ヨンキュウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨンキュウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨンキュウは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、水産物卸売事業やマグロ・ウナギの養殖事業、鮮魚小売業などを展開する企業です。直近の業績では、魚価の高値推移や生餌の販売数量増加などにより、売上高および各段階利益が前期を上回る増収増益を達成しており、引き続き持続的な成長に向けた取り組みを推進しています。


※本記事は、株式会社ヨンキュウの有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヨンキュウってどんな会社?


ヨンキュウは養殖魚などの鮮魚販売および養殖業者向けの餌料・飼料販売を主要事業として展開する水産企業です。

(1) 会社概要


1963年4月に四国急速冷凍として設立され、1974年に鮮魚部門を開設しました。1990年に合併を経て新しい四国急速冷凍となり、1991年に現在のヨンキュウへ商号変更しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、市場再編に伴い2022年4月に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で134名、単体で109名です。筆頭株主はオフィスFRMで、第2位は笠岡暁美氏、第3位は笠岡伸一氏となっており、上位株主に創業家や関連法人が名を連ねています。

氏名 持株比率
オフィスFRM 11.02%
笠岡暁美 7.52%
笠岡伸一 6.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は笠岡恒三氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は3名となっており、社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
笠岡恒三 代表取締役社長 1980年四国急速冷凍に入社し各子会社の役員等を歴任。代表取締役専務や海昇の代表取締役社長を経て、2011年より現職。
清水敏雄 専務取締役 1976年伊予銀行に入行。人事部次長を経て2007年に内部監査室長として出向。2009年に取締役となり、経理部長等を経て2016年より現職。
梅田晃三 常務取締役 1993年入社。海昇の取締役や代表取締役社長を歴任し、営業一部長や餌料部長などを経て2016年に常務取締役となり、2019年より現職。
笠岡繁樹 取締役相談役 1967年四国急速冷凍に入社。四急運輸の代表取締役社長などを経て2011年に取締役相談役へ就任。2012年より西日本養鰻の代表取締役社長。
宇都宮紀 取締役総務部長 1982年伊予銀行に入行し支店長等を務めた後、2012年に総務部長として出向。2019年に同行を退職し、取締役に就任し総務部長を委嘱され現職。
山口博規 取締役内部監査室長 1984年伊予銀行へ入行し、2018年に内部監査室長として出向。最上鮮魚の取締役などを兼任し、執行役員を経て2022年より現職。
水野明洋 取締役餌料部長 1997年入社。餌料部の課長や次長、部長を歴任し、2022年に執行役員となる。2026年に取締役に就任し餌料部長を委嘱され現職。


社外取締役は、高川英穂(元宇和島信用金庫理事長)、廣瀬了(元宇和島自動車代表取締役社長・会長)、外輪宏二(現Umios執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鮮魚の販売事業」「餌料・飼料の販売事業」および「その他」事業を展開しています。

鮮魚の販売事業


タイ、ハマチ、カンパチ等の養殖魚や天然魚、加工品のほか、マグロやウナギの養殖、稚魚の販売を行っています。全国の中央卸売市場の荷受会社や養殖業者などが主な顧客となります。

仕入れた養殖魚等の販売代金が主な収益源です。運営はヨンキュウおよび子会社の海昇などが担い、マグロ養殖は日振島アクアマリン有限責任事業組合、ウナギ養殖は西日本養鰻がそれぞれ担当しています。

餌料・飼料の販売事業


養殖業者等に対して、養殖魚用の生餌や配合飼料、モイストペレットなどを販売しています。健全な漁場環境の保持を目指し、配合飼料の低魚粉化や原料の多様化にも取り組んでいます。

養殖業者へ餌料・飼料を販売した代金が主な収益源となります。事業の運営は主にヨンキュウおよび子会社の海昇が担当しており、子会社の日振島アクアマリン有限責任事業組合への取引も発生しています。

