北陸電力 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北陸電力 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所 プライム市場に上場しており、北陸三県および岐阜県の一部を供給区域とする電力会社です。発電・販売事業と送配電事業を中核に、情報通信や不動産等の事業も展開しています。直近の業績は、売上高が8583億円と増収し、親会社株主に帰属する当期純利益は651億円の増益となりました。


※本記事は、北陸電力株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北陸電力ってどんな会社?


北陸三県と岐阜県の一部に電力を供給する、水力発電比率の高い電力会社です。

(1) 会社概要


1951年5月、電気事業再編成令に基づき、北陸配電および日本発送電から資産譲渡を受け設立されました。1952年12月に東京証券取引所市場第一部に上場しています。2019年4月には送配電部門の法的分離に対応するため北陸電力送配電を設立し、2020年4月に一般送配電事業を承継しました。2024年10月には海外事業の強化を目的にHokuriku International Investment,Inc.を設立しています。

同社グループの従業員数は連結8,162名、単体2,352名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は供給区域の自治体である富山県、第3位は従業員による持株会となっています。地域密着型の公益企業としての側面と、従業員が経営に参画する側面を持っています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.44%
富山県 5.40%
北陸電力従業員持株会 3.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長 社長執行役員は松田 光司氏です。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
金井 豊 代表取締役会長 1977年4月同社入社。常務取締役、代表取締役副社長を経て、2015年6月代表取締役社長 社長執行役員に就任。2021年6月より現職。
松田 光司 代表取締役社長社長執行役員 1985年4月同社入社。執行役員、取締役 常務執行役員を経て、2021年6月より現職。
平田 亙 代表取締役副社長副社長執行役員 1986年4月同社入社。執行役員、取締役 常務執行役員、取締役副社長 副社長執行役員を経て、2025年6月より現職。
小田 満広 取締役常務執行役員地域共生本部長原子力本部副本部長 1987年4月同社入社。執行役員、常務執行役員を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、安宅 建樹(金沢商工会議所会頭)、庵 栄伸(富山商工会議所会頭)、山下 裕子(一橋大学大学院経営管理研究科教授)、八木誠一郎(福井商工会議所会頭)です。

2. 事業内容


同社グループは、「発電・販売事業」「送配電事業」および「その他」事業を展開しています。

発電・販売事業

主に北陸三県(富山県、石川県、福井県の一部を除く)と岐阜県の一部において、一般家庭や法人顧客向けに電力を供給しています。水力、火力、原子力、再生可能エネルギーなど多様な電源を組み合わせた発電事業と、電力の小売事業を行っています。

収益は、家庭や企業などの電力利用者からの電気料金や、卸電力市場等への販売により得ています。運営は主に同社が行っているほか、日本海発電等のグループ会社が発電事業を担い、同社へ電力を供給しています。

送配電事業

発電所で作られた電気を利用者に届けるための送電線、変電所、配電線などのネットワーク設備の維持・運用を行っています。また、電力の安定供給を確保するための需給調整業務なども担っています。

収益は、小売電気事業者等から受け取る託送料金(送配電網の利用料)が主な源泉です。運営は、2020年の法的分離により分社化された北陸電力送配電が行っています。

その他

電気事業の運営に必要な設備の建設・保守、資機材の製造、情報通信サービスの提供、不動産管理など、多岐にわたる事業を展開しています。

収益は、設備工事の請負代金、資機材の販売代金、通信回線サービス料、不動産賃貸料などから構成されます。運営は、北陸電気工事、北陸通信ネットワーク、北電産業などのグループ会社がそれぞれの専門分野を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年3月期に一時減少しましたが、その後は増加傾向にあり、直近の2025年3月期には8583億円に達しています。利益面では、燃料価格高騰などの影響により2022年3月期と2023年3月期に損失を計上しましたが、2024年3月期以降は黒字回復し、安定した利益を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 6,394億円 6,138億円 8,176億円 8,082億円 8,583億円
経常利益 124億円 -176億円 -937億円 1,079億円 914億円
利益率(%) 1.9% -2.9% -11.5% 13.4% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 68億円 -68億円 -884億円 568億円 651億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加しましたが、経常利益は減少しています。これは、総販売電力量の増加による増収効果があったものの、燃料費調整制度のタイムラグ影響により収益が押し下げられたことなどが要因です。一方、特別利益として災害等扶助交付金を計上したことなどにより、当期純利益は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8,082億円 8,583億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 1,149億円 1,010億円
営業利益率(%) 14.2% 11.8%


