※本記事は、株式会社京都ホテルの有価証券報告書(第107期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 京都ホテルってどんな会社?
ホテル経営およびホテル付随業務を中心に展開する同社の特徴と体制を紹介します。
■(1) 会社概要
1888年に京都ホテルの前身である京都常盤として創業し、1890年に開業しました。1927年に現在の会社を設立し、1969年には京都証券取引所に上場を果たしています。2001年にホテルオークラと業務提携契約を締結し、翌年に本館の名称を京都ホテルオークラ(現ホテルオークラ京都)と改称しました。
現在、同社は単体で364名の従業員を抱える体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は事業提携先であるホテルオークラで、第2位には食品関連事業等を手掛けるニチレイが名を連ねています。また、第3位には日本政策投資銀行が位置しており、事業会社や金融機関を中心とした資本構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ホテルオークラ | 35.33% |
| ニチレイ | 16.64% |
| 日本政策投資銀行 | 4.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は清水博氏が務めており、社外取締役比率は約7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清水 博 | 代表取締役社長 | 1988年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行、同社常務執行役員などを経て2025年より現職。 |
| 福永 法弘 | 取締役会長 | 1978年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行、AIRDO代表取締役副社長や同社代表取締役社長を経て2025年より現職。 |
| 後藤 浩之 | 常務取締役ホテルオークラ京都総支配人 | 1990年ホテルオークラ入社、オークラプレステージ台北総支配人やオークラニッコーホテルマネージメント執行役員等を経て2023年より現職。 |
| 杉田 洋 | 常務取締役総務部長 | 1985年同社入社、宿泊部長や販売促進部長、からすま営業部長等を経て2020年より現職。 |
| 西村 直樹 | 取締役販売サポート部長「ホテルオークラ京都副総支配人」 | 1986年同社入社、営業企画部長やカスタマーリレーション部長等を経て2022年より現職。 |
| 井手 章 | 取締役経理部長 | 1989年池田銀行(現池田泉州銀行)入行、京都支店長や同社顧問を経て2022年より現職。 |
| 中田 肇 | 取締役調理部長「ホテルオークラ京都総料理長」 | 1978年大成観光(現ホテルオークラ)入社、ホテルオークラ東京洋食調理部部長総料理長等を経て2023年より現職。 |
| 成瀬 正治 | 取締役 | 1981年大成観光(現ホテルオークラ)入社、同社代表取締役専務執行役員などを歴任し2018年より現職。 |
| 石垣 聡 | 取締役 | 1991年ホテルオークラ入社、ホテルオークラ神戸代表取締役社長等を経て2019年より現職。 |
社外取締役は、細見麗子(常陽取締役や医療法人蒼龍会副理事長を経て公益財団法人細見美術財団副館長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ホテル事業」を中心に事業を展開しています。
■(1) 宿泊部門・宴会部門
同社は、京都市内で「ホテルオークラ京都」および「からすま京都ホテル」を運営し、国内外の顧客に対して客室の提供や宴会場の貸出を行っています。国内外からの観光客やビジネス客の宿泊に加え、会議、研修、展示会などのMICE需要や大型宴会、婚礼等の各種イベントの企画・運営サービスを提供しています。
収益は、宿泊客からの室料や、企業・団体・個人からの宴会場利用料および付帯サービス料として受け取っています。事業の運営は同社が主体となって行っており、国内外の多様な顧客ニーズに対応した高品質なサービスを提供することで、安定的な収益基盤を構築しています。
■(2) レストラン部門・その他部門
ホテル館内における飲食施設の運営や、各種付帯サービスを提供しています。「ホテルオークラ京都」や「からすま京都ホテル」内でのレストラン、バー、ラウンジの運営を通じた料理や飲料の提供のほか、月極駐車場の運営、フィットネスクラブの会費収入、テナント等からの賃貸料収入も得ています。
収益源は、レストラン等を利用する顧客からの飲食代金や、施設利用者・テナントからの利用料・賃貸料などです。これらの事業も同社が運営主体となり、宿泊や宴会といった主力サービスと連携しながら付加価値を高め、顧客の館内利用を促進することでホテル全体の収益最大化を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はコロナ禍の影響を受けた時期から着実に回復を遂げ、直近では98億円規模まで拡大しています。経常利益も売上の回復に伴って黒字転換を果たし、その後も利益率を改善させながら安定した増益基調を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 43億円 | 74億円 | 91億円 | 94億円 | 98億円 |
| 経常利益 | -11億円 | 1億円 | 8億円 | 7億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | -25.6% | 1.1% | 8.8% | 7.2% | 9.4% |
| 当期純利益 | -7億円 | 1億円 | 9億円 | 8億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益構成を見ると、インバウンド需要や宴会需要の取り込みにより売上高が増加しています。これに伴い売上総利益も拡大しており、各種コストの増加を順調に吸収して営業利益および営業利益率の向上を実現しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 94億円 | 98億円 |
