スズケン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スズケン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。医薬品卸売事業を中核に、医薬品製造、保険薬局、介護サービス等を展開する大手医薬品流通グループ。2025年3月期は、新薬やスペシャリティ医薬品の伸長により増収、販管費抑制や政策保有株式売却益等の計上により経常利益、当期純利益ともに増益となりました。


スズケン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社スズケン の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スズケンってどんな会社?

主要事業は医薬品卸売で、製造から流通、薬局、介護まで幅広く展開する「健康創造事業体」です。

(1) 会社概要

1932年に創業し、1946年に設立されました。1995年に東証二部へ上場し、1997年に東証一部へ指定替えとなりました。1998年には秋山愛生舘と合併し札幌証券取引所にも上場しています。2000年代以降、サンキ、アスティス、翔薬などを完全子会社化し、全国的な流通網を構築しました。

連結従業員数は12,923人、単体では3,082人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位は個人株主です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.32%
日本カストディ銀行(信託口) 3.86%
別所 芳樹 2.95%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長執行役員は浅野茂氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
浅野 茂 代表取締役社長執行役員 1990年入社。コラボクリエイト社長、SCM本部長、企画本部長等を歴任。2019年取締役副社長、2021年代表取締役副社長を経て、2022年4月より現職。
宮田 浩美 取締役会長執行役員 1984年入社。物流部長、経営企画部長、企画本部長等を歴任。2016年代表取締役社長に就任。2022年より現職。
田中 博文 取締役専務執行役員ヘルスケア流通事業本部長 1985年入社。SDネクスト社長、SCM本部長、ヘルスケア事業本部長等を歴任。2022年専務執行役員卸事業本部長を経て、2023年6月より現職。
髙橋 智恵 取締役上席執行役員医療・介護支援事業本部長 兼 医療・介護支援事業部長 2000年入社。薬事管理部長、コーポレートコミュニケーション部長等を歴任。2023年取締役上席執行役員に就任。2025年4月より現職。
富田 麻子 取締役監査等委員(常勤) 1994年秋山愛生舘入社。リスクマネジメント・監査室長、コンプライアンス部長、薬事・内部統制・監査担当等を歴任。2025年6月より現職。


社外取締役は、茶村俊一(元大丸松坂屋百貨店社長)、中垣英明(元厚生労働省医薬・生活衛生局長)、小笠原剛(元三菱東京UFJ銀行副頭取)、近藤敏通(公認会計士・税理士)、清水綾子(弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「医薬品卸売事業」「ヘルスケア製品開発事業」「地域医療介護支援事業」「スペシャリティ医薬品流通受託事業」「医療関連サービス等事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医薬品卸売事業

医療用医薬品、診断薬、医療機器、医療材料などを医療機関や保険薬局へ販売しています。
収益は、医療機関や保険薬局などの顧客からの商品販売代金です。運営は主にスズケン、サンキ、アスティス、翔薬、スズケン沖縄薬品などが担っています。

(2) ヘルスケア製品開発事業

医療用医薬品、診断薬、医療機器・材料の研究開発、製造、販売を行っています。
収益は、販売代理店や医療機関等からの製品販売代金です。運営は三和化学研究所(医薬品製造)、ケンツメディコ(医療機器製造)が行っています。

(3) 地域医療介護支援事業

保険薬局の運営および介護サービスの提供を行っています。
収益は、患者からの調剤報酬や介護サービスの利用者からの利用料、介護保険収入などです。運営はユニスマイル(保険薬局)、サンキ・ウエルビィ、エスケアメイト(介護)などが行っています。

(4) スペシャリティ医薬品流通受託事業

希少疾病薬などのスペシャリティ医薬品に関するメーカー支援業務を行っています。
収益は、医薬品メーカーからの流通受託手数料などです。運営はエス・ディ・コラボが行っています。

(5) 医療関連サービス等事業

医薬品メーカー物流の受託やデジタルヘルスケアサービスの提供を行っています。
収益は、医薬品メーカーからの物流受託料やサービス利用料などです。運営は中央運輸(物流)、エス・ディ・コラボ(物流受託)、コラボスクエア(デジタルヘルス)などが行っています。

(6) その他

デジタルヘルスケアサービス等の提供を行っています。
収益はサービスの利用料などです。運営はコラボスクエア(旧コラボプレイス)が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあります。利益面では、経常利益率が1%台後半で推移しており、当期純利益も増加傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 21,282億円 22,391億円 23,148億円 23,865億円 23,999億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 183億円 234億円 364億円 384億円 388億円
利益率(%) 0.9% 1.0% 1.6% 1.6% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 60億円 138億円 149億円 211億円 257億円

