阪和興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阪和興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する阪和興業は、鉄鋼を中心に、プライマリーメタル、リサイクルメタル、食品、エネルギー・生活資材などの販売事業をグローバルに展開する独立系商社です。直近の業績は、売上高は増加したものの、リサイクルメタル事業の採算悪化などの影響で経常利益が減少する増収減益となっています。


※本記事は、阪和興業株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 阪和興業ってどんな会社?


鉄鋼を中心に多様な資材や食品などを取り扱う独立系の総合商社として、幅広いサプライチェーンを構築しています。

(1) 会社概要


1947年に大阪市で鉄鋼製品を扱う卸売業として設立されました。1963年に大阪証券取引所、1970年に東京証券取引所へ上場し、その後は海外拠点を次々と開設しました。2011年にベトナム、2012年にメキシコ、2024年にはイギリスに現地法人を設立するなど、グローバルな事業基盤を拡大し続けています。

現在、同社グループは連結で6,079名、単体で1,820名の従業員を抱えています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は阪和興業取引先持株会、第3位は日本カストディ銀行となっており、主に金融機関や取引先の持株会が上位株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.39%
阪和興業取引先持株会 6.25%
日本カストディ銀行(信託口) 5.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は中川洋一氏が務めています。社外取締役は7名おり、役員全体に占める比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中川洋一 代表取締役社長 1986年同社入社。経理・関連事業担当理事、執行役員、取締役専務執行役員などを歴任し、2022年より現職。
山本浩雅 取締役副社長執行役員 1983年同社入社。機械・大阪厚板担当理事、取締役専務執行役員アジア総代表などを経て、2026年より現職。
畠中康司 取締役副社長執行役員 1983年同社入社。大阪薄板関連担当理事、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2025年より現職。
篠山陽一 取締役専務執行役員 1984年同社入社。東京薄板担当理事、常務執行役員、取締役常務執行役員などを経て、2021年より現職。
松原圭司 取締役専務執行役員 1983年同社入社。中国華東地区総代表、執行役員、取締役常務執行役員などを経て、2025年より現職。
本田恒 取締役専務執行役員 1991年同社入社。情報システム・営業会計・貿易業務担当理事、取締役常務執行役員などを経て、2026年より現職。
川西英夫 取締役常勤監査等委員 1973年同社入社。取締役副社長執行役員、常勤監査役などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、堀龍兒(元日商岩井専務執行役員)、中井加明三(元野村不動産ホールディングス社長)、古川玲子(元ユニアデックス常勤監査役)、佐藤千佳(元日本電気執行役員)、髙橋秀行(元みずほフィナンシャルグループ取締役)、櫻井直哉(元東芝代表執行役専務)、國賀久徳(元日本総合研究所副社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、6つの報告セグメントおよびその他事業を展開しています。

鉄鋼事業

同セグメントでは、条鋼、鋼板、特殊鋼、線材、鋼管などの鉄鋼製品を取り扱うほか、鋼材加工や保管、建設工事の請負など幅広いサービスを顧客に提供しています。
収益は、製品の販売や加工、請負工事の対価として顧客から受け取る代金から得ています。事業の運営は同社のほか、阪和エンジニアリングや阪和流通センター東京などの国内子会社群、および海外の販売・加工拠点が担っています。

プライマリーメタル事業

同セグメントでは、ニッケル、クロム、シリコン、マンガン、合金鉄、ステンレス母材、高機能材、および鉄屑などの冷鉄源を取り扱っています。
収益は、これらの金属原料やリサイクル原料を製造業などの顧客に販売することで得ています。事業の運営は同社に加え、日本南アフリカクロムなどの子会社や、海外の関連会社が担当しています。

リサイクルメタル事業

同セグメントでは、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン、ニッケルなどのリサイクル原料や貴金属を取り扱い、資源の有効活用に貢献しています。
収益は、リサイクル原料の販売によって顧客から対価を受け取るモデルです。事業の運営は同社を中心に、国内では昭和メタルや日興金属、海外ではインドネシアの現地法人などが主導して行っています。

食品事業

同セグメントでは、エビやカニなどの水産物、および鶏肉や豚肉などの畜産物を取り扱い、国内外の市場に供給しています。
収益は、スーパーや外食産業などの顧客に食品を販売することによって得ています。事業の運営は同社のほか、ハンワフーズなどの国内子会社や、アメリカ、カナダにある海外子会社が担っています。

エネルギー・生活資材事業

同セグメントでは、石油製品、工業薬品、化学品に加え、持続可能な社会に寄与するバイオマスやリサイクル燃料などを取り扱っています。
収益は、各種燃料や化学品を必要とする企業に販売することで得ています。事業の運営は同社やトーヨーエナジー、西部サービスといった子会社が推進しています。

海外販売子会社

同セグメントでは、アジア、北中米、欧州など海外の主要な拠点において、同社と同様に鉄鋼や非鉄金属など多種多様な商品の売買を行っています。
収益は、現地での商品販売に伴う代金から得ています。事業の運営は、シンガポール、アメリカ、タイ、ベトナムなどに展開する海外販売子会社群がそれぞれ担当しています。

