ジャックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。クレジット、カード・決済、ファイナンス等の国内事業に加え、ASEAN諸国での海外事業を展開する信販大手。2025年3月期は営業収益1,910億円で増収となるも、貸倒関連費用や金融費用の増加により経常利益258億円、当期純利益186億円と減益となった。


※本記事は、株式会社ジャックス の有価証券報告書(第94期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャックスってどんな会社?

ショッピングクレジットやオートローン等の消費者信用事業を主力とし、決済・保証分野やASEAN地域での海外展開も推進する信販会社です。

(1) 会社概要

1954年に北海道函館市でデパート信用販売として創業し、1976年の合併により現商号へ変更、同年に東証二部へ上場しました。1978年に東証一部へ指定替えとなり、全国展開を加速させました。2008年には三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)の持分法適用関連会社となり、2010年にはベトナム現地法人を設立し海外進出を本格化させました。

連結従業員数は5,518名、単体では2,673名体制です。筆頭株主は、資本業務提携先であり親密な関係にある三菱UFJ銀行です。第2位と第3位は、資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
三菱UFJ銀行 20.18%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.60%
日本カストディ銀行(信託口) 8.03%

(2) 経営陣

同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役会長CEOは山﨑徹氏、代表取締役社長COOは村上亮氏が務めています。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
山﨑徹 取締役会長代表取締役CEO 1982年入社。首都圏エリア統括部長、取締役上席執行役員(経営企画担当)、取締役社長(代表取締役)COOなどを経て、2022年6月より現職。
村上亮 取締役社長代表取締役COO 1985年入社。中部エリア統括部長、上席執行役員営業戦略副本部長兼クレジット事業担当、取締役常務執行役員などを経て、2022年6月より現職。
齊藤隆司 取締役専務執行役員CFO 1983年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。同行執行役員、ジャックス取締役常務執行役員(コンプライアンス担当等)を経て、2024年6月より現職。
大島健一 取締役専務執行役員 1982年入社。信用管理統括、情報システム担当、取締役常務執行役員(総務・人事担当等)などを経て、2024年6月より現職。信用管理・情報システム部門管掌。
末弘昭仁 取締役常務執行役員 1990年入社。東北エリア統括部長、取締役上席執行役員(経営企画担当)などを経て、2024年6月より現職。経営企画担当兼国際事業部門管掌。
瀬川和彦 取締役常務執行役員 1988年入社。人事部長、執行役員経営企画部長、上席執行役員総務・人事担当などを経て、2024年6月より現職。審査事務担当兼総務・人事部門管掌。
小林一郎 取締役常務執行役員 1991年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。ジャックス執行役員経営企画部長、取締役上席執行役員などを経て、2024年6月より現職。リスク統括・コンプライアンス部門管掌。


社外取締役は、鈴木政士(元キリンホールディングス取締役)、岡田恭子(元資生堂常勤監査役)、三瓶博二(元損保ジャパン日本興亜キャリアスタッフ社長)、下森右子(株式会社エル・ティー・エス執行役員)です。

2. 事業内容

同社グループは、「国内」および「海外」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 国内事業(クレジット)

加盟店で商品購入やサービス提供を受ける顧客に対し、分割払い等の信用供与を行う事業です。ショッピングクレジットやオートローンが主力で、信用調査、立替払い、代金回収を行います。
収益は、顧客からの分割払手数料や、加盟店からの加盟店手数料等から得ています。運営は主にジャックスが行っています。

(2) 国内事業(ペイメント)

クレジットカードの発行、家賃保証、集金代行を行う事業です。カード会員の利用代金の立替払いや、不動産管理会社等への家賃の立替払い・保証、口座振替ネットワークを利用した集金業務を提供しています。
収益は、カード会員からの年会費・手数料、加盟店手数料、家賃保証料、集金代行手数料等から得ています。運営は主にジャックスが行っています。

(3) 国内事業(ファイナンス)

投資用マンション購入資金や自動車・教育資金等を提携金融機関から借り入れる顧客に対し、信用保証を行う事業です。信用調査を行い、承認した顧客の債務を保証します。
収益は、顧客(または提携金融機関)からの保証料から得ています。運営は主にジャックスが行っています。

(4) 国内事業(その他)

リース業務、融資業務、保険代理店業務、サービサー(債権回収)業務などを含みます。
収益は、リース料、貸付金利息、保険手数料等から得ています。運営は、ジャックス、ジャックスリース、ジャックス・トータル・サービス、ジャックス債権回収サービスが行っています。

