※本記事は、株式会社ジャックス の有価証券報告書(第95期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジャックスってどんな会社?
クレジットやペイメント、ファイナンスを中心とした消費者向け金融サービスを国内外で展開する企業です。
■(1) 会社概要
1954年に北海道函館市でデパート信用販売として設立され、1959年に北日本信用販売へ商号を変更しました。1972年には東京支店を開設して全国展開を開始し、1976年に現在のジャックスへと社名を変更しています。2010年以降はベトナムをはじめとするアセアン地域への進出を進め、海外展開を加速させています。
現在の従業員数は連結で5,532名、単体で2,676名となっています。筆頭株主は資本業務提携を結んでいる三菱UFJ銀行で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は日本カストディ銀行(信託口)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 39.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.32% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表者は取締役社長代表取締役の村上亮氏が務めており、社外取締役の比率は26.7%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山﨑 徹 | 取締役会長 | 1982年同社入社。執行役員営業戦略本部クレジット推進部長等を経て、2018年取締役社長に就任。2022年より現職。 |
| 村上 亮 | 取締役社長代表取締役 | 1985年同社入社。執行役員営業戦略本部クレジット推進部長等を経て、2020年取締役常務執行役員に就任。2022年より現職。 |
| 末弘 昭仁 | 取締役専務執行役員代表取締役経営企画部門管掌 | 1990年同社入社。執行役員東北エリア統括部長等を経て、2023年取締役上席執行役員に就任。2025年より現職。 |
| 小林 一郎 | 取締役常務執行役員情報システム部門管掌兼リスク統括部門管掌 | 1991年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2019年同社入社。執行役員経営企画部長等を経て、2025年より現職。 |
| 瀬川 和彦 | 取締役常務執行役員信用管理部門管掌兼総務・人事部門管掌兼コンプライアンス部門管掌 | 1988年同社入社。人事部長、執行役員コンプライアンス統括部長等を経て、2024年取締役常務執行役員に就任。2025年より現職。 |
| 中澤 辰生 | 取締役常務執行役員経理・財務担当 | 1986年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2023年同社入社。上席執行役員経理部長等を経て、2025年より現職。 |
| 岩瀬 豪 | 取締役常務執行役員審査事務部門管掌兼国際事業部門管掌 | 1994年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役員等を経て、2025年同社入社。同年より現職。 |
社外取締役は、鈴木政士(元キリンHD取締役)、岡田恭子(元資生堂常勤監査役)、三瓶博二(元SOMPOコーポレートサービス社長)、下森右子(元イオトイジャパン社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内」「海外」の報告セグメントを展開しています。
■国内事業
クレジット、ペイメント、ファイナンスを主力とし、信用調査機能を活用して消費者の商品購入代金の立替払いやクレジットカードの発行、住宅ローン・自動車ローンなどの債務保証を提供しています。また、保険販売やリース業務、債権回収なども行っています。
収益源は加盟店や提携金融機関からの手数料、カード会員等からの利息・手数料です。主にジャックスが運営していますが、リース業務はジャックスリース、債権回収はジャックス債権回収サービスが担うなど、複数の国内子会社とともに事業を展開しています。
■海外事業
主にベトナム、インドネシア、カンボジア、フィリピン、マレーシアといったアセアン地域において、二輪車や四輪車向けのオートローン等のクレジット事業を中心に展開しています。一部の国では、個人向けの無担保ローンや重機等のリースも提供しています。
収益源は現地の消費者から得られるローン利息や手数料です。ベトナムのJACCS International Vietnam Finance Co.,Ltd.やインドネシアのPT JACCS MITRA PINASTHIKA MUSTIKA FINANCE INDONESIAなど、各国の現地子会社や持分法適用会社が運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の経常利益と当期利益は、2024年3月期までは順調に拡大していましたが、それ以降は減益傾向にあります。これは国内外における事業構造改革の実施や、調達金利の上昇による金融費用の増加、一部海外事業における業績回復の遅れなどが影響していると考えられます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 268億円 | 318億円 | 331億円 | 258億円 | 203億円 |
