平和紙業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

平和紙業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。和洋紙の卸売を主力とし、高級紙や特殊紙、ファンシーペーパー等の販売に強みを持つ専門商社です。直近の決算では、特殊紙の一部や技術紙が堅調に推移したものの、ペーパーレス化による印刷・情報用紙の需要減退が響き、売上高は160億円と減収、各利益段階でも減益となりました。


※本記事は、平和紙業株式会社 の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 平和紙業ってどんな会社?


特殊紙を中心とする紙の専門商社として、高付加価値商品の提案や環境配慮型製品の普及に注力しています。

(1) 会社概要


同社は1946年に大阪で設立され、洋紙・板紙の販売を開始しました。1954年には高級紙・特殊紙のオリジナル商品による在庫販売を開始し、独自の強みを確立しました。1972年には香港に現地法人を設立して海外展開を進め、1974年には物流部門等を分離して平和興産を設立しました。1992年に大阪証券取引所市場第二部に株式を上場しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は192名、単体では135名体制です。筆頭株主は特殊紙メーカーの特種東海製紙で、第2位も製紙メーカーの王子エフテックスとなっており、仕入先との強固な関係性がうかがえます。第3位は同社の取引先持株会です。

氏名 持株比率
特種東海製紙 8.61%
王子エフテックス 7.88%
平和紙業取引先持株会 6.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は清家義雄氏が務めています。社外取締役比率は9.1%です。

氏名 役職 主な経歴
清家 義雄 代表取締役社長 1993年同社入社。業務本部長、名古屋支店長、東京本店長、営業統括本部長などを歴任。2015年代表取締役社長就任。2024年より現職。
坂野 一俊 常務取締役名古屋支店管掌 1983年同社入社。名古屋支店営業部長、東京本店営業1部長、名古屋支店長などを歴任。2025年より現職。
矢野 惠一 常務取締役大阪本店長 1983年同社入社。大阪本店販売推進部長、執行役員大阪本店長などを歴任。2025年より現職。
和田 学 取締役管理統括本部長 1990年住友銀行(現三井住友銀行)入行。2023年同社執行役員。2025年より現職。
横山 秀雄 取締役営業本部長兼東京本店長 1992年同社入社。東京本店営業1部長、執行役員東京本店長などを経て、2023年より現職。
小宮 崇 取締役事業推進本部長兼事業開発本部長 1997年同社入社。執行役員業務本部長などを経て、2024年より現職。
小島 正之 取締役東京本店副本店長兼受注部長 2001年同社入社。管理統括本部財務部長、執行役員営業企画本部長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、柴田貢(みのる産業代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「和洋紙卸売業」および「不動産賃貸業」の2つの報告セグメントを展開しています。

(1) 和洋紙卸売業


木材等を原料とする紙、紙加工品の販売およびこれらに付随する物流、保管、加工業務を行っています。特にファンシーペーパー等の高付加価値な特殊紙を主力とし、印刷・情報用紙やパッケージ用紙、機能性を持つ技術紙などを幅広く取り扱っています。

収益は、顧客への商品販売代金や加工賃等から得ています。運営は主に同社および連結子会社の株式会社辻和、平和紙業(香港)有限公司が行っており、物流・保管・加工業務については平和興産株式会社が担っています。

(2) 不動産賃貸業


同社グループが保有する不動産の有効活用を目的として、不動産の売買、賃貸借、管理および仲介を行っています。大阪や名古屋地区などの保有資産を活用し、安定的な収益確保を図っています。

収益は、保有するオフィスビルや倉庫、駐車場などの賃貸料収入から得ています。運営は同社および連結子会社の平和興産株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績推移です。売上高は160億円前後で推移しており、大きな変動はありませんが、直近では微減傾向にあります。利益面では、2023年3月期に一時的な要因等で当期純利益が増加しましたが、経常利益ベースでは2億円前後で安定しています。全体として横ばいから微減のトレンドとなっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 146億円 156億円 161億円 161億円 160億円
経常利益 -0.2億円 1.3億円 1.9億円 2.2億円 2.1億円
利益率(%) -0.1% 0.9% 1.2% 1.4% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.3億円 0.9億円 8.7億円 1.4億円 1.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績比較です。売上高は前期比で微減となり、売上総利益率もわずかに低下しました。営業利益はコスト増等の影響を受け、前期の1.6億円から1.4億円へと減少しています。厳しい事業環境の中で、収益性の維持が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 161億円 160億円
売上総利益 33億円 33億円
売上総利益率(%) 20.4% 20.4%
営業利益 1.6億円 1.4億円
営業利益率(%) 1.0% 0.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が9億円(構成比30%)、倉庫料が4億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況です。主力である和洋紙卸売業は、特殊紙や技術紙が健闘したものの、全体的な紙需要の縮小により減収減益となりました。一方、不動産賃貸業は倉庫業務の新規受託などにより増収増益となり、小規模ながら収益に貢献しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
和洋紙卸売業 161億円 160億円 1.4億円 1.2億円 0.8%
不動産賃貸業 0.1億円 0.1億円 0.2億円 0.2億円 191.4%
調整額 -6億円 -6億円 0.0億円 0.0億円 -
連結(合計) 161億円 160億円 1.6億円 1.4億円 0.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に商品の仕入や販売費及び一般管理費等の営業費用により変動します。投資活動によるキャッシュ・フローは、倉庫等における機械装置等の固定資産購入が主な資金需要となります。財務活動によるキャッシュ・フローは、運転資金を自己資金及び金融機関からの短期借入金で、設備資金を自己資金で調達する方針です。