(2) 損益計算書

売上高は微増し、売上総利益率もわずかに改善しています。営業利益率は横ばい傾向です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 23,865億円 23,999億円
売上総利益 1,852億円 1,922億円
売上総利益率(%) 7.8% 8.0%
営業利益 349億円 371億円
営業利益率(%) 1.5% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が520億円(構成比34%)、発送運賃が175億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益

医薬品卸売事業が売上の大半を占めますが、利益率は低水準です。一方、スペシャリティ医薬品流通受託事業は大幅な増収増益となりました。ヘルスケア製品開発事業も増益です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
医薬品卸売事業 22,484億円 22,631億円 304億円 319億円 1.4%
ヘルスケア製品開発事業 119億円 117億円 16億円 19億円 16.4%
地域医療介護支援事業 974億円 944億円 17億円 13億円 1.4%
スペシャリティ医薬品流通受託事業 62億円 64億円 6億円 8億円 13.2%
医療関連サービス等事業 225億円 243億円 5億円 10億円 4.3%
連結(合計) 23,865億円 23,999億円 349億円 371億円 1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 872億円 -651億円
投資CF 104億円 204億円
財務CF -317億円 -355億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「世のため、人のため」「お得意さまに学ぶ」という創業の精神を受け継ぎ、事業領域を「健康創造」と定めています。医療と健康に関わる分野で、事業を通じて世の中に役立つことを基本方針とし、「社会課題の解決」と「社会コストの低減」に貢献する新しい価値を創造し続けることを存在意義(パーパス)としています。

(2) 企業文化

医療機関や保険薬局、患者、地域社会との信頼関係を「伝統資産」と位置づけ、これを基盤としています。現在は「第3の創業期」と位置づけ、各事業で培った機能や協業企業のサービスを組み合わせる「機能総体」の発想により、新たな価値提供を目指す文化を持っています。

(3) 経営計画・目標

2024年3月期から2026年3月期までの中期経営計画において、以下の定量的目標を掲げています。
* ROE:5%以上(資本コスト以上の水準)
* 営業利益率(2026年3月期):連結1.5%以上、卸売セグメント1.0%以上
* 株主還元(3年間平均):総還元性向100%以上
* 政策保有株式の縮減(2026年3月期末):連結純資産額の10%以下

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画「For your next heartbeat」の下、「既存事業の変革」と「新たな成長事業の準備」をテーマとしています。既存事業ではヘルスケア流通改革による生産性向上を図り、成長事業では協業企業とのオープンイノベーションにより新たなヘルスケアエコシステムの創生を目指しています。

* サステナブルな社会インフラ基盤の確立(ヘルスケア流通改革、アジア事業の再構築)
* 日本の新たなヘルスケアエコシステムの創生(スマートロジスティクス、デジタルヘルスケア、地域医療介護支援、ヘルスケア製品開発)

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人材の確保」「リスキリング」「ダイバーシティ&インクルージョン」「ウェルビーイング」「エンゲージメント」の5つのアプローチにより、人材の活性化を推進しています。特にDXを戦略の柱とし、デジタイゼーションとデジタライゼーションの両面で実力を発揮する「スズケングループDX人材」の育成を中核としています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.2歳 22.0年 7,279,324円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.1%
男女賃金差異(正規雇用) 62.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.3%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品卸売業界の法的規制

医薬品卸売事業は「医薬品医療機器等法」等の規制を受けており、営業拠点の開設や医薬品販売には許可が必要です。これらの許可等の状況により、業績に影響を与える可能性があります。法令遵守のため、継続的な教育指導を実施しています。

(2) 医療保険制度改革と薬価改定

医療用医薬品は薬価基準に収載されており、毎年の薬価改定による引き下げが業績に影響を及ぼす可能性があります。また、全世代型の社会保障制度構築に向けた医療保険制度改革の動向もリスク要因です。卸機能の適正評価による固定的なリベートへの移行交渉等に取り組んでいます。

(3) 医薬品流通特有の商習慣

医薬品を価格未決定のまま納入し、その後価格交渉を行う商習慣があります。決算時に合理的な見積もりで売上計上しますが、決定価格が予測を下回る場合、業績に影響を与える可能性があります。価格交渉の状況管理やシミュレーションシステムの活用により適正化を図っています。

(4) 固定資産の減損リスク

事業用の固定資産について、収益性の低下や市場価額の下落により将来キャッシュ・フローが見込めない場合、減損損失の計上が必要となり、業績に影響を与える可能性があります。投資回収の採算性評価や業績モニタリングを実施し、対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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