メディパルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メディパルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

* 上場市場:東京証券取引所 プライム市場 * 主要事業:医療用医薬品等卸売事業、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業等 * 業績トレンド:増収増益(売上高3.2%増、経常利益1.1%増)


※本記事は、株式会社メディパルホールディングス の有価証券報告書(第116期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. メディパルホールディングスってどんな会社?


同社グループは、医薬品や化粧品・日用品、動物用医薬品等の卸売事業を中心に、流通価値の創造を通じて健康と社会に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1898年に神戸市で創業し、2000年にクラヤ薬品、東京医薬品と合併してクラヤ三星堂となりました。2004年に持株会社体制へ移行し、2005年にパルタックを完全子会社化しました。2009年に現在のメディパルホールディングスへ商号変更し、翌2010年にはPALTACが東証一部(現・プライム)へ上場しています。

連結従業員数は13,061名、単体では185名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は外国法人の資産運用会社、第3位も資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 14.74%
NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUST 5.35%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 4.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性3名(社外取締役・監査役含む)の計17名で構成され、女性役員比率は17.6%です。代表取締役社長は渡辺秀一氏が務めています。社外取締役は4名選任されており、取締役全体の33.3%を占めます。

氏名 役職 主な経歴
渡辺 秀一 代表取締役社長グループコンプライアンス管掌(指名・報酬委員会指名委員) 1979年クラヤ薬品(現・同社)入社。同社代表取締役副社長等を経て、2012年4月より現職。メディセオ取締役相談役を兼務。
長福 恭弘 代表取締役副社長医薬事業担当 1977年三星堂(現・同社)入社。メディセオ代表取締役社長、同社会長等を経て、2025年5月より現職。
依田 俊英 専務取締役IR担当兼事業開発本部長(指名・報酬委員会報酬委員) 日本勧業角丸証券、UBS証券、バークレイズ・キャピタル証券マネージングディレクター等を経て2018年6月より現職。
左近 祐史 常務取締役管理本部長兼CSR委員会委員長(指名・報酬委員会委員) 1977年三星堂(現・同社)入社。同社執行役員等を経て、2018年6月より現職。アステック取締役等を兼務。
渡辺 紳二郎 取締役システム・DX担当 2008年アトル入社。同社代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。
今川 国明 取締役医薬事業副担当 1984年クラヤ薬品(現・同社)入社。メディセオ代表取締役社長等を経て、2022年6月より現職。
吉田 拓也 取締役化粧品・日用品、OTC事業担当 1995年三和銀行入行。PALTAC代表取締役社長等を経て、2023年6月より現職。
脇田 英充 取締役アグロ・フーズ事業担当 1986年大日本製薬入社。MP五協フード&ケミカル代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、加々美光子(弁護士・大学院教授)、浅野敏雄(元旭化成社長)、昌子久仁子(元テルモ取締役)、岩本洋(元みずほ総研専務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療用医薬品等卸売事業」「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」「動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業」を展開しています。

(1) 医療用医薬品等卸売事業


病院、診療所、調剤薬局などの医療機関等を主な顧客とし、医療用医薬品、医療機器、医療材料、臨床検査試薬などの販売を行っています。また、スペシャリティ医薬品の流通企画や物流受託なども手掛けています。

収益は、主に医療機関等への商品販売による対価から得ています。運営は、メディセオ、エバルス、アトル、東七などが地域ごとの販売を担い、SPLineが流通企画を、MMコーポレーションやアステック等が医療機器等の販売を行っています。物流業務等はメディスケットが受託しています。

(2) 化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業


ドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の小売業を主な顧客とし、化粧品、日用品、一般用医薬品の卸売を行っています。