フリー・キャッシュ・フローについては、有事の際に機動的な対応がとれるよう備えつつ、平時においては手元資金の適正な範囲内で、成長投資と株主還元とをバランスよく保ちながら分配します。株主還元は安定的な配当として年2回を基本方針としており、連結による損益を基礎に、特別な損益の状態である場合を除き、安定的・継続的な利益還元に努めます。成長投資については、経営状況を判断しながら、さまざまな施策の優先順位を検討し、事業領域との親和性や事業成長性を重視した上で、キャッシュを一定量振り向ける準備もします。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.2億円 2.6億円
投資CF -0.1億円 -5.5億円
財務CF -3.4億円 -1.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「平和を愛し、環境を重んじ、文字文化を通じ、豊かな未来創りに役立つ企業を目指す」ことを社是として掲げています。また、経営ビジョンとして「お客様に信頼され、社員の働きがいがあり、世界を舞台にして安定的に収益を伸ばせる独創的で魅力的な企業を目指す」ことを定めています。

(2) 経営文化


「仕入先・得意先と共存共栄を旨とし、誠意を持って接する」および「常に創意工夫をおこたらず、開拓・開発に進取と挑戦の精神で行動する」を企業理念として掲げています。全ての利害関係者の信頼に応えることを基本としつつ、環境配慮や社会貢献を通じて紙文化の向上を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


本業の収益性を判断する観点から「売上高営業利益率」を重視するとともに、企業価値向上の観点から「株主資本利益率(ROE)」、持続可能性の指標として「総資産利益率(ROA)」を重要な経営指標と位置づけています。また、フリー・キャッシュ・フローの観点から手元資金水準の管理も行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


デジタル化による紙需要減少に対応するため、高付加価値な特殊紙や高級パッケージ、機能性を持つ技術紙等の成長領域へのシフトを加速させています。また、脱プラスチック需要を取り込むための環境配慮型商品の拡販や、SNSを活用した情報発信の強化に加え、新規事業開発や不動産の有効活用による収益基盤の安定化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人当たりの生産性・効率化を高めることで収益性の向上を図ると同時に、働きがいのある職場環境の構築を目指しています。多様性の確保を重視し、女性管理職比率の向上に取り組むほか、次期中核人材の育成に向けたジョブローテーションや各種研修、処遇改善などの人的資本への投資を強化する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.3歳 22.0年 6,108,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は、管理職に占める女性労働者の割合を公表しています。なお、育児休業取得率および男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合目標(18.0%)、男性の平均勤続年数(22.5年)、女性の平均勤続年数(21.2年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 紙需要及び市況の変動リスク


売上の大部分を国内が占めており、デジタル化の進展による印刷・情報用紙の需要減退が加速しています。インバウンドや環境対応需要の取り込みを図っていますが、市場全体の縮小が想定以上に進んだ場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 固定資産や商品在庫の減損リスク


多品種の在庫保有を強みとする一方で、不動在庫が発生するリスクがあります。在庫評価替えや保有する不動産の減損処理が必要となった場合、財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) コスト上昇リスク


製紙メーカーの価格改定や物流コストの上昇に加え、原燃料価格や為替変動の影響を受ける可能性があります。また、メーカーの設備停機に伴う代替商品手配等により仕入コストが増加することも懸念されます。

(4) カントリーリスク


香港に子会社を有しているため、同地域の政治・経済情勢の変化や地政学リスクの影響を受ける可能性があります。為替変動や物流費の高騰など、グローバルな情勢変化が業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。