執行役員 CDIO | 1991年4月同社入社。執行役員、金属資源本部長、CDIOなどを経て、2025年6月より現職。 |
| 竹増 喜明 | 取締役 | 1985年4月同社入社。執行役員、人事総務部長、CHRO、CCOなどを経て、2026年4月より現職。 |
| 重田 哲也 | 取締役 | 1987年4月同社入社。執行役員、経理部長、CFOなどを経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、サミュエル ウォルシュ氏(元Rio Tinto Limited CEO・ガバナンス委員会委員)、内山田 竹志氏(トヨタ自動車相談役・指名委員会委員長)、江川 雅子氏(学校法人成蹊学園学園長・ガバナンス委員会委員・報酬委員会委員長)、石黒 不二代氏(セガサミーホールディングス社外取締役・指名委員会委員)、サラ L. カサノバ氏(花王社外取締役・ガバナンス委員会委員)、ジェシカ タン スーン ネオ氏(シンガポール国会議員・報酬委員会委員)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役及び社外監査役の視点を取り入れることで、経営の監督機能と監視機能の強化を図っています。独立社外取締役が取締役会の過半数を占める体制により、客観的な視点からの経営への助言と監督が期待されます。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
三井物産の役員報酬は、固定報酬である基本報酬に加え、当期利益や基礎営業キャッシュ・フローに連動する業績連動賞与、そして中長期的な企業価値向上を目的とした業績連動型譲渡制限付株式報酬および在任条件型譲渡制限付株式報酬で構成されています。社外取締役および監査役は、その独立性を尊重する観点から、業績連動賞与および株式報酬の対象外となっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 8名 | 24.9億円 | 3.11億円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 1.9億円 | 96.0百万円 |
| 社外取締役 | 6名 | 1.8億円 | 30.5百万円 |
| 社外監査役 | 4名 | 90百万円 | 22.5百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。また、総額には期中に退任した役員の報酬が含まれます。
個人別報酬が開示されている役員は、安永竜夫氏(5.38億円)、堀健一氏(7.62億円)、竹増喜明氏(3.46億円)、重田哲也氏(3.45億円)、中井一雅氏(2.71億円)、福田哲也氏(2.61億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。