(5) 海外事業

ベトナム、インドネシア、フィリピン、カンボジアにおいて、主に二輪・オートローンのクレジット事業や個人向け無担保ローン等を展開しています。
収益は、顧客からのクレジット手数料やローン利息等から得ています。運営は、現地の連結子会社(JACCS International Vietnam Finance Co.,Ltd.など)が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上収益は順調に増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方で利益面では、2024年3月期までは増加傾向でしたが、2025年3月期は減益となりました。利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,607億円 1,641億円 1,735億円 1,848億円 1,910億円
経常利益 165億円 268億円 318億円 331億円 258億円
利益率(%) 10.3% 16.3% 18.3% 17.9% 13.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 118億円 183億円 217億円 238億円 186億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上収益は増加しましたが、営業費用も増加したため営業利益は減少しました。売上総利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,848億円 1,910億円
売上総利益 1,848億円 1,910億円
売上総利益率(%) 100.0% 100.0%
営業利益 331億円 257億円
営業利益率(%) 17.9% 13.5%


販売費及び一般管理費のうち、貸倒引当金繰入額が303億円(構成比22%)、その他が295億円(同21%)、計算費が240億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益

国内事業は売上収益が増加しましたが、利益は減少しました。海外事業は売上収益が減少し、損失を計上しました。全体として増収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内 1,588億円 1,650億円 333億円 292億円 17.7%
海外 260億円 257億円 2億円 -36億円 -14.1%
調整額 -8億円 -5億円 -4億円 2億円 -
連結(合計) 1,848億円 1,910億円 331億円 257億円 13.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、債権流動化や長期借入れといった財務活動を通じて資金調達を行い、事業運営に必要な資金を確保しています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益はあったものの、仕入債務の減少や売上債権の増加により、使用した資金が前年よりも増加しました。投資活動では、有形・無形固定資産の取得が主な支出となり、使用した資金は前年を上回りました。財務活動では、債権流動化借入れや長期借入れによる収入があったものの、それらの返済や社債償還による支出が大きく、獲得した資金は前年を下回りました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -980億円 -452億円
投資CF -63億円 -74億円
財務CF 1,290億円 397億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、創業の精神として「信為萬事本(信を万事の本と為す)」を掲げ、信用と信頼を第一に事業に取り組んでいます。経営理念として「『夢のある未来』『豊かな社会』の実現に貢献する」ことを定め、長期ビジョンとして「アジアのコンシューマーファイナンスカンパニーとしてトップブランドを確立する」ことを目指しています。

(2) 企業文化

創業以来大切にしてきた価値観として、信義を全ての物事の基本と捉える姿勢を重視しています。グループ役職員が一体となり、コンシューマーファイナンスを通じて人々の生活が豊かになるよう真摯に事業に取り組む姿勢を共有しています。

(3) 経営計画・目標

2025年度を初年度とする中期3カ年経営計画「Do next!」を推進しており、最終年度である2027年度の連結目標として以下の数値を掲げています。
* 営業収益:2,045億円
* 経常利益:310億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:230億円

(4) 成長戦略と重点施策

「MUFGグループとの連携拡充により変革と再成長に挑む3年間」をテーマに掲げています。具体的には、MUFGグループとの連携強化やM&Aによる成長戦略の加速、不採算事業の見直し等による事業構造改革、ALM(資産負債の総合管理)の高度化による財務健全性の確保と資本効率の向上を重点戦略として実行します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

中期経営計画において「人的資本経営のブラッシュアップによるウェルビーイングと企業価値の向上」をテーマに掲げています。多様性の発揮、健康経営の推進、変革人材の育成、エンゲージメントの向上を戦略とし、多様な人材の採用・登用や、個々のスキルを最大限に発揮できる環境整備、人事制度の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.3歳 15.4年 6,510,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.4%
男性育児休業取得率 87.1%
男女賃金差異(全労働者) 62.9%
男女賃金差異(正規) 59.2%
男女賃金差異(非正規) 71.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇60%以上取得者比率(79.1%)、二次検診受診率(99.0%)、認定デジタル人材人数(321名)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業戦略に関わるリスク

新中期経営計画の成長戦略や事業構造改革を実行する中で、事業環境が激変し想定外のリスクに晒された場合、業績や財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、同社グループの事業における単体比率が高いため、関係会社に関連するリスクが顕在化した場合の影響も考慮する必要があります。

(2) 経済・競争環境に関わるリスク

世界経済の低迷や物価・金利上昇による個人消費の減退は、同社グループの業績に大きく影響します。また、同業他社に加え異業種やフィンテック企業の参入による競争激化、新サービスの開発遅延等により市場競争力が低下した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) カントリーリスク

ベトナム、インドネシア、フィリピン、カンボジア等で事業を展開しており、これらの国における戦争、暴動、テロ等の地政学リスクや、政治、経済、文化、宗教等の予期せぬ変化が発生した場合、現地の事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。