京都ホテル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京都ホテル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する同社は、京都市内で「ホテルオークラ京都」や「からすま京都ホテル」等のホテル経営を行っています。当期の業績は、インバウンド需要や国内観光需要の回復により、宿泊部門が好調に推移し増収となりましたが、原材料価格の高騰や人件費の増加等により減益となりました。


※本記事は、株式会社京都ホテル の有価証券報告書(第106期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京都ホテルってどんな会社?


京都市内で130年以上の歴史を持つ老舗ホテル企業であり、ホテルオークラとの業務提携を通じて高品質なサービスを提供しています。

(1) 会社概要


1888年に前身となる「京都常盤」を創業し、1890年に「京都ホテル」を開業しました。1927年に「株式会社京都ホテル」を設立し、2001年にはホテルオークラと業務提携契約を締結しました。2002年に「京都ホテル(おいけ本館)」を「京都ホテルオークラ」に改称し、さらに2022年には「ホテルオークラ京都」へと名称変更を行いました。

同社(単体)の従業員数は355名です。筆頭株主は業務提携先であるホテルオークラで、第2位は2000年に土地建物の譲渡・賃借取引を行った経緯があるニチレイ、第3位は日本政策投資銀行です。

氏名 持株比率
ホテルオークラ 35.33%
ニチレイ 16.64%
日本政策投資銀行 4.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は福永法弘氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
福永 法 弘 代表取締役社長 1978年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。AIRDO代表取締役副社長等を経て、2015年同社代表取締役社長に就任。ホテルオークラ常務執行役員等を歴任し、2022年よりホテルオークラ顧問。
後藤 浩 之 常務取締役ホテルオークラ京都総支配人 1990年ホテルオークラ入社。オークラプレステージ台北総支配人、ホテルオークラ執行役員等を歴任。2023年同社常務取締役ホテルオークラ京都総支配人に就任。オークラニッコーホテルマネージメント常務執行役員。
杉田  洋 常務取締役総務部長 1985年同社入社。宿泊部長、執行役員からすま営業部長兼外販部長等を歴任。2014年新規事業所開発担当兼からすま京都ホテル総支配人。2020年より常務取締役総務部長。
西村 直 樹 取締役販売サポート部長「ホテルオークラ京都副総支配人」 1986年同社入社。営業企画部長、からすま京都ホテル総支配人等を歴任。2021年より取締役販売サポート部長「ホテルオークラ京都副総支配人」。
井手  章 取締役経理部長 1989年池田銀行(現池田泉州銀行)入行。各支店長を経て2022年同社顧問。同年より取締役経理部長。
中田  肇 取締役調理部長「ホテルオークラ京都総料理長」 1978年大成観光(現ホテルオークラ)入社。ホテルオークラ東京執行役員総料理長、ホテルオークラ神戸常務取締役総料理長等を歴任。2023年より同社取締役調理部長「ホテルオークラ京都総料理長」。
成瀬 正 治 取締役 1981年大成観光(現ホテルオークラ)入社。ホテルオークラ代表取締役専務執行役員、ホテルオークラ東京代表取締役会長等を歴任。2018年より同社取締役。
石垣  聡 取締役 1991年ホテルオークラ入社。ホテルオークラ東京取締役等を歴任。2017年ホテルオークラ神戸代表取締役社長総支配人。2019年より同社取締役。


社外取締役は、千玄室(裏千家今日庵前家元〈大宗匠〉)、細見麗子(公益財団法人細見美術財団副館長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ホテル経営及びホテル付随業務」および「その他」事業を展開しています。

宿泊部門


国内外からの観光客やビジネス客を対象に、客室の提供を行っています。「ホテルオークラ京都」では富裕層や個人客向けの高単価なサービスを、「からすま京都ホテル」では修学旅行等の団体客やビジネス需要にも対応したサービスを展開しています。

収益は、宿泊客からの室料収入が主な源泉となります。運営は主に京都ホテルが行っています。

宴会部門


一般宴会、婚礼宴会、MICE(会議・研修・イベント等)の会場および料理・飲料の提供を行っています。地元企業や団体の会議・パーティー需要、個人の婚礼需要などが主な対象です。

収益は、宴会主催者や新郎新婦からの会場費、飲食代、装花・演出料などが源泉となります。運営は主に京都ホテルが行っています。

レストラン部門


ホテル内のレストラン、バー、ラウンジにおいて、宿泊客および外来客に対して飲食サービスを提供しています。和食、洋食、中国料理など多様なジャンルの店舗を展開しています。

