※本記事は、大阪瓦斯株式会社の有価証券報告書(第207期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 大阪ガスってどんな会社?
近畿圏を地盤とするガス・電力供給の大手企業です。エネルギー事業に加え、海外事業や都市開発、材料事業なども多角的に展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1897年に設立され、1905年に大阪市内でガス供給を開始しました。1949年には大阪ガスケミカルを設立し、材料事業へ進出しています。2020年には大阪ガスマーケティングなど基盤会社3社が事業を開始し、2022年には導管事業を分社化した大阪ガスネットワークが事業を開始するなど、グループ体制の再編を進めています。
同社グループは連結従業員数21,404名、単体従業員数1,283名を擁する企業グループです。大株主の構成は、筆頭株主と第2位が資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には生命保険会社が名を連ねており、機関投資家や金融機関が中心となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.68% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.39% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表取締役社長社長執行役員は藤原正隆氏が務めています。社外取締役比率は46.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤原 正隆 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1982年入社。経営企画本部長、エナジーソリューション事業部長などを歴任し、2021年1月より現職。 |
| 本荘 武宏 | 取締役会長 | 1978年入社。エネルギー事業部長、リビング事業部長、代表取締役社長などを歴任し、2021年1月より現職。 |
| 田坂 隆之 | 代表取締役副社長執行役員 | 1985年入社。リビング事業部長、エネルギー事業部長、経営企画本部長などを経て、2021年1月より現職。 |
| 竹森 敬司 | 代表取締役副社長執行役員 | 1987年入社。資源・海外事業部資源トレーディング部長、資源・海外事業部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 坂梨 興 | 代表取締役副社長執行役員 | 1992年入社。ガス製造・発電・エンジニアリング事業部電力事業推進部長、企画部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 今井 敏之 | 取締役常務執行役員 | 1990年入社。秘書部長、Daigasエナジー都市圏エネルギー営業部長、人事部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、村尾和俊(元西日本電信電話社長)、来島達夫(元西日本旅客鉄道社長)、佐藤友美子(元サントリー文化財団上席研究フェロー)、新関三希代(同志社大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内エネルギー」「海外エネルギー」「ライフ&ビジネス ソリューション」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 国内エネルギー
ガスの製造、供給、販売、ガス機器販売、ガス配管工事、LNG販売、発電および電気の販売などを行っています。顧客は家庭用から業務用、産業用まで多岐にわたり、ガス・電力のセット販売や各種サービスを提供しています。
主な収益源は、顧客からのガス料金、電気料金、ガス機器代金、工事代金などです。運営は、同社および子会社の大阪ガスネットワーク、大阪ガスマーケティング、Daigasエナジー、Daigasガスアンドパワーソリューション、泉北天然ガス発電などが担っています。
■(2) 海外エネルギー
米国、豪州、アジア等における天然ガス等の開発・投資、LNGトレーディング、エネルギー供給事業などを行っています。上流権益の確保から中下流事業までグローバルに展開しています。
主な収益源は、天然ガス・LNGの販売収益や投資事業からの配当・持分取込益などです。運営は、子会社のOsaka Gas USA Corporation、Osaka Gas Australia Pty Ltd、Osaka Gas Singapore Pte.Ltd.などが行っています。
■(3) ライフ&ビジネス ソリューション
不動産の開発・賃貸・管理、情報処理サービス、ファイン材料・炭素材製品の製造・販売などを行っています。エネルギー事業で培った技術や資産を活用し、非エネルギー分野での収益拡大を図っています。
主な収益源は、不動産賃貸料、分譲マンション販売収入、システム開発・保守料、材料製品の販売代金などです。運営は、子会社の大阪ガス都市開発、オージス総研、大阪ガスケミカルなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2023年3月期に売上高が2兆円を超えピークに達しましたが、原料価格高騰等の影響で利益面では苦戦し、当期利益(単体)は赤字となりました。その後、2024年3月期には売上高は減少したものの経常利益は大幅に回復しました。直近の2025年3月期は、売上高と経常利益は減少しましたが、当期利益は黒字を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 13,641億円 | 15,911億円 | 22,751億円 | 20,831億円 | 20,690億円 |
| 経常利益 | 1,278億円 | 1,135億円 | 756億円 | 2,266億円 | 1,896億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 7.1% | 3.3% | 10.9% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 546億円 | 589億円 | -452億円 | 684億円 | 525億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると、売上高は微減となり、売上原価も減少したことで売上総利益はほぼ横ばいを維持しています。一方、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益および営業利益率は低下しました。全体として、コストコントロールを進めつつも、利益率がやや圧迫される傾向が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 20,831億円 | 20,690億円 |
| 売上総利益 | 4,104億円 | 4,056億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.7% | 19.6% |
