東邦瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア市場上場。東海3県を中心にガス、LPG、電気の供給等を行うエネルギー事業者です。2026年3月期の業績は、売上高6,511億円(前期比減収)、経常利益379億円(前期比増益)となり、減収増益を記録しました。次世代エネルギー領域の開拓も積極的に推進しています。


※本記事は、東邦瓦斯の有価証券報告書(第155期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東邦瓦斯ってどんな会社?


東証プライム・名証プレミア市場に上場し、東海3県を中心にガス、LPG、電気の供給等を行うエネルギー事業者です。

(1) 会社概要


1922年に設立し、名古屋瓦斯を買収してガス事業を開始しました。1959年に東邦液化燃料(現・東邦液化ガス)を設立してLPG分野へ、2016年には小売電気事業へ参入し、総合エネルギー企業として発展してきました。2022年には一般ガス導管事業等を東邦ガスネットワークへ承継しています。

現在の従業員数は連結で6,131名、単体で973名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本生命保険、第3位は三井住友銀行となっており、金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.69%
日本生命保険 6.05%
三井住友銀行 3.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は山碕聡志氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
山碕聡志 代表取締役社長 社長執行役員 1986年同社入社。財務部長、企画部長、常務執行役員、取締役専務執行役員等を経て、2025年4月より現職。
増田信之 代表取締役会長 1986年同社入社。生産本部長、取締役専務執行役員、代表取締役社長 社長執行役員等を経て、2025年4月より現職。
鏡味伸輔 代表取締役 副社長執行役員 1988年同社入社。原料部長、生産本部長、取締役専務執行役員 営業本部長等を経て、2026年4月より現職。
小澤勝彦 取締役 専務執行役員 1989年同社入社。財務部長、常務執行役員等を経て、2026年4月より現職。
拝郷丈夫 取締役 専務執行役員 1989年同社入社。人事部長、常務執行役員等を経て、2025年6月より現職。
前田勉 取締役 専務執行役員 1991年同社入社。企画部長、常務執行役員生産本部長等を経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、濵田道代(名古屋大学名誉教授)、大島卓(日本碍子取締役会長)、中西勇太(トヨタ自動車事業開発本部長兼新事業企画部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガス」「LPG・その他エネルギー」「電気」および「その他」事業を展開しています。

ガス


愛知県、三重県、岐阜県において、一般家庭や業務用顧客向けに都市ガスの製造・供給、ガス機器の販売等を行っています。防災対応力を高めたインフラ整備も推進しています。

収益は顧客からのガス利用料金や機器販売代金等から得ています。事業は主に東邦瓦斯、東邦ガスネットワーク、東邦ガスライフソリューションズが運営しています。

LPG・その他エネルギー


LPGやLNGの販売、熱供給事業、コークスや石油製品の販売事業を展開しています。東海3県でのシェア拡大と広域圏での開発を強化しています。

収益は顧客からのLPG利用料や販売代金等によって構成されています。事業の運営は東邦瓦斯や東邦液化ガス等が担っています。

電気


一般家庭や業務用顧客に向けて電気の販売を行っています。電源の多様化や調達の工夫を進め、中長期的な収益基盤の強化を図っています。

収益は顧客から支払われる電気利用料金から得ています。事業の運営は主に東邦瓦斯が担当しています。

その他


LNGの受託加工、不動産の管理・賃貸、情報処理サービス、海外における天然ガス等の開発・投資事業など、多岐にわたる周辺ビジネスを展開しています。

収益は受託加工料、賃貸料、サービス提供料等から得ています。東邦ガス不動産開発や東邦ガス情報システム等が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は6,300億〜7,000億円台で推移しており、経常利益は安定的に創出されています。直近の2026年3月期は、原料費調整制度による期ずれ差益の拡大等により、前期比で減収ながら増益を達成しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,153億円 7,061億円 6,330億円 6,560億円 6,511億円
経常利益 219億円 482億円 408億円 324億円 379億円
利益率(%) 4.3% 6.8% 6.4% 4.9% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 137億円 288億円 238億円 247億円 266億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上原価の減少により売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も前期を上回る水準で着地しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,560億円 6,511億円
売上総利益 1,728億円 1,793億円
売上総利益率(%) 26.3% 27.5%
営業利益 309億円 318億円
営業利益率(%) 4.7% 4.9%


供給販売費及び一般管理費のうち、減価償却費が315億円(構成比21.3%)、委託作業費が225億円(同15.2%)、給料が197億円(同13.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるガス事業は販売量の減少等によりわずかに減収となり、LPG・その他エネルギー事業も単価の低下により減収となりました。一方、電気事業はお客さま数の増加により増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ガス 4,244億円 4,218億円
LPG・その他エネルギー 1,001億円 953億円
電気 957億円 986億円
その他 359億円 354億円
連結(合計) 6,560億円 6,511億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フローを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 831億円 656億円
投資CF -452億円 -418億円
財務CF -188億円 -268億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.8%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


株主や投資家、顧客、地域社会、取引先、従業員との信頼関係を大切にしながら、供給安定性および環境性に優れた天然ガスの供給を柱として着実な成長を図るとともに、地域の発展に寄与することを経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


従業員一人ひとりが共通認識を持ち、新たな時代を切り拓けるよう、2050年の社会像を思い描いています。「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」「エネルギーの枠を超えたくらし・ビジネスのパートナー」「持続可能な社会の実現をリードする企業グループ」を目指す姿として掲げています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、2027年度を達成期限とする数値目標を設定し、収益性の向上を目指しています。

* 連結経常利益:300億円
* ROE:6%+α
* コア事業の営業キャッシュフロー:450億円
* 地域価値創造ビジネス群の事業利益:50億円

(4) 成長戦略と重点施策


コア事業であるガス・LPG事業で安定的なキャッシュフローを創出しつつ、電気事業と海外事業を成長の原動力として育成しています。また、トランジション期におけるCO2排出削減に向け、e-methaneプロジェクトや新たな水素製造技術の社会実装などカーボンニュートラルへの取り組みを加速させています。

* 電気事業のROICターゲット:3%+α
* 海外事業のROICターゲット:4%+α

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長の源泉は従業員一人ひとりの挑戦と成長にあると位置づけ、「人材マネジメント」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」「柔軟な働き方・生産性向上」「安全・健康管理」の4つの観点から制度の拡充や組織風土の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 14.7年 7,332,353円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 106.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.2%
男女賃金差異(正規雇用) 70.3%
男女賃金差異(パート・有期) 109.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DX推進人材の育成人数(224人)、女性の総合職採用比率(28.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) エネルギー需要の変動


猛暑や暖冬等の気候変動、小売全面自由化に伴う競争環境の変化、省エネルギーの進展や顧客のエネルギー選好の変化等により販売量が変動し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 原料および電力調達価格の変動


都市ガスの原料であるLNG価格は、地政学リスク等による原油価格や為替相場の変動の影響を受けます。また、経済情勢等により電力調達価格が変動した場合も、調達コストが増加し業績に影響する可能性があります。

(3) 情報システムへの支障


システム障害やサイバー攻撃等により、基幹となる情報システムに重大な支障が生じた場合、事業運営が停止し、社会的責任を含めて有形無形の損害が発生するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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