※本記事は、東邦ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東邦ホールディングスってどんな会社?
医薬品卸売の大手企業グループとして、医薬品流通や調剤薬局運営を通じ、医療と健康に貢献しています。
■(1) 会社概要
1948年に医薬品販売業者として東邦薬品を設立し、1980年に株式を公開しました。2004年に東京証券取引所市場第一部に指定され、2009年には純粋持株会社制へ移行し、現在の商号となりました。2015年には事業持株会社制へ移行し、グループ経営の強化を図っています。
同グループの連結従業員数は7,609名、単体では193名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には主要な取引先である製薬会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505018 | 15.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.68% |
| 塩野義製薬 | 5.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表者は代表取締役CEO 兼 CFOの枝廣弘巳氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 枝廣 弘 巳 | 代表取締役CEO 兼 CFO | 東京海上火災保険(現 東京海上日動火災保険)入社。常盤薬品代表取締役社長、東邦薬品代表取締役社長、同社代表取締役会長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 馬田 明 | 専務取締役COO | 東邦薬品(現 東邦ホールディングス)入社。営業統轄本部長などを経て、2019年6月より東邦薬品代表取締役社長(現任)。2022年6月より現職。 |
| 松谷 竹生 | 取締役 | 東邦薬品(現 東邦ホールディングス)入社。同社専務取締役、九州東邦代表取締役社長などを歴任。2017年6月より東邦薬品取締役副社長(現任)。2023年6月より九州東邦取締役会長(現任)。 |
| 多田 眞 美 | 取締役薬事統括部長 | 東邦薬品(現 東邦ホールディングス)入社。グループ・リスクマネジメント室長などを経て、2020年6月より取締役薬事統括部長。2025年6月より東邦薬品取締役薬事情報部長兼品質保証部長(現任)。 |
| 村川 健太郎 | 取締役医薬品製造販売事業管掌 | 第一製薬(現 第一三共)入社。第一三共執行役員医薬営業本部営業企画部長、第一三共エスファ代表取締役社長などを歴任。2022年6月より現職。 |
社外取締役は、加茂谷佳明(元塩野義製薬常務執行役員)、小谷秀仁(元パナソニックヘルスケアホールディングス社長)、後藤千惠(さくら共同法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品卸売事業」「調剤薬局事業」「医薬品製造販売事業」および「その他周辺事業」を展開しています。
■(1) 医薬品卸売事業
製薬会社等から医薬品、麻薬、検査薬、医療機器等を仕入れ、病院、診療所、調剤薬局等へ販売しています。
収益は、医療機関等への商品販売代金です。運営は主に東邦薬品、九州東邦、セイエル、幸燿などの連結子会社が行っています。
■(2) 調剤薬局事業
主に保険調剤薬局の経営、在宅医療支援業務、一般医薬品の販売などを行っています。
収益は、患者からの調剤報酬や医薬品販売代金です。運営は主にファーマダイワ、ファーマみらい、セイコーメディカルブレーンなどの連結子会社が行っています。
■(3) 医薬品製造販売事業
ジェネリック医薬品の製造・販売および注射用医薬品の受託製造を行っています。
収益は、医薬品の販売代金や受託製造料です。運営は主に共創未来ファーマが行っており、製品は主に連結子会社の東邦薬品へ供給されています。
■(4) その他周辺事業
顧客支援システム、情報処理機器等の販売、医療機関のホームページ制作、治験施設支援などを行っています。
収益は、システム販売代金やサービス利用料です。運営は東京臨床薬理研究所、アルフ、ネグジット総研、e健康ショップなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、1兆5000億円規模に達しています。利益面では、経常利益は200億円前後で推移しており、売上高利益率は1%台半ばを維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12,103億円 | 12,662億円 | 13,921億円 | 14,767億円 | 15,185億円 |
| 経常利益 | 103億円 | 182億円 | 192億円 | 218億円 | 207億円 |
| 利益率(%) | 0.9% | 1.4% | 1.4% | 1.5% | 1.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 102億円 | 40億円 | 97億円 | 131億円 | 139億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上総利益も増加しましたが、販管費の増加などにより営業利益は微減となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 14,767億円 | 15,185億円 |
| 売上総利益 | 1,191億円 | 1,216億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.1% | 8.0% |
| 営業利益 | 193億円 | 189億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が445億円(構成比43%)、その他経費が223億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
