沖縄電力 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

沖縄電力 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

沖縄電力は東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、沖縄県全域での電気事業を中核に、グループ会社を通じて建設業や不動産業などを展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高は横ばいながら、営業利益および経常利益は大幅な増益となり、黒字幅を拡大しています。


※本記事は、株式会社沖縄電力 の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 沖縄電力ってどんな会社?


沖縄県全域に電力を安定供給する唯一の一般送配電事業者であり、建設や不動産など総合エネルギー事業を展開しています。

(1) 会社概要


1972年、沖縄の本土復帰に伴い特殊法人として設立され、琉球電力公社の業務を承継しました。1988年に民営化され、1992年には東京証券取引所市場第二部および福岡証券取引所へ上場しました。2002年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しています。

同社の連結従業員数は3,127名、単体では1,503名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は従業員で構成される沖縄電力社員持株会、第3位は設立時からの経緯により沖縄県知事が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.90%
沖縄電力社員持株会 6.02%
沖縄県知事 5.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は本永浩之氏です。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
本永 浩之 代表取締役社長社長執行役員 1988年沖縄電力入社。企画本部企画部部長、取締役総務部長を経て、2015年代表取締役副社長に就任。2019年4月より現職。
成底 勇人 代表取締役副社長副社長執行役員販売本部長 1987年沖縄電力入社。企画本部企画部部長、取締役総務部長、常務取締役などを歴任。2023年6月より現職。
横田 哲 代表取締役副社長副社長執行役員経営戦略本部長 1991年沖縄電力入社。送配電本部長、常務取締役、離島カンパニー社長などを経て、2023年代表取締役副社長に就任。2025年6月より現職。
上間 淳 取締役常務執行役員カーボンニュートラル推進本部長 1992年沖縄電力入社。企画本部企画部長、経営戦略本部長などを経て、2023年取締役常務執行役員に就任。2025年6月より現職。
仲村 直将 取締役常務執行役員 1992年沖縄電力入社。経理部長を経て、2021年取締役執行役員に就任。2023年6月より現職。
仲程 拓 取締役常務執行役員発電本部長 1992年沖縄電力入社。発電本部発電部長などを経て、2021年取締役執行役員発電本部長に就任。2023年6月より現職。
糸数 昌英 取締役常務執行役員グループ事業推進本部長 1992年沖縄電力入社。総務部長、執行役員経営戦略本部副本部長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、与儀達樹(大同火災海上保険取締役会長)、野崎聖子(弁護士)、長峯豊之(元ANAホールディングス副社長)、玉城絵美(琉球大学工学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気事業」「建設業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電気事業


沖縄県を供給区域とし、自社の発電設備や他社からの受電を組み合わせて、一般家庭や法人顧客向けに電力を供給しています。発電、送配電、小売までを一貫して行う体制を維持しています。

主な収益源は、顧客からの電気料金収入(電灯料、電力料)および託送収益です。運営は主に沖縄電力が担っており、沖縄県内における安定的なエネルギー供給を行っています。

(2) 建設業


電気設備の建設・保守点検、土木・建築・管・電気通信工事などの施工を行っています。電力インフラの構築・維持だけでなく、一般顧客向けの設備工事も手掛けています。

主な収益源は、発注者からの工事請負代金です。運営は主に連結子会社の株式会社沖電工や株式会社沖縄エネテックなどが担っており、グループ内外の工事需要に対応しています。

(3) その他


電気事業および建設業以外の多様な事業を含みます。具体的には、不動産業、情報通信事業、ガス供給事業、電気機械設備の受託運転・保守などが該当します。

主な収益源は、不動産賃貸料、情報システム開発・運用費、ガス料金などです。運営は、沖電開発株式会社(不動産)、沖電グローバルシステムズ株式会社(情報通信)、株式会社プログレッシブエナジー(ガス供給)など、各分野の専門子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上高は増加傾向にありましたが、直近は横ばいで推移しています。利益面では、燃料価格高騰の影響等により2023年3月期に大幅な赤字を計上しましたが、2024年3月期に黒字転換し、2025年3月期はさらに利益率が改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,905億円 1,762億円 2,235億円 2,364億円 2,365億円
経常利益 113億円 27億円 -488億円 26億円 57億円
利益率(%) 5.9% 1.5% -21.8% 1.1% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 70億円 7億円 -459億円 12億円 35億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高はほぼ横ばいですが、営業利益および経常利益は倍増以上の伸びを示しています。これは燃料価格の下落に伴う燃料費調整額の減少による売上減がある一方で、費用面でも燃料費などが減少したことが寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,364億円 2,365億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 35億円 73億円
営業利益率(%) 1.5% 3.1%


