※本記事は、東京産業株式会社の有価証券報告書(第116期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京産業ってどんな会社?
機械総合商社として電力、環境・化学・機械、生活産業の3領域で各種機器の販売やサービスを展開しています。
■(1) 会社概要
1942年に大和機械として設立され、1947年に現在の東京産業へ商号変更しました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1996年には同市場第一部銘柄に指定されています。1977年のシンガポール現地法人設立を皮切りに海外展開を進め、近年は環境分野の関連会社設立など事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結で402名、単体で345名です。筆頭株主は事業会社である西華産業で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は主要取引先である三菱重工業となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 西華産業 | 12.46% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.29% |
| 三菱重工業 | 9.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長は蒲原稔氏が務めています。社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 蒲原稔 | 代表取締役会長 | 1977年同社入社。経理部長、取締役執行役員などを経て、2021年代表取締役社長執行役員を歴任。2026年4月より現職。 |
| 田沢健次 | 取締役常務執行役員管理部門管掌兼 管理本部長 | 1986年同社入社。アイ・エー・エッチ代表取締役や同社管理本部副本部長などを経て、2025年取締役常務執行役員。2026年4月より現職。 |
| 目時英一 | 取締役常務執行役員営業部門管掌 | 1990年同社入社。電力部長、執行役員東北支店長、取締役執行役員営業第一本部長などを歴任し、2026年4月より現職。 |
| 島田哲三 | 取締役 | 1990年同社入社。菱東貿易(上海)董事長や同社取締役執行役員営業第二本部長などを歴任し、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、中村直(日本鋼管元技術総括部長)、金子正志(金子正志法律事務所代表)、福崎聖子(福崎法律事務所所属)、河合明弘(さいたま新都心税理士法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電力事業」「環境・化学・機械事業」「生活産業事業」を展開しています。
■(1) 電力事業
火力発電所関連機器、原子力発電所周辺機器、送変電機器等を提供しています。主な顧客は電力業界であり、事業用や産業用火力発電所向け設備のリプレースやメンテナンス、原子力関連施設の稼働に向けた対応などの代理店業務を行っています。
火力および原子力発電プラント等の納入や保守修繕業務に伴う機器販売代金や業務委託料、長期バイオマス燃料供給契約による燃料納入代金が主な収益源です。運営は同社のほか、子会社であるアイ・エー・エッチなどが担当しています。
■(2) 環境・化学・機械事業
化学、石油精製、製薬、繊維、ゴム、非鉄金属の各業界向けプラントや機械設備、太陽光発電事業、工作機械などを提供しています。各種生産設備関連の請負工事や、再生可能エネルギー関連設備の納入など幅広い産業インフラを支えています。
機械設備やプラントの販売代金、大型建設請負工事の完成に基づく工事代金、太陽光発電関連機器の納入代金などを顧客から収益として受け取ります。運営は同社を中心に、社会環境イノベーションや各種海外現地法人が担っています。
■(3) 生活産業事業
節水型自動流水器、レジ袋、ファッション袋、ゴミ収集袋などの生活資材を提供しています。環境にやさしい植物由来ポリエチレンを含有した包装資材など、商品ラインナップの拡充や新規商材の開拓を通じて顧客のニーズに対応しています。
大口顧客向けの包装資材や各種生活資材の販売に伴う商品代金が主な収益源となります。本事業の運営は主に同社が主体となって行っており、安定的な商品供給を通じて事業基盤の維持と販売拡大を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は大型工事の進捗状況等により変動が見られますが、利益面では一時的な赤字計上から回復傾向にあります。特に直近では売上高が減少した一方で、ベース事業である保守業務の伸長や一過性の損失解消などにより経常利益および当期利益は大幅な増益を達成しており、利益率も改善が進んでいます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 559億円 | 654億円 | 650億円 | 707億円 | 632億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 10億円 | -41億円 | 27億円 | 40億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 1.5% | -6.3% | 3.8% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | -51億円 | -14億円 | 22億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年度に比べ減少しましたが、売上総利益は大きく増加し、売上総利益率も改善しています。これは収益性の高い保守業務の伸長や大型工事の完工などが寄与したことによるものです。それに伴い、販売費及び一般管理費が増加したものの、営業利益および営業利益率ともに上昇する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 707億円 | 632億円 |
| 売上総利益 | 93億円 | 113億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.1% | 17.9% |
