**株式会社モスフードサービス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**
※本記事は、株式会社モスフードサービスの有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. モスフードサービスってどんな会社?
同社は国内発祥のハンバーガーチェーンとして、モスバーガーのフランチャイズ展開を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
1972年7月に設立され、翌年にフランチャイズ1号店をオープンしました。1985年に店頭売買銘柄として登録後、1988年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1996年に同市場第一部へ指定替えとなりました。1991年の台湾進出を皮切りに海外事業を展開し、関連会社の設立も進めています。
従業員数は連結で1,323名、単体で505名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は事業会社の紅梅食品工業、第3位は資本・業務提携関係にあるダスキンとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 8.61% |
| 紅梅食品工業 | 4.47% |
| ダスキン | 4.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表を務めるのは、取締役社長の中村栄輔氏です。社外取締役の比率は23.1%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 栄輔 | 取締役社長(代表取締役) | 1988年当社入社。1995年法務部長、2001年店舗開発本部長、2008年子会社社長を経て、2012年取締役執行役員営業本部長。2014年常務取締役事業統括執行役員などを歴任し、2020年より現職。 |
| 福島 竜平 | 取締役常務執行役員リスク・コンプライアンス室担当 | 1986年入社。2008年取締役執行役員総合企画室長、2010年同商品本部長、2014年同経営サポート本部長を歴任。2016年常務取締役執行役員に就任し、2026年より現職。 |
| 太田 恒有 | 取締役上席執行役員グロース事業本部長 | 1995年入社。2014年商品開発部長、2018年執行役員商品本部長を経て、2020年取締役上席執行役員営業本部長に就任。2026年より現職。 |
| 笠井 洸 | 取締役上席執行役員FC事業本部長 兼ストアイノベーション室担当 | 2008年野村総合研究所入社。2016年ベイカレント・コンサルティング入社後、2018年当社に入社。2020年執行役員経営企画本部長を経て、2025年より現職。 |
| 安藤 芳德 | 取締役上席執行役員商品本部長 | 1985年伊藤忠商事入社。2013年UCC上島珈琲に入社し専務取締役。2018年当社に入社し、執行役員マーケティング本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 瀧深 淳 | 取締役上席執行役員台湾サポート担当 | 1986年入社。2010年執行役員東日本営業部長、2011年同海外商品本部長、2018年同国際本部長を歴任。2022年取締役常務執行役員国際本部長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、中山勇(元ファミリーマート代表取締役社長)、小田原加奈(元アデコグループジャパンCFO)、小山薫堂(放送作家・オレンジ・アンド・パートナーズ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、国内モスバーガー事業、海外事業、新規飲食事業およびその他の事業を展開しています。
■国内モスバーガー事業
同社は主に国内で「モスバーガー」等の商標を使用した飲食事業を展開しています。ハンバーガーやライスバーガー、ドリンクなどの商品提供と、パティなどの食材や包装資材の製造・販売を行っており、幅広い顧客層を獲得しています。
収益源は、フランチャイズ加盟店に対する食材・包材等の卸売売上やロイヤルティ収入、および直営店舗での顧客への商品提供に伴う売上です。事業の運営は、モスフードサービスと同社子会社のモスストアカンパニーなどが担っています。
■海外事業
台湾、シンガポール、香港、タイ、韓国、フィリピンなどの海外市場において「モスバーガー」ブランドを展開しています。各地域の嗜好を取り入れたローカライズ商品の提供や、地域に根差した店舗展開を通じて、日本発の外食チェーンとしてブランドの定着を図っています。
収益は、海外の直営店舗における商品売上や、海外フランチャイズ加盟店からのロイヤルティ収入、現地の製造子会社による食材の製造販売などから得ています。運営は、安心食品服務やモスフード・シンガポール社などの各海外子会社・関連会社が行っています。
■新規飲食事業
「マザーリーフ」「あえん」「モスプレミアム」などの多様なブランドで飲食事業を展開しています。紅茶専門店や和風レストラン、カフェ業態など、通常のハンバーガー店とは異なる形態の店舗を運営し、顧客に新しい飲食体験を提供しています。
直営店舗における一般顧客に対する商品やサービスの提供から売上を計上しています。運営はモスフードサービスが主体となって行い、各業態のブラッシュアップや卸事業を通じたブランド価値の向上と収益源の多様化に取り組んでいます。
■その他の事業
上記の飲食事業をサポートする各種の機能別事業を展開しています。具体的には、ハンバーガー等の食品衛生検査、フランチャイズ加盟店への事業資金の貸付や保険代理業、レジや看板などの機器レンタル、グループ内のアウトソーシング業務が含まれます。
主な収益源は、加盟店に対するレンタル料や金融利息、手数料収入などです。衛生事業はエム・エイチ・エス、金融・レンタル事業はモスクレジット、グループ内アウトソーシング事業はモスシャインがそれぞれ運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に増加しており、直近5年間で成長トレンドを維持しています。利益面では第51期に落ち込みが見られたものの、その後は着実に回復し、第54期には経常利益および当期利益ともに大幅な増益を達成しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 784億円 | 851億円 | 931億円 | 962億円 | 1028億円 |
