阪和興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阪和興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、鉄鋼を中心に金属原料や食品、エネルギーなどを多角的に展開する独立系商社です。2025年3月期は、リサイクルメタルやエネルギー分野の取扱増加に加え、鉄鋼事業等の利益率改善もあり、売上高・経常利益ともに前期を上回る増収増益を達成しました。


※本記事は、阪和興業株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 阪和興業ってどんな会社?


鉄鋼製品を中心に、金属原料、食品、エネルギー等を扱う独立系商社であり、「流通のプロ」として国内外で事業を展開しています。

(1) 会社概要


1947年に大阪で設立され、1970年に東京証券取引所に上場しました。1968年には米国現地法人を設立するなど早期から海外展開を進め、現在は鉄鋼に加え、食品やエネルギー分野等へ事業を拡大しています。2024年には英国法人設立や工作機械メーカーのシンクスを子会社化するなど、グローバル展開と事業領域の拡張を続けています。

連結従業員数は5,688名、単体では1,745名が在籍しています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は取引先企業で構成される阪和興業取引先持株会、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっており、特定の親会社を持たない独立系の資本構成です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.65%
阪和興業取引先持株会 5.88%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 4.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は中川 洋一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中川 洋一 代表取締役社長 1986年同社入社。経理・関連事業担当理事、取締役専務執行役員などを経て2022年4月より現職。
山本 浩雅 代表取締役副社長執行役員 1983年同社入社。取締役専務執行役員アジア総代表などを経て2025年6月より現職。海外・リサイクルメタル・プライマリーメタル等を総轄。
畠中 康司 取締役副社長執行役員 1983年同社入社。薄板・スチールサービス事業などを担当し、取締役専務執行役員を経て2025年4月より現職。大阪本店長を務める。
篠山 陽一 取締役専務執行役員 1984年同社入社。東京薄板担当理事、取締役常務執行役員などを経て2021年4月より現職。東京鋼板部門や住宅資材部門等を統轄。
松原 圭司 取締役専務執行役員 1983年同社入社。中国華東地区総代表、取締役常務執行役員などを経て2025年4月より現職。東京厚板・機械部門等を統轄。
本田 恒 取締役常務執行役員 1991年同社入社。情報システム・営業会計・貿易業務担当理事などを経て2024年4月より現職。管理部門を統轄。
川西 英夫 取締役常勤監査等委員 1973年同社入社。取締役副社長執行役員、常勤監査役を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、堀龍兒(TMI総合法律事務所顧問)、中井加明三(元野村不動産ホールディングス社長)、古川玲子(元ユニアデックス常勤監査役)、佐藤千佳(元日本電気執行役員)、髙橋秀行(元みずほフィナンシャルグループ副社長)、櫻井直哉(元東芝代表執行役専務)、國賀久徳(元日本総合研究所副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄鋼事業」、「プライマリーメタル事業」、「リサイクルメタル事業」、「食品事業」、「エネルギー・生活資材事業」、「海外販売子会社」および「その他」事業を展開しています。

鉄鋼事業

条鋼、鋼板、特殊鋼、線材、鋼管などの各種鉄鋼製品を建設業や製造業などの顧客に販売しています。また、建設工事の請負や、コイルセンター等での加工・保管機能も提供しており、国内外に広がる流通ネットワークを活用しています。

収益は主に顧客への商品販売代金や加工賃、工事代金から得ています。運営は同社を中心に、阪和エコスチール、阪和スチールサービス、ダイサンなどの国内子会社や、海外の加工・販売拠点が担っています。

プライマリーメタル事業

ニッケル、クロム、シリコン、マンガンなどの合金鉄原料や、ステンレス母材、高機能材、鉄屑などの冷鉄源を取り扱っています。ステンレスメーカーや特殊鋼メーカーなどへ原料を供給する役割を担っています。

収益は国内外のメーカー等への素材・原料販売によって得ています。運営は同社のほか、日本南アフリカクロムなどの関係会社が行っています。

リサイクルメタル事業

アルミニウム、銅、亜鉛、チタン、ニッケル等のリサイクル原料および貴金属を取り扱っています。循環型社会の実現に向け、再生資源の集荷・供給を行っています。

収益はリサイクル原料等の販売から得ています。運営は同社および昭和メタル、日興金属などの子会社が行っています。

食品事業

エビ、サケ、カニ、サバなどの水産物や、鶏肉、豚肉などの畜産物を取り扱っています。世界各地から食材を調達し、国内の食品加工メーカーや量販店、外食産業などに供給しています。

収益は商品販売代金から得ています。運営は同社を中心に、ハンワフーズ、丸本本間水産、東日本フーズなどの子会社が担っています。アメリカのSEATTLE SHRIMP & SEAFOOD COMPANY, INC.なども事業を展開しています。

エネルギー・生活資材事業

石油製品(産業用燃料、潤滑油等)、工業薬品、化学品、バイオマス・リサイクル燃料(PKS、RPF等)を取り扱っています。産業用エネルギーや環境配慮型燃料の供給を行っています。

収益は商品の販売代金から得ています。運営は同社およびトーヨーエナジー、西部サービスなどの子会社が行っています。

海外販売子会社

海外の主要拠点において、同社と同様に鉄鋼、非鉄金属、食品、エネルギーなど多種多様な商品の売買を行っています。現地の需要に応じた商材の調達・販売や、三国間貿易を展開しています。

