※本記事は、平和紙業株式会社の有価証券報告書(第93期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 平和紙業ってどんな会社?
特殊紙を中心とした和洋紙卸売業と不動産賃貸業を展開する専門商社の特徴を解説します。
■(1) 会社概要
1946年に設立され、洋紙・板紙の販売を開始しました。1954年には高級紙や特殊紙のオリジナル商品の在庫販売を始め、現在の主力事業の基盤を築いています。1974年には物流業務を担う平和興産と和紙を販売する辻和を設立しました。1992年に上場を果たし、近年も拠点網の整備を進めています。
従業員数は連結で188名、単体で133名です。筆頭株主は製紙メーカーの特種東海製紙で、第2位は平和紙業取引先持株会、第3位には同じく製紙メーカーの王子エフテックスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 特種東海製紙 | 8.80% |
| 平和紙業取引先持株会 | 7.13% |
| 王子エフテックス | 5.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名、計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は清家義雄氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清家義雄 | 代表取締役社長 | 1993年同社入社。東京本店城北営業部長、取締役業務本部長、名古屋支店長、営業統括本部副本部長等を経て、2015年より現職。 |
| 坂野一俊 | 常務取締役名古屋支店管掌 | 1983年同社入社。名古屋支店営業部長、販売推進部長、執行役員名古屋支店長等を経て、2025年より現職。 |
| 矢野惠一 | 常務取締役大阪本店長 | 1983年同社入社。大阪本店販売推進部長、執行役員大阪本店長等を経て、2025年より現職。 |
| 和田学 | 取締役管理統括本部長 | 1990年三井住友銀行入行。2024年同社入社。取締役管理統括本部長兼総務人事部長等を経て、2025年より現職。 |
| 横山秀雄 | 取締役営業本部長兼東京本店長兼東京本店受注部長 | 1992年同社入社。東京本店営業1部長、執行役員東京本店長等を経て、2026年より現職。 |
| 小宮崇 | 取締役事業推進本部長兼事業開発本部長 | 1997年同社入社。営業統括本部全社業務部長、執行役員業務本部長等を経て、2024年より現職。 |
| 小島正之 | 取締役大阪本店副本店長 | 2001年同社入社。管理統括本部財務部長、執行役員営業企画本部長等を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、柴田貢氏(柴田園芸刃物取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「和洋紙卸売業」および「不動産賃貸業」を展開しています。
■和洋紙卸売業
木材やその他の原料から製造された和洋紙、紙加工品などの販売や、それに付随する物流、保管、紙加工業務を行っています。顧客は印刷会社やデザイン部門、企画部門など幅広く、高付加価値な特殊紙や高級パッケージ用途の技術紙などを提供しています。
商品の販売代金や物流・保管・加工の手数料が主な収益源です。事業の運営は、主に同社および連結子会社の辻和、平和紙業(香港)有限公司が紙の販売を担い、平和興産が商品の物流・保管や紙加工業務を行っています。
■不動産賃貸業
大阪や名古屋地区において自社で保有する固定資産を有効活用し、オフィスビルや賃貸用住戸などの不動産の売買、賃貸借、管理および仲介を行っています。好立地に位置する物流拠点や倉庫の有効活用も進めています。
テナントや外部顧客から受け取る不動産の賃貸料や管理費が主な収益源です。事業の運営は主に同社が行っており、物流拠点である倉庫の一部については、物流子会社の平和興産が外部顧客からの引き受けを担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一定の水準を維持しているものの、直近では情報伝達媒体のデジタル化進展などによる需要縮減の影響でやや減少傾向にあります。利益面でも、物価上昇やコスト増の影響を受けて足元では減少に転じており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 156億円 | 161億円 | 161億円 | 160億円 | 158億円 |
| 経常利益 | 1.3億円 | 1.9億円 | 2.2億円 | 2.1億円 | 1.5億円 |
| 利益率(%) | 0.9% | 1.2% | 1.4% | 1.3% | 0.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.9億円 | 9.2億円 | 1.4億円 | 1.2億円 | 0.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となったものの、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。一方で、販売管理等の負担により営業利益は減少しており、本業の収益力低下がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 160億円 | 158億円 |
| 売上総利益 | 33億円 | 33億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.4% | 20.8% |