その他事業

同セグメントでは、報告セグメントに含まれない住宅資材や産業機械などの商品を取り扱っています。
収益は、住宅メーカーや製造業の顧客に資材や機械を販売・提供することで得ています。事業の運営は同社をはじめ、シンクスや阪和アルファビジネスといった子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は第76期に急拡大した後も2.4兆円から2.6兆円規模で推移しており、堅調な事業基盤を維持しています。一方、経常利益は市況や採算の影響を受けやすく、直近の第79期はリサイクルメタル事業の採算悪化等により減益となりました。

項目 第75期 第76期 第77期 第78期 第79期
売上高 21,640億円 26,682億円 24,320億円 25,545億円 26,627億円
経常利益 627億円 643億円 483億円 597億円 523億円
利益率(%) 2.9% 2.4% 2.0% 2.3% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 436億円 515億円 384億円 455億円 383億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約4%増加して2兆6,627億円となりましたが、売上総利益はほぼ横ばいにとどまっています。販売費及び一般管理費における人件費の増加等により、営業利益は前期比で減少しており、利益率もやや低下する結果となりました。

項目 第78期 第79期
売上高 25,545億円 26,627億円
売上総利益 1,406億円 1,411億円
売上総利益率(%) 5.5% 5.3%
営業利益 615億円 584億円
営業利益率(%) 2.4% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が294億円(構成比約36%)、賞与引当金繰入額が45億円(同約5%)を占めています。売上原価の大部分は商品の仕入等に関連する費用で構成されています。

(3) セグメント収益


主力の鉄鋼事業は鋼材価格の下落等で減収となったものの、持分法投資利益の拡大等により増益を確保しました。一方、プライマリーメタル事業は持分法投資損失により赤字に転落し、リサイクルメタル事業や海外販売子会社も採算悪化により減益となっています。

区分 売上(第78期) 売上(第79期) 利益(第78期) 利益(第79期) 利益率
鉄鋼事業 11,129億円 10,340億円 332億円 387億円 3.7%
プライマリーメタル事業 1,704億円 2,243億円 61億円 -2億円 -0.1%
リサイクルメタル事業 2,188億円 2,812億円 31億円 13億円 0.5%
食品事業 1,382億円 1,488億円 23億円 30億円 2.0%
エネルギー・生活資材事業 3,838億円 3,790億円 104億円 85億円 2.3%
海外販売子会社 4,005億円 4,651億円 83億円 55億円 1.2%
その他 1,301億円 1,302億円 24億円 21億円 1.6%
連結(合計) 25,545億円 26,627億円 597億円 523億円 2.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 第78期 第79期
営業CF 101億円 743億円
投資CF -218億円 -108億円
財務CF 3億円 -476億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均と同じ水準であり、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは、時代と市場の変化に迅速に対応し、『流通のプロ』として顧客の多様なニーズに応え、広く社会に貢献します」という経営理念を掲げています。また、「すべての『ほしい』をつなげてく。ユーザーの為に、ユーザーと共に。」をミッションとし、付加価値創出を通じた持続的な企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「信用・誠実・創意・和協・奉仕」を社是の価値観として共有しています。さらに、困難な状況でも市場のニーズを的確につかみ粘り強くやり抜く「GRIP & GRIT(つかんでやり抜く力)」を同社グループのスピリッツとして掲げ、従業員一人ひとりが全力で活躍できる風通しの良い企業風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は2026年度から2028年度までの「中期経営計画2028」を策定し、「Go Beyond ~殻を打ち破れ~」をテーマに掲げています。最終年度となる2029年3月期には、以下の定量目標の達成を目指しています。

* 経常利益:750億円
* ROE:12.0%以上
* グローバル鉄鋼取扱重量:1,700万トン

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、国内で培ったキャッシュ創出力を基盤に、成長市場へ経営資源を重点配分する方針です。特に海外ではM&Aを通じた事業基盤の拡充を進め、各地域のニーズに即したインサイダー化を推進します。また、サプライチェーン創造力を起点とした「ユーザー課題解決型ビジネス」や「社会課題解決型ビジネス」を成長の中核に据えています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「企業の繁栄と社員の幸福は車の両輪である」との考えに基づき、人的資本の強化を進めています。「Professional」「Global」「Management」を人材育成の基本方向とし、グローバル人材やDX人材、次世代経営人材などの計画的な育成を図っています。企業内大学「HKBS」を通じた実践的な教育や海外トレーニー制度も充実させています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第79期 37.4歳 11.3年 9,976,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 77.3%
男女賃金差異(全従業員) 53.4%
男女賃金差異(正規) 53.2%
男女賃金差異(非正規) 52.9%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、自発的離職率(3.1%)、産休・育休明けの復職率(95.7%)、採用に占めるキャリア採用の割合(41.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マクロ経済環境や地政学リスク

同社は世界各国で商品を取り扱っているため、米国や中国、欧州などのマクロ経済の動向、並びに中東やウクライナ等の地政学リスクの影響を受けます。景気後退に伴う需要の縮小や、テロ、社会的混乱が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 商品市況と為替の変動

同社が扱う鉄鋼や非鉄金属、エネルギー製品等は市況商品であり、価格変動リスクを伴います。また、グローバルな輸出入取引を行うため為替の変動リスクも負っており、デリバティブ等でリスクヘッジに努めていますが、急激な相場変動は同社の財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 投資先や取引先の信用・事業リスク

同社は取引先に対して掛取引等の信用供与を行っており、経済状況の急変により不測の倒産が生じた場合、貸倒れによる損失が発生する可能性があります。また、成長に向けた事業投資においても、投資先の企業価値低下や所期の採算が確保できないリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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