※本記事は、スターゼンの有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スターゼンってどんな会社?
食肉の処理加工や製造販売、生産・肥育などの食肉関連事業を国内からグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1948年に全国畜産として設立され、翌年から食肉の取り扱いを開始しました。1961年には三井物産と資本・事業提携を結び、1977年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。1999年にスターゼンへ商号を変更し、近年ではオーストラリアの肥育企業やシンガポールの食肉会社などを相次いで子会社化しています。
現在の従業員数は、連結で2,807名、単体で1,298名規模となっています。筆頭株主は資本・業務提携先である三井物産で、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井物産 | 16.32% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(その他信託口) | 5.67% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(投資信託口) | 3.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.6%です。代表取締役社長は横田和彦氏が務めており、社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横田和彦 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。量販事業部長、スターゼン広域販売代表取締役社長、同社常務取締役などを経て、2021年4月より現職。 |
| 鶉橋正雄 | 常務取締役 | 2008年同社入社。スターゼンインターナショナル代表取締役社長、同社海外本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 髙橋正道 | 常務取締役 | 1986年同社入社。スターゼンミートプロセッサー代表取締役社長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 佐奈常裕 | 取締役 | 1985年三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行の支店長や同社企画管理本部長、管理本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 髙濵良一 | 取締役 | 1988年同社入社。スターゼン広域販売代表取締役社長、同社上席執行役員などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、大原亘(元帝国倉庫代表取締役会長)、吉里格(元三井物産食料本部長補佐)、江藤真理子(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)、小越信吾(税理士法人小越会計代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食肉関連事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 食肉関連事業
豚や牛の生産・肥育から、食肉の処理加工、ハムやソーセージなどの食肉加工品の製造、さらには食肉の販売までを一貫して手がけています。世界中の生産者や職人の技術を価値として形にし、国内外の多様な顧客へ高品質な製品を提供しています。
収益源は、製造・処理した食肉や加工品の顧客への販売代金です。同社が販売を担うほか、生産・肥育は雲仙有明ファームなどのグループ会社、処理加工や販売はスターゼンミートプロセッサーやローマイヤ、丸全などの子会社および関連会社と共同で運営を行っています。
■(2) その他の事業
食肉関連事業のサポートを目的とした周辺事業を展開しています。主に食肉製品の保管や配送などを担う貨物運送事業のほか、食肉加工に付随する調味料の製造や製麺業などを行っています。
収益源は、グループ内外へ向けた運送サービスの提供による運賃収入や、調味料などの製品販売代金です。貨物運送事業は主にスターゼンロジスティクスが担い、調味料製造は関連会社のゼンミ食品が運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を振り返ると、売上高は緩やかながら右肩上がりの拡大傾向が続いています。経常利益も売上高の拡大に伴って安定的に推移しており、底堅い収益基盤を維持しながら成長を続けていることがうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,814億円 | 4,252億円 | 4,105億円 | 4,361億円 | 4,482億円 |
| 経常利益 | 92億円 | 103億円 | 108億円 | 107億円 | 110億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 2.4% | 2.6% | 2.4% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 60億円 | 75億円 | 75億円 | 122億円 | 83億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加したものの、営業利益はわずかに減少する結果となりました。売上総利益率は改善傾向にある一方で、営業利益率は横ばいないし微減の推移となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,361億円 | 4,482億円 |
| 売上総利益 | 419億円 | 442億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.6% | 9.9% |
| 営業利益 | 90億円 | 88億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が85億円(構成比23.9%)、運賃が82億円(同23.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である食肉関連事業は、国産豚肉や輸出事業が好調に推移したことに加え、輸入食肉の適正価格での販売が進んだことで増収を牽引しました。一方、その他の事業は前期とほぼ同水準で堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 食肉関連事業 | 4,328億円 | 4,449億円 |
| その他の事業 | 33億円 | 33億円 |
| 連結(合計) | 4,361億円 | 4,482億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -23億円 | 29億円 |
| 投資CF | 6億円 | -147億円 |
| 財務CF | 8億円 | 134億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「食の感動体験を創造することで世界中の人々と食をつなぎ続ける」を経営理念として掲げています。また、「スターゼンと取引をしてよかったといわれる会社にしよう」「スターゼンで働いてよかったと思える会社にしよう」「仕事を通じて自ら成長しよう」といった理念の下、豊かな食生活の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「信頼と感謝の気持ちでつなぐバトン」というテーマのもと、グループ社員が一丸となって多様な挑戦を促す文化を重視しています。また、人々の生活に欠かせない食を扱う企業として、事業活動を通じた温室効果ガスの削減やアニマルウェルフェアの促進など、環境や社会の課題解決に向けたサステナブルな視点を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョンである「世界中のお客様のニーズに応えるサプライチェーンの実現」に向け、「中期経営計画2030」を策定しています。強みのさらなる進化とグローバル市場への挑戦をテーマに掲げ、以下の目標を達成することを目指しています。
* 売上高:5,500億円
* 経常利益:160億円
* ROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
市場シェア拡大へのアプローチとして、独自の和牛ブランドを中心に海外市場への展開を加速させています。また、事業基盤の強靭化に向けて新たな基幹物流拠点を稼働させ、自前での基幹システムの刷新などDX推進による業務効率化を図っています。さらに、多様な人材の採用や育成による組織力の強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な挑戦を促す人材ポートフォリオの構築」をテーマに掲げ、ダイバーシティ採用やタレントマネジメントを深化させています。従業員の自律的な挑戦を支援する社内公募制度やコース別人事制度を導入し、多様な人材がライフステージに合わせて長く活躍できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.0歳 | 12.2年 | 6,876,895円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 62.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健康診断の受診率(100%)、特定保健指導の受診率(76.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食の安全に関するリスク
同社グループは生活に不可欠な食品を取り扱っており、万全の品質管理体制を敷いています。しかし、予期せぬ製品の欠陥や社会全般の品質問題等が発生した場合、大規模な製品回収や製造物責任賠償が生じ、同社の社会的信用の失墜や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食肉需給の変動に伴うリスク
異常気象による家畜の生育遅れや家畜疾病の発生により、主要取扱商品である食肉の調達量が減少するリスクがあります。また、国内外の需給変化によって食肉相場が大幅に変動した場合、調達価格の上昇や販売価格の低下を招き、売上総利益が減少する可能性があります。
■(3) 伝染病や感染症の流行によるリスク
家畜の伝染病や新たな感染症が流行し長期化した場合、消費者の低価格志向の高まりや外食需要の低迷、輸入商材の価格変動などが生じる可能性があります。また、従業員に感染が確認されて一部操業停止を余儀なくされた場合、商品供給の停滞による販売機会の喪失を招くおそれがあります。



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