※本記事は、四国電力株式会社の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 四国電力ってどんな会社?
四国地域を基盤とする電力会社です。「マルチユーティリティー企業グループ」への変革を掲げ、電気事業に加え、情報通信や国際事業などの成長分野にも注力しています。
■(1) 会社概要
1951年5月、電気事業再編成令により設立されました。1954年に東京証券取引所へ上場し、1977年には伊方発電所の営業運転を開始しました。2004年にはSTNetを合併して情報通信事業を強化し、2019年に送配電事業を分社化(2020年承継)するなど、事業環境の変化に応じた体制強化を進めています。
同グループの連結従業員数は7,962人、単体では2,121人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には地元の交通・観光事業者である伊予鉄グループが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.60% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.91% |
| 伊予鉄グループ | 3.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は宮本 喜弘氏です。社外取締役比率は35.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮本 喜弘 | 取締役社長 社長執行役員 | 1985年入社。総合企画室経営企画部長、取締役常務執行役員総合企画室長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 長井 啓介 | 取締役会長 | 1981年入社。取締役副社長総合企画室長などを経て、2019年取締役社長、2024年6月より現職。 |
| 白井 久司 | 取締役副社長執行役員 | 1981年入社。常務取締役経理部・資材部担当、取締役常務執行役員事業開発室長などを経て、2022年6月より現職。 |
| 川西 德幸 | 取締役副社長執行役員 | 1983年入社。常務執行役員原子力本部副本部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 宮崎 誠司 | 取締役常務執行役員 | 1983年入社。取締役常務執行役員営業推進本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 杉ノ内 謙三 | 取締役常務執行役員 | 1984年入社。常務執行役員人事労務部・総合研修所・総合健康開発センター担任などを経て、2023年6月より現職。 |
| 大林 伸二 | 取締役常務執行役員 | 1984年入社。常務執行役員営業推進本部副本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 石田 英芳 | 取締役常務執行役員 | 1989年入社。常務執行役員火力本部副本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 川原 央 | 取締役監査等委員 | 1980年入社。常務執行役員送配電カンパニー社長補佐などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、香川亮平(百十四銀行取締役副頭取)、髙畑富士子(ときわ社長)、大塚岩男(伊予銀行会長)、西山彰一(宇治電化学工業会長)、泉谷八千代(元日本放送協会松山放送局長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「発電・販売事業」「送配電事業」「情報通信事業」「エネルギー事業」「建設・エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 発電・販売事業
四国地域を中心とした電力の発電および小売販売、卸販売を行っています。伊方発電所(原子力)や火力発電所、再生可能エネルギー電源などを活用し、安定的な電力供給を担っています。
収益は、家庭や法人顧客からの電気料金収入や、卸電力市場等への販売収益により構成されます。運営は主に四国電力が担当し、再生可能エネルギー開発などはグループ会社とも連携して行っています。
■(2) 送配電事業
四国エリアにおける送電・変電・配電ネットワークの維持・運用を行い、発電所から消費者への電力供給サービスを提供しています。
収益は、小売電気事業者等から受け取る託送収益や、需給調整市場における収益等からなります。運営は、2020年に分社化された四国電力送配電が担っています。
■(3) 情報通信事業
法人向けのデータセンターサービスやクラウドサービス、個人向けの光インターネット接続サービス(ピカラ)などを提供しています。
収益は、サービスの利用料や回線使用料等です。運営は、STNetやケーブルメディア四国、ケーブルテレビ徳島などの連結子会社が行っています。
■(4) エネルギー事業
LNG(液化天然ガス)の受入・気化・払出やガス販売、熱供給事業などを行っています。
収益は、ガスや熱の販売代金、LNG基地の利用料等です。運営は、四国電力や坂出LNGなどのグループ会社が行っています。
■(5) 建設・エンジニアリング事業
発電所や送変電設備の建設・保守点検、電気計器の製造・販売、空調・給排水衛生設備の設計・施工などを行っています。
収益は、工事請負代金や製品販売代金等です。運営は、四電エンジニアリングや四国計測工業などのグループ会社が行っています。
■(6) その他
不動産賃貸、電気温水器等の販売・リース、調査・研究開発など多岐にわたる事業を展開しています。
収益は、賃貸料や商品販売代金、業務受託料等です。運営は、四電ビジネスや四国総合研究所などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績は、売上高、利益ともに増加傾向にあります。特に2024年3月期以降は、燃料価格変動の影響緩和や卸販売の増加等により、経常利益が高い水準で推移しています。当期は売上高が8,500億円を超え、利益率も安定しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,419億円 | 8,332億円 | 7,874億円 | 8,514億円 |
| 経常利益 | -121億円 | -225億円 | 801億円 | 916億円 |
| 利益率(%) | - | - | 10.2% | 10.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -63億円 | -229億円 | 605億円 | 683億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して増収増益となりました。売上高は約8.1%増加し、営業利益も増加しています。売上総利益率および営業利益率は前年より改善しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,874億円 | 8,514億円 |
