※本記事は、株式会社東京産業の有価証券報告書(第115期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京産業ってどんな会社?
三菱系機械商社として発足し、現在は環境・エネルギー分野に強みを持つ機械総合商社として事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1947年、三菱商事の解散に伴い、同社機械部の有志により機械専門商社として発足し、現商号に変更しました。1961年に東証二部に上場し、1996年には東証一部銘柄に指定されています。近年では2018年に株式会社アイ・エー・エッチを子会社化するなど業容を拡大し、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。
連結従業員数は397名、単体では336名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は主要な取引先であり創業時より関係の深い三菱重工業です。第3位には外国法人の常任代理人であるシティバンク、エヌ・エイ東京支店が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.27% |
| 三菱重工業 | 9.30% |
| CGML PB CLIENT ACCOUNT/ COLLATERAL(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) | 8.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長社長執行役員は蒲原 稔氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 蒲原 稔 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1977年同社入社。経理部長、管理本部副本部長、企画本部長兼営業第四本部長などを歴任し、2018年より取締役常務執行役員企画本部長。2021年4月より現職。 |
| 島田 哲三 | 取締役常務執行役員営業第二本部長兼菱東貿易(上海)有限公司董事長 | 1990年同社入社。菱東貿易(上海)有限公司董事長・総経理、関西支店長などを経て、2024年より取締役執行役員営業第二本部長。2025年4月より現職。 |
| 田沢 健次 | 取締役常務執行役員企画本部長 | 1986年同社入社。経理部長、アイ・エー・エッチ代表取締役、管理本部長などを歴任。2023年6月より取締役執行役員企画本部長。2025年4月より現職。 |
| 目時 英一 | 取締役執行役員営業第一本部長 | 1990年同社入社。電力部長、営業第一本部副本部長兼東北支店長などを経て、2023年4月より上席執行役員営業第一本部長。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、中村直(元JFEエンジニアリング技術総括部長)、福崎聖子(弁護士)、河合明弘(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電力事業」「環境・化学・機械事業」「生活産業事業」を展開しています。
■(1) 電力事業
国内の電力会社向けに、火力発電所関連機器、原子力発電所周辺機器、送変電機器などの販売、据付工事およびメンテナンスサービスを提供しています。
収益は、機器の販売代金や工事・メンテナンスサービスの対価として電力会社等から受け取ります。運営は主に東京産業および株式会社アイ・エー・エッチが行っています。
■(2) 環境・化学・機械事業
化学・石油精製・製薬・繊維などの各業界向けプラントや機械設備、工作機械の販売を行うほか、太陽光発電事業や太陽光パネルの販売・設置業務も手掛けています。
収益は、各種プラント・機器の販売代金や設置工事費、売電収入等から得ています。運営は東京産業のほか、光和興業、社会環境イノベーション、海外現地法人などが担っています。
■(3) 生活産業事業
節水型自動流水器や、レジ袋、ファッション袋、ゴミ収集袋などの包装資材を取り扱っています。
収益は、商品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主に東京産業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期は売上高1000億円を超えていましたが、収益認識会計基準の適用により翌期以降は見かけ上の売上高が減少しています。2024年3月期は大幅な赤字を計上しましたが、2025年3月期は売上高が回復し、利益面でもV字回復を果たして黒字転換しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,130億円 | 559億円 | 654億円 | 650億円 | 707億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 25億円 | 10億円 | -41億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 1.9% | 4.5% | 1.5% | -6.3% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 13億円 | -51億円 | -14億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
前期は営業損失を計上していましたが、当期は売上高の増加に伴い売上総利益が伸長し、営業黒字に転換しました。販売費及び一般管理費が大幅に減少したことも利益の改善に寄与しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 650億円 | 707億円 |
| 売上総利益 | 70億円 | 93億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.8% | 13.1% |
