記事タイトル:「オリエントコーポレーション転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、株式会社オリエントコーポレーションの有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オリエントコーポレーションってどんな会社?
オリエントコーポレーションは、個品割賦やクレジットカード等の幅広い金融サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1954年に協同組合広島クーポンとして設立され、1989年に現在のオリエントコーポレーションに商号変更しました。2000年にみずほ銀行と業務提携し、2011年に東京証券取引所市場第一部に復帰しました。近年は東南アジア市場への展開や、家賃保証事業等の買収を通じて事業基盤を積極的に拡大しています。
従業員数は連結6,411名、単体3,866名です。筆頭株主は事業会社であるみずほ銀行で、第2位は外国法人の信託受託者、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| みずほ銀行 | 48.66% |
| INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN)LIMITED SOLELY IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP | 9.74% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長(兼)社長執行役員は梅宮真氏です。社外取締役比率は54.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 梅宮真 | 代表取締役社長(兼)社長執行役員 | 1987年みずほ銀行入行。みずほフィナンシャルグループ執行役副社長等を歴任。2024年オリエントコーポレーション副社長執行役員に就任し、2025年より現職。 |
| 飯盛徹夫 | 取締役会長 | 1984年みずほ銀行入行。みずほ信託銀行取締役社長等を歴任。2020年オリエントコーポレーション代表取締役社長に就任し、2025年より現職。 |
| 馬塲一晃 | 代表取締役(兼)常務執行役員 | 1991年オリエントコーポレーション入社。常務執行役員コンプライアンスグループ長等を経て、2025年代表取締役(兼)常務執行役員に就任。2026年より現職。 |
| 松岡英行 | 取締役(兼)専務執行役員 | 1990年オリエントコーポレーション入社。経営企画部長、人事・総務グループ長等を歴任。2025年取締役(兼)専務執行役員に就任し、2026年より現職。 |
| 深澤雄二 | 取締役(常勤監査等委員) | 1980年みずほ銀行入行。2007年オリエントコーポレーション入社。コンプライアンスグループ担当などを経て、2019年常勤監査役、2022年より現職。 |
社外取締役は、西野和美氏(一橋大学副学長)、本庄滋明氏(元富士通総研社長)、平山景子氏(Blue Blossom創業者)、櫻井祐記氏(元富国生命投資顧問社長)、松井巖氏(新丸の内総合法律事務所所属弁護士)、小笠原由佳氏(藤村総合研究所取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「決済・保証」「海外」「カード・融資」「個品割賦」「銀行保証」および「その他」事業を展開しています。
■決済・保証事業
事業者間の売掛金や家賃の決済保証、各種費用の集金代行、小口リース保証などのサービスを提供しています。加盟店や賃貸を希望する顧客に対し信用調査を行い、債務を保証する仕組みです。
保証料や決済手数料などが主な収益源です。売掛金決済保証や集金代行は同社が、家賃決済保証はオリコフォレントインシュアが、小口リース保証はオリコビジネスリースが主に運営しています。
■海外事業
タイ、フィリピン、インドネシアの東南アジア市場において、現地の顧客を対象としたオートローンおよびそれに関連する金融事業を展開しています。
顧客からのオートローンに伴う手数料利息などが主な収益源です。タイではOrico Auto Leasing (Thailand) Ltd.が、フィリピンではOrico Auto Finance Philippines Inc.が運営を行っています。
■カード・融資事業
個人顧客や法人代表者向けにクレジットカードを発行し、ショッピングやキャッシングサービスを提供しています。また、融資専用ローンカードなどの無担保融資も取り扱っています。
顧客からの分割払い・リボルビング払い手数料や、キャッシングの利息などが主な収益源です。当事業の運営は、主に同社が単独で、または加盟店と提携して行っています。
■個品割賦事業
加盟店で商品の購入などを希望する個人顧客に対し信用調査を行い、利用代金を立替払いするサービスです。主にオートローン、オートリース、ショッピングクレジットを提供しています。
顧客からの分割払いによる会員手数料などが主な収益源です。運営は同社のほか、CAL信用保証、オリコプロダクトファイナンス、オリコオートリースなどが行っています。
■銀行保証事業
提携する金融機関に対して借入の申し込みを行う個人顧客に対し、信用調査を実施し、承認した顧客の債務を保証するサービスを提供しています。
提携金融機関からの保証料が主な収益源です。当事業の運営は、主に同社が行っています。
■その他
主要事業以外の領域として、債権の管理・回収を専門に行うサービサー事業や、商事物販・広告宣伝事業、保険代理店業務などを展開しています。
関連する手数料や委託料などが主な収益源です。日本債権回収、オリファサービス債権回収、オリコビジネス&コミュニケーションズなどのグループ会社が各事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、経常利益は一時的に減少傾向にありましたが、直近では改善の兆しを見せています。当期利益についても事業環境の変化等を受けて変動が見られます。各種事業構造改革や金利上昇局面への対応を通じて、今後の収益力回復が期待される状況です。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 290億円 | 231億円 | 161億円 | 123億円 | 144億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 148億円 | 134億円 | 114億円 | 150億円 | 96億円 |
■(2) 損益計算書