収益は、利用者からの飲食代金が源泉となります。運営は主に京都ホテルが行っています。

その他部門


ホテル内および外部における物販、テナント賃貸、駐車場運営などを行っています。また、「ホテルオークラ京都」におけるフィットネスクラブの運営なども含まれます。

収益は、テナントからの賃貸料、駐車場利用料、フィットネスクラブ会員からの会費などが源泉となります。運営は主に京都ホテルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2022年3月期にかけては、感染症拡大の影響により厳しい業績となりましたが、その後は回復基調にあります。特に直近数期は売上高が拡大傾向にあり、利益面でも黒字化を達成しています。当期は増収ながらもコスト増により減益となりましたが、一定の利益水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 38.5億円 42.7億円 73.5億円 91.4億円 93.6億円
経常利益 -19.4億円 -10.9億円 0.8億円 8.1億円 6.8億円
利益率(%) -50.4% -25.6% 1.1% 8.8% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -19.7億円 -6.5億円 0.6億円 9.3億円 7.7億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しました。一方、営業利益および営業利益率は低下しており、販管費の増加等が影響していることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 91.4億円 93.6億円
売上総利益 77.2億円 79.7億円
売上総利益率(%) 84.5% 85.2%
営業利益 9.5億円 9.2億円
営業利益率(%) 10.4% 9.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が23.0億円(構成比33%)、減価償却費が7.0億円(同10%)、業務委託費が6.9億円(同10%)を占めています。また、売上原価においては、料理原価が8.7億円(構成比63%)、雑貨原価が2.9億円(同21%)となっています。

(3) セグメント収益


宿泊部門はインバウンド需要の取り込み等により大幅な増収となりました。一方で、宴会部門やレストラン部門は、婚礼需要の低迷や営業制限等の影響により減収となりました。全体としては宿泊部門の好調が寄与し、増収を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
宿泊部門 37.1億円 41.0億円
宴会部門 27.2億円 25.9億円
レストラン部門 21.8億円 21.3億円
その他部門 5.3億円 5.4億円
連結(合計) 91.4億円 93.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を借入金の返済に充てつつ、投資は抑制的な「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15.0億円 12.6億円
投資CF -1.7億円 -0.5億円
財務CF -6.6億円 -7.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は33.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「顧客第一主義に徹し、お客様に心の満足を提供する企業」を目指すとともに、ホテル業を通じて社会・経済の発展に貢献することを掲げています。また、株主・顧客・従業員・パートナー・地域等のステークホルダーに対する責任を果たし、社会規範に沿った事業活動を行うことを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は1888年の創業以来、京都を代表するホテルとしての歴史を刻んできました。コロナ禍を経て、「第二創業」の決意を新たに、全てのステークホルダーにとって「WIN-WIN HOTEL」となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2028年3月期までの3カ年を対象とする「第3次中期経営計画」を策定し、持続可能なホテルの実現と盤石な経営基盤の確立を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、「収益力強化・協働力強化」「人材確保・定着」「財務基盤強化」を重点施策として掲げています。具体的には、商品・サービスの付加価値向上や適正な価格設定、多様な人材の確保と育成、内部留保による純資産改善などに取り組む方針です。また、施設競争力の維持強化として、2026年から2029年にかけてホテルオークラ京都の客室全般の改装(投資額約40億円)を予定しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材不足への対応を喫緊の課題と捉え、多様な人材の確保と定着に取り組んでいます。具体的には、賃金の引き上げや福利厚生の充実による処遇改善、育児・介護サポートの拡充、業務効率化による負担軽減を進めています。また、語学力や接客水準の向上を目指した研修やグループホテル間の人材交流などを通じ、継続的な人材育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.6歳 13.1年 4,520,259円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.4%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.8%
男女賃金差異(正規雇用) 76.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ホテル業の売上高について


同社は国内外から多くの顧客を受け入れているため、感染症の流行や自然災害、戦争、テロ等の発生により旅行需要が減退した場合、売上高に悪影響が及ぶ可能性があります。

(2) 施設の毀損、劣化について


停電等の想定される事態には体制を整えていますが、台風や地震等の想定を超える天災が発生した場合、施設の損壊等により事業活動に支障が生じ、業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 食中毒について


食事の提供や食品販売を行っているため、食中毒が発生した場合にはブランドイメージが失墜し、業績に影響を与える可能性があります。これを防ぐため、設備投資や衛生管理の徹底、社員教育を実施しています。

(4) 金利変動リスクについて


有利子負債による資金調達を行っており、その割合が高いため、中長期的な金利上昇局面においては利払い負担が増加し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。一部借入金の金利固定化等の対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。