※本記事は、株式会社キングの有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キングってどんな会社?
キングは、レディスアパレルの企画・卸売を主力とし、テキスタイル事業や不動産賃貸も手がける企業です。
■(1) 会社概要
同社は1946年に個人で創業された山田商店を起源とし、1948年にキング染工芸社として設立されました。当初は呉服業でしたが、1949年にテキスタイル事業へ転換し、1968年には現在主力のレディスアパレル事業へ進出しました。1978年に現在のキングへ社名変更し、同年に株式上場を果たしています。
現在の従業員数は連結で148名、単体で82名となっています。筆頭株主は投資会社とみられるLNS MANAGEMENT PTE.LTD.であり、第2位には創業者が設立した一般財団法人山田育英財団、第3位には取引関係がある事業会社の中央倉庫が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| LNS MANAGEMENT PTE.LTD. | 9.37% |
| 一般財団法人山田育英財団 | 7.23% |
| 中央倉庫 | 6.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長CEOの山田幸雄氏と代表取締役社長COOの木原伸一氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田幸雄 | 代表取締役会長CEO | 1974年に同社へ入社後、経営企画部長などを歴任しました。1983年に代表取締役社長に就任し、2018年より現職。 |
| 木原伸一 | 代表取締役社長COO | 1984年に三井物産へ入社し、ファッション事業の要職を歴任しました。MNインターファッション社長等を経て2025年より現職。 |
| 長島希吉 | 取締役副社長 | 1990年に同社へ入社後、ライセンス事業部長などを歴任しました。2018年に代表取締役社長COOに就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、澤田眞治郎(元三井物産常務執行役員)、藤井卓也(元日本債券信用銀行頭取)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アパレル事業」「テキスタイル事業」「エステート事業」を展開しています。
■(1) アパレル事業
主力事業として、キャリアからミセス層のベターアップゾーンに特化した高品質・高感度なレディスアパレルやファッショングッズの卸売を行っています。自社ブランドや海外コラボレーションブランドを展開し、全国の専門店、ショッピングモール、百貨店など多様なチャネルを通じて消費者に商品を提案しています。
収益源は、商品の卸売による販売代金です。事業の運営は同社が主体となって行い、エス企画がアパレル用附属品や販促資材の供給を担当しています。また、商品の企画・販売・事務業務の一部をキングアパレルサポートに委託する体制をとっています。
■(2) テキスタイル事業
アパレル製品の素材となるテキスタイルの企画、仕入、卸売を行っています。企画提案型テキスタイルコンバーターとしての競争力をベースに、既存主力先の深耕化や次期主力先の開発を進め、アパレル各社に対して意匠力や提案力を活かしたテキスタイル商品を提供しています。
主な収益源は、テキスタイル商品の卸売による販売代金です。この事業の運営は連結子会社であるポーンが主体となっており、同社に対しても一部商品の供給を行っています。
■(3) エステート事業
自社所有不動産の有効活用を目的として、主にオフィスビルなどの不動産賃貸事業を展開しています。東京、京都、大阪に所有するオフィスビルなどを賃貸物件として提供し、計画的なメンテナンスや環境負荷低減に取り組みながら、安定的な収益基盤としてグループに貢献しています。
主な収益源は、テナント企業などから受け取るオフィスビル等の不動産賃貸収入です。この事業の運営は同社が単独で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が80億円台で推移していましたが、直近の2026年3月期は消費者の慎重な購買姿勢などの影響により減収となりました。利益面では、在庫コントロールやプロパー販売強化などの収益性改善策により、経常利益率は概ね10%を超える安定した水準を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 81億円 | 84億円 | 85億円 | 82億円 | 78億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 11億円 | 11億円 | 10億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 9.0% | 13.4% | 12.4% | 11.7% | 12.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 8億円 | 5億円 | 11億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
収益性の指標である売上総利益率は57%台後半を維持しており、付加価値の高い商品展開が奏功しています。一方、減収による影響から営業利益は前期比で減少していますが、諸経費の削減等に努め、営業利益率は10%台を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 82億円 | 78億円 |
| 売上総利益 | 47億円 | 45億円 |
| 売上総利益率(%) | 57.5% | 57.9% |
