東邦ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、医薬品卸売や調剤薬局の運営などを主要事業として展開しています。直近の業績では、抗がん剤やスペシャリティ医薬品などの売上伸長により増収となった一方、仕入原価の上昇等の影響を受け経常利益は減益となる増収減益のトレンドとなっています。


※本記事は、東邦ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東邦ホールディングスってどんな会社?


主要事業は医薬品卸売事業および調剤薬局事業であり、医薬品の安定供給と地域医療に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1948年に東邦薬品として設立され、医薬品販売業者として卸売事業を開始しました。2002年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2004年には市場第一部へ指定されました。その後、積極的な事業拡大を進め、2009年に純粋持株会社制へ移行し、現在の東邦ホールディングスへ社名を変更しました。

現在の同社グループは、連結従業員数7,675名、単体199名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は外資系金融機関であるSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505018で、第2位も資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は事業会社の塩野義製薬となっています。

氏名 持株比率
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505018 14.91%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.33%
塩野義製薬 5.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは枝廣弘巳氏が務めており、社外取締役比率は55.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
枝廣弘巳 代表取締役社長執行役員 CEO 元常盤薬品代表取締役社長。東邦薬品代表取締役会長などを歴任し、2025年6月より現職。
馬田明 取締役専務執行役員 COO 東邦薬品(現 同社)入社後、営業統轄本部医薬営業本部長などを経て、2025年6月より現職。
松谷竹生 取締役常務執行役員 CGO 九州東邦代表取締役社長などを歴任。現在は東邦薬品取締役副社長などを兼任し、2025年6月より現職。
河野修蔵 取締役執行役員 トランスフォーメーション推進担当 セイエル代表取締役社長や東邦薬品取締役などを歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、芳賀真名子氏(元フィデリティ投信取締役)、加茂谷佳明氏(元塩野義製薬上席執行役員)、小谷秀仁氏(元パナソニックヘルスケアホールディングス代表取締役社長CEO)、後藤千惠氏(さくら共同法律事務所パートナー)、齋藤美帆氏(元国連年金基金)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品卸売事業」「調剤薬局事業」「医薬品製造販売事業」および「その他周辺事業」を展開しています。

医薬品卸売事業

製薬会社等から医薬品や医療関連商品、検査薬などを仕入れ、病院、診療所、調剤薬局等に対して安定的に供給を行っています。特に抗がん剤やスペシャリティ医薬品などの高付加価値商品の販売に注力しています。
収益源は、医療機関や調剤薬局等への医薬品の販売代金です。当事業の運営は、主に東邦薬品、九州東邦、セイエル、幸燿などが地域ごとに担っています。

調剤薬局事業

患者に対して医療用医薬品を処方するとともに、服薬指導等の在宅医療支援業務を含めた保険調剤薬局の経営を全国規模で展開しています。
収益源は、健康保険法に定められた調剤報酬点数に基づく調剤料および薬学管理料などの調剤報酬です。当事業の運営は、ファーマダイワ、J.みらいメディカル、ファーマみらい、ストレチアなどが担っています。

医薬品製造販売事業

高品質で高付加価値なジェネリック医薬品を中心とする医療用医薬品の製造および販売と、注射用医薬品の受託製造を行っています。
収益源は、東邦薬品などのグループ会社をはじめとする顧客への医薬品の販売代金です。当事業の運営は、共創未来ファーマなどが担っています。

その他周辺事業

医薬品流通および医療機関の業務効率化を支援する顧客支援システムや情報処理機器の企画・販売、医療関連のインターネット事業等を提供しています。
収益源は、顧客からのシステムの初期導入費用や保守サービス料などです。当事業の運営は、東京臨床薬理研究所、アルフ、ネグジット総研、e健康ショップなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が堅調に拡大を続ける一方で、利益面は薬価改定や仕入原価上昇の影響を受け増減を繰り返す傾向にあります。当期は増収となったものの、各段階利益において前年を下回る結果となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 12,662億円 13,921億円 14,767億円 15,185億円 15,534億円
経常利益 182億円 192億円 218億円 207億円 166億円
利益率(%) 1.4% 1.4% 1.5% 1.4% 1.1%
当期純利益 40億円 97億円 131億円 139億円 145億円

