#モスフードサービス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社モスフードサービスの有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. モスフードサービスってどんな会社?
日本発祥のハンバーガーチェーン「モスバーガー」を国内外で展開し、「食」を通じて人を幸せにすることを目指す企業です。
■(1) 会社概要
1972年に設立され、同年6月に実験店として成増店をオープンしました。1986年には外食産業として初めて全都道府県への出店を達成し、1988年に株式を上場しました。その後、2008年にダスキンと資本・業務提携契約を締結しています。現在は東証プライム市場に上場し、日本発のハンバーガーチェーンとしての地位を確立しています。
同社の連結従業員数は1,362名、単体では503名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は主要食材であるパティ等の仕入先である関連会社です。第3位には、2008年より資本・業務提携関係にあるダスキンが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 11.54% |
| 紅梅食品工業 | 4.47% |
| ダスキン | 4.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は中村栄輔氏が務めています。社外取締役比率は23.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 栄輔 | 取締役社長(代表取締役) | 1988年同社入社。開発本部長、営業本部長、ストア事業本部管掌などを歴任し、2016年代表取締役社長に就任。2020年5月より現職。 |
| 福島 竜平 | 取締役常務執行役員リスク・コンプライアンス室 デジタル化推進室担当 | 1986年同社入社。総合企画室長、商品本部長、経営サポート本部長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 太田 恒有 | 取締役上席執行役員新規飲食事業本部長 | 1995年同社入社。商品開発部長、商品本部長、営業本部長を歴任。2025年4月より現職。 |
| 笠井 洸 | 取締役上席執行役員FC事業本部長 兼ストアイノベーション室担当 | 野村総合研究所、ベイカレント・コンサルティングを経て2018年同社入社。経営企画本部長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 安藤 芳徳 | 取締役上席執行役員商品本部長 | 伊藤忠商事、UCC上島珈琲専務を経て2018年同社入社。マーケティング本部長等を歴任。2024年6月より現職。 |
| 瀧深 淳 | 取締役上席執行役員台湾サポート担当 | 1986年同社入社。東日本営業部長、国際本部長等を歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、中山勇(元ファミリーマート社長)、小田原加奈(Odawara Coaching&Consulting代表)、小山薫堂(放送作家・脚本家)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内モスバーガー事業」、「海外事業」、「その他飲食事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 国内モスバーガー事業
国内においてハンバーガー専門店「モスバーガー」等の運営を行っています。フランチャイズ加盟店および直営店を通じて、ハンバーガー、ライスバーガー、ドリンク等の商品を提供しています。また、食材の製造や販売、アグリ事業による野菜の生産も行っています。
収益源は、フランチャイズ加盟店への食材・包装資材等の卸売販売、ロイヤルティ収入、および直営店における一般顧客への商品販売収入です。運営は主にモスフードサービスが行い、一部の直営店運営をモスストアカンパニーが、食品製造を紅梅食品工業等が担っています。
■(2) 海外事業
台湾、シンガポール、香港、タイ、オーストラリア等において「モスバーガー」ブランドの飲食店を展開しています。現地の嗜好に合わせた商品開発や店舗運営を行い、日本発のハンバーガーチェーンとしてグローバル展開を推進しています。
収益源は、海外の直営店における商品販売収入や、現地パートナーからのロイヤルティ収入等です。運営は、台湾では安心食品服務、シンガポールではモスフード・シンガポール社、香港ではモスフード香港社など、各国の現地法人が行っています。
■(3) その他飲食事業
紅茶専門店「マザーリーフ」、和風レストラン「あえん」、グルメバーガーとお酒が楽しめる「モスプレミアム」等の飲食ブランドを展開しています。カフェやレストラン業態を通じて、多様な食のニーズに対応しています。
収益源は、各店舗における一般顧客への飲食サービス提供による売上です。運営は主にモスフードサービスが行っています。
■(4) その他の事業
飲食事業を支援する周辺事業を展開しています。具体的には、食品衛生検査業、フランチャイズ加盟店への資金貸付、保険代理業、POSレジスターや看板等のレンタル、グループ内事務のアウトソーシング事業などが含まれます。
収益源は、衛生検査料、貸付金利息、保険手数料、レンタル料、業務受託手数料などです。運営は、エム・エイチ・エス(衛生検査)、モスクレジット(金融・レンタル)、モスシャイン(アウトソーシング)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な増加傾向にあり、第53期には962億円に達しています。経常利益も第51期の一時的な落ち込みからV字回復し、第53期には56億円と高い水準を記録しました。当期純利益も順調に回復しており、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 720億円 | 784億円 | 851億円 | 931億円 | 962億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 36億円 | 4億円 | 44億円 | 56億円 |
| 利益率(%) | 2.0% | 4.6% | 0.4% | 4.7% | 5.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 34億円 | -3億円 | 26億円 | 32億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率はほぼ横ばいですが、営業利益率は4.5%から5.4%へと改善しており、本業の収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 931億円 | 962億円 |
