ナラサキ産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナラサキ産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナラサキ産業は東証スタンダードおよび札証に上場し、電機、機械、建材・燃料の販売や海運関連事業を展開する専門商社です。直近の業績は、売上高1,125億円、経常利益31億円で増収増益を達成しました。半導体関連や建材需要を取り込み、中期経営計画に基づき収益力強化と財務基盤の安定化を推進しています。


※本記事は、ナラサキ産業株式会社 の有価証券報告書(第82期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ナラサキ産業ってどんな会社?


三菱電機等の特約店として電機・建材・燃料などを扱うほか、海運事業も展開する創業120年超の複合商社です。

(1) 会社概要


1902年に室蘭港にて創業した楢崎商店を起源とし、1943年に楢崎産業海運として設立されました。1947年に三菱電機やセメントメーカーの特約店となり商社機能を強化、1963年には東証二部および札証へ上場しました。その後、2002年に現社名のナラサキ産業へ商号変更し、電機・機械・建材・海運を柱とする事業体制を確立しました。

連結従業員数は749名、単体従業員数は423名です。筆頭株主は仕入先でもある電機メーカーの三菱電機で、第2位は通信サービスや投資事業を行う光通信です。

氏名 持株比率
三菱電機 8.22%
光通信 7.46%
UH Partners 2 7.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長兼社長執行役員は中村克久氏、社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
中村 克久 代表取締役社長兼社長執行役員 1980年同社入社。FA部長、営業企画部長、北海道支社長等を経て2012年代表取締役社長に就任。2016年より現職。
吉田 耕二 代表取締役会長 1979年三菱信託銀行入社。同社常務執行役員を経て2012年同社代表取締役副社長。2015年より現職。
米谷 寿明 取締役兼専務執行役員 1981年北海道拓殖銀行入行。1998年同社入社。経営企画部長、CSR室長等を歴任し2024年より現職。
川上 公司 取締役兼常務執行役員 1989年同社入社。東北支店長、北海道電機部長等を経て2022年電機本部長に就任。2023年より現職。
片貝 光延 取締役兼常務執行役員 1986年同社入社。FA部長、海外事業推進部長等を経て2016年機械本部長に就任。2019年より現職。
鈴木  修 取締役兼常務執行役員 1988年同社入社。建材部長、建設・エネルギー本部長等を経て2025年より現職。
毎原 吉紀 取締役(常勤監査等委員) 1981年同社入社。経理部長、経営企画部長等を歴任し常務執行役員を経て2025年より現職。


社外取締役は、山本昌平(丸の内中央法律事務所パートナー弁護士)、吉野高(吉野高法律事務所代表)、湯尻淳也(弁護士法人小野総合法律事務所パートナー弁護士)、大瀧敦子(石本哲敏法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電機関連事業」「機械関連事業」「建設・エネルギー関連事業」「海運関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電機関連事業


配電制御機器、空調・冷凍・冷蔵設備、レーザ加工機、セラミックス等の販売を行っています。また、海外市場においてはFA(ファクトリーオートメーション)システム等の販売も手掛けています。

収益は、これらの機器やシステムの販売代金により構成されています。運営は主に同社が行い、中国市場においては悠禧貿易(上海)等が担当しています。

(2) 機械関連事業


農業施設、産業機械、環境設備ならびに関連する情報システム等の販売を行っています。

収益は、農業・産業用機械や設備の販売代金により構成されています。運営は同社が行っています。

(3) 建設・エネルギー関連事業


セメント、生コンクリート、建築資材、石油製品、道路切削舗装機械、コンクリートポンプ車等の販売を行っています。また、船舶用燃料の給油業務も手掛けています。

収益は、各種資材や燃料、機械の販売代金により構成されています。運営は同社のほか、石油製品等の販売についてはナラサキ石油などが担っています。

(4) 海運関連事業


海陸一貫輸送業務を中心に、港湾運送、道路運送、倉庫業、通関業等の事業を行っています。

収益は、運送、荷役、倉庫保管、通関手続き等の役務提供に対する対価により構成されています。運営は主にナラサキスタックスが行い、一部業務を九州マリンなどが提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加しており、1,000億円の大台を突破後も順調に伸長しています。利益面でも経常利益は増加傾向にありますが、当期純利益は直近で特別損失等の影響もあり減少しました。全体として増収基調を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 872億円 948億円 999億円 1,075億円 1,125億円
経常利益 19億円 24億円 29億円 31億円 31億円
利益率(%) 2.2% 2.5% 2.9% 2.9% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 12億円 18億円 21億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、利益率も若干改善しています。営業利益も微増しており、販管費の増加を吸収して安定した収益性を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,075億円 1,125億円
売上総利益 113億円 120億円
売上総利益率(%) 10.5% 10.7%
営業利益 30億円 31億円
営業利益率(%) 2.8% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が33億円(構成比37%)、従業員賞与が10億円(同11%)を占めています。売上原価は1,005億円で、売上高に対する構成比は89.3%です。