医薬品卸売事業が売上の大半を占めており、増収となりました。調剤薬局事業や医薬品製造販売事業、その他周辺事業も増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 医薬品卸売事業 | 13,758億円 | 14,153億円 |
| 調剤薬局事業 | 938億円 | 955億円 |
| 医薬品製造販売事業 | 24億円 | 26億円 |
| その他周辺事業 | 47億円 | 51億円 |
| 連結(合計) | 14,767億円 | 15,185億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東邦ホールディングスグループは、営業活動による資金の減少、投資活動による資金の減少、そして財務活動による資金の減少という状況でした。営業活動では、税金等調整前当期純利益や減価償却費が資金増加要因となったものの、仕入債務の減少や棚卸資産の増加、法人税等の支払いが主な資金減少要因となりました。投資活動では、有形固定資産や投資有価証券の売却収入があったものの、定期預金や長期性預金の預入、有形固定資産の取得が資金減少の要因となりました。財務活動では、短期借入金の減少、自己株式の取得、配当金の支払いが資金減少の主な要因でした。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 599億円 | -267億円 |
| 投資CF | 91億円 | -42億円 |
| 財務CF | -222億円 | -204億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「全ては健康を願う人々のために」をコーポレートスローガンとして掲げ、「わたしたちは社会・顧客と共生し、独創的なサービスの提供を通じて新しい価値を共創し、世界の人々の医療と健康に貢献します。」という経営理念のもと、顧客価値の創造に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
社員は会社の財産、すなわち「人財」であるとの考えのもと、人財によって成長してきた歴史と、社員の自由な発想を尊重してきた企業文化を大切に継承しています。性別・国籍・年齢・価値観等を問わない幅広い人財活用を行い、自由闊達な企業風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
2023年5月に中期経営計画2023-2025「次代を創る」を策定しました。さらに、2024年11月にはその実効性を高めるための実行計画を定め、2029年3月期に向けた数値目標を設定しています。
* 連結営業利益率:1.5%以上(2029年3月期)
* ROE:8%以上(2029年3月期)
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画および実行計画に基づき、「事業変革」「成長投資・収益性向上」「サステナビリティ経営」「資本効率の改善と株主還元の向上」を基本方針として掲げています。具体的には、医薬品卸売事業における二次医療圏を軸としたチーム制への移行、スペシャリティ製品の取り扱い拡大、物流の高度化、DX推進などに取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財」こそが会社の財産であるとの考えに基づき、性別・国籍・年齢・価値観等を問わない幅広い人財活用と、各種研修やプロジェクトへの参画を通じた育成を行っています。社員一人ひとりの声に耳を傾け、人権・人格を尊重することで、自由闊達な風土を醸成し、人的資本価値の最大化を図る方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.3歳 | 18.3年 | 6,167,346円 |
※平均年間給与(税込額)は基準外賃金及び賞与が含まれております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.0% |
※育児休業取得の対象者はおりません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、温室効果ガス排出量(Scope1・2)(22,562 t-CO2e(44.8%削減))などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制等について
医薬品医療機器等法や独占禁止法等の規制を遵守する必要があります。過去に連結子会社が独占禁止法違反で排除措置命令等を受けた経緯があり、法令違反や許認可の状況によっては、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 薬価基準改定および医療保険制度改革の影響
主要取扱商品である医療用医薬品は薬価基準の対象であり、定期的な薬価改定や医療制度改革が行われます。これらの内容によっては、売上や利益、割戻金等に影響を及ぼし、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特有の商慣習について
医療用医薬品卸売業界には、価格未決定のまま納入し事後に価格交渉を行う商慣習があります。価格交渉の長期化や予想と異なる価格決定となった場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 調剤薬局事業のリスク
調剤過誤による損害賠償や信用の低下、薬剤師の不足、薬価改定や調剤報酬改定等の影響を受ける可能性があります。これらは業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。



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