電源開発 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

電源開発 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。水力・火力・風力などの発電事業や送変電事業、海外での発電事業等を展開しています。当連結会計年度は、発電事業における販売電力量の増加や容量市場の開始等により増収となり、経常利益も販売粗利の改善等により増益となりました。


※本記事は、電源開発株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 電源開発ってどんな会社?


国内外で発電・送変電事業を展開する卸電気事業者です。再生可能エネルギーや海外事業にも注力しています。

(1) 会社概要


1952年に「電源開発促進法」に基づき政府出資の特殊法人として設立されました。大規模水力発電所や石炭火力発電所の建設・運営を通じて戦後の電力不足解消に貢献し、1965年には佐久間周波数変換所の運転を開始しました。2004年に民営化し東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後も風力発電などの再生可能エネルギー事業や海外事業を積極的に拡大しています。

同グループは、連結従業員数7,127名、単体1,899名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は株式会社日本カストディ銀行(信託口)、第3位は日本生命保険相互会社となっており、主に金融機関や機関投資家が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.34%
日本カストディ銀行(信託口) 5.59%
日本生命保険相互会社 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性1名の計16名で構成され、女性役員比率は6.3%です。代表取締役社長 社長執行役員は菅野 等氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
渡部 肇史 代表取締役会長 1977年同社入社。経営企画部長、代表取締役副社長を経て2016年代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。
菅野 等 代表取締役社長社長執行役員 1984年同社入社。設備企画部長、経営企画部長、取締役副社長執行役員などを経て2023年6月より現職。
嶋田 善多 代表取締役副社長執行役員再生可能エネルギー本部長 1982年同社入社。土木建築部長、取締役常務執行役員などを経て2024年6月より現職。
萩原 修 取締役副社長執行役員原子力事業本部長 1984年同社入社。大間原子力建設所長、常務執行役員などを経て2022年6月より現職。
笹津 浩司 取締役副社長執行役員 1986年同社入社。技術開発部長、取締役常務執行役員などを経て2023年4月より現職。
倉田 一秀 取締役副社長執行役員エネルギー営業本部長原子力事業本部副本部長 1984年同社入社。原子力業務部長、常務執行役員などを経て2023年6月より現職。
関根 良二 取締役副社長執行役員国際営業本部長 1985年日本長期信用銀行入行、2001年同社入社。エネルギー計画部長、取締役常務執行役員などを経て2024年6月より現職。
野村 京哉 取締役常務執行役員再生可能エネルギー本部長代理 1984年同社入社。水力発電部長、常務執行役員などを経て2022年6月より現職。
加藤 英彰 取締役常務執行役員 1989年同社入社。経営企画部長、常務執行役員などを経て2024年6月より現職。
木村 英雄 取締役(監査等委員)(常勤) 1985年同社入社。人事労務部長、執行役員、電源開発送変電ネットワーク取締役常務執行役員を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、伊藤 友則(元UBS証券会社投資銀行本部長)、ジョンブカナン(ケンブリッジ大学経営研究センターリサーチアソシエイト)、横溝 高至(元第一東京弁護士会会長)、藤岡 博(元国土交通省政策統括官)、大賀 公子(元株式会社NTT東日本-東京中央社長)、安部 静生(元トヨタ自動車常務理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「発電事業」「送変電事業」「電力周辺関連事業」「海外事業」および「その他の事業」を展開しています。

発電事業


水力、火力、風力など、同社または関係会社が保有する発電所による発電事業およびその保守運営を行っています。また、卸電力取引市場等から調達した電力の販売も行っています。顧客は主に電力会社や市場取引参加者などです。

電力の販売収益を得ており、同社が主体となって運営しています。従量料金については電力の供給量に応じて、基本料金等については設備の維持に応じて収益を認識しています。再生可能エネルギー発電電力量の増大や、環境価値の実現に向けた取り組みも進めています。

送変電事業


同社の子会社が保有する送電・変電設備により、沖縄電力株式会社を除く一般送配電事業者9社に対して電力の託送を行っています。北海道と本州を結ぶ連系設備や、周波数の異なる東日本と西日本を結ぶ周波数変換所など、基幹的な送変電設備を運用しています。

一般送配電事業者から託送料金を受け取ることで収益を得ています。運営は主に連結子会社である電源開発送変電ネットワーク株式会社が行っています。設備の利用可能状態を維持することで履行義務を充足し、期間の経過に応じて収益を認識しています。

電力周辺関連事業


発電事業および送変電事業を補完し、その円滑かつ効率的な遂行に資する事業を行っています。具体的には、発電設備の設計・施工・保守・燃料輸送・港湾業務などが含まれます。

同社グループの発電・送変電事業に関連する業務受託収入などを主な収益源としています。運営は、株式会社J-POWERハイテックやJ-POWERジェネレーションサービス株式会社などの連結子会社が行っています。

海外事業


海外における発電事業およびその関連事業を行っています。タイや米国、オーストラリアなどを中心に、IPP(独立系発電事業者)プロジェクトへの参画やコンサルティング事業を展開しています。

海外の電力会社等への売電収入やコンサルティング料を収益源としています。運営は同社および海外現地法人(J-POWER Holdings (Thailand) Co., Ltd.やJ-POWER North America Holdings Co., Ltd.など)が行っています。