| 経常利益 | 36億円 | 4億円 | 44億円 | 56億円 | 71億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 0.4% | 4.7% | 5.8% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 24億円 | 1億円 | 36億円 | 31億円 | 42億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も前年比で拡大しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移していますが、多角的なコスト抑制策の実行が寄与し、営業利益および営業利益率は改善を見せており、本業の収益性が高まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 962億円 | 1028億円 |
| 売上総利益 | 454億円 | 478億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.3% | 46.5% |
| 営業利益 | 52億円 | 66億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 6.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が137億円(構成比33%)、運賃が44億円(同11%)、家賃地代が37億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の国内モスバーガー事業は、価格戦略と既存店の基盤強化が奏功し増収増益となりました。海外事業は収益性改善に取り組んでいるものの、不採算店舗の整理等により減収減益となっています。新規飲食事業は増収ながら損失が拡大しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内モスバーガー事業 | 766億円 | 840億円 | 64億円 | 79億円 | 9.4% |
| 海外事業 | 166億円 | 155億円 | 5億円 | 3億円 | 2.1% |
| 新規飲食事業 | 19億円 | 20億円 | -1億円 | -2億円 | -10.4% |
| その他の事業 | 11億円 | 13億円 | 6億円 | 6億円 | 44.1% |
| 調整額 | - | - | -21億円 | -20億円 | - |
| 連結(合計) | 962億円 | 1028億円 | 52億円 | 66億円 | 6.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 73億円 | 92億円 |
| 投資CF | -16億円 | -32億円 |
| 財務CF | -37億円 | -35億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、理念体系「モスの心」のもと、「食を通じて、世界中の人を幸せにすること。」を使命と位置づけています。「おいしさ、安全、健康」にこだわった商品を「真心と笑顔のサービス」とともに提供することで、ステークホルダーとの価値共有を通じ、経営品質の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「どうせ仕事をするなら、感謝される仕事をしよう。」をすべての活動の基になる考え方として掲げています。創業当時から50年以上にわたりこの価値観が全従業員に浸透しており、顧客や地域社会から感謝されることを重視する企業文化が育まれています。
■(3) 経営計画・目標
2025年に発表した中期経営計画(2025-2027年度)において、2030年のありたい姿として「世界が注目する外食のアジアオンリーワン企業」を掲げています。
・売上高:1080億円
・営業利益:63億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:38億円
・営業利益率:5.8%
・ROE:6.6%
※いずれも2027年度の連結財務数値目標
■(4) 成長戦略と重点施策
主力の国内モスバーガー事業および海外事業において、1店舗あたりの収益性を高める取り組みを進めています。また、マーチャンダイジング事業、新規飲食事業、衛生事業を新たな収益の柱として育成します。さらに、人的資本経営や戦略的な投資を通じてブランド価値と業績の持続的な向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「組織戦略と人材戦略の統合」を推し進め、社員の主体的・自律的な成長が組織の持続的成長に直結するという方針を掲げています。目指すべき人材モデルや行動特性である「モスバリュー」を策定し、評価制度と連動させています。また、多様性を活かすダイバーシティの推進や健康経営にも積極的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 14.3年 | 6,881,086円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 96.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、産休・育休後の復職率(100%)、男性労働者の育児休業取得率の2030年度目標値(85%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品事故に関するリスク
危険異物の混入や食中毒などが発生した場合、営業停止処分を受けたり、食材供給が滞ったりする可能性があります。これに対処するため、ISO22000に準拠した独自の「モス食品安全基準」を構築し、サプライチェーン全体をマネジメントして安全・安心の確保に取り組んでいます。
■(2) 店舗マネジメントに関するリスク
店舗において事故やトラブル、コンプライアンス違反等が発生した場合、従業員や顧客の安全に関わるほか、営業継続が困難になる可能性があります。全店舗での定期的な安全管理検査や従業員教育を徹底し、災害時等の緊急事態に迅速に対応できる体制の強化を進めています。
■(3) 人事労務に関するリスク
労働関係法令の違反やハラスメント、人手不足などが原因で労働環境が悪化し、優秀な人材の流出を招く可能性があります。同社は人的資本経営を推進し、多様性があり健康で安全な職場づくりを目指すとともに、キャリアパスの明確化や従業員のチャレンジを支援する制度の充実を図っています。



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