| 営業利益 | 785億円 | 891億円 |
| 営業利益率(%) | 10.0% | 10.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が147億円(構成比22%)、委託費が216億円(同32%)、その他が273億円(同40%)を占めています(電気事業営業費用における内訳)。
■(3) セグメント収益
四国電力の業績を見ると、中核である「発電・販売事業」と「送配電事業」が全体の大部分を占め、業績を力強く牽引しており、いずれも前期比で増収増益となっています。
また、転職志望者にとって注目すべきポイントとして、「情報通信事業(STNetなど)」や「エネルギー事業」が利益率21%台と非常に高い水準を誇っている点が挙げられます。事業規模(売上)は電力事業が圧倒的ですが、これら周辺の事業基盤が安定的な高収益源としてグループ全体を支えている構造が見て取れます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 発電・販売事業 | 6,700億円 | 7,096億円 | 358億円 | 414億円 | 5.8% |
| 送配電事業 | 2,401億円 | 2,521億円 | 201億円 | 261億円 | 10.4% |
| 情報通信事業 | 492億円 | 504億円 | 104億円 | 106億円 | 21.1% |
| エネルギー事業 | 258億円 | 266億円 | 67億円 | 56億円 | 21.0% |
| 建設・エンジニアリング事業 | 653億円 | 553億円 | 59億円 | 55億円 | 9.9% |
| その他 | 356億円 | 360億円 | 25億円 | 29億円 | 8.1% |
| 調整額 | -2,986億円 | -2,786億円 | -12億円 | -5億円 | - |
| 連結(合計) | 7,874億円 | 8,514億円 | 801億円 | 916億円 | 10.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、その資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,437億円 | 1,298億円 |
| 投資CF | -973億円 | -929億円 |
| 財務CF | -342億円 | -253億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「エネルギーを中心として、人々の生活に関わる様々なサービスを高い品質で提供し続けることにより、快適・安全・安心な暮らしと地域の発展に貢献する」というグループミッションを掲げています。「マルチユーティリティー企業グループ」への変革と成長を目指しています。
■(2) 企業文化
法令遵守と企業倫理の徹底を経営の原点と位置づけています。「よんでんグループ行動憲章」に基づき、企業の社会的責任を果たしつつ、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指す文化があります。地域との共生を重視し、信頼されるパートナーとしての役割を果たすことを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「よんでんグループ中期経営計画2025」において、2025年度を最終年度とする経営目標を掲げています。収益力の向上と財務基盤の強化を目指し、以下の数値目標を設定しています。
* ROA:3%程度(ROE:8%程度)
* 経常利益:400億円以上
* 自己資本比率:25%以上(有利子負債倍率:2倍以下)
* 営業キャッシュ・フロー:1,100億円程度
■(4) 成長戦略と重点施策
次なる成長ステージに向け、電気事業では安定供給と収益力向上を両立させ、伊方発電所の安全・安定運転や再エネ開発を推進します。また、海外発電事業や情報通信事業などの成長事業拡大に全力で取り組みます。さらに、DX推進や人的資本経営により企業体質を変革し、持続的な価値創出基盤を強化していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」をサステナビリティ推進の最大の原動力と位置づけています。「未来を切り拓く人材の獲得・育成」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進」「従業員が能力を発揮できる環境づくり」を重点課題としています。電力安定供給を支える人材の継承に加え、国際事業やDXなど成長領域を担う人材の確保・育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.0歳 | 18.8年 | 8,175,645円 |
※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用の採用人数(2020~2022年度の3ヵ年平均の3.9倍)、DXを推進する人材(中級以上のDX人材)の人数(78名)、新卒女性採用者比率(11%)、障がい者雇用率(2.9%)、エンゲージメント総合スコア(B-ランク 14段階中4番目)、年次有給休暇取得日数(17.6日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) エネルギー政策や電気事業制度
国のエネルギー基本計画や環境規制の動向により、事業運営が影響を受ける可能性があります。特に脱炭素に向けた規制強化に伴うコスト増加や、電源構成の見直しが必要となる場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 原子力事業を取り巻く環境
伊方発電所の運転継続に関わる訴訟の結果や、新規制基準への適合状況により、稼働が制約される可能性があります。また、原子燃料サイクルや廃止措置に関する制度変更や費用増加もリスク要因となります。
■(3) 人材確保に係るリスク
電力の安定供給や成長領域での事業拡大には、専門性を持った人材の確保・育成が不可欠です。労働人口の減少や競争激化により必要な人材が確保できない場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。
■(4) 資材調達に関するリスク
燃料や機材等の調達において、市場価格の高騰やサプライチェーンの混乱が生じた場合、コスト増加や工期遅延が発生する可能性があります。国際情勢の変化や為替変動も調達コストに影響を与えます。



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