電気事業営業費用のうち、購入電力料が2,469億円(構成比36.4%)、燃料費が2,100億円(同31.0%)を占めており、これらが主要な費用項目となっています。

(3) セグメント収益


発電・販売事業では、総販売電力量の増加により売上が伸長しました。送配電事業も、託送収益の増加等により増収となりました。その他事業においては、請負工事の受注増加などにより売上が増加しています。全体として全セグメントで増収基調となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
発電・販売事業 6,844億円 7,164億円
送配電事業 388億円 528億円
その他 850億円 890億円
連結(合計) 8,082億円 8,583億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を設備投資や借入金の返済に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2,233億円 1,523億円
投資CF -695億円 -2,341億円
財務CF -937億円 -489億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「北陸電力グループ理念」として「Power & Intelligenceでゆたかな活力あふれる北陸を」を掲げています。電力(Power)と知恵・情報(Intelligence)を組み合わせ、地域社会の持続的な発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「信頼され選択される北陸電力グループ」を目指し、地域に根差したエネルギー事業者として「低廉で良質なエネルギーを安定的にお届けする」という社会的使命を重視しています。また、コンプライアンスの徹底や安全最優先の姿勢を基本とし、誠実な業務運営に取り組む風土があります。

(3) 経営計画・目標


「北陸電力グループ新中期経営計画<2023~2027年度>」において、以下の財務目標を掲げています。
* 連結経常利益 450億円以上
* 連結自己資本比率 20%以上(2027年度末)
* 連結自己資本利益率(ROE) 8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「安定供給確保と収支改善及び財務基盤強化」「地域と一体となった脱炭素化の推進」「持続的成長に向けた新事業領域の拡大」を経営の3本柱としています。特に、災害対応力の強化、富山新港火力発電所LNG2号機の建設を含む脱炭素化への対応、志賀原子力発電所2号機の早期再稼働に向けた取り組みを重点的に推進し、企業価値の向上と2050年カーボンニュートラルの実現を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を企業価値向上の原動力と位置づけ、人的資本への投資を推進しています。階層別・職能別教育や資格取得支援を通じて能力伸長を図るとともに、早期の役職登用やプロジェクト推進リーダーの設置により若手の活躍を促進しています。また、DE&I推進や柔軟な勤務制度の整備により、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 20.3年 8,021,087円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.4%
男性育児休業取得率 97.4%
男女賃金差異(全労働者) 60.9%
男女賃金差異(正規雇用) 63.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得日数(21.2日)、障がい者雇用率(2.59%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原子力を取り巻く状況

志賀原子力発電所の長期停止や稼働率低下は業績に影響を与える可能性があります。現在は新規制基準への適合性確認審査が進められており、安全性向上対策工事も実施中ですが、審査の進捗や国のエネルギー政策等の動向により、再稼働時期等が変動するリスクがあります。

(2) 電気事業に関わる制度の変更等

電力システム改革の進展や、脱炭素社会実現に向けた環境規制の強化等が業績に影響する可能性があります。第7次エネルギー基本計画やGX推進法に基づくカーボンプライシングの導入、排出量取引制度への対応など、事業環境の変化に伴う新たなコスト負担や競争激化が想定されます。

(3) 燃料価格、卸電力市場価格の変動等

火力発電の燃料である石炭、石油、LNGの価格や為替相場の変動、および卸電力市場価格の変動は、調達コストや販売収入に直接影響します。燃料費調整制度等による一定の変動抑制効果はあるものの、急激な価格変動や調達トラブルが発生した場合、業績が悪化するリスクがあります。

(4) 自然災害・操業トラブル

地震や台風などの大規模な自然災害、または設備トラブルにより、発電・送配電設備が損害を受けた場合、復旧費用や代替電源調達費用の増加により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に令和6年能登半島地震のような大規模災害への対応とレジリエンス強化が課題となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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