東邦瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア市場に上場する、東海3県を基盤とする都市ガス大手です。ガス事業を中核に、LPG、電気、不動産等の多角的な事業を展開しています。2025年3月期は、電気販売量の増加等により増収となりましたが、原料費調整制度の期ずれ差益が縮小した影響等により減益(経常利益、当期純利益ともに減少)となりました。


#記事タイトル:東邦瓦斯転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、東邦瓦斯株式会社 の有価証券報告書(第154期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東邦瓦斯ってどんな会社?


東海地方を代表するインフラ企業として、都市ガス、LPG、電気などのエネルギー供給を通じて地域の暮らしと産業を支えています。

(1) 会社概要


1922年に設立され、名古屋瓦斯を買収してガス事業を開始しました。1949年に証券取引所へ上場し、2003年には合同瓦斯、岐阜瓦斯、岡崎瓦斯を合併して事業基盤を拡大しました。2016年の電力小売全面自由化を機に電気事業へ参入し、総合エネルギー企業へと進化しています。2022年には法的分離に伴い一般ガス導管事業を東邦ガスネットワークへ承継しました。

連結従業員数は6,074名、単体では934名が在籍しています。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は大手生命保険会社、第3位も資産管理を行う信託銀行となっており、機関投資家や金融機関が上位を占める安定した株主構成です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.29%
日本生命保険相互会社 5.64%
日本カストディ銀行(信託口) 3.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は山碕聡志氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
増田信之 代表取締役会長 1986年入社。供給管理部長、常務執行役員(技術開発本部長兼生産本部長)、代表取締役社長 社長執行役員等を経て、2025年4月より現職。
山碕聡志 代表取締役社長 社長執行役員 1986年入社。財務部長、経営企画部長、執行役員、取締役専務執行役員等を経て、2025年4月より現職。
鏡味伸輔 代表取締役 副社長執行役員 1988年入社。原料部長、常務執行役員(生産本部長、業務用営業本部長)、取締役専務執行役員(営業本部長)を経て、2025年4月より現職。
小澤勝彦 取締役 専務執行役員 1989年入社。財務部長、執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員等を経て、2025年4月より現職。
冨成義郎 取締役 1981年入社。企画部長、常務執行役員(生産本部長)、代表取締役社長 社長執行役員、代表取締役会長を経て、2025年4月より現職。
紀村英俊 取締役 1982年通商産業省入省。2019年同社入社。常務執行役員、代表取締役副社長執行役員等を経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、濵田道代(名古屋大学名誉教授)、大島卓(日本碍子取締役会長)、中西勇太(トヨタ自動車事業開発本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガス」「LPG・その他エネルギー」「電気」および「その他」事業を展開しています。

(1) ガス


愛知県、三重県、岐阜県を中心とした東海3県で都市ガスの製造、供給、販売を行っています。また、ガス機器の販売やガス配管工事、ガスの託送供給も手掛けています。
ガスの製造・販売は主に東邦瓦斯が担い、導管網を通じた託送供給や配管工事は子会社の東邦ガスネットワークが行っています。その他、家庭用顧客への販売受託等を東邦ガスライフソリューションズが、岡山県内でのガス供給を水島瓦斯が担当しています。

(2) LPG・その他エネルギー


LPG(液化石油ガス)の販売、LPG機器の販売、配管工事に加え、LNG(液化天然ガス)販売や熱供給事業、コークス・石油製品の販売などを行っています。
LNG販売や熱供給事業は東邦瓦斯が主体となって行い、LPG関連事業については子会社の東邦液化ガス等が運営しています。多様なエネルギー源を提供することで、都市ガス供給エリア外の顧客ニーズにも対応しています。

(3) 電気


家庭用および業務用顧客に対して、低圧・高圧電力の販売を行っています。ガスとセットでの販売提案などを通じて顧客基盤の拡大を図っています。
電力の販売は主に東邦瓦斯が行っています。自社電源や市場調達などを組み合わせた電力調達ポートフォリオを構築し、安定的な電力供給と収益性の確保に取り組んでいます。

