※本記事は、中国電力の有価証券報告書(第102期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中国電力ってどんな会社?
中国地域を基盤とし、電力・ガスの供給から通信サービスまでを総合的に手掛けるインフラ企業です。
■(1) 会社概要
1951年に中国配電と日本発送電の合併により設立され、1952年に上場しました。2000年にLNG供給事業を開始し、総合エネルギー企業としての基盤を強化しました。2020年には送配電事業の中立性を確保するため、中国電力ネットワークに一般送配電事業を承継し、現在の事業体制へと移行しています。
同社グループは連結で12,606名、単体で3,584名の従業員を擁し、中国地域に根差したインフラを支えています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には地方公共団体である山口県が名を連ねています。地域社会との強固な結びつきを背景に、安定的な事業運営を継続しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.81% |
| 山口県 | 9.43% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役社長執行役員は中川賢剛氏が務めています。社外取締役比率は46.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中川賢剛 | 代表取締役社長執行役員 | 1985年同社入社。常務執行役員などを経て2024年10月より現職。 |
| 芦谷茂 | 代表取締役会長 | 1979年同社入社。常務執行役員、代表取締役副社長等を経て2023年より現職。 |
| 北野立夫 | 代表取締役副社長執行役員 電源事業本部長 | 1983年同社入社。島根原子力発電所長、取締役常務執行役員等を経て2023年より現職。 |
| 皆本恭介 | 代表取締役副社長執行役員 | 1982年同社入社。地域共創本部長などを経て2025年6月より現職。 |
| 外林浩子 | 取締役常務執行役員 | 2004年同社入社。経営企画部門部長等を経て2024年6月より現職。 |
| 中村公俊 | 取締役常務執行役員 | 1983年同社入社。調達本部部長等を経て2025年10月より現職。 |
社外取締役は、菖蒲田清孝(マツダ代表取締役会長)、田中洋樹(短資協会会長)、岡島礼奈(ALE代表取締役CEO)、小谷典子(元山口大学大学院教授)、久我英一(元皇宮警察本部長)、藤本圭子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合エネルギー事業」「送配電事業」「情報通信事業」および「その他」事業を展開しています。
■総合エネルギー事業
同セグメントでは、個人および法人顧客向けに電力やガスの販売、ならびに発電・電力調達を行っています。カーボンニュートラル社会の実現に向け、再生可能エネルギーや原子力、高効率火力を組み合わせた安定的なエネルギー供給を担っています。
収益は、電気料金やガス料金、各種ソリューションサービスの提供対価として得ています。運営は同社のほか、エネルギア・ソリューション・アンド・サービスなどの子会社が担い、脱炭素化を推進しながら多様な顧客ニーズに応える事業を展開しています。
■送配電事業
同セグメントでは、発電所でつくられた電気を顧客のもとへ届けるための送電線や変電所、配電線などのネットワーク設備の維持・運用を行っています。中国地域全域における電力の安定供給と、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた基盤構築を担っています。
収益は、小売電気事業者などから受け取る託送料金や、事業者間の精算収益などを主な柱としています。運営は一般送配電事業者である中国電力ネットワークが担い、中立・公平かつ透明性の高いネットワーク運用を通じて事業を展開しています。
■情報通信事業
同セグメントでは、光ファイバー網などの通信インフラを活用し、個人や法人、自治体向けに電気通信サービスや情報処理サービスを提供しています。電力の安定供給を支える通信網を基盤とし、地域のデジタル化ニーズに対応しています。
収益は、通信回線の利用料や情報システム開発・保守などの受託サービス料から得ています。運営は主にエネコムが担っており、地域社会のDX推進をサポートしながら、グループの強みを活かした情報通信ビジネスを展開しています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、不動産・ビル管理、リース・保険代理業、温浴事業などを展開しています。収益は賃貸料やサービス提供料から得ており、エネルギアL&Bパートナーズなどのグループ会社が地域に密着したサービスを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、燃料価格の高騰等により一時は赤字を計上しましたが、その後は料金改定や島根原子力発電所の稼働などにより黒字へ転換しています。直近では燃料費調整額の減少などにより減収減益となったものの、安定した利益水準を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11,366億円 | 16,946億円 | 16,288億円 | 15,292億円 | 14,423億円 |
| 経常利益 | -619億円 | -1,068億円 | 1,941億円 | 1,285億円 | 802億円 |
| 利益率(%) | -5.4% | -6.3% | 11.9% | 8.4% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -397億円 | -1,554億円 | 1,335億円 | 985億円 | 685億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の傾向を見ると、売上高は減少したものの、営業利益は902億円を確保しています。卸・小売事業での競争進展などの影響を受け減益となりましたが、継続的なコスト削減や安定供給の維持に努めています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 15,292億円 | 14,423億円 |