| 売上総利益 | 80億円 | 83億円 |
| 売上総利益率(%) | 85.2% | 84.9% |
| 営業利益 | 9億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 9.8% | 11.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が24億円(構成比33%)、業務委託費が7億円(同10%)、減価償却費が7億円(同10%)を占めています。また、売上原価においては料理原価が9億円(構成比61%)、雑貨原価が3億円(同21%)となっています。
■(3) セグメント収益
インバウンド需要の増加や大型宴会およびMICE需要の取り込みが奏功し、主力事業であるホテル運営において堅調な売上成長を記録しました。販売価格の適正化や顧客ニーズに合わせたサービス提供により、収益性の改善も進んでいます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ホテル経営及びホテル付随業務 | 94億円 | 98億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で利益を生み出し、その資金で借入金の返済や設備投資などの支出を賄う「健全型」の構造を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | 16億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -3億円 |
| 財務CF | -7億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「顧客第一主義に徹し、お客様に心の満足を提供する企業」を目指すことを基本方針として掲げています。ホテル業を通じた社会・経済の発展への貢献や、すべてのステークホルダー(株主・お客様・従業員・パートナー・地域等)に対する責任を果たし、社会規範に沿った事業活動を行う企業を目指して経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、創業の地である京都の歴史と伝統を重んじつつ、「顧客主義」「ステークホルダーからの信頼」「従業員満足の向上」という価値観を重視しています。「おもてなしの心」を大切にし、常に最適・最高のサービスを追求する姿勢が根付いています。また、従業員一人ひとりの働きがいや自己実現の可能性を高める環境づくりにも力を入れています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年3月期から2028年3月期までを対象とする「第3次中期経営計画」を策定し、持続可能なホテル運営と盤石な経営基盤の確立を目指しています。「第二創業」の決意のもと、すべてのステークホルダーにとっての「WIN-WIN HOTEL」となることをビジョンとして掲げ、重点施策に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、「収益力強化・協働力強化」「人材確保・定着」「財務基盤強化」を最重要課題として推進します。商品・サービスの付加価値向上や販売価格の適正化を通じて収益力を高めるとともに、多様な人材の確保やエンゲージメントの醸成を図ります。また、内部留保の拡大や適切な資本配分により、持続的な成長を支える強固な財務基盤の構築を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を持続的な企業価値向上の源泉と位置づけています。階層別・職種別教育の強化やホスピタリティマインドの深化、ブランド教育を通じて、プロのホテルスタッフを育成しています。また、賃金水準の見直しや福利厚生の充実など処遇改善に取り組むとともに、育児・介護との両立支援等の働きやすい職場環境の整備を進め、人材の確保・定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.9歳 | 13.6年 | 4,852,434円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.7% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 53.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 疾病・自然災害等による需要減少
同社は全国および世界各国からの顧客を受け入れているため、疾病や感染症の流行、自然災害、戦争、テロなどが発生した場合、宿泊需要や各種イベント等の宴会需要が急減し、業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 天災等の施設への影響
ホテル運営においては安全かつ継続的な施設の維持が重要です。同社は停電等に対する影響最小化の体制を敷いていますが、想定を超える台風や地震などの天災が発生した場合、施設の毀損や劣化により事業活動に支障を来すリスクがあります。
■(3) 食中毒等の食品衛生リスク
食事の提供や食品販売を行っているため、新たな病原菌の発生や衛生管理の瑕疵による食中毒事案が起きた場合、ブランドイメージの失墜や営業制限等の影響を受ける可能性があります。これを防ぐため、定期的な巡回点検や社員教育を徹底しています。
■(4) 金利上昇による財務負担増
同社は設備投資や運転資金等のため有利子負債による資金調達を行っています。一部の借入金については金利を固定化する対策を講じていますが、中長期的に金利が上昇した場合には支払利息などの金融費用が増加し、財務状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。



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