| 売上総利益 | 439億円 | 454億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.2% | 47.3% |
| 営業利益 | 42億円 | 52億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が135億円(構成比34%)、運賃が46億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内モスバーガー事業は、既存店の好調により売上・利益ともに増加し、全社業績を牽引しています。海外事業は構造改革の効果により黒字化を達成し、利益貢献度を高めました。その他の事業も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内モスバーガー事業 | 766億円 | 734億円 | 64億円 | 59億円 | 8.3% |
| 海外事業 | 166億円 | 168億円 | 5億円 | 0億円 | 2.9% |
| その他飲食事業 | 18億円 | 18億円 | -1億円 | -1億円 | -6.0% |
| その他の事業 | 11億円 | 10億円 | 6億円 | 5億円 | 51.7% |
| 調整額 | -18億円 | -18億円 | -21億円 | -21億円 | - |
| 連結(合計) | 962億円 | 931億円 | 52億円 | 42億円 | 5.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
モスフードサービスグループは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示します。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有形固定資産の取得・売却など、事業の成長に必要な投資活動による資金の動きを表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や調達、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する活動による資金の増減を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 102億円 | 73億円 |
| 投資CF | -21億円 | -16億円 |
| 財務CF | -39億円 | -37億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「食を通じて、世界中の人を幸せにすること。」を自らの使命と位置づけています。おいしさ、安全、健康にこだわった商品を、真心と笑顔のサービスとともに提供することで、顧客や株主の信頼と期待に応えていくことを目指しています。
■(2) 企業文化
全ての活動の基盤となる考え方として、「どうせ仕事をするなら、感謝される仕事をしよう。」を掲げています。これは理念体系「モスの心」に込められた価値観であり、創業当時から50年以上にわたり全従業員に共有・浸透している精神です。
■(3) 経営計画・目標
新たな3ヶ年の中期経営計画において、世界が注目する外食のアジアオンリーワン企業になることを目指しています。経営目標として、2027年度に以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:1,080億円
* 営業利益:63億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:38億円
* 営業利益率:5.8%
* ROE:6.6%
■(4) 成長戦略と重点施策
国内モスバーガー事業では、既存店の基盤強化を掲げ、マーケティング展開や価値ある商品の開発、デジタル化による利便性向上を推進します。海外事業では構造改革を継続し、収益力の改善を図るとともに、地域に根差した店舗展開やローカライズ商品の販売を進めます。その他飲食事業や新規事業の育成にも取り組み、新たな収益源の確保を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「感謝される仕事」と「イノベーション(価値創造)」を生み出す人の集団になることを目指し、理念体系の浸透や経営戦略と連動した人材戦略を推進しています。具体的には、多様なキャリアパスの整備、人事制度のブラッシュアップ、教育制度の充実を進め、従業員一人ひとりの成長と活躍の場づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 14.6年 | 6,651,226円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.0% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 96.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量削減率(38.3%)、プラスチック使用量削減率(83.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品事故リスク
店舗営業において、危険異物の混入や食中毒等の食品事故が発生した場合、営業停止処分や社会的信用の喪失、ブランドイメージの低下を招き、業績に重大な影響を与える可能性があります。これに対し、独自の「モス食品安全基準」に基づき、サプライチェーン全体での厳格な衛生管理体制を構築しています。
■(2) 店舗マネジメントリスク
店舗における事故、トラブル、法令違反等が発生した場合、営業継続が困難になるほか、顧客や従業員の安全に関わる問題が生じる可能性があります。全店での定期的な安全点検や従業員教育を実施し、リスクの低減に努めています。
■(3) 人事労務リスク
労働基準法等の法令違反やハラスメント、人手不足等により、優秀な人材の流出や確保困難な状況に陥った場合、業務品質や生産性の低下を招く恐れがあります。人事制度の見直しや働きがいのある環境整備、多様な人材の活用を通じて、人的資本経営を推進しています。



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