収益は、主に小売業者への商品販売による対価から得ています。運営は、主に株式会社PALTACが行っています。

(3) 動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業


動物病院、畜水産業者、加工食品メーカー等を主な顧客とし、動物用医薬品、飼料添加物、食品素材、食品添加物などの販売を行っています。

収益は、顧客への商品販売による対価から得ています。運営は、動物用医薬品等はMPアグロ株式会社が、食品素材等はMP五協フード&ケミカル株式会社が主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の推移を見ると、売上高は3兆2000億円台から3兆6000億円台へと緩やかに増加傾向にあります。経常利益も500億円台から600億円台で安定して推移しており、利益率はおおむね1.8%前後を維持しています。当期は増収増益となり、堅調な業績を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3兆2111億円 3兆2909億円 3兆3600億円 3兆5587億円 3兆6713億円
経常利益 530億円 620億円 651億円 646億円 653億円
利益率(%) 1.6% 1.9% 1.9% 1.8% 1.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 207億円 128億円 214億円 211億円 208億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しました。営業利益は17.5%増と大きく伸びており、営業利益率も改善しています。コストコントロールと売上拡大の効果により、本業の収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3兆5587億円 3兆6713億円
売上総利益 2467億円 2558億円
売上総利益率(%) 6.9% 7.0%
営業利益 473億円 556億円
営業利益率(%) 1.3% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が816億円(構成比41%)、その他が509億円(同25%)を占めています。売上原価は売上高の93%を占め、仕入コストが費用の大半を構成する卸売業特有の構造となっています。

(3) セグメント収益


医療用医薬品等卸売事業は、薬価改定の影響等はありましたが、市場伸長や営業強化により増収増益となりました。化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業もインバウンド需要等により増収増益を確保しています。動物用医薬品・食品加工原材料等は、増収ながらも仕入価格高騰等の影響で減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
医療用医薬品等卸売事業 2兆2958億円 2兆3702億円 175億円 252億円 1.1%
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業 1兆1520億円 1兆1881億円 272億円 280億円 2.4%
動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業 1140億円 1169億円 27億円 24億円 2.1%
連結(合計) 3兆5587億円 3兆6713億円 473億円 556億円 1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、財務健全性を確保しつつ、最適な資本構成を追求しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に事業活動から生み出される利益により増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や子会社取得等により減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払い等により減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 618億円 606億円
投資CF -78億円 -34億円
財務CF -252億円 -259億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。「ありたい姿」として「『医療と健康、美』を広げ、支え、つなぐ 健康応援オーケストラ」を目指し、事業活動を行っています。

(2) 企業文化


同社グループでは、「誠実」「倫理観」「使命感」を共通の価値観として重視しています。これらを判断基準とし、社会から信頼される活力ある企業文化の創造、誠実で自由闊達な社風の醸成、創造性に富む人材の育成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期を最終年度とする「2027メディパル中期ビジョン」を策定しています。主な連結経営目標として以下の数値を掲げています。
* ROE:9%(2027年3月期)
* 経常利益:1,000億円(2027年3月期)
* 成長投資:1,000億円(5年間累計)

(4) 成長戦略と重点施策


中期ビジョンのもと、人材・財務戦略を基盤とし、「海外への進出」「予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大」「デジタルを活用したビジネス基盤の強化」「持続可能な流通の構築」「地域医療における価値共創」の5つの成長戦略を推進しています。特に、ALC(高機能物流センター)とAR(専門知識を持つ営業担当者)の機能を活用した収益基盤強化や、異業種連携による物流効率化、新規事業への投資に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材は、競争優位や企業価値を創造する源泉」と捉え、成長戦略と連動した人材戦略を推進しています。「未来志向型人材」の育成を掲げ、タレントマネジメントシステムによる適所適材の配置、ジョブローテーション、多様な人材が活躍できるダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.6歳 19.8年 8,137,086円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.8%
男女賃金差異(正規雇用) 78.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.8%


※数値は提出会社(単体)のものです。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(9.4%)、男性労働者の育児休業取得率(58.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療保険制度・薬価制度


主力の医療用医薬品卸売事業は、国の社会保障制度や医療政策の影響を強く受けます。医療制度改革による制度変更や、市場実勢価格に基づく薬価改定による販売価格低下が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 取引慣行に関するリスク


医療機関等との取引では未妥結のまま納入し価格交渉を行う慣行があり、見積価格と決定価格に差異が生じるリスクがあります。また、製薬企業との間には割戻金や報奨金などの取引慣行が存在し、これらに大幅な変更が生じた場合、業績に影響する可能性があります。

(3) システムトラブル


事業運営はコンピュータネットワークシステムに依拠しており、物流や販売の効率化にITが不可欠です。災害や不正アクセス等によりシステムが機能停止した場合、販売・物流に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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