スターゼン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スターゼン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する食肉専門商社。食肉の処理加工からハム・ソーセージの製造販売、生産肥育までを一貫して行う食肉関連事業を主力とします。第86期の連結業績は、売上高が前期比で増収となり、経常利益は微減益でしたが、親会社株主に帰属する当期純利益は増益となりました。


※本記事は、スターゼン株式会社 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スターゼンってどんな会社?


食肉の処理加工、ハム・ソーセージの製造販売、生産・肥育を一貫して展開する食肉卸売の大手企業です。

(1) 会社概要


1948年に全国畜産として設立され、1961年に三井物産と資本業務提携を行いました。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1977年には同第一部へ指定替えとなりました。1999年に現商号であるスターゼンに変更し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

連結従業員数は2,783名、単体では1,282名です。筆頭株主は資本業務提携先の総合商社で、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
三井物産 15.96%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.50%
日本カストディ銀行(信託口) 3.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.6%です。代表取締役社長は横田和彦氏です。社外取締役比率は約30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
横田和彦 代表取締役社長 1986年入社。スターゼン広域販売社長、執行役員、常務取締役、専務取締役営業本部長を経て2021年4月より現職。
鶉橋正雄 常務取締役 2008年入社。スターゼンインターナショナル社長、取締役海外本部長などを経て2024年6月より現職。海外本部・マクドナルド事業本部・営業本部を管掌。
髙橋正道 常務取締役 1986年入社。スターゼンミートプロセッサー社長、取締役などを経て2024年4月より現職。製造本部・スターゼンミートプロセッサーを管掌。
佐奈常裕 取締役 1985年三菱銀行入行。同社企画管理本部長、執行役員管理本部長などを経て2024年6月より現職。財務経理本部・管理本部を管掌。
髙濵良一 取締役 1988年入社。スターゼン販売社長、上席執行役員経営本部長などを経て2024年6月より現職。経営本部・ICT本部・物流本部管掌経営本部長。


社外取締役は、大原亘(元三井住友銀行副社長)、吉里格(三井物産理事)、江藤真理子(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)、小越信吾(税理士法人小越会計代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食肉関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食肉関連事業


食肉の処理加工、ハム・ソーセージおよび食肉加工品の製造販売、豚・牛の生産・肥育等の食肉事業活動を行っています。主な顧客は量販店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、外食産業、食品メーカーなどです。

製品を顧客へ引き渡した時点で収益を認識します。運営は、同社が製造販売および仕入販売を行うほか、スターゼンミートプロセッサー、ローマイヤ、丸全などの子会社およびプライフーズなどの関連会社が行っています。

(2) その他の事業


食肉関連事業のサポートを主たる目的として、貨物運送事業や調味料製造などを行っています。

運送サービスや製品の提供対価として収益を受け取ります。運営は、同社のほか、スターゼンロジスティクス(貨物運送事業)、ゼンミ食品(調味料製造)などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は期間を通じて増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益率は2%台半ばで安定的に推移しています。当期は売上高が伸長し、当期純利益も前期から大きく増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,492億円 3,814億円 4,252億円 4,105億円 4,361億円
経常利益 86億円 92億円 103億円 108億円 107億円
利益率(%) 2.5% 2.4% 2.4% 2.6% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 69億円 60億円 75億円 75億円 122億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、それに伴い売上総利益も増加しました。売上総利益率は前期とほぼ同水準を維持しています。営業利益も微増となり、安定した収益性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,105億円 4,361億円
売上総利益 409億円 419億円
売上総利益率(%) 10.0% 9.6%
営業利益 90億円 90億円
営業利益率(%) 2.2% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が81億円(構成比24.8%)、運賃が79億円(同24.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の食肉関連事業は、国内での鶏肉需要の高まりや和牛輸出の好調、輸入食肉の販売増などにより増収となりました。その他の事業は前期並みの売上高で推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
食肉関連事業 4,072億円 4,328億円
その他の事業 33億円 33億円
連結(合計) 4,105億円 4,361億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