| 営業利益 | 9億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 10.6% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が10億円(構成比27.3%)、販売促進費が7億円(同19.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のアパレル事業は、消費者の慎重な購買姿勢や天候不順の影響を受けて減収となり、営業赤字となりました。テキスタイル事業もアパレル各社の生産見直しの影響で減収減益です。一方、エステート事業は所有不動産の有効活用が進み、高い利益率を誇り、グループ全体の利益を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アパレル事業 | 64億円 | 61億円 | 0.5億円 | -0.4億円 | -0.7% |
| テキスタイル事業 | 8億円 | 8億円 | 0.6億円 | 0.3億円 | 4.2% |
| エステート事業 | 10億円 | 10億円 | 8億円 | 8億円 | 79.6% |
| 調整額 | - | - | -0.1億円 | -0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 82億円 | 78億円 | 9億円 | 8億円 | 10.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で生み出した営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄っている優良な状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 14億円 |
| 投資CF | -6億円 | -20億円 |
| 財務CF | -4億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.5%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「もの言わぬものに、もの言わせるものづくり」を社是とし、「私たちは、常に社会と生活者を見つめ、たゆまぬ創造と変革を行い、より充実した生活にしよう」という企業理念を掲げています。これに沿い、ファッション産業という本業に徹し、素材や品質、着心地のすべてにわたってハイクオリティを追求しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業規模の大小にとらわれず、企業理念に沿ってその存在価値が株主や取引先、社員などすべての利害関係者から明確に認められ、安定した収益と成長を確保できる「エクセレントカンパニー」を目指す文化を持っています。また、高い倫理観に根ざした社会的良識をもって行動するコンプライアンス重視の姿勢を基本としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、安定した成長性と収益性によって企業価値の継続的な向上を図ることを目標としています。より一層の効率的な経営を推進することにより、売上高経常利益率のさらなる向上を目指しています。また、中期経営計画「Focus 80」においては、人材・事業・店舗の3領域を重点投資分野と位置づけています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「上等・上質=プレミアム」にこだわった独自性のある高付加価値商品の追求と、高品質・高感度な商品づくりを基軸としています。アパレル事業では、ブランド価値の再構築や新ブランドの開発、SNS・ECを活用したデジタルマーケティングによる新規顧客開拓を進めます。グループ全体で在庫コントロールの徹底や生産管理機能の強化による収益性の改善に努めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を最も重要な経営資本と位置づけ、中期経営計画において人材投資を重点分野としています。新人事制度を導入し、育成・評価・配置を一体で設計することで社員の成長を促します。「科学と感性のバランス」を重視した研修の実施や、キャリア採用を通じた多様な人材の獲得、女性活躍を含む働きやすい職場環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 18.4年 | 7,392,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部環境の変化に関するリスク
主力のアパレル事業においては、景気変動による個人消費の低迷や、他社との競合、ファッショントレンドの急激な変化、冷夏や暖冬などの天候不順の長期化などにより売上高が減少するリスクがあります。同社は期中追加企画や生産体制の整備に取り組んでいますが、想定外の変化が業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 海外からの商品調達に関するリスク
同社が企画した商品は、商社や国内の協力メーカーに生産を委託していますが、海外(特に中国)での生産割合が高まっています。輸出入に関する規制や中国の経済情勢の変化、災害等により商品調達に支障をきたし、グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼすリスクが内在しています。
■(3) システム・情報管理に関するリスク
事業活動においてコンピュータシステムや通信ネットワークを活用しているため、自然災害や事故、コンピュータウイルス等によるシステムの停止や、外部からの不正アクセスによる情報の漏洩・消失が発生した場合、業務遅延や社会的信用度の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 法的規制等に関するリスク
事業を推進する上で様々な法的規制を受けており、同社グループは「コンプライアンス基本方針」等を制定して法令遵守を徹底しています。しかし、各種法令の変更に対して適切に対応できなかった場合、事業活動が制限され、業績や財務状況にマイナスの影響を与える可能性があります。



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