収益は各種商品の販売から得ています。運営はHANWA SINGAPORE (PRIVATE) LTD.、HANWA AMERICAN CORP.、HANWA THAILAND CO., LTD.などの海外現地法人が行っています。

その他

住宅資材(木材等)および機械(産業機械、遊戯施設等)を取り扱っています。住宅メーカー向けの資材供給や、各種機械設備の販売・設置を行っています。

収益は商品・設備の販売代金から得ています。運営は同社およびシンクス、阪和アルファビジネスなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2兆円台半ばで推移しています。2023年3月期に過去最高水準の利益を記録した後、翌期は減益となりましたが、2025年3月期は再び増収増益に転じました。利益率も2%台前半で安定的に推移しており、底堅い収益力を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 17,455億円 21,640億円 26,682億円 24,320億円 25,545億円
経常利益 288億円 627億円 643億円 483億円 597億円
利益率(%) 1.7% 2.9% 2.4% 2.0% 2.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 196億円 436億円 515億円 384億円 455億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しました。売上総利益率は5%台へと改善しています。販管費も増加しましたが、増収効果が上回り、営業利益は前期比で増益となりました。営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 24,320億円 25,545億円
売上総利益 1,198億円 1,406億円
売上総利益率(%) 4.9% 5.5%
営業利益 497億円 615億円
営業利益率(%) 2.0% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が266億円(構成比33.6%)、賞与引当金繰入額が53億円(同6.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


鉄鋼事業は数量減により減収となったものの、利益率改善により増益となりました。リサイクルメタル事業やエネルギー・生活資材事業、海外販売子会社は取扱数量の増加などにより増収増益を達成しました。一方、プライマリーメタル事業は市況下落等の影響で減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
鉄鋼事業 11,782億円 11,129億円 245億円 331億円 3.0%
プライマリーメタル事業 1,788億円 1,704億円 85億円 61億円 3.6%
リサイクルメタル事業 1,761億円 2,188億円 22億円 31億円 1.4%
食品事業 1,221億円 1,382億円 13億円 23億円 1.7%
エネルギ―・生活資材事業 3,386億円 3,838億円 66億円 104億円 2.7%
海外販売子会社 3,124億円 4,005億円 78億円 83億円 2.1%
その他 1,258億円 1,301億円 39億円 24億円 1.8%
調整額 - - -65億円 -60億円 -
連結(合計) 24,320億円 25,545億円 483億円 597億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で資金を稼ぎつつ(営業CFプラス)、将来に向けた投資を積極的に行い(投資CFマイナス)、資金調達も実施している(財務CFプラス)ことから、「積極型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 182億円 101億円
投資CF 10億円 -218億円
財務CF -263億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.9%で市場平均(プライム非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、『私たちは、時代と市場の変化に迅速に対応し、「流通のプロ」として顧客の多様なニーズに応え、広く社会に貢献します。』を経営理念として掲げています。この理念の下、顧客第一主義を貫き、付加価値の高い商品流通や提案型サービスを提供するユーザー系商社として、「存在感ある商社流通」を追求しています。

(2) 企業文化


同社は「社是(信用・誠実・創意・和協・奉仕)」の価値観を共有し、健全で透明度の高い組織づくりを目指しています。また、国籍や性別を問わず多様な社員が能力に応じて活躍できる環境を提供し、互いに切磋琢磨する場を醸成することを重視しています。業務品質の向上に向けた「HKQC(Hanwa Knowledge Quality Control)」活動なども推進しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の定量目標を掲げています。
* 経常利益:700億円
* ROE(株主資本利益率):12.0%以上
* DOE(株主資本配当率):2.5%下限
* Net DER(純負債資本倍率):1.0倍以下
* 連結鉄鋼取扱重量:1,700万t

(4) 成長戦略と重点施策


国内では加工機能を活かした高付加価値営業や「そこか(即納、小口、加工)」戦略の展開、物流網の有効活用を推進し、シェア拡大と収益性向上を図ります。海外では東南アジアを中心に地産地消型ビジネスを拡大し、戦略的パートナーとの連携強化や投資収益の獲得により、グローバルでの収益力を強化する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「Professional & Global (P&G)」という人材像を掲げ、専門性を磨き、自ら考え行動してビジネスを創造できる人材の育成を進めています。社内大学「Hanwa Business School (HKBS)」や海外研修制度を通じてスキル習得を支援するとともに、多様な人材が活躍できる健全で公平な職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.4歳 11.5年 9,255,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 55.2%
男女賃金差異(正規雇用) 54.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 56.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用に占める女性総合職の割合(29.5%)、採用に占めるキャリア採用の割合(37.1%)、離職率(6.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動に係るリスク


同社の事業は世界各国の経済状況の影響を受けます。日本、アジア、米州、欧州等を含む主要市場における景気後退や需要縮小が発生した場合、同社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 商品市況の変動に係るリスク


鉄鋼製品、金属原料、非鉄金属、食品、エネルギー製品等の市況商品を扱い、一部在庫を保有しています。価格変動リスクに対し管理を行っていますが、需給や地政学的な要因等による市況の急激な変動に適切に対応できなかった場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 為替レートの変動に係るリスク


グローバルに商品を輸出入しているため、為替変動の影響を受けます。円高は輸出に悪影響・輸入に好影響、円安はその逆の影響があります。為替予約等でヘッジを行っていますが、為替ポジションや外貨建資産・負債の状況によっては、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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