その他の事業


同社グループが保有する経営資源やノウハウを活用して行う事業です。石炭等の販売事業などが含まれます。

石炭販売による収益などを得ています。運営は同社および関連会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績推移を見ると、売上高は第71期にエネルギー価格高騰の影響等で大きく増加し1.8兆円規模に達しましたが、その後は1.3兆円前後で推移しています。経常利益は変動が見られるものの、直近の第73期は1,401億円と前期比で増益となり、高い水準を維持しています。当期純利益も安定して黒字を計上しており、第73期は925億円となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 9,091億円 10,846億円 18,419億円 12,580億円 13,167億円
経常利益 609億円 728億円 1,708億円 1,185億円 1,401億円
利益率(%) 6.7% 6.7% 9.3% 9.4% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 224億円 697億円 1,137億円 778億円 925億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率は前期の8.4%から当期は10.5%へ改善しました。営業費用の増加よりも売上高の増加幅が大きく、特に発電事業における販売粗利の改善が利益率向上に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 12,580億円 13,167億円
売上総利益 -億円 -億円
売上総利益率(%) -% -%
営業利益 1,057億円 1,383億円
営業利益率(%) 8.4% 10.5%


販売費及び一般管理費を含む電気事業営業費用のうち、その他費用が3,021億円(構成比33%)、委託費が565億円(同6%)を占めています。なお、燃料費は3,616億円で営業費用全体の約31%を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を見ると、発電事業が売上・利益ともに全体の過半を占める主力事業です。当期は発電事業が増収増益となり、全社の業績を牽引しました。海外事業は減収減益となりましたが、依然として重要な収益源となっています。送変電事業は安定した売上を計上していますが、利益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
発電事業 8,755億円 9,674億円 204億円 685億円 7.1%
送変電事業 496億円 505億円 73億円 28億円 5.6%
電力周辺関連事業 1,196億円 1,027億円 472億円 341億円 33.2%
海外事業 2,593億円 2,447億円 443億円 345億円 14.1%
その他の事業 173億円 182億円 2億円 6億円 3.4%
調整額 -633億円 -667億円 -8億円 -5億円 -%
連結(合計) 12,580億円 13,167億円 1,185億円 1,401億円 10.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動から得た資金で借入金の返済を進めつつ、投資活動も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2,540億円 2,503億円
投資CF -1,620億円 -1,228億円
財務CF -659億円 -1,337億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.4%で市場平均(プライム市場非製造業平均24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」というミッションを掲げています。この達成のため、2050年に向けて発電事業のカーボンニュートラル実現に挑み、持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「誠実と誇りを、すべての企業活動の原点とする」「環境との調和をはかり、地域の信頼に生きる」「利益を成長の源泉とし、その成果を社会と共に分かち合う」「自らをつねに磨き、知恵と技術のさきがけとなる」「豊かな個性と情熱をひとつにし、明日に挑戦する」という5つの信条を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2050年に向けた長期ビジョン「J-POWER "BLUE MISSION 2050"」を策定し、中期経営計画(2024-2026)では、以下の財務目標を掲げています。

* 連結経常利益:2026年度 900億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:2026年度 620億円
* ROE:2026年度 5.0%程度
* 稼働資産ROIC:2026年度 3.5%程度

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、持続可能な収益源の確立と2030年代の事業ポートフォリオへの布石に向けた取り組みを進めています。

* 国内再生可能エネルギー事業:新規開発に加え、既存発電所の更新や稼働率向上により発電電力量を増大。2030年度までに年間+40億kWh(2022年度比)を目指す。
* 海外事業:再生可能エネルギーなどの開発者利益獲得を軸に、事業セグメントとエリアを拡大。
* CO2フリー水素・アンモニア戦略:GENESIS松島計画の推進や水素製造・供給事業の検討。
* 大間原子力発電所計画:安全を大前提とした着実な推進。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「人の尊重」をマテリアリティの一つとし、個人を尊重し多様な業務経験機会を確保する人材制度を整備しています。従業員のチャレンジを支援し、知恵と技術のさきがけとなる多彩な「プロフェッショナル人財」の育成を目指しています。また、ダイバーシティ推進や柔軟な働き方の導入により、グループ競争力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 18.6年 11,170,431円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 1.7%
男性労働者の育児休業取得率 88.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 60.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 60.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 66.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役付社員数(37名)、社員の育児休業取得率(100%)、新規採用者に占める女性比率(22%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動問題について


同社は多くの石炭火力発電所を保有しており、CO2排出量が相対的に多い特性があります。政府の2050年カーボンニュートラル目標や排出量取引制度の導入など、気候変動対応に関する規制強化が進む中、炭素に対する賦課金の導入や新たな法的規制により事業運営に制約が生じた場合、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は低炭素化や再エネ導入拡大に取り組んでいますが、政策動向の影響を受けるリスクがあります。

(2) 電気事業制度改革の進展等による当社の料金収入等への影響


電力システム改革による小売全面自由化や送配電部門の法的分離など、事業環境は大きく変化しています。発電事業の料金規制撤廃により市場競争が進む中、同社は販売先との適切な料金協議や販売の多様化を進めていますが、長期的な電力需要の推移や競争の激化、予期せぬ設備トラブル等により発電コストに見合った収益を確保できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 大間原子力発電所計画について


建設中の大間原子力発電所は、新規制基準への適合性審査を受けており、安全対策工事の追加等により建設費が増加する見込みです。審査の状況や規制対応により工事工程がさらに延伸する可能性があり、それに伴うコスト増のリスクがあります。また、国のエネルギー政策の変更や予期せぬ事態による計画変更、さらには自然災害等のリスクも存在し、これらが顕在化した場合、同社の財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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