販売費及び一般管理費の内訳については、人件費が82億円(構成比42.3%)、その他経費が48億円(同24.7%)、業務委託費が51億円(同26.2%)となっています。

(3) セグメント収益


電気事業は燃料費調整額の減少等により減収となりましたが、燃料費の減少等により大幅な増益となりました。建設業は工事量の増加等により増収となりましたが、営業利益は減少しました。その他事業はガス供給事業などの増加により増収となりましたが、減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電気事業 2,199億円 2,178億円 10億円 53億円 2.5%
建設業 46億円 56億円 10億円 9億円 16.3%
その他 119億円 131億円 22億円 18億円 13.9%
調整額 - - -8億円 -8億円 -
連結(合計) 2,364億円 2,365億円 35億円 73億円 3.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済等を行っている(財務CFマイナス)ことから「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 256億円 341億円
投資CF -320億円 -340億円
財務CF 95億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.3%で市場平均(プライム非製造業平均24.2%)とほぼ同じ水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「総合エネルギー事業をコアとして、ビジネス・生活サポートを通して新しい価値の創造を目指し、地域に生き、共に発展する一体感のある企業グループ」を目指すべき姿として掲げています。持続可能な社会の実現に貢献するため、エネルギーの安定供給やカーボンニュートラルへの挑戦などを経営の基本的方向性として位置付けています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりが限界を設けることなく変革に「Challenge」する姿勢を重視しています。また、前例にとらわれない変革として、自ら工夫して仕事のやり方を変える「超・攻めの効率化」を掲げ、グループ一丸となって持続的成長のための基盤強化に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


2022年3月に策定した『おきでんグループ中期経営計画2025』に基づき、2025年度の財務目標達成に向けた取り組みを推進しています。経営環境の大きな変化を受け、財務基盤の回復途上にある中で、収益性および資本効率の向上を目指しています。

* 経常利益:120億円以上
* ROE:5%以上
* 自己資本比率:25%以上(将来的には30%を目指す)

(4) 成長戦略と重点施策


「トップラインの拡大」「攻めの効率化」「カーボンニュートラルへの挑戦」の3つを推進し、エネルギーに付加価値を加えた新たな価値を提供することを目指しています。また、物価高対策として「おきでんPXプロジェクト」を立ち上げ、調達力の抜本的強化や業務効率化に取り組んでいます。

* カーボンニュートラルへの挑戦:太陽光発電設備と蓄電池を無償設置するサービス「かりーるーふ」の展開や、パラオ共和国での事業開始など、脱炭素化と事業領域拡大を推進。
* 沖縄県の成長ポテンシャルへの関与:テーマパーク開業や首里城復元などの観光需要や、基地返還跡地開発などに積極的に関与し、企業価値向上につなげる。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人財戦略として「環境をつくる」「個をつくる」「組織をつくる」の3つの方向性を掲げています。多様な人材が活躍できる職場づくりを推進し、社員の成長意欲を喚起して行動変容を促すとともに、組織全体での価値共創の仕組みを構築することで、社員力と組織力の向上を図り、経営目標の達成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.7歳 21.2年 7,863,882円


※平均年間給与は、税込であり、基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 80.4%
男女賃金差異(全労働者) 82.0%
男女賃金差異(正規) 84.7%
男女賃金差異(非正規) 52.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(6.3%)、技術採用者に占める女性労働者の割合(20.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 電気事業に関する制度変更等


電力システム改革による法的分離後も発送電一貫体制を維持していますが、国のエネルギー政策や制度変更、環境規制の強化などの動向によっては、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 電気事業以外の事業


総合エネルギー事業に加え、建設・不動産業、情報通信業、生活・ビジネスサポート事業を展開していますが、他事業者との競合の進展など事業環境の変化により、業績が影響を受ける可能性があります。

(3) 販売電力量の変動


中核である電気事業の販売電力量は、気象状況(気温や台風等)、景気動向、省エネルギーの進展、他事業者との競争状況などによって変動するため、これらにより業績が影響を受ける可能性があります。

(4) 燃料価格の変動


主要な火力燃料である石炭・重油・LNGの価格や外国為替相場の変動により業績が影響を受ける可能性があります。燃料費調整制度による緩和効果はあるものの、著しい変動を全て織り込めない場合があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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