その他事業


報告セグメントに含まれない事業として、一般貨物運送事業を展開しています。生餌の購入や鮮魚の販売に係る運送などを主に担当しています。

運送代金などが主な収益源となります。運営は子会社の四急運輸が担当し、グループ内の物流を支える役割を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は4期連続で順調に拡大しており、安定した成長基盤を構築しています。経常利益と当期利益についても直近で大幅な増益を達成しており、高い収益性を確保していることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 352億円 402億円 451億円 449億円 477億円
経常利益 29億円 31億円 24億円 21億円 22億円
利益率(%) 8.2% 7.7% 5.3% 4.7% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 23億円 16億円 14億円 38億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る結果となりました。売上総利益率は前期から改善しており、着実な利益成長を実現しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 449億円 477億円
売上総利益 53億円 59億円
売上総利益率(%) 11.9% 12.5%
営業利益 15億円 19億円
営業利益率(%) 3.4% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、売上運賃が13億円(構成比33%)、給料手当が4億円(同10%)、販売手数料が4億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


鮮魚の販売事業は魚価の高値推移などにより増収となり、大幅な増益を達成しました。餌料・飼料の販売事業も生餌の販売数量増加により増収増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
鮮魚の販売事業 288億円 315億円 0.7億円 2億円 0.7%
餌料・飼料の販売事業 160億円 162億円 15億円 17億円 10.5%
その他 - - -0.2億円 -0.4億円 -
調整額 -7億円 -8億円 -0.2億円 -0.5億円 -
連結(合計) 449億円 477億円 15億円 19億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益と資産売却で借入返済などを進める改善型の局面となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 27億円
投資CF -13億円 33億円
財務CF -2億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も73.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「当社の基本は人であり、社員の情熱と能力を引き出し、人づくりを進めていく。」と掲げています。水産商社として魚類養殖業界と国内外の消費市場を結び付け、地域の発展や豊かな食卓となるように貢献するという使命のもと、社会から信頼を得られる透明性の高い健全な経営を目指しています。

(2) 企業文化


持続可能な「育てる漁業」や「自然環境の保護」など4つの重点課題を定めたSDGs宣言を掲げ、水産資源の持続的利用や環境保全に積極的に取り組む文化があります。また、法令遵守の徹底や透明性の高い健全な経営体制の確立に努め、ステークホルダーとの良好な関係構築を重視しています。

(3) 経営計画・目標


経営環境が大きく変動するため、中長期的な目標数値は設定していませんが、当期においては当初目標数値として以下の計画を掲げて経営を推進しました。

・連結売上高:450億円
・連結経常利益:26億円

(4) 成長戦略と重点施策


安定的な収益確保と持続的な成長を目指し、付加価値の高い人工ふ化事業や加工事業の生産性・収益性向上を図っています。具体的には、加工工場の新設移転や食品安全システムの認証取得による加工事業の強化、および米国やEU向けの輸出推進による販路拡大に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりの潜在能力を引き出し、組織全体の力へと結びつけるため、採用、配置、育成を計画的に行い、必要な人材を確保することに注力しています。各人の役割や成果に応じた公正な処遇となるよう評価を行い、フィードバックを通じた成長促進と持続的な企業価値向上に取り組む方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.9歳 12.7年 4,778,997円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の育児休業等の取得率(33%)、採用した労働者に占める女性の割合事務職(15%)、採用した労働者に占める女性の割合現業職(0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営成績の変動要因と季節性


販売事業は季節的変動があり、稚魚の池入時期や年末年始に売上が増加する傾向があります。また、養殖魚の生産量と販売価格のバランスによりマージンが変動し、価格変動が大きい場合は販売数量や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自然災害や環境変化によるリスク


養殖業界では、台風や津波などの自然災害、海の環境汚染や赤潮の発生により、業界全体に大規模な被害が生じるリスクがあり、被害状況によっては同社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制や食品安全リスク


食品衛生法や製造物責任法などの法的規制の強化や新たな規制が設けられた場合、業績に影響を受ける可能性があります。また、独自の安全管理体制のもと取り組んでいますが、品質問題が生じた場合も同様のリスクがあります。

(4) 売上債権等の貸倒リスク


与信管理の厳格化など対応策を講じていますが、魚価の著しい低下や養殖魚の斃死による在庫棄損が生じた場合、生産者の貸倒リスクが高まり、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。