| 営業利益 | 1.4億円 | 1.0億円 |
| 営業利益率(%) | 0.9% | 0.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が10億円(構成比30%)、倉庫料が4億円(同12%)、運賃が3億円(同9%)を占めています。また、売上原価(125億円)のうち、商品仕入高などが主な内訳となっています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の状況を見ると、主力である和洋紙卸売業は国内における印刷・情報用紙の需要減や海外市場での販売減少が影響し、減収減益となっています。不動産賃貸業は賃貸面積の増加で売上を伸ばしたものの、新規物件の先行費用等により減益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 和洋紙卸売業 | 160億円 | 158億円 | 1.2億円 | 0.9億円 | 0.6% |
| 不動産賃貸業 | 0.1億円 | 0.1億円 | 0.2億円 | 0.1億円 | 69.7% |
| 調整額 | - | - | - | - | - |
| 連結(合計) | 160億円 | 158億円 | 1.4億円 | 1.0億円 | 0.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.6億円 | 10.5億円 |
| 投資CF | -5.5億円 | -3.8億円 |
| 財務CF | -1.7億円 | -8.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「平和を愛し、環境を重んじ、文字文化を通じ、豊かな未来創りに役立つ企業を目指す」ことを社是として掲げています。また、「お客様に信頼され、社員の働きがいがあり、世界を舞台にして安定的に収益を伸ばせる独創的で魅力的な企業を目指す」という経営ビジョンを通じ、社会が求める持続可能な価値の創造に向けて前進しています。
■(2) 企業文化
同社は「仕入先・得意先と共存共栄を旨とし、誠意を持って接する」「常に創意工夫をおこたらず、開拓・開発に進取と挑戦の精神で行動する」という企業理念を重視しています。また、「環境」を経営の基礎と位置づけ、社員一人ひとりが環境意識を向上させ、地球環境と共生する持続可能な社会への貢献を組織の文化として根付かせています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、本業の収益性を判断する観点から売上高営業利益率を重視し、企業価値向上のためにROE(自己資本利益率)や、長期的な持続可能性を示すROA(総資産利益率)を重要な経営指標に位置づけています。また、フリー・キャッシュ・フローの観点から手元資金の水準を適切に管理し、強固でバランスの取れた財務体質の確立を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は既存事業の強化として、脱プラスチックや脱炭素の代替素材として需要増が期待される高級パッケージや技術紙などの領域へ向けた商品シフトを加速させています。同時に、事業開発本部を中心に、特殊な紙を扱う企業から特殊素材を扱う企業への転換を図り、M&Aによる成長機会の検討や、保有不動産の有効活用を通じた収益基盤の拡充を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を最も重要な経営資本の一つと位置づけ、人的資本への投資を継続的に強化しています。「外部環境の変化に対応できる強い人材の育成」「中途採用等を活用した人材の多様性の確保」「長期的な視点に立った社内人員構成の整備」を戦略方針に掲げ、ジョブローテーションや階層別研修、女性管理職の登用推進などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.9歳 | 22.5年 | 6,382,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 91.1% |
※男性労働者の育児休業取得率については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) デジタル化進展に伴う紙需要及び市況の変動リスク
同社グループの売上高の約95%は国内向けであり、印刷・情報用紙の需要はデジタル化の進展等により構造的な減少傾向にあります。想定以上に紙の需要動向が急速に縮小した場合や、物価高騰に伴う消費低迷が続いた場合、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 多品種展開に伴う固定資産や商品在庫の減損リスク
同社は多品種の特殊紙を小ロットで供給する強みを維持するため、多額の商品在庫や物流拠点等の固定資産を保有しています。在庫を適正に保つための商品入れ替えに注力していますが、想定以上に不動在庫が増加した場合、評価替えや減損損失が発生し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 物流改革や調達環境悪化によるコスト上昇リスク
製紙メーカーの価格改定による調達コストの上昇や、物流業界の働き方改革等に伴う車両・ドライバー不足、原油価格高騰による物流コストの増加が懸念されます。これらを顧客に転嫁できずサービスレベルの維持が困難になった場合や、代替商品の開発等で仕入費用が増加した場合、収益性を圧迫する可能性があります。



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