※本記事は、沖縄電力株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 沖縄電力ってどんな会社?
沖縄電力は、沖縄県全域を供給エリアとし、電気事業を中核に総合エネルギー事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1972年、琉球電力公社の発送電業務等を引き継ぎ、政府および沖縄県の出資による特殊法人として設立されました。1988年に完全民営化を果たし、1992年には東京証券取引所および福岡証券取引所に上場しました。近年では、2024年に牧港ガスエンジン発電所の営業運転を開始するなど、エネルギー供給基盤の強化を推進しています。
従業員数は連結で3,154名、単体で1,511名です。大株主については、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は従業員の持株会である沖縄電力社員持株会、第3位は地方公共団体である沖縄県知事となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.03% |
| 沖縄電力社員持株会 | 5.98% |
| 沖縄県知事 | 5.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は横田哲氏が務めており、社外取締役比率は26.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横田哲 | 代表取締役社長 社長執行役員 | 1991年同社入社。送配電本部長などを経て、2023年に代表取締役副社長に就任。その後、経営戦略本部長などを歴任し、2026年より現職。 |
| 成底勇人 | 代表取締役副社長 副社長執行役員 販売本部長 | 1987年同社入社。総務部長、企画本部長などを経て、2020年に販売本部長に就任。2023年より現職。 |
| 本永浩之 | 代表取締役会長 | 1988年同社入社。企画本部長などを経て、2019年に代表取締役社長に就任。2026年より現職。 |
| 上間淳 | 取締役 常務執行役員 カーボンニュートラル推進本部長 | 1992年同社入社。企画本部長などを経て、2023年に取締役常務執行役員に就任。2025年より現職。 |
| 仲村直将 | 取締役 常務執行役員 | 1992年同社入社。経理部長などを経て、2022年にグループ事業推進本部長に就任。2023年より現職。 |
| 仲程拓 | 取締役 常務執行役員 発電本部長 | 1992年同社入社。発電本部長などを経て、2023年に取締役常務執行役員に就任。 |
| 糸数昌英 | 取締役 常務執行役員 グループ事業推進本部長 | 1992年同社入社。総務部長などを経て、2024年に経営戦略本部副本部長に就任。2025年より現職。 |
社外取締役は、与儀達樹(大同火災海上保険取締役会長)、野崎聖子(うむやす法律会計事務所代表)、長峯豊之(元ANAホールディングス代表取締役副社長)、玉城絵美(H2L代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電気事業」「建設業」および「その他」の事業を展開しています。
■電気事業
電気事業は、沖縄県を供給区域とし、自社の発電電力に他から受電する電力を合わせ、地域のお客さまへ電気を供給しています。
収益源は、個人および法人顧客からの電気料金等から得ています。電気事業の運営は主に同社が行っています。
■建設業
建設業は、土木・建築・電気・管・電気通信工事の施工や、電力インフラなどの電力設備工事の施工および保守点検を行っています。
収益源は、外部顧客やグループ内からの工事請負代金等から得ています。事業の運営は主に、沖電工、沖縄プラント工業、沖縄エネテックなどの子会社が担当しています。
■その他
その他事業では、ガス供給事業や電気機械設備の受託運転、情報通信事業、不動産業、エネルギーサービスプロバイダ事業などを展開しています。
収益源は、天然ガスの販売料金、不動産賃貸料、設備の販売・リース料などから得ています。事業の運営は、プログレッシブエナジー、沖電開発、リライアンスエナジー沖縄などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、売上高は燃料価格の高騰を背景に拡大傾向にありましたが、直近は燃料費調整制度の影響等により減収となっています。一方、経常利益については、燃料価格の変動に伴い赤字を計上した期もありましたが、直近ではコスト低減等の効果もあり、利益率は回復傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,762億円 | 2,235億円 | 2,364億円 | 2,365億円 | 2,202億円 |
| 経常利益 | 27億円 | -488億円 | 26億円 | 57億円 | 82億円 |
| 利益率(%) | 1.5% | -21.8% | 1.1% | 2.4% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | -459億円 | 12億円 | 35億円 | 42億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年と比較して減少していますが、営業利益は増加しており、収益性が改善しています。燃料価格の下落に伴う燃料費や他社購入電力料の減少などが、営業利益を押し上げる主な要因となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,365億円 | 2,202億円 |