| 営業利益 | 1,291億円 | 902億円 |
| 営業利益率(%) | 8.4% | 6.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が359億円(構成比26%)、委託費が261億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の総合エネルギー事業は、小売販売電力量が増加したものの、燃料費調整額の減少などにより減収減益となりました。一方、送配電事業も託送需要の減少で減益となりましたが、情報通信事業は堅調に推移し増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総合エネルギー事業 | 12,617億円 | 12,019億円 | 952億円 | 703億円 | 5.8% |
| 送配電事業 | 2,039億円 | 1,769億円 | 252億円 | 121億円 | 6.8% |
| 情報通信事業 | 334億円 | 340億円 | 47億円 | 49億円 | 14.4% |
| その他 | 303億円 | 295億円 | 75億円 | 68億円 | 23.0% |
| 連結(合計) | 15,292億円 | 14,423億円 | 1,291億円 | 902億円 | 6.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,860億円 | 2,373億円 |
| 投資CF | -3,588億円 | -2,362億円 |
| 財務CF | 1,612億円 | 1,354億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.8%で、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、企業理念として「ENERGIA(エネルギア)」「信頼。創造。成長。」を掲げています。エネルギー供給を通じた地域・社会の課題解決を自らの使命とし、ステークホルダーとともに持続的な発展と企業価値の最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
サステナビリティ経営の土台として「エネルギアグループ企業行動憲章」を定めています。コンプライアンス最優先の業務運営を徹底し、すべての人々の人権尊重や労働安全衛生の確保など、事業活動を通じた社会的な責任を果たす文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「中国電力グループ経営ビジョン2040」のもと、持続的な成長に向けた基盤づくりを進めています。2030年度の財務目標として以下を設定しています。
- 自己資本比率:20%以上
- ROIC(総合エネルギー事業):3%以上
- 連結経常利益:1,100億円
■(4) 成長戦略と重点施策
電源競争力の強化と脱炭素化の両立を図るため、島根原子力発電所の安定稼働や新規制基準対応、柳井発電所新2号機の建設など大型電源の確保に注力しています。また、ガスも加えた総合的なエネルギーソリューションサービスの展開により、産業の電化やGX(グリーントランスフォーメーション)を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な人材の活躍推進方針」を策定し、「自律性」と「多様性」の更なる推進、および個人と組織の関係性向上に取り組んでいます。エイジ・ダイバーシティの推進や職務基準の人事・処遇制度の導入を通じ、すべての世代の社員が持ち場で輝くことができる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 20.1年 | 8,945,510円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 89.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 56.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、高ストレス者率(5.6%)、疾病休務率(1.45%)、障がい者雇用率(2.73%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原子力関連(原子力不稼働・停止、原子力事故)
新規制基準への適合や安全対策工事の進捗、司法判断等により、原子力発電所の運転停止や稼働遅延が長期化した場合、代替火力燃料・電力の調達費用の増加などが業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場変動(電力・燃料価格の変動)
燃料調達価格や卸電力市場価格の変動、デリバティブ取引の複雑化などにより調達コストが増加するリスクがあります。同社はデリバティブ取引の活用や料金制度の見直しにより、市場リスクの低減・回避を図っています。
■(3) エネルギー市場の競争激化
法人・個人の顧客離脱により収支が悪化するリスクがあります。同社は多様な電源調達チャネルの確保や、再生可能エネルギーを活用した料金メニュー、省エネコンサルティングなどのソリューション拡大により需要の維持・拡大に取り組んでいます。
■(4) システム障害・サイバー攻撃
ランサムウェアなどのサイバー攻撃やシステム障害が発生した場合、機密情報の流出や業務の停滞を招き、社会的信用の失墜や対応費用の増加につながるリスクがあります。同社は多層的なセキュリティ対策や復旧訓練を実施しています。



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