共同紙販ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

共同紙販ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

共同紙販ホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する、洋紙や板紙の卸売を中核とする企業です。不動産賃貸や物流事業も手掛け紙流通を支えています。直近の業績はペーパーレス化等の影響で減収となり、経常利益もマイナスとなるなど、厳しい事業環境が続いています。


※本記事は、共同紙販ホールディングスの有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 共同紙販ホールディングスってどんな会社?


紙製品の卸売を主力とし、生活必需品である紙の安定供給を通じて社会に貢献する専門商社です。

(1) 会社概要


1947年に林紙業社として創業し、和洋紙の販売を開始しました。1952年に株式会社へ改組後、1974年に河内屋紙へ社名変更し、1989年に店頭登録、2004年にジャスダック上場を果たしました。2003年の物流部門分社化を経て、2008年に持株会社体制へ移行し、現在の社名へ変更しています。

同社グループは、連結で137名、単体で124名の従業員が在籍しています。筆頭株主は事業会社の日本製紙で、第2位も事業会社の日本紙通商、第3位は日本紙パルプ商事となっており、同業他社や取引先企業と強固な関係を築いています。

氏名 持株比率
日本製紙 18.71%
日本紙通商 11.59%
日本紙パルプ商事 10.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員全店営業統括は市川裕三氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
郡司勝美 代表取締役会長 日本紙パルプ商事入社後、同社に入社。管理本部長、社長等を経て、2024年4月より現職。
市川裕三 代表取締役社長執行役員全店営業統括 芳賀洋紙店(現同社)入社。福岡支店長、本店洋紙本部長等を歴任し、2026年4月より現職。
坂本浩紀 取締役専務執行役員管理本部長 河内屋紙(現同社)入社。内部統制室長、常勤監査役等を歴任し、2026年4月より現職。
金谷吉之助 取締役全店営業統括補佐 芳賀洋紙店(現同社)入社。洋紙本部長、西日本営業統括等を経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、川島英明氏(弁護士)、大春敦氏(元日本製紙常務執行役員)、斉藤賢司氏(日本製紙参与)、女屋健氏(日本紙通商取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「洋紙卸売事業」「不動産賃貸事業」「物流事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 洋紙卸売事業

出版会社や印刷会社などの顧客に対して、情報用紙や印刷用紙、板紙などの多様な紙製品を販売しています。
収益は顧客への紙製品の販売代金から得ています。事業の運営は共同紙販ホールディングスが主体となって行い、特殊紙等の仕入れについては子会社のファイビストオフィスが担当しています。

(2) 不動産賃貸事業

自社グループが保有する不動産資産の有効活用として、不動産の賃貸業務を展開しています。
収益源は、保有する賃貸用不動産から得られる賃料収入です。本事業の運営は共同紙販ホールディングスが単独で行っています。

(3) 物流事業

自社グループが取り扱う紙製品をはじめ、顧客商品の保管や加工作業、各拠点への配送業務を手掛けています。
収益は商品の保管料や加工料、配送運賃として顧客から受け取っています。運営は、物流専門の子会社である関東流通が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が141億円から170億円規模で推移していますが、当期はデジタル化の推進や紙需要の減少により減収となりました。利益面では原材料価格の高騰を背景に利益率が低下し、当期は経常赤字に転じていますが、投資有価証券の売却益により当期利益は黒字を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 141.0億円 170.2億円 167.3億円 168.9億円 164.5億円
経常利益 0.1億円 1.8億円 1.2億円 0.3億円 -0.0億円
利益率(%) 0.1% 1.1% 0.7% 0.2% -0.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.8億円 3.5億円 0.4億円 0.3億円 0.4億円

(2) 損益計算書


当期の売上高は前期比で減少しました。売上総利益率はほぼ横ばいで推移していますが、売上減少の影響で売上総利益の金額が縮小しています。一方で販売費及び一般管理費の削減を進めたものの、補いきれず営業赤字幅が拡大する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 168.9億円 164.5億円
売上総利益 20.0億円 19.3億円
売上総利益率(%) 11.9% 11.7%
営業利益 -0.1億円 -0.3億円
営業利益率(%) -0.1% -0.2%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が6.7億円(構成比34.0%)、運賃及び荷造費が4.2億円(同21.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の洋紙卸売事業は、紙需要の減少により減収減益となりました。不動産賃貸事業は、期中に賃貸マンションの売却を行った影響で減収減益となっています。物流事業は売上高が増加したものの、前期の大規模修繕などの影響が残り、利益は横ばいで推移しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
洋紙卸売事業 168.0億円 163.5億円 2.8億円 2.5億円 1.5%
不動産賃貸事業 0.3億円 0.1億円 0.5億円 0.3億円 37.7%
物流事業 0.6億円 0.8億円 0.3億円 0.3億円 36.9%
連結(合計) 168.9億円 164.5億円 -0.1億円 -0.3億円 -0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動と資産売却等の投資活動で得た資金を活用し、借入金の返済や配当金の支払いなど財務面での改善を進めている状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -2.6億円 0.6億円
投資CF 0.4億円 5.9億円
財務CF -0.4億円 -0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も41.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


国民の豊かな社会生活に極めて重要な教育と文化に「紙」媒体を通じて貢献することを、経営の基本理念としています。日常生活に欠くことのできない生活必需品である紙を常に安定供給していくことを社会的使命として掲げています。

(2) 企業文化


環境の変化に迅速に対応できる体制を図り、あらゆる可能性を追求しつつ永続的発展を目指す文化があります。環境に配慮した「森林認証紙」の販売促進や、廃棄物の発生防止・再生利用など、事業活動を通じた地球環境保全にも積極的に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


目標とする経営指標として、収益力の拡大と資本効率を向上させることにより企業価値の最大化を目指しています。2028年3月期までに以下の目標を安定的に達成することを目指しています。
・当期純利益:2億円以上
・ROE:5%
・ROA:3%
・ROIC:5%

(4) 成長戦略と重点施策


デジタル媒体へのシフトが加速する一方で、環境負荷の少ない循環型の紙素材は多様な用途で使用され、デジタル媒体との共存が図られると想定しています。こうした流れを逃すことなく取扱商品の多角化に取り組み、安定供給と適正価格販売に努めることで企業価値向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成における重要な経営課題として「従業員個々の能力が最大限に発揮できる環境整備」を掲げています。職位や職層に応じた外部研修の参加や社内勉強会を実施し、ワークライフバランスの実現に向けた休暇制度の整備や仕事と子育ての両立支援など、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 51.7歳 24.1年 4,973,463円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 98.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(57.3%)、平均時間外労働時間(22.3時間)、特定健康診断実施率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先の信用リスク

取引先に対して取扱商品の掛売りを行っているため、取引先の信用状況が急速に悪化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、信用限度額設定の厳格な管理や、ファクタリング会社との契約による債権保全策を講じています。

(2) 投資有価証券の時価変動リスク

仕入先や販売先など業務上密接な関係にある企業の株式を保有しており、株式市況の動向次第で業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。時価の変動状況を日々把握し、保有の継続性について定期的な検証を行っています。

(3) 不動産市況等の影響

経営資源の有効活用による資産効率化と財務体質強化のため、所有する賃貸用不動産の売却を行っています。今後も保有資産の効率性を継続的に検証し、財務体質の維持・向上に努める方針ですが、市況変動の影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。