※本記事は、電源開発株式会社の有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 電源開発ってどんな会社?
水力、火力、風力など多様な発電事業と送変電事業を中心に展開し、日本の電力安定供給を支える企業です。
■(1) 会社概要
1952年に政府出資の特殊会社として設立され、1956年に佐久間発電所の運転を開始しました。2003年に民営化に向けた取り組みが進み、2004年に東京証券取引所市場第一部に上場し、完全民営化を果たしました。近年では、2022年にプライム市場へ移行し、国内外での再生可能エネルギー開発を加速しています。
現在の従業員数は連結で7,202名、単体で1,994名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位は日本生命保険、第3位は日本カストディ銀行(信託口)と、金融機関や信託銀行が大株主の上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.59% |
| 日本生命保険 | 5.19% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長社長執行役員は加藤英彰が務めています。社外取締役は6名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡部 肇史 | 代表取締役会長 | 1977年電源開発入社。経営企画部長、取締役、常務取締役等を経て2016年社長に就任。2023年より現職。 |
| 加藤 英彰 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1989年電源開発入社。経営企画部長、執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員を経て、2026年より現職。 |
| 嶋田 善多 | 代表取締役副社長執行役員 | 1982年電源開発入社。土木建築部長、執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員等を経て、2024年より現職。 |
| 萩原 修 | 取締役副社長執行役員原子力事業本部長 | 1984年電源開発入社。大間現地本部大間原子力建設所長、執行役員、常務執行役員を経て、2022年より現職。 |
| 笹津 浩司 | 取締役副社長執行役員 | 1986年電源開発入社。技術開発部長、執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員を経て、2023年より現職。 |
| 倉田 一秀 | 取締役副社長執行役員エネルギー営業本部長原子力事業本部副本部長 | 1984年電源開発入社。総務部長、原子力業務部長、執行役員、常務執行役員等を経て、2023年より現職。 |
| 関根 良二 | 取締役副社長執行役員国際事業本部長 | 1985年日本長期信用銀行入行。2001年電源開発入社。エネルギー計画部長、常務執行役員等を経て2024年より現職。 |
| 木村 英雄 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1985年電源開発入社。人事労務部長、電源開発送変電ネットワーク取締役常務執行役員等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、伊藤友則(元UBS証券投資銀行本部長)、ジョンブカナン(元エス・ジー・ウオーバーグ・アンド・カンパニー取締役)、横溝高至(サンライズ法律事務所パートナー弁護士)、藤岡博(元財務省関税局長)、大賀公子(元NTT東日本情報機器部長)、安部静生(元トヨタ自動車常務理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「発電事業」「送変電事業」「電力周辺関連事業」「海外事業」「その他の事業」を展開しています。
■発電事業
同社または関係会社が保有する水力、火力、風力などの発電所による発電と保守運営、および卸電力取引市場などから調達した電力の販売を行っています。日本の安定的な電力供給を支える中核事業として、再生可能エネルギーや火力発電をバランスよく組み合わせています。
主な収益源は、小売電気事業者や卸電力取引市場への電力販売による料金収入です。運営は同社のほか、ジェイウインドなどの関係会社が担っています。
■送変電事業
子会社が保有する送電・変電設備を通じて、沖縄電力を除く一般送配電事業者9社に対する電力託送事業を行っています。東西日本を結ぶ周波数変換所の運営など、広域的な電力ネットワークの維持に貢献しています。
主な収益源は、一般送配電事業者からの託送料収入です。運営は主に同社の連結子会社である電源開発送変電ネットワークが行っています。
■電力周辺関連事業
発電事業および送変電事業を補完し、その円滑かつ効率的な遂行に資する各種事業を展開しています。具体的には、設備工事や保守、環境保全、システム開発、燃料の海上輸送などを手がけています。
収益源は、グループ内および外部からの業務受託や工事請負の対価です。運営はJ-POWERハイテックやJ-POWERジェネレーションサービスなどの関係会社が行っています。
■海外事業
海外諸国における発電事業およびその関連事業を展開しています。コンサルティング事業の経験を活かし、タイやアメリカ、オーストラリアなどで独立系発電事業者(IPP)プロジェクトや再生可能エネルギーの開発を推進しています。
主な収益源は、進出先の電力公社や電力市場に対する電力販売による料金収入です。運営はGulf JPやJackson Generationなどの海外関係会社が行っています。
■その他の事業
同社グループの保有する経営資源やノウハウを活用し、石炭等の販売事業などを展開しています。
主な収益源は、石炭の販売代金等です。運営は同社や関連会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近2期間の業績推移を見ると、売上高は減少傾向にありますが、経常利益および利益率は向上しています。タイでの販売電力量減少や国内火力発電所の休廃止が減収要因となったものの、米国事業の持分譲渡益などにより経常利益は増益を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 13,167億円 | 11,823億円 |
| 経常利益 | 1,401億円 | 1,585億円 |
| 利益率(%) | 10.6% | 13.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 925億円 | 585億円 |
■(2) 損益計算書