(3) セグメント収益


電機関連事業は半導体関連需要やレーザ加工機販売が好調で増収増益となりました。建設・エネルギー関連事業も建材出荷が順調で増収増益です。一方、機械関連事業は大型案件の減少により減収減益となりました。海運関連事業は貨物取扱が好調で増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電機関連事業 259億円 293億円 14億円 16億円 5.4%
機械関連事業 123億円 92億円 7億円 3億円 2.9%
建設・エネルギー関連事業 537億円 579億円 8億円 9億円 1.6%
海運関連事業 155億円 161億円 2億円 3億円 2.0%
連結(合計) 1,075億円 1,125億円 30億円 31億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ナラサキ産業は、安定的な営業キャッシュ・フローの創出と有効活用、健全な財務基盤の維持を中期経営計画の財務戦略として掲げています。

建設・エネルギー関連事業と海運関連事業の堅調な売上増加が、営業活動によるキャッシュ・フローに貢献しました。一方で、設備投資や長期前払費用の支出により、投資活動によるキャッシュ・フローは大きく減少しました。また、配当金の支払い等により、財務活動によるキャッシュ・フローも支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 1億円
投資CF 1億円 -21億円
財務CF -10億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「誠意をもって顧客の信頼を得る仕事をする」を経営理念としています。各事業分野で蓄積された専門知識と企画力を基に、顧客のニーズに合った付加価値の高い商品とサービスを提供することで、顧客の満足と信頼を通じて豊かな社会づくりに貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化


「チームナラサキ」としての総合力発揮を重視し、コンプライアンスの徹底を経営の最重要課題と位置付けています。社員の人格・個性・多様性を尊重し、安全で働きやすい職場環境を確保するとともに、全てのステークホルダーや社会から信頼される企業グループを築き上げることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする中期経営計画「NSクリエーション2026」を推進しており、最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:1,200億円
* 営業利益:40億円
* 経常利益:40億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:28億円
* 自己資本比率:40.0%
* ROE:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


グループ総合力によるソリューション提供、収益力の強化と生産性向上、DX・GX分野への取組み強化を重点施策としています。各セグメント間の連携強化によるシナジー発揮や事業ポートフォリオの最適化を進めるとともに、人的資本への投資やサステナビリティ経営を推進し、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を競争力強化や価値創造の最重要ファクターと捉え、多様な人材の確保・育成とエンゲージメント向上に注力しています。年齢バランスや技術承継を考慮した安定採用を行うとともに、スキルアップや次代のリーダー養成のための研修・教育体制を充実させ、社員が豊かで充実した生活を実現できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 16.0年 7,365,780円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.6%
男女賃金差異(正規) 64.4%
男女賃金差異(非正規) 51.3%


※女性管理職比率については、同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職比率(7.8%)、キャリア総合職比率(45.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向による需要変動


事業領域が広範囲にわたるため、国内外の経済環境悪化、製造業の設備投資減退、生産減少、または公共事業減少や建設市場の急激な縮小が生じた場合、同社グループの商品・サービスへの需要が減少し、業績や財務内容に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原油・原材料価格の変動


多くの生産財を取り扱っているため、原油価格や原材料価格の高騰は仕入価格や運送原価の上昇につながります。競争激化等によりこれらのコスト増を販売価格や運送収入に転嫁できない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保・育成


人材を競争力強化の重要要素と位置付けていますが、優秀な人材の獲得が困難になったり、高度な専門技術・知識を持つ人材が流出した場合、技術やノウハウの継承が困難になります。また、働き方改革の遅れ等はモチベーション低下を招き、事業遂行に支障を来す可能性があります。

(4) コンプライアンス・リスク


各種法規制の適用を受けており、内部統制や法令遵守の徹底を図っていますが、万一、法規制への違反が発生した場合は社会的評価の低下を招き、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、新たな規制導入や法令変更への対応コストが発生する可能性もあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。