※本記事は、イノテック株式会社の有価証券報告書(第40期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イノテックってどんな会社?
半導体の設計・検査や電子機器に係る開発、販売、サービス提供を中核事業として展開しています。
■(1) 会社概要
1987年に設立され、1990年に店頭登録を行いました。2004年にジャスダック証券取引所への上場を経て、2008年に東京証券取引所市場第二部、2011年に同市場第一部へ上場しました。2002年の三栄ハイテックスの子会社化をはじめ、M&Aにより事業基盤を拡大し、2026年にはファイ・マイクロテックを子会社化しています。
同社グループの従業員数は連結で1,620名、単体で211名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は外国法人のCastlewilder Unlimited Company、第3位はみずほ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.65% |
| Castlewilder Unlimited Company | 3.72% |
| みずほ銀行 | 3.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は大塚信行氏が務めています。社外取締役は3名で、役員全体に占める割合は60%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大塚信行 | 代表取締役社長執行役員 | 1982年ヒューモラボラトリー入社、1991年同社入社。テストソリューション本部長等を経て2021年代表取締役社長、2023年より現職。 |
| 棚橋祥紀 | 代表取締役専務執行役員 | 1990年野村総合研究所入社。スカイパーフェクト・コミュニケーションズ等を経て2010年同社入社。2023年より現職。 |
社外取締役は、中江公人(元防衛事務次官)、廣瀬史乃(阿部・井窪・片山法律事務所パートナー)、栗山史(KPMG FAS)です。
2. 事業内容
同社グループは、「テストソリューション事業」「半導体設計関連事業」「システム・サービス事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■テストソリューション事業
半導体メモリー市場等の顧客向けに、自社製品である半導体テストシステムの開発・販売を行うほか、信頼性評価装置やプローブカードの製造・販売を手掛けています。半導体市場の最新技術に対応する高付加価値ソリューションを提供しています。
主な収益源は、テストシステムや評価装置などの販売代金です。事業の運営は主にイノテックと、台湾の子会社であるSTAr Technologiesが行っています。
■半導体設計関連事業
米国ケイデンス社製の半導体設計用(EDA)ソフトウェアの販売や保守サービスを提供するほか、LSIの受託設計・開発、シミュレーションモデルの設計・開発支援を行っています。アナログ設計や光通信分野での高い技術力が強みです。
主な収益源は、ソフトウェアのライセンス費用や保守サービス料、および設計開発の受託料金です。運営はイノテックに加え、三栄ハイテックス、モーデック、ファイ・マイクロテックなどの子会社が行っています。
■システム・サービス事業
組込み用途向けのCPUボードやBOX型コンピューター等の開発・販売、モデルベース開発支援やキャッシュレス決済関連の機器・決済サービス、車載向け組込みソフト検証ツールの開発などを提供しています。画像処理などの特徴的な技術を活かしたシステム開発にも注力しています。
主な収益源は、ハードウェアの販売代金、ソフトウェアのライセンス料、およびクラウド決済サービス等の継続的なサービス収入です。運営はイノテックのほか、アイティアクセス、レグラス、ガイオ・テクノロジーなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
全体的に売上高は増加傾向にあり、直近5期間で順調に事業規模が拡大しています。経常利益は一時的に落ち込んだ期もありましたが、直近では大きく回復しており、当期利益も過去5期間で最高水準を記録しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 372億円 | 386億円 | 414億円 | 420億円 | 467億円 |
| 経常利益 | 30億円 | 25億円 | 29億円 | 18億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 8.0% | 6.4% | 7.0% | 4.2% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 16億円 | 15億円 | 6億円 | 38億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は約30%台で安定的に推移しています。営業利益は前期から大きく改善しており、本業における収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 420億円 | 467億円 |
| 売上総利益 | 126億円 | 142億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.1% | 30.5% |
| 営業利益 | 19億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% | 6.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が37億円(構成比33%)、研究開発費が21億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収を達成しており、特にテストソリューション事業が大幅な売上増加を牽引しています。半導体設計関連事業やシステム・サービス事業も堅調に推移し、グループ全体の成長に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| テストソリューション事業 | 150億円 | 185億円 |
| 半導体設計関連事業 | 130億円 | 137億円 |
| システム・サービス事業 | 140億円 | 146億円 |
| 連結(合計) | 420億円 | 467億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益と資産の売却等によるキャッシュで借入金の返済などを進める改善型の状況にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 41億円 |
| 投資CF | -4億円 | 58億円 |
| 財務CF | -34億円 | -80億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も54.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
エレクトロニクスビジネスを通じて人々の生活を豊かで快適なものにし、「未来社会に貢献」することを掲げています。エンジニアリングをコアとしたトータルソリューションプロバイダーとして、先端技術に挑戦し続ける「パイオニア」となり、顧客の課題を解決して「不可欠な存在」となることを目指しています。
■(2) 企業文化
社名の由来である「Innovation」と「Technology」を経営の根幹に据え、「未来を変えテック、イノテック」というビジョンを掲げています。創造力を駆使して業界の技術進歩に寄与し、創造力を発揮できる会社の仕組みづくりに心血を注ぐことで、「誇りの持てる会社」を実現する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度から2026年度までの中期経営計画では、資本コストを上回る資本効率性と企業価値の向上を意識した目標設定を行っています。
・ROE(自己資本利益率):10%を目指す(8%以上を維持)
・ROIC(投下資本利益率):8%を目指す(6%以上を維持)
・D/Eレシオ(負債資本倍率):0.5倍以下
・配当性向:50%程度を目安
■(4) 成長戦略と重点施策
「営業利益率の向上」「経営資源の再配分による事業ポートフォリオの最適化」「業績の安定性向上」の3つを共通戦略としています。特定業界や特定顧客への依存から脱却し、定期的な収入が見込めるストック型ビジネスの強化を図ります。また、各事業においては製品ポートフォリオの拡充やマスカスタマイゼーションの推進に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員一人ひとりが意欲を持ち、多様な個性や能力を最大限に発揮できる環境の整備を推進しています。高度な専門性を有する技術人材の確保を重要課題と位置づけ、採用と育成を強化するとともに、柔軟な働き方の促進やダイバーシティの浸透によりイノベーションの創出を支える組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.6歳 | 14.9年 | 8,410,465円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | -% |
※当事業年度において、女性のパート・有期労働者の雇用はありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率の2030年度目標(10.0%)、新卒女性採用比率目標(30%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人財確保に関するリスク
技術革新が激しい事業領域において、高度な技術力と自社製品の研究開発に必要な能力を満たす人財の確保が不可欠です。しかし、技術者の獲得競争は激化しており、十分な採用ができない場合や優秀な技術者が流出した際には、事業計画の遂行や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自社製品等の品質に関するリスク
自社製テストシステムや組込み関連などの製品・サービスにおいて、製品不良やクラウドサービスのサーバー障害等によるシステム停止などの損害が発生する可能性があります。特に半導体製造企業や自動車関連企業への損害賠償は甚大になる恐れがあり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) サイバー攻撃に関するリスク
事業活動において顧客情報や従業員等の個人情報、技術情報などの機密情報を取り扱っています。近年高度化・巧妙化するサイバー攻撃によって情報流出や改ざん、システム障害等が発生した場合は、事業活動の停止や信用の毀損、損害賠償責任等が生じ、財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。



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