損益構成を見ると、売上高の減少とともに営業利益および営業利益率が低下しています。燃料費の減少によるコスト削減効果があったものの、修繕費の増加や一部子会社での石炭販売価格低下が影響し、本業の儲けを示す営業利益は減益となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 13,167億円 | 11,823億円 |
| 営業利益 | 1,383億円 | 1,010億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 8.5% |
電気事業営業費用のうち、販売費・一般管理費が合計628億円発生しています。主な内訳として、委託費が209億円(構成比33%)、人件費が167億円(同27%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力の発電事業は火力発電所の休廃止や容量市場価格の下落により減収となりました。また、海外事業もタイでの販売電力量減少の影響を受け減収となっており、全セグメントにおいて前年を下回る結果となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 発電事業 | 9,457億円 | 8,404億円 |
| 送変電事業 | 499億円 | 493億円 |
| 電力周辺関連事業 | 592億円 | 496億円 |
| 海外事業 | 2,447億円 | 2,279億円 |
| その他の事業 | 172億円 | 150億円 |
| 連結(合計) | 13,167億円 | 11,823億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キャッシュ・フローの状況を見ると、営業活動で得た資金を設備投資や借入金の返済に充てる「健全型」の傾向を示しています。本業で安定的なキャッシュを創出しながら、国内外の発電設備や再生可能エネルギーへの投資を継続していることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2,503億円 | 2,243億円 |
| 投資CF | -1,228億円 | -1,932億円 |
| 財務CF | -1,337億円 | -642億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」というミッションを掲げています。サステナブルな成長を実現し、その成果を全てのステークホルダーと共に分かち合うことで、持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「誠実と誇り」をすべての企業活動の原点とし、「環境との調和」や「地域の信頼」を重視する価値観を持っています。「自らをつねに磨き、知恵と技術のさきがけとなる」「豊かな個性と情熱をひとつにし、明日に挑戦する」という信条のもと、多様な人材が能力を発揮できる風土を築いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画において、2030年代に実現を目指す財務目標としてROE8%以上を設定しています。また、そのマイルストーンとして2026年度に以下の数値目標の達成を目指しています。
* 連結経常利益:900億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:620億円
* ROE:5.0%程度
* 稼働資産ROIC:3.5%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は2050年のカーボンニュートラル実現に向けた長期ビジョン「J-POWER “BLUE MISSION 2050”」を推進しています。国内再生可能エネルギーの開発加速や既存資産の最大限の活用、CO2フリー水素発電の実現に向けた石炭ガス化発電の商用化検討など、カーボンニュートラルアセット中心の事業ポートフォリオへの転換に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は従業員一人ひとりを社会の多様なニーズに価値を提供する源と捉え、豊かな個性とチャレンジ精神を持つ人材の確保と育成に取り組んでいます。多様な業務経験機会を提供し、従業員の自律的なキャリア形成を支援するとともに、DX推進による業務効率化を通じて「よりょく(余力・与力・予力)」を創出し、グループ競争力の強化を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 18.5年 | 11,883,541円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.2% |
| 男性育児休業取得率 | 116.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 60.5% |
| 男女賃金差異(有期雇用者) | 75.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役付社員数(41名)、外国人の役付社員数(168名)、経験者採用者の役付社員数(150名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動問題への対応
同社は石炭火力発電所を多数有しており、カーボンニュートラル実現に向けた排出量取引制度や化石燃料賦課金などの新たな法的規制が導入・強化された場合、発電コストの増加や設備投資計画の変更を余儀なくされ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 電気事業制度改革と市場競争の進展
電力小売の全面自由化や送配電部門の法的分離など、電気事業制度改革による市場競争環境の変化が進んでいます。電力需要の変動や他社との競争激化、販売先との協議結果によっては、発電コストに見合った収益を確保できず、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 大間原子力発電所計画の推進
大間原子力発電所の建設・運営には、新規制基準への適合性審査や安全強化対策工事の追加対応が求められています。工程の延伸や工事費の増加、さらに国の原子力政策の変更や予期せぬ事態が発生した場合、事業計画の大幅な見直しが生じ、財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外発電事業等の推進
海外での独立系発電事業者(IPP)プロジェクトや新たな事業領域への投資は、進出国の政情不安(カントリーリスク)、需要や市場環境の変化、為替変動等の影響を受けます。期待した収益が得られない場合や追加の資金拠出が必要となった場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。



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