(2) 損益計算書


直近2期を比較すると、売上高は増加していますが、仕入原価の上昇などにより売上総利益率はわずかに低下しました。また、販売費及び一般管理費が増加したことで営業利益率も低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 15,185億円 15,534億円
売上総利益 1,216億円 1,224億円
売上総利益率(%) 8.0% 7.9%
営業利益 189億円 166億円
営業利益率(%) 1.2% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が456億円(構成比43.1%)、福利厚生費が83億円(同7.9%)、賃借料が82億円(同7.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である医薬品卸売事業は、スペシャリティ医薬品の伸長等により増収となりましたが、原価上昇等の影響で減益となりました。一方、調剤薬局事業は事業再編を進めた効果もあり増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
医薬品卸売事業 14,153億円 14,447億円 190億円 168億円 1.2%
調剤薬局事業 955億円 1,005億円 9億円 14億円 1.4%
医薬品製造販売事業 26億円 27億円 7億円 3億円 10.6%
その他周辺事業 51億円 55億円 7億円 8億円 15.2%
連結(合計) 15,185億円 15,534億円 189億円 166億円 1.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローがいずれもプラスであり、その資金を借入金の返済などに充てる「改善型」のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -267億円 192億円
投資CF -42億円 8億円
財務CF -204億円 -163億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「全ては健康を願う人々のために」をグループスローガンとして掲げています。また、「社会・顧客と共生し、独創的なサービスの提供を通じて新しい価値を共創し、世界の人々の医療と健康に貢献します」という経営理念のもと、顧客満足度を高めて中長期的な企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化

性別や国籍等を問わない幅広い人材登用や、心理的安全性を軸とした企業風土の改革を実践しています。一人ひとりが主体的に挑戦し、「自律型の社員がリードする価値創造組織」へと進化し続けることを重視し、失敗を恐れずに新しい価値を生み出す組織文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標

2028年度を最終年度とする「中期経営計画2026-2028 次代を翔ける」を策定しています。これまでの期間で築き上げた基盤を土台とし、成長を目指したさらなる投資による「収益化フェーズ」として、営業利益の非連続な飛躍の実現にフォーカスした戦略と施策を実行していく目標を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策

コア事業である医薬品卸売事業の収益力強化とともに、積極的なアライアンスの実行による新規事業の早期拡大を推進しています。既存の枠組みにとらわれず、ヘルスケアビジネスに関わるあらゆるステークホルダーに新たな価値を創造し提供する「ヘルスケア・トータルソリューション・プロバイダー」への転換を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

社員は会社の財産であるとの考えのもと、「人的資本の価値最大化」を経営の最優先事項に位置づけています。自ら考え行動する「自律型人財への転換」を促す教育システムの導入や、心理的安全性の醸成、多様性を尊重するDE&Iの推進などにより、活き活きと働き新たな価値を創造し続ける組織を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.3歳 18.9年 6,786,796円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 65.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 68.6%


また、同社は「人的資本に関する取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(53.4%)、エンゲージメントスコア(eNPS)(-80)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 薬価基準改定および医療保険制度改革の影響

同社の主要取扱商品である医療用医薬品は薬価基準に収載されており、販売価格の上限として機能しています。毎年の薬価基準改定や医療保険制度の改正により、医療機関への納入価格やメーカーからの仕入価格等に変動が生じた場合、同社グループの売上や利益に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制等への対応と影響

医薬品・医療機器等を扱う同社の事業は、品質や安全性確保のため関連法規により厳格な許可や免許が義務付けられています。これらの規則を逸脱し監督官庁からの指導・処分を受けた場合や、調剤薬局運営において法令改正が行われた場合、同社グループの業績および社会的信用に影響を与える可能性があります。

(3) 医薬品卸売業界特有の商慣習

医薬品卸売業界では、生命関連商品として納入の停滞が許されないため、価格未決定のまま医療機関に納入し、事後に価格交渉を行う商慣習が存在します。この価格交渉が難航し長期間を要した場合や、当初の予想と異なる価格で決定した場合、合理的に見積もった売上計上額に乖離が生じ、業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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