| 営業利益 | 1,726億円 | 1,607億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、委託作業費が658億円(構成比27%)、給料が574億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内エネルギー事業は、電力販売量が増加したものの原料費調整の影響等で減収となり、タイムラグ影響の縮小により減益となりました。海外エネルギー事業は、米国・豪州の上流事業等の好調により増収増益でした。ライフ&ビジネス ソリューション事業は、材料や都市開発等が寄与し増収となりましたが、情報ソリューション等の減益により全体では減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内エネルギー | 17,668億円 | 17,338億円 | 884億円 | 749億円 | 4.3% |
| 海外エネルギー | 986億円 | 1,086億円 | 515億円 | 540億円 | 49.7% |
| ライフ&ビジネス ソリューション | 2,176億円 | 2,267億円 | 310億円 | 288億円 | 12.7% |
| 調整額 | 2,0831億円 | 2,0690億円 | 16億円 | 31億円 | 0.0% |
| 連結(合計) | 20,831億円 | 20,690億円 | 1,726億円 | 1,607億円 | 7.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、社会インフラ事業者として健全な財務基盤を維持し、事業成長と投資を通じて持続的な企業価値向上を目指しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利息及び配当金の受取額が増加したものの、売上債権の増加による支出増が響き、前期比で収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入が増加した一方で、有形固定資産や関係会社株式の取得による支出が増加したため、支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入や非支配株主からの払込みによる収入が増加し、コマーシャル・ペーパーの純減による支払いが減少したため、支出が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,126億円 | 2,837億円 |
| 投資CF | -2,159億円 | -2,556億円 |
| 財務CF | -1,101億円 | -341億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「暮らしとビジネスの“さらなる進化”のお役に立つ企業グループ」を目指しています。天然ガス・電力等のエネルギー事業や都市開発・材料・情報等の多角的な事業を通じて、「お客さま価値」「社会価値」「株主さま価値」「従業員価値」の4つの価値を創造することを経営方針としています。
■(2) 企業文化
「Daigasグループ企業行動憲章」に基づき、公正で透明な企業活動を推進しています。多様な人材が集い、互いに切磋琢磨し合うことで従業員の力が最大限発揮される環境づくりを目指す「従業員の輝き向上」や、人権尊重を掲げた「Daigasグループ人権方針」の実践など、人を大切にする組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2024年に策定した新中期経営計画2026「Connecting Ambitious Dreams」では、各事業の収益性向上や財務健全性の維持を掲げています。2026年度に向けた具体的な経営指標として、以下の目標を設定しています。
* ROIC(投下資本利益率):5%程度
* ROE(自己資本利益率):8%程度
* 連結自己資本比率:45%以上
* 連結D/E比率:0.8以下
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画2026では、「ミライ価値の共創」「従業員の輝き向上」「経営基盤の進化」を重点戦略として掲げています。国内・海外エネルギーおよびライフ&ビジネスソリューションの3事業を柱とするポートフォリオ経営を実践し、カーボンニュートラルの実現やDXの推進、再生可能エネルギーの普及拡大に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ポートフォリオ経営を支えるため、事業環境の変化に柔軟に対応できる専門性の高い人材の確保と育成に注力しています。特にカーボンニュートラルやDXなどの分野でキャリア採用を拡大しつつ、適所適材の配置やタレントマネジメントを推進しています。また、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様な人材が活躍できる環境整備や、自律的なキャリア形成支援を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.8歳 | 15.9年 | 7,381,559円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.1% |
| 男性育児休業取得率 | 88.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 93.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職採用比率(39.4%)、ワークエンゲージメントスコア(52.2)、次世代経営人材の準備率(260%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営戦略に関するリスク
経済情勢の悪化や人口減少、他燃料との競争激化などが経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、気温や水温の変動によるエネルギー需要の変化や、各種規制・法令の変更も事業運営上のリスクとなります。ポートフォリオ経営によるリスク分散を図っていますが、各事業分野での競争力低下等が懸念されます。
■(2) 原料等の調達に関するリスク
ガス・電力の主原料であるLNG等を海外からの輸入に依存しているため、調達先の設備トラブルや自然災害、地政学的リスクにより、安定的かつ計画通りの調達が困難になる可能性があります。これに対し、調達先の分散やトレーディングによる柔軟な対応を進めていますが、不測の事態による影響は避けられない可能性があります。
■(3) 気候変動対応等の環境リスク
脱炭素社会への移行に伴う規制強化や需要構造の変化に対応するため、再生可能エネルギーやメタネーション技術への投資を進めています。しかし、温暖化の進行や技術開発の遅れ、市場の急激な変化などにより、対応コストが増加したり、既存事業の販売量が減少したりすることで、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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