(4) その他


LNGの受託加工、不動産の管理・賃貸、プラント・設備の設計施工、情報処理サービス、リース事業、海外での天然ガス開発・投資など多岐にわたる事業を展開しています。
LNG受託加工は東邦瓦斯、不動産事業は東邦ガス不動産開発、エンジニアリング事業は東邦ガスエナジーエンジニアリングが運営しています。また、豪州等での資源開発にはToho Gas Australia等の海外子会社が従事しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。直近の決算では増収となった一方で、利益率は低下しており、経常利益および当期利益は減少しました。エネルギー価格の変動や為替の影響を受けつつも、一定の利益水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,348億円 5,153億円 7,061億円 6,330億円 6,560億円
経常利益 166億円 219億円 482億円 408億円 324億円
利益率(%) 3.8% 4.3% 6.8% 6.4% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 105億円 137億円 288億円 238億円 247億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回り、売上総利益率は低下しました。営業利益および経常利益も前期比で減少しており、コストコントロールや利益率の改善が課題となっています。営業外収益や特別損益の影響も含め、最終的な当期利益は微増となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6,330億円 6,560億円
売上総利益 1,715億円 1,728億円
売上総利益率(%) 27.1% 26.3%
営業利益 336億円 309億円
営業利益率(%) 5.3% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、減価償却費が319億円(構成比22%)、委託作業費が209億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで売上が増加しました。特に「その他」セグメントと「電気」セグメントの増収率が高くなっています。主力の「ガス」セグメントも堅調に推移し、全体の増収に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ガス 4,137億円 4,244億円
LPG・その他エネルギー 1,001億円 1,001億円
電気 883億円 957億円
その他 309億円 359億円
連結(合計) 6,330億円 6,560億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、社債や借入による資金調達を行い、流動性リスクを管理しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上により大幅に増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資を中心に支出が増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いにより支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 474億円 831億円
投資CF -421億円 -452億円
財務CF -142億円 -188億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


2050年の社会像を見据え、2030年代半ばに目指す姿として「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」「エネルギーの枠を超えたくらし・ビジネスのパートナー」「持続可能な社会の実現をリードする企業グループ」の3つを掲げています。これらを通じて、新たな時代を切り拓くことを目指しています。

(2) 企業文化


サステナビリティへの要請やエネルギーを取り巻く環境変化(脱炭素化、人口減少、制度改革、デジタル化、分散化)に対応するため、従業員一人ひとりが共通認識に立ち、新たな価値創造に挑戦する風土を重視しています。また、コンプライアンスやガバナンスの強化も重要な価値観として位置づけています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2027年度までの中期経営計画を策定し、事業構造の変革を加速させています。

* 連結経常利益:300億円(2027年度)
* ROE:6%+α
* コア事業の営業キャッシュ・フロー:450億円程度(2027年度)
* ROICターゲット:電気事業3%+α/海外事業4%+α(2027年度)

(4) 成長戦略と重点施策


都市ガス・LPGなどのコア事業から、電気・海外などの戦略事業へ経営資源をシフトし、収益基盤の多様化と強化を図ります。具体的には、コア事業での安定的なキャッシュ・フロー創出、電気・海外事業の規模拡大と競争力強化、地域価値創造ビジネスの深耕、そしてカーボンニュートラル実現に向けた脱炭素化の推進に注力します。

* コア事業の営業キャッシュ・フロー:450億円程度(2027年度)
* 地域価値創造ビジネス群の事業利益:50億円程度(2027年度)
* ガスのカーボンニュートラル化率:5%以上(2030年度)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「意欲と能力の発揮を重視し、ひとを育てます」という方針のもと、コア事業を支える人材に加え、変革を牽引する専門性やマネジメント力を備えた人材の確保・育成に注力しています。具体的には、DX推進人材の育成、女性やシニアなど多様な人材が活躍できる環境整備、柔軟な働き方の推進、健康経営などを通じて、従業員の成長と企業価値向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 15.2年 6,767,453円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.5%
男性育児休業取得率 93.8%
男女賃金差異(全労働者) 72.8%
男女賃金差異(正規雇用) 69.8%
男女賃金差異(非正規) 98.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の総合職採用比率(32.0%)、「DX推進人材」の育成人数(139人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要変動による影響


都市ガス・LPG・電気事業の販売量は、地域の経済動向、気候変動(猛暑・暖冬)、競争環境の変化、省エネの進展、産業構造の変化、顧客のエネルギー選好の変化等により変動します。これらにより販売量が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原料価格の変動による影響


LNG等の原料価格は原油価格や為替相場の影響を受けます。原料費調整制度により販売価格への反映はある程度行われますが、タイムラグによる期間収支への影響や、調達先との契約更改・価格交渉の結果次第では、業績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 電力調達価格の変動による影響


電力調達において、発電事業者や卸電力取引市場からの調達価格が変動した場合、業績に影響を与える可能性があります。相対契約の弾力性向上や調達比率の最適化などで対策を講じていますが、市場価格の著しい高騰等はリスク要因となります。

(4) 金利変動等による影響


保有する株式や年金資産の価値変動、および有利子負債にかかる調達金利の変動は、業績に影響を及ぼす可能性があります。長期借入金や社債による固定金利調達を中心とするなど対策を行っていますが、市場金利の動向によっては影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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