収益性の指標を見ると、営業利益は前期から改善しています。これは、各種事業において価格転嫁や経費水準の適正化を推進したことが寄与していると考えられます。今後は、デジタル技術の徹底活用等による生産性の向上を通じて、さらなる収益構造の強化が期待されます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 123億円 | 144億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、貸倒引当金繰入額が453億円(構成比22%)、計算事務費が415億円(同20%)、従業員給料及び手当が359億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力事業であるカード・融資事業や個品割賦事業が収益の多くを占めています。当期は、銀行保証事業や決済・保証事業が好調に推移し増収に寄与した一方で、海外事業は与信の厳格化等により減収となりました。個品割賦事業も金利上昇に伴う影響で取扱高が伸び悩んでいます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 決済・保証 | 250億円 | 260億円 |
| 海外 | 149億円 | 125億円 |
| カード・融資 | 700億円 | 716億円 |
| 個品割賦 | 782億円 | 770億円 |
| 銀行保証 | 350億円 | 376億円 |
| その他 | 84億円 | 84億円 |
| 連結(合計) | 2,316億円 | 2,331億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で借入の返済を進めつつ、手元資金の範囲内で将来に向けた投資を行う「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26億円 | 221億円 |
| 投資CF | -133億円 | -212億円 |
| 財務CF | -2,520億円 | -680億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は8.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、存在意義や使命としてのパーパス「その夢の、一歩先へ Open the Future with You」を掲げています。これは、ステークホルダーのパートナーとして、一人ひとりのいまと未来に親身に寄り添い、真摯に向き合い、熱意を持ってリードするという想いが込められています。誰もが豊かな人生を実現できる持続可能な社会をめざしています。
■(2) 企業文化
同社は、パーパスを補完するバリュー(大切にする価値観)として、「正しさを求める」「信頼を育む」「未来を想う」「挑戦を楽しむ」の4つを定めています。これらを通じ、不確実な時代においても新たな価値を創造することに挑み続け、社会課題解決を起点とした価値創造の実現に向けた組織文化の醸成を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年3月期を初年度とする5ヵ年の中期経営計画において、前半の3年間で事業構造改革を完遂し、競争優位性のある事業基盤を確立することを目標としています。財務面では、金利上昇局面に耐え得る収益構造への転換を目指しています。
* 経常利益:500億円超(2030年3月期目標)
* ROE:12%以上(2030年3月期目標)
* 営業収益一般経費率:50%台前半(2030年3月期目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、強みである与信力にデジタル技術を掛け合わせ、新たなソリューションの創出を目指しています。個人向けにはデジタル分割払いやオートリースなどの新領域を開拓し、法人向けには金融機関向け保証の多様化や中小企業向けのデジタル決済支援を展開します。また、AIの徹底活用による飛躍的な生産性向上にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員との関係を「相互に成長し合うパートナー」と再定義し、自律的な成長と能力発揮を促進する人的資本経営を実践しています。「会社と社員が互いに成長できるWin-Winな関係構築を通じた社員エンゲージメントの最大化」をめざし、AI・デジタル分野を含む専門性の強化やリスキリングの推進、多様な働き方の環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.1歳 | 17.3年 | 6,663,653円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 30.2% |
| 男性育児休業取得率 | 97.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 47.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 64.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 39.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、組織を牽引する女性リーダー比率(部室店長相当職)(13.2%)、新たなキャリアへの挑戦に向けて手をあげた人(累計)(495人)、AI活用人材の育成数(4,482名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスクによる業績への影響
同社グループは個人や法人に対する営業債権を保有しており、経済環境の悪化や物価高止まり等により顧客の支払能力が低下した場合、貸倒損失が増加するリスクがあります。これに対し、AIを活用した審査ロジックの最新化や回収体制の強化を進め、適切な引当金を計上して備えています。
■(2) 金利変動に伴う調達コストの増加
事業に必要な資金の多くを借入金や社債等の有利子負債で調達しているため、市場金利が想定以上に上昇した場合、金融費用が大幅に増加するリスクがあります。これに対して同社は、資産・負債の総合管理(ALM)の徹底やデリバティブ取引の活用を通じ、金利変動リスクの軽減に努めています。
■(3) サイバー攻撃や大規模システム障害
事業の特性上、大量の個人情報を保有し、大規模なコンピュータシステムを運用しています。サイバー攻撃やシステムの老朽化等により情報漏洩やシステム停止が発生した場合、ステークホルダーからの信頼を大きく毀損する可能性があります。このため、専門組織による24時間監視体制や障害発生の防止策を講じています。
■(4) 外部不正利用被害の増大
クレジットカード等における不正取引の手口が複雑化・巧妙化しており、不正被害額が増大するリスクがあります。不正取引の抑制が不十分とみなされた場合、社会的な信頼を失う恐れがあるため、AIスコア搭載の不正検知システムの導入や生体認証の活用など、被害の未然防止に向けた対策を強化しています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。