| 営業利益 | -45億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | -7.0% | 3.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が26億円(構成比38%)、福利厚生費が8億円(同12%)を占めています。なお、当期は貸倒引当金繰入額がマイナス(戻入益)6.5億円となっており、費用の減少要因となっています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収となりました。特に電力事業は火力発電所の保守や原子力関連が好調で利益も伸長しました。環境・化学・機械事業は前期の多額の赤字から黒字化を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電力事業 | 132億円 | 158億円 | 13億円 | 15億円 | 9.5% |
| 環境・化学・機械事業 | 470億円 | 498億円 | -59億円 | 6億円 | 1.1% |
| 生活産業事業 | 48億円 | 51億円 | 1億円 | 2億円 | 4.1% |
| その他 | 4億円 | 4億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 650億円 | 707億円 | -45億円 | 23億円 | 3.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東京産業は、営業活動により資金が増加し、投資活動でも資金が増加しましたが、財務活動での資金流出が大きく、全体としては資金が減少しました。営業活動では、棚卸資産の減少が資金増加に寄与した一方、売上債権の増加が資金流出の主な要因となりました。投資活動では、預り金の受入が資金増加の主な要因となり、有形固定資産の取得が資金流出の主な要因となりました。財務活動では、短期借入金および長期借入金の返済が資金流出の主な要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.1億円 | 54億円 |
| 投資CF | 6億円 | 17億円 |
| 財務CF | 22億円 | -75億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは創業以来、各取引先からの「信頼」を得て、企業活動を通じ社会に「貢献」することを企業理念として掲げています。今後も、創立80周年に向けて、環境・エネルギーに強い機械総合商社としての地位確立を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「サステナブル行動指針」を策定し、サステナビリティ経営を実行することで持続的な成長と企業理念の実践を目指しています。また、「人財方針」において人が財産であるとの認識の下、従業員の多様性と人権を尊重し、イノベーションの創出と企業価値向上を図る文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「T-ScaleUp2027」を策定しており、長期ビジョン「環境・エネルギーに強い機械総合商社」の地位確立を目指しています。最終年度である2027年3月期における経営指標の目標として、以下の数値を掲げています。
* 連結売上高:730億円
* 連結営業利益:25億円
* ROE:8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、エネルギートランジションへの積極関与、サステナブル社会構築に資する事業創出、グループ総合力の強化、強靭な経営基盤の構築、株主還元の拡充という5つの成長戦略を実行します。特に新領域でのビジネス拡大や、コンプライアンス・ガバナンスの強化に注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人が財産との認識の下、人材の早期戦力化、グローバル化、マルチタレント化を3つの柱とする人的投資を積極的に実行する方針です。ダイバーシティと働き方改革を重要課題とし、多様な働き方を提供できる環境整備や健康的な職場作りを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.1歳 | 13.9年 | 8,941,295円 |
※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び株式付与ESOP信託制度による給与課税額を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性育児休業取得率 | 16.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(65.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の経済環境の変化
取扱商品は国内外の景気動向の影響を受けやすく、需要減退や価格変動が業績に悪影響を与える可能性があります。同社はオンリーワン商品の発掘や顧客基盤の拡充等に努めていますが、影響を完全に排除することは困難です。
■(2) 特定の取引先への依存
創業以来、三菱重工業をはじめとする三菱グループ各社との取引が多く、特に電力事業では同グループ製品の販売や納入に深く関わっています。そのため、電力業界の設備投資動向やメーカーの販売政策の変更が、同社の業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(3) 取引先への信用供与
取引先に対し売上債権や前渡金、貸付金などの信用供与を行っており、与信管理体制を強化していますが、取引先の経営破綻等による貸倒れリスクは排除できません。特に大型案件や長期的な取引においてリスクが顕在化した場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 売上計上時期の変動
大口の機械・設備納入や工事案件は期末に集中する傾向があります。顧客の検収時期のずれ込み等により売上計上時期が翌期以降に変更となった場合、当該期の業績計画が未達となるなど、業績に悪影響を与える可能性があります。



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