スターゼンは、棚卸資産や売上債権の増加により、営業活動で資金が流出しました。一方で、固定資産の売却収入や長期借入により、投資活動および財務活動では資金が増加しました。これらの結果、当期末の現金及び現金同等物は前期末より減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 128億円 -23億円
投資CF -48億円 6億円
財務CF -21億円 8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは、「食の感動体験を創造することで世界中の人々と食をつなぎ続ける」ことを経営理念として掲げています。また、「スターゼンと取引をしてよかったといわれる会社にしよう」「スターゼンで働いてよかったと思える会社にしよう」「仕事を通じて自ら成長しよう」という指針のもと、食肉関連製品の安定供給と豊かな食生活の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同グループは「基本動作の徹底とチームコラボレーションの促進」をテーマとし、従業員一人ひとりが自らの業務と経営理念を結び付けて行動に移すことを重視しています。また、人への投資を成長エンジンと位置づけ、自ら考え、自ら動く自律自走型の企業文化の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2023年度から3カ年の中期経営計画を実行しており、「収益構造の再構築とサステナブルな事業運営」をテーマとしています。最終年度(2026年3月期)の計画数値は以下の通りです。

* 売上高:4,400億円
* 経常利益:100億円
* EBITDA:120億円
* ROIC:5.5%以上
* ROE:8%以上
* 自己資本比率:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の達成に向け、新規事業への挑戦、国内事業改革、サステナビリティ経営と経営基盤強化の3つを基本戦略としています。

* 新規事業への挑戦:海外事業の積極展開(スターゼン営業モデルの展開、食肉調達力強化)、国内成長市場へのアプローチ強化(DtoCチャネル強化など)。
* 国内事業改革:国内事業の効率化(製造・販売・物流拠点の再整備)、高付加価値商品の取り組み。
* サステナビリティ経営と経営基盤強化:社会課題への対応(GHG削減、代替肉など)、DX・業務プロセス改革(基幹システム刷新など)。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同グループは、「人材の最適ポートフォリオ構築」をテーマに、リスキリングや戦略的な要員計画、成長事業への人材投資(社内公募制、異動の活性化)、既存事業効率化(DX推進)に取り組んでいます。多様な人材が活躍できる環境整備や、自律した社員を育成するための階層別・選抜研修などの教育制度の充実に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 12.3年 6,737,287円


※平均年間給与(税込)は基準外賃金及び賞与が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.5%
男性育児休業取得率 92.3%
男女賃金差異(全労働者) 64.7%
男女賃金差異(正規) 74.1%
男女賃金差異(非正規) 59.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全について


食品の安全性確保は最重要課題ですが、社会全般にわたる品質問題や製品の欠陥が生じるリスクがあります。これらが顕在化した場合、大規模な製品回収や損害賠償、社会的信用の失墜により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社グループは『SQF』取得などを通じ、品質管理・保証体制の強化に努めています。

(2) 食肉需給の変動について


主要取扱商品である食肉について、異常気象や家畜疾病による調達量減少、国内外の需給変化による相場変動のリスクがあります。これらは売上総利益の減少要因となり得ます。同社グループは調達先の分散化や適正な在庫管理、高付加価値商品の開発などでリスク低減を図っています。

(3) 伝染病や感染症等の流行拡大について


伝染病や感染症の蔓延により、消費マインドの低下や外食需要の低迷、輸入商材の価格変動などが生じるリスクがあります。また、従業員の感染による一部操業停止のリスクもあります。これらは販売不振やコスト高騰を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 海外進出について


北米、欧州、オセアニア、アジアなどで事業を展開しており、商慣習の相違、法規制の変更、為替変動、地政学的リスクなどに直面する可能性があります。これらが顕在化した場合、事業活動の制限や業績悪化を招く恐れがあります。情報収集とリスク分析に基づいた慎重な意思決定を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。