| 営業利益 | 23億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が28億円(構成比35%)、福利厚生費が9億円(同11%)、事務所費が6億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電力事業は火力発電所向け保守業務の伸長やバイオマス燃料の納入開始により大幅な増収増益となりました。生活産業事業も主力製品の販売拡大により堅調に推移しています。一方、環境・化学・機械事業は前期の大型工事完工の反動で大幅な減収となりましたが、複数工事の完工や費用精算に伴う収益計上で増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電力事業 | 158億円 | 239億円 | 15億円 | 22億円 | 9.1% |
| 環境・化学・機械事業 | 498億円 | 334億円 | 6億円 | 10億円 | 2.9% |
| 生活産業事業 | 51億円 | 59億円 | 2億円 | 3億円 | 4.6% |
| 連結(合計) | 707億円 | 632億円 | 23億円 | 34億円 | 5.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 54億円 | 48億円 |
| 投資CF | 17億円 | 51億円 |
| 財務CF | -75億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も24.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは創業以来、各取引先からの「信頼」を得て、企業活動を通じ社会に「貢献」することを企業理念として掲げています。この理念のもと、創立80周年に向けて「環境・エネルギーに強い機械総合商社」としての地位を確立し、持続的な成長と社会課題の解決を目指して経営に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は「人が財産」であるとの認識の下、従業員の多様性と人権を尊重する文化を重視しています。「サステナブル行動指針」を掲げ、SDGs達成に向けた取り組みを推進しつつ、イノベーションの創出を図っています。変化の激しいビジネス環境へ柔軟に対応し、社会と調和する多様な働き方を提供できる環境整備を進めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「T-Scale Up2027」において、長期ビジョンである「環境・エネルギーに強い機械総合商社」の確立と新たなビジネスモデルの収益化を目指しています。最終年度である2027年3月期に向け、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:630億円
* 営業利益:25億円
* ROE(自己資本利益率):8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
目標達成のため、同社は5つの成長戦略を推進しています。主力事業に加え「原子力」「バイオマス」などの新領域拡大を図るエネルギートランジションへの関与や、CO2削減関連などのサステナブル社会構築に資する事業創出に注力しています。また、戦略分野におけるパートナー企業との協業やM&Aを通じたグループ総合力の強化を図り、ビジネス捕捉力を高めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「早期戦力化」「グローバル化」「マルチタレント化」を人材育成の3つの柱とし、積極的な人的投資を実行しています。「ダイバーシティ」と「働き方改革」を重要課題と位置づけ、多様な働き方を提供できる環境整備や社内DXの推進、健康的な職場作りを強力に進めることで、強固な組織の構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.9歳 | 13.9年 | 9,586,150円 |
※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び株式付与ESOP信託制度による給与課税額を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.1% |
| 男性育児休業取得率 | 31.3% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 70.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 68.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 72.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(63.6%)、男性の育児休業取得率(100.0%)、女性の育児休業取得率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少数の取引先への依存によるリスク
同社は創業以来、三菱グループの一員として三菱重工業や三菱電機の製品を国内外の産業界に販売しており、電力業界向けに発電プラント等の納入を代理店として手掛けています。これら特定のメーカーや電力業界の設備投資動向、販売政策に依存する側面があり、方針の変更が生じた場合は同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、事業ポートフォリオの見直しや顧客基盤の拡充を進めています。
■(2) 信用供与に関する取引先リスク
同社グループは取引先に対して売上債権、前渡金、貸付金、保証等の信用供与を行っています。これに対して商品取引規定を設け段階的な裁量区分を明確化するほか、リスク評価会議を設置して大型取引のモニタリングを行うなど厳格な与信管理体制を敷いています。しかし、予期せぬ事態により取引先が支払不能に陥った場合、貸倒れ等の損失が発生し、同社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 業績の期末偏重や売上計上時期の変動リスク
同社の売上高は顧客の検収時期等により計上されるため、大型の機械設備納入や工事案件が中間期末(9月)や年度末(3月)に集中する傾向があります。何らかの理由により顧客の検収時期や納入予定が翌期以降にずれ込んだ場合、当初の計画未達など当該期の業績に悪影響を与える可能性があります。このため、期中の進捗管理を徹底し、遅延リスクの最小化に努めています。



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