| 営業利益 | 73億円 | 93億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が77億円(構成比39%)、委託費が63億円(同32%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の電気事業は、販売電力量の減少や燃料費調整制度の影響などにより減収となりました。一方、建設業はグループ内向け工事の減少などで減収となったものの、その他事業はエネルギーサービスプロバイダ事業の拡大により増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 電気事業 | 2,178億円 | 2,013億円 |
| 建設業 | 56億円 | 50億円 |
| その他 | 131億円 | 138億円 |
| 連結(合計) | 2,365億円 | 2,202億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは積極型で、営業で利益を出し、資金調達も行いながら積極的な投資を継続する状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 341億円 | 273億円 |
| 投資CF | -340億円 | -351億円 |
| 財務CF | -3億円 | 83億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「地域とともに、地域のために」というコーポレートスローガンのもと、沖縄の持続的な発展を支えるエネルギー基盤の確立を最優先課題としています。また、2050年に向けたありたい姿として、「EMPOWER & COLLABORATE:沖縄に活力を与え、ステークホルダーと未来を共創する」を掲げ、社会的責任を果たしながら新たな価値を創造し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、エネルギーの安定供給という基本的使命を果たすため、日々の地道な維持管理や災害時の迅速な復旧など、安全確保を最優先事項として業務に取り組んでいます。また、従業員一人ひとりの活躍を後押しし、心身の健康と働きがいを支える職場環境を整備することで、組織全体の活力を高める価値観を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「おきでんグループ中期経営計画2025」において、以下の財務目標を掲げて取り組んでいます。同計画の最終年度となる2025年度には、ROEと自己資本比率の目標を達成しました。
* 経常利益120億円以上
* ROE5%以上
* 自己資本比率25%以上
(いずれも連結)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は2030年までを「未来基盤創造フェーズ」と位置づけ、サプライチェーンの安定供給と収益力強化に取り組んでいます。また、AIを活用した「AX(AI Transformation)」による業務オペレーション改革や、沖縄エリアにおけるカーボンニュートラルに向けたジャスト・トランジション(公正な移行)の推進を重点施策としています。さらに、海外事業の展開やデジタル関連分野の需要取り込みなど、新たな成長領域への投資を加速させています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業活動を推進するための「社員力・組織力」の向上を図るべく、人財戦略において「環境をつくる」「個をつくる」「組織をつくる」の3つの方向性を掲げています。社員の成長意欲を喚起し、パフォーマンスを最大限発揮できる仕組みを構築するとともに、DXやAI分野における技術・知識を有する人財の育成に注力し、人的資本経営を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.9歳 | 21.2年 | 8,079,519円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.3% |
| 男性育児休業取得率 | 79.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 46.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性労働者の割合(2025年度入社33.3%)、採用者に占める女性労働者の割合(2026年度入社24.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) エネルギー政策や制度変更の影響
国のエネルギー基本計画やGXビジョンの策定に伴う制度設計、市場整備が進む中、これら国のエネルギー政策や電気事業に係る制度変更、環境規制の強化などの動向が、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 他事業者との競合と販売電力量の変動
同社グループの中核事業である電気事業において、気象状況や省エネルギーの進展に加え、他事業者との本格的な競争環境への移行により販売電力量が変動し、業績に影響を与えるリスクがあります。また、電気事業以外の総合エネルギー事業等においても、他事業者との競合の進展が懸念されています。
■(3) 燃料価格・外国為替相場の変動
主要な火力燃料である石炭、重油、LNGの調達において、特定の燃料に依存しない電源構成を目指しているものの、中東情勢の緊迫化や世界的な燃料価格の上昇、外国為替相場の変動による調達コストの増加が、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) サイバー攻撃の発生
事業運営においてサイバー攻撃による被害が発生した場合、電力の供給支障や社会的信用の低下、対応費用の発生が生じるリスクがあります。同社では、早期検出・対応のための仕組み整備やセキュリティ教育の実施により、リスク低減に努めています。



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