| 当期利益 | 163億円 | 188億円 | 238億円 | 196億円 | 124億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益は前期間から当期間にかけて減少しています。これは、国内事業における調達金利の上昇や資金需要の拡大により、金融費用が増加したことが主な要因です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 257億円 | 204億円 |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が312億円(構成比22%)、貸倒引当金繰入額が289億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内事業は住宅関連商品やオートローンの堅調な推移により増収となりました。一方、海外事業はベトナムやカンボジアで一定の成果をあげたものの、インドネシアでの事業構造改革による取扱商品の絞り込み等の影響があり減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内事業 | 1,650億円 | 1,704億円 |
| 海外事業 | 257億円 | 219億円 |
| 連結(合計) | 1,907億円 | 1,923億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -452億円 | 231億円 |
| 投資CF | -74億円 | -122億円 |
| 財務CF | 397億円 | -412億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も7.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「『夢のある未来』『豊かな社会』の実現に貢献する」を経営理念に掲げています。これは、同社の事業を通じ、すべてのステークホルダーにとって夢のある未来や豊かな社会となるよう尽力するという考え方を示したものです。また、「アジアのコンシューマーファイナンスカンパニーとしてトップブランドを確立する」ことを長期ビジョンとして定めています。
■(2) 企業文化
同社は、創業の精神として「信為萬事本(信を万事の本と為す)」という考え方を大切にしています。これは「信義は全てのものごとの基本である」と捉え、消費者の皆様やお取引先の皆様との「信用」と「信頼」を第一に考えて事業に取り組むという姿勢を表しており、グループの事業活動の基礎となる価値観として根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2025年度からの第15次中期3カ年経営計画「Do next!」を推進しており、最終年度の目標を取り下げた修正計画として以下の数値を掲げています。
・2026年度 営業収益:1,990億円
・2026年度 経常利益:250億円
・2026年度 親会社株主に帰属する当期純利益:180億円
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画「Do next!」では、「三菱UFJフィナンシャル・グループとの連携拡充により変革と再成長に挑む3年間」をテーマとし、持続的成長と企業価値向上を目指しています。今後は以下の重点戦略に取り組みます。
・三菱UFJフィナンシャル・グループとの連携とM&Aによる成長戦略の加速
・量から質への転換による抜本的な事業構造改革の推進
・ALMの高度化による財務健全性の確保と資本効率の向上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員一人ひとりの成長が会社の成長の源泉であるとの認識のもと、多様な個性やスキルを持つ人材の採用・育成に取り組んでいます。具体的には、エンゲージメントの向上、多様な人材ポートフォリオの構築、成長を支える変革人材やデジタル人材の拡充、そして健康経営の推進という4つの人材戦略を掲げ、従業員が能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.4歳 | 15.5年 | 6,765,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 61.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 75.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇60%以上取得者比率(79.5%)、認定デジタル人材人数(353名)、エンゲージメントスコア(3.0)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 貸倒関連費用の増加リスク
個人の信用状況の悪化や与信精度の低下、不正申込の増加、不動産市場の悪化などにより、延滞債権が増加し貸倒引当金を積み増す可能性があります。これにより貸倒関連費用が増加し、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。同社は与信精度の向上や回収強化等により、良質債権の確保に努めています。
■(2) 調達金利上昇リスク
同社は事業の性質上多くの資金調達を必要としており、金融市場の変化による調達金利の上昇は金融費用の増加に直結します。手数料や貸付利率等の取引条件見直しに時間を要する場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。同社はALMを活用し、デリバティブ取引などによるヘッジを実施してリスク低減を図っています。
■(3) サイバーセキュリティおよびシステムリスク
インターネットを活用したサービス提供が増加する中、サイバー攻撃や不正アクセスによる情報流出、システム停止の危険性が高まっています。重大なシステム障害が発生した場合、業務の停止や損害賠償、社会的信用の失墜を招き、同社の業績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。



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