ムーンバット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ムーンバット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、洋傘や洋品、毛皮、宝飾品などのアクセントファッション商品の企画・製造・販売を行う企業です。百貨店向け卸売で高いシェアを持つほか、専門店やEC販路の開拓も進めています。猛暑や厳冬による季節需要を取り込み、売上高・利益ともに増加傾向にあり、増収増益を達成しています。


※本記事は、ムーンバット株式会社 の有価証券報告書(第84期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ムーンバットってどんな会社?


百貨店や量販店向けに、洋傘やスカーフ、帽子などのファッション雑貨を企画・販売する老舗企業です。

(1) 会社概要


同社は1885年に西陣帯地問屋として創業し、1916年にショール、1921年に洋傘の製造・販売を開始しました。1941年に法人化し、1963年に現社名へ変更しています。1977年には大阪証券取引所市場第二部および京都証券取引所に上場しました。その後、M&Aや子会社設立を通じて事業を拡大し、2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は206名、単体では123名です。筆頭株主は、モンクレールなどを取り扱う繊維専門商社の八木通商です。第2位は同社と同じ住所に所在するニード、第3位は従業員持株会であるムーンバット持株共栄会となっています。

氏名 持株比率
八木通商 14.40%
ニード 7.77%
ムーンバット持株共栄会 6.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役・社長執行役員は鎌田尚氏です。社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
中村 卓司 代表取締役・会長執行役員 三井住友銀行を経て2010年同社入社。専務執行役員、社長執行役員を経て2023年6月より現職。
鎌田 尚 代表取締役・社長執行役員 1988年同社入社。洋傘事業部長、事業本部長などを歴任し、2023年6月より現職。
山本 聡 取締役・常務執行役員 三井住友銀行を経て2015年同社入社。管理本部長、リスク管理・コンプライアンス担当として2022年6月より現職。
原田 尚宏 取締役・執行役員 1994年同社入社。百貨店事業部長、営業統括などを経て2024年6月より現職。
山田 隆二 取締役(監査等委員) 三井住友銀行を経て同社入社。管理本部長などを歴任し、2020年6月より現職。


社外取締役は、郷田紀明(郷田公認会計士事務所代表)、安川文夫(安川文夫公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「身の回り品事業」および「情報サービス事業」を展開しています。

(1) 身の回り品事業

洋傘、洋品(スカーフ・マフラー等)、帽子、毛皮・宝飾品などの企画、輸入、製造、仕入、販売を行っています。百貨店を主要な販路とし、機能性に優れた高品質な商品を提供しています。また、海外生産による調達体制も構築しています。

収益は、百貨店や量販店、専門店などの小売店への商品卸売による売上が中心です。運営は、同社が企画・販売を行うほか、子会社のグローリーが製造を、ルナが宝飾品の企画販売を担当しています。また、A.F.C. ASIA LIMITEDなどを通じた貿易・輸入業務も行っています。

(2) 情報サービス事業

システム開発、販売、保守・メンテナンスなどの情報サービスを提供しています。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進ニーズに対応し、業務システムの構築などを手がけています。

収益は、顧客企業からのシステム開発受託料や保守・メンテナンス料などから得ています。運営は、2024年4月に連結子会社となったセブンシステムが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は72億円から119億円へと右肩上がりで成長しています。利益面でも、初期の赤字状態からV字回復を果たし、直近では経常利益6.7億円、当期純利益5.7億円と安定した黒字基調を維持しています。特に直近3期は増収増益傾向にあり、利益率も改善が進んでいます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 72億円 75億円 96億円 106億円 119億円
経常利益 -6億円 -4億円 2億円 5億円 7億円
利益率(%) -8.5% -6.0% 1.8% 4.6% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -16億円 -4億円 2億円 5億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約13億円増加し、売上総利益も順調に伸長しています。増収効果に加え、プロパー販売の促進などにより収益性が向上し、営業利益は約2.7億円の増益となりました。営業利益率は4.1%から5.9%へと改善しており、本業の稼ぐ力が高まっていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 106億円 119億円
売上総利益 44億円 51億円
売上総利益率(%) 41.8% 42.9%
営業利益 4億円 7億円
営業利益率(%) 4.1% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が18億円(構成比40%)を占めています。

(3) セグメント収益


身の回り品事業は、猛暑によるパラソル需要や厳冬による防寒具需要を取り込み、インバウンド需要も寄与して増収増益となりました。情報サービス事業は、新たに連結化したセブンシステムの寄与により、約5億円の売上を計上し、利益面でも黒字を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
身の回り品事業 106億円 115億円 4億円 7億円 6.0%
情報サービス事業 - 5億円 - 0.2億円 5.3%
連結(合計) 106億円 119億円 4億円 7億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで本業から現金を創出しています。投資活動によるキャッシュ・フローはプラスで、これは子会社取得に伴う収入などが支出を上回ったためです。財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスで、借入金の返済や配当金の支払いを行っています。これらは、本業の収益と資産整理等で財務体質の改善を進めている「改善型」のパターンと言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 9億円 8億円
投資CF -0.3億円 0.1億円
財務CF -7億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「クオリティ&テイスト」をキーワードに、「ぬくもりづくり」で社会に貢献することを経営理念としています。また、よりよいアクセントファッションの創造を通じて、顧客、取引先、従業員、株主といった全てのステークホルダーに持続的な「プラスの価値」を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、環境に配慮した公正公平な取引や、生産性の向上を通じた安定経営を重視しています。また、全ての役員・従業員が生産性向上に努めることで社会への貢献を目指す姿勢や、変化する消費者のライフスタイルや購買志向に対応し、マーケットに合ったモノづくりと販売を推進する柔軟性を持った文化を形成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画(2024-2026年度)において、成長領域への資源投入と既存事業の最適化を推進しています。最終年度となる2026年度(連結ベース)の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:125億円
* 営業利益:7億円
* 営業利益率:5%以上
* ROE:10%以上
* ROIC:8%以上
* 配当性向:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、専門店市場への商品開発強化や直営店・小売事業の拡大、Eコマース事業の拡大、国内外の新規販路開拓を成長戦略として掲げています。同時に、事業最適化戦略として、自社ブランドの育成やサプライチェーンの見直し、DXの活用による業務効率化を推進し、事業ポートフォリオの再構築を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本を中長期的な企業価値向上の重要要素と位置づけています。女性活躍推進を含む人材の多様性を重視し、時差出勤や短時間勤務、在宅勤務等の制度拡充に加え、障がい者や外国人、中途採用も積極的に行っています。また、OJTや各種研修、資格取得支援を通じて従業員の能力向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.6歳 17.3年 5,832,408円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではない項目については、記載を省略しております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の割合(56.8%)、管理職に占める割合(28.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況と販路の集中

同社グループの主な販売先は国内の百貨店、チェーンストア、専門店です。景気動向に加え、各販路の価格・店舗戦略や競合状況の変化が業績に影響を与える可能性があります。特に百貨店向けの売上構成比が高いため、百貨店の店舗閉鎖や売場縮小などの影響を受けるリスクがあります。

(2) 消費者動向の変化

取り扱うファッション雑貨は、消費者のトレンドやライフスタイル、嗜好の変化が激しい分野です。また、所得動向や経済環境の変化による消費行動への影響も受けやすく、市場ニーズへの対応が遅れた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 天候・気候変動の影響

パラソルやマフラー、毛皮などの季節商材を多く取り扱っているため、冷夏や暖冬、少雨などの天候不順が売上減少の要因となります。また、近年の気候変動による予測困難な異常気象も、販売機会の損失につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。