タカチホ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカチホ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の観光みやげ品専門商社。卸売事業を主力に、小売店、菓子製造、温浴施設、アウトドアショップなどを多角的に展開しています。直近の決算では、インバウンド需要や国内観光の回復を背景に売上高は増収となりましたが、コスト増等の影響で営業利益は横ばい、当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社タカチホ の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タカチホってどんな会社?


観光みやげ品の総合商社として、卸売・小売・製造を一貫して手掛けるほか、温浴施設やアウトドア事業も展開する企業です。

(1) 会社概要


1949年に長野市で「高千穂ストアー」として設立され、1951年にみやげ品の卸を開始しました。1963年に現在の「タカチホ」へ商号変更し、観光みやげ品の総合卸商社としての地位を確立。1994年に株式を店頭登録(現・東証スタンダード市場)しました。2000年には温浴施設事業へ参入し、2012年には地域密着を図るため事業の一部を子会社11社へ承継させる組織再編を行っています。

現在の連結従業員数は212名、単体では187名です。筆頭株主は事業投資を行うファンドで、第2位は代表取締役社長の久保田一臣氏、第3位も投資ファンドとなっており、創業家とファンドが主要株主となっています。

氏名 持株比率
投資事業有限責任組合JAICスペシャルティファンド 7.18%
久保田 一臣 6.72%
投資事業有限責任組合JAICパートナーズファンド 6.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は久保田一臣氏が務めています。取締役5名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
久保田 一臣 代表取締役社長経営企画本部長 2008年入社。マーケティング部長を経て、2017年より現職。
宮尾 聡 専務取締役営業本部長営業推進部長・製造部長 1996年入社。営業推進グループ課長、営業本部長等を経て、2025年より現職。
寺島 千博 取締役管理本部長総務部長 八十二銀行出身。融資部グループ長、野沢支店長等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、湯原儀芳(元八十二銀行高田支店長・公益財団法人八十二文化財団常務理事)、山田暁子(つばき税理士法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「みやげ卸売事業」「みやげ小売事業」「みやげ製造事業」「温浴施設事業」「不動産賃貸事業」「アウトドア用品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) みやげ卸売事業


観光みやげ品をホテル等の宿泊施設、JR駅、高速道路SAのみやげ販売店などへ卸売りしています。
収益は、取引先への商品販売代金です。運営は同社および越後銘販などの連結子会社11社が行っています。

(2) みやげ小売事業


複合商業施設や各観光地等において、「旬粋」ブランドなどの直営店を展開し、みやげ品の販売を行っています。
収益は、一般消費者からの商品購入代金です。運営は主に同社が行っています。

(3) みやげ製造事業


みやげ用の食品、主にクッキー類などの製造を行っています。
収益は、製造した商品の販売代金です。製造は同社内にて行っています。

(4) 温浴施設事業


長野市においてスーパー銭湯「まめじま湯ったり苑」を運営しています。
収益は、施設利用者からの入浴料や飲食代金などです。運営は同社が行っています。

(5) 不動産賃貸事業


長野市において商業施設「ショッピングタウンあおぞら」の運営・賃貸を行っています。
収益は、テナントからの賃料収入です。運営は同社が行っています。

(6) アウトドア用品事業


長野県下の直営店「アウトドアステーションバンバン」において、釣具やアウトドア用品の販売を行っています。
収益は、一般消費者からの商品代金です。運営は同社が行っています。

(7) その他


報告セグメントに含まれない事業として、飲食店等の運営を行っています。
収益は、飲食代金などです。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は回復傾向にあり、直近では85億円規模まで伸長しています。経常利益も黒字基調を維持していますが、利益率は5%前後で推移しています。当期純利益については、直近で減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 47億円 52億円 73億円 80億円 85億円
経常利益 -7.0億円 -2.2億円 3.3億円 4.4億円 4.4億円
利益率(%) -14.9% -4.2% 4.5% 5.5% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -9.3億円 -1.6億円 4.6億円 4.3億円 3.1億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率の低下や販管費の増加により、営業利益率は微減となりました。利益率は5%台を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 80億円 85億円
売上総利益 22億円 24億円
売上総利益率(%) 27.9% 28.0%
営業利益 4.4億円 4.4億円
営業利益率(%) 5.5% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与賞与が7億円(構成比37%)、賃借料が2億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のみやげ卸売事業が増収増益で業績を牽引しました。みやげ小売事業は一部店舗閉鎖の影響で減収となりましたが、利益面では黒字を確保しました。アウトドア用品事業は需要減退により赤字となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
みやげ卸売事業 61億円 66億円 5億円 6億円 8.5%
みやげ小売事業 8億円 8億円 0.3億円 0.7億円 8.7%
みやげ製造事業 2億円 2億円 0.3億円 0.4億円 17.9%
温浴施設事業 3億円 3億円 0.6億円 0.5億円 15.7%
不動産賃貸事業 1億円 1億円 0.5億円 0.5億円 33.5%
アウトドア用品事業 4億円 4億円 -0.2億円 -0.3億円 -6.9%
その他 0.5億円 0.5億円 0.0億円 0.0億円 2.3%
調整額 -5億円 -5億円 -3億円 -3億円 -
連結(合計) 80億円 85億円 4億円 4億円 5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3.3億円 3.8億円
投資CF -0.4億円 -0.6億円
財務CF -3.7億円 -2.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.6%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均48.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「限りなき発展を目指し、社員と株主、取引先との共存共栄をはかり豊かな生活を創造し、そして社会に貢献する。」を経営理念として掲げています。レジャー産業を基軸にした総合商社として、事業を通じた生活文化の向上と、適正利潤の追求による株主・社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、環境の変化に対応し、新たな需要の創造と機能性の向上を目指す姿勢を重視しています。情報収集と創造性を基盤とした業務推進、経営資源の効率的運用による生産性向上、人材育成と能力開発の推進に取り組む文化があります。また、「日々新たなる挑戦により企業文化の創造と育成を図る」ことを方針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は翌連結会計年度(2026年3月期)の業績見通しとして、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:92億円
* 営業利益:4.6億円
* 経常利益:4.5億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:3.2億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期ビジョンとして「新たな商品開発スキーム×ブランディング発信×成長投資による持続的成長基盤の構築」を掲げています。収益確保のため、地域とチャネルの拡大、マーケティング力強化、商品企画とブランディング戦略による粗利率向上に取り組みます。また、業務効率化としてDXの推進や、多様な人材の活用、行政・DMOとの共創も図っていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成として、マネジメントスキル向上によるチームビルディングや権限委譲による業務レベル向上に努めています。また、給与・評価制度の見直しによる公平な評価・昇進制度の運用を進めています。組織力強化のため、部署横断的なプロジェクトチームの組成や機動的な部署異動による適正配置を行い、ダイバーシティ&インクルージョンの推進も目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.4歳 15.3年 4,705,274円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.3%
男女賃金差異(正規) 82.7%
男女賃金差異(非正規) 81.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向による影響


主力事業であるみやげ卸売・小売、製造、アウトドア用品、温浴施設はいずれも一般消費者を対象としています。そのため、景気後退や個人消費の冷え込みなどの消費動向の変化により、同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 取引先の信用リスク


みやげ卸売事業では、ホテルや販売店など多数の取引先に対して掛売りを行っています。与信管理を行っていますが、予期せぬ事態により取引先が倒産し債権回収に支障が生じた場合、貸倒損失が発生し、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 減損会計の影響


同社は固定資産の減損に係る会計基準を適用しています。店舗業績の悪化などにより、保有する店舗や事業用資産の収益性が低下した場合、減損損失が発生する可能性があり、その結果、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。