※本記事は、ムーンバット株式会社の有価証券報告書(第85期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ムーンバットってどんな会社?
洋傘や帽子、洋品等のファッション雑貨の企画・製造・販売において、百貨店トップシェアを誇る老舗企業です。
■(1) 会社概要
同社は1885年3月に西陣帯地問屋として創業しました。その後、1921年9月に洋傘の製造・販売を開始し、洋品や毛皮へと事業領域を広げてきました。1977年3月には株式を上場しています。直近では2024年4月にセブンシステムを連結子会社化し、情報サービス分野への展開も強化しています。
現在の従業員数はグループ全体で213名、単体で127名です。筆頭株主は事業会社の八木通商で、第2位は従業員持株会、第3位は金融機関です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 八木通商 | 24.49% |
| ムーンバット持株共栄会 | 6.18% |
| 三井住友銀行 | 4.97% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役・社長執行役員は鎌田尚氏が務めており、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鎌田尚 | 代表取締役・社長執行役員事業本部長 | 1988年入社。パラソル・洋傘事業部長等を経て、2023年より現職。 |
| 中村卓司 | 取締役・取締役会議長 | 元三井住友銀行大阪本店営業第一部長。2010年入社。2023年より現職。 |
| 山本聡 | 取締役・常務執行役員管理本部長兼リスク管理・コンプライアンス担当 | 元三井住友銀行姫路ビジネスサポートプラザ部長。2015年入社。2022年より現職。 |
| 原田尚宏 | 取締役・執行役員事業本部百貨店事業部長兼直営店開発事業部長兼営業統括兼東京支店長 | 1994年入社。大阪支店長等を経て2024年より現職。 |
| 鈴木康史 | 取締役・執行役員事業本部戦略事業部担当兼チェーンストア事業部担当兼戦略事業部長 | 1992年入社。洋傘事業部長等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、中村恭俊(元ライジングビルメインテナンス社長)、郷田紀明(元監査法人朝日会計社代表社員)、安川文夫(元監査法人朝日会計社代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「身の回り品事業」および「情報サービス事業」を展開しています。
■(1) 身の回り品事業
洋傘、洋品、帽子、毛皮・宝飾品などのファッション雑貨を企画・輸入・製造・販売しています。主に百貨店、チェーンストア、専門店向けに展開しており、特に百貨店における傘などのファッション雑貨分野では業界トップシェアを維持しています。
収益源は、卸売および直営店での小売、ECサイトでの販売による代金です。運営はムーンバットのほか、製造を担うグローリー、海外仕入・販売を行う上海慕恩巴特商貿有限公司等のグループ各社が連携して行っています。
■(2) 情報サービス事業
システム開発・販売、保守・メンテナンス等の業務に加え、その他の情報サービスの提供を行っています。業務のIT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進ニーズに対応するサービスを展開しています。
収益源は、ソフトウェアの開発請負による受託開発費や、商品・製品の保守サービスに伴う保守契約に基づくシステム利用料などです。運営は主に子会社のセブンシステムが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2022年3月期から順調に回復・拡大し、直近2期間は119億円規模で推移しています。経常利益も黒字転換以降は右肩上がりで増加し、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 96億円 | 106億円 | 119億円 | 119億円 |
| 経常利益 | -4.5億円 | 1.8億円 | 4.9億円 | 6.7億円 | 6.8億円 |
| 利益率(%) | -6.0% | 1.8% | 4.6% | 5.6% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.8億円 | 1.4億円 | 5.5億円 | 5.8億円 | 5.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は横ばいながら、商品配置の最適化や為替の円高推移により仕入コストが低減し、売上総利益と利益率は改善しました。一方で、販売関連経費や人件費の増加により営業利益は微減となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 119億円 | 119億円 |
| 売上総利益 | 51億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | 42.9% | 44.3% |
| 営業利益 | 7億円 | 6.1億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当(役員報酬含む)が18.2億円(構成比39%)と最も大きく、次いで賞与引当金繰入額が1.1億円(同2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力となる身の回り品事業は、春夏物が猛暑を背景に好調だった一方、秋冬物はインバウンド需要減等で伸び悩み、微減収減益となりました。情報サービス事業はIT化需要を取り込み増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 身の回り品事業 | 115億円 | 115億円 | 6.9億円 | 6.0億円 | 5.2% |
| 情報サービス事業 | 4.5億円 | 4.8億円 | 0.2億円 | 0.3億円 | 6.0% |
| 連結(合計) | 119億円 | 119億円 | 7億円 | 6.1億円 | 5.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も58.9%でいずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.8億円 | 3.4億円 |
| 投資CF | 0.1億円 | -1.7億円 |
| 財務CF | -4.9億円 | -4.2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
クオリティ&テイストをキーワードに「ぬくもりづくり」で社会に貢献する企業を目指すことを経営理念に掲げています。社会に対して持続的でプラスとなる価値を提供することを経営の根幹に置いています。
■(2) 企業文化
よりよいアクセントファッションの創造を通じて、全てのステークホルダーに持続的なプラスの価値を提供する方針を大切にしています。お客様への満足度の高い商品提供、環境に配慮した公正公平な取引の実現、従業員の生産性向上による安定経営を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2024-2026年度)の最終年度となる2027年3月期に向けて、具体的な業績目標と経営指標を設定しています。
* 売上高:125億円
* 営業利益:7億円
* 営業利益率:5%以上
* ROE:10%以上
* ROIC:8%以上
* 配当性向:40%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業ポートフォリオの見直しと再構築を目指し、事業成長戦略と事業最適化戦略を推進しています。特に専門店やEC市場への商品開発およびマーケティング強化、直営店などの小売事業の拡大、国内外の新規販路開拓に注力し、持続的な成長基盤の確立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長を支える最も重要な資本は「人材」であると考え、社員各人が専門性と主体性・自律性を発揮できる組織づくりを推進しています。経営戦略と人材戦略を連動させ、階層別の教育研修や継続的なリスキリングの機会を提供することで、競争力の源泉である人材の育成と多様な人材が活躍できる職場環境の整備を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.5歳 | 17.3年 | 6,099,110円 |
※平均年間給与は所定労働時間内の賃金と基準外賃金、賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ全体の女性従業員割合(57.3%)、単体の女性従業員割合(52.5%)、グループ全体の女性管理職比率(30.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 消費者動向の急変
同社が取り扱うファッション雑貨はトレンドやライフスタイルの変化が激しく、マクロの所得動向や経済環境の変化による消費者の嗜好変化が売上や業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 天候不順・気候変動
パラソルや毛皮などの季節商材を取り扱っているため、冷夏・暖冬・少雨といった天候不順や予測不可能な気象状況によって売上機会を逸し、業績が下振れするリスクがあります。
■(3) 海外生産・サプライチェーンの混乱
販売商品の約85%が海外生産であり、生産国での政情不安や法律・規制の変更、大規模災害等により商品の供給が停滞または途絶した場合、事業運営に大きな影響を及ぼす恐れがあります。



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