※本記事は、松田産業の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 松田産業ってどんな会社?
同社は、貴金属リサイクル等の貴金属関連事業と、食品加工原材料を販売する食品関連事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1951年に竹善商事(形式上の存続会社)として設立され、1956年に松田商店(旧松田産業)を設立。1978年にマツダ貴金属工業を設立し貴金属リサイクル事業を開始しました。1992年に各社が合併し現在の松田産業に変更、1999年に東証二部上場、2001年に東証一部へ指定されました。
従業員数は連結で1,761名、単体で1,238名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社とみられる松田物産で、第2位は代表取締役社長の松田芳明氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松田物産 | 13.39% |
| 松田芳明 | 11.34% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は松田芳明氏が務めています。社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松田芳明 | 代表取締役社長社長執行役員指名・報酬委員長サステナビリティ委員長 | 1984年沖電気工業入社、1988年日本水産入社を経て、同年松田産業取締役就任。常務、専務、副社長等を経て、2000年に代表取締役就任。2003年より代表取締役社長。 |
| 對馬浩二 | 取締役副社長副社長執行役員社長執行役員補佐・コーポレート部門統括兼経営企画室長兼人事部・総務部管掌 | 1992年東芝入社。2001年松田産業入社、経営企画室部長。2002年取締役就任後、常務、専務等を経て2009年より取締役副社長。副社長執行役員等を兼任。 |
| 山﨑隆一 | 取締役常務執行役員金属・環境営業本部長 | 1981年松田産業入社。環境事業部環境営業部長等を経て、2007年環境事業部長兼環境ソリューション営業部長に就任。同年より取締役。現在は常務執行役員等を兼任。 |
| 石禾健二 | 取締役上席執行役員食品事業部長兼営業管理部長 | 1988年松田産業入社。人事教育部長等を経て、2014年食品事業部長兼水産部長に就任。同年より取締役。現在は上席執行役員等を兼任。 |
| 上田雄大 | 取締役執行役員TRM委員長兼管理部長兼地金市場部長兼情報システム部・財務部管掌 | 1996年松田産業入社。経営企画室部長、管理部長兼財務部長を経て2020年より取締役。現在は執行役員、TRM委員長等を兼任。 |
| 今井英人 | 取締役執行役員生産統括本部長兼品質保証室管掌 | 1998年松田産業入社。貴金属リサイクル事業部生産部長等を経て、2023年生産統括本部長および執行役員に就任。2024年より取締役。 |
| 田中善則 | 取締役執行役員CSR・IR部長・法務部長兼経理部管掌 | 2010年松田産業入社。管理部長、経営企画室部長兼IR部長を経て、2020年執行役員就任。2025年より取締役。 |
社外取締役は、鈴木一宏(元EY新日本有限責任監査法人代表社員)、畠山伸一(元EY新日本有限責任監査法人代表社員)、宮田礼子(オフィスWEG代表)、小島康雄(元埼玉県県民生活部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「貴金属関連事業」および「食品関連事業」を展開しています。
■貴金属関連事業
エレクトロニクス業界を中心とした幅広い分野を対象に、電子デバイス等の生産に欠かせない貴金属の回収製錬や、貴金属地金・電子材料などの販売を行っています。また、環境負荷低減に貢献するため、産業廃棄物の収集・運搬や無害化処理といったリサイクル事業も手掛けています。
国内外の顧客に対する貴金属製商品や化成品の販売、および産業廃棄物処理の受託手数料が主な収益源です。運営は親会社である松田産業を中心に、日本メディカルテクノロジーやマツダ環境などの国内子会社、およびタイや東南アジアを中心とした多数の海外現地法人が担っています。
■食品関連事業
国内外から水産品、畜産品、農産品といった多種多様な食品加工原材料を調達し、水産練製品、冷凍食品、食肉加工、惣菜、製菓などの食品メーカー等へ安全・安心な食材として安定供給しています。市場ニーズを先取りした加工度向上による商品開発や提案営業も行っています。
食品メーカーや中食・外食業界の顧客に対する食品加工原材料の販売代金が主な収益源です。運営は松田産業を主体として行われ、物流部門は子会社のマツダ流通が担当しています。また、ガルフ食品や中国、タイ、ベトナムなどの海外子会社がグローバルな調達・販売を補完しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
直近5年間の業績は、売上高が順調に拡大を続けており、特に直近では貴金属相場の上昇などを追い風に大幅な増収となっています。経常利益は一時的に足踏みした時期もありましたが、直近ではリサイクル取扱量の増加や価格上昇の効果により、過去最高水準の利益を記録するなど、高い成長力を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2723億円 | 3510億円 | 3605億円 | 4688億円 | 6878億円 |
| 経常利益 | 137億円 | 138億円 | 106億円 | 135億円 | 235億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 3.9% | 2.9% | 2.9% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 90億円 | 80億円 | 68億円 | 80億円 | 132億円 |
売上高が大きく伸びる中で、売上総利益も順調に増加しています。利益率はわずかに低下しているものの、売上高の急増に対して販売費及び一般管理費の増加が抑えられており、結果として営業利益は前期比で大幅な増益を達成し、収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4688億円 | 6878億円 |
| 売上総利益 | 352億円 | 481億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.5% | 7.0% |
| 営業利益 | 127億円 | 224億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が66億円(構成比26%)、支払手数料が38億円(同15%)、運送費及び保管費が34億円(同13%)を占めています。
貴金属関連事業は、AI関連の半導体・電子部品向け需要の回復や貴金属リサイクル取扱量の増加、さらに貴金属相場の上昇が追い風となり大幅な増収となりました。食品関連事業も、原材料価格高騰への価格転嫁が進み、販売量が増加したことで堅調な増収を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 貴金属関連事業 | 3617億円 | 5704億円 |
| 食品関連事業 | 1072億円 | 1174億円 |
| 連結(合計) | 4688億円 | 6878億円 |
営業活動によるキャッシュ・フローがマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスとなっており、運転資金の増加等の理由により本業での現金創出はマイナスですが、借入等によって将来成長のための投資を継続している「勝負型」の局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 25億円 | -90億円 |
| 投資CF | -62億円 | -44億円 |
| 財務CF | 2億円 | 163億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も52.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「限りある地球資源を有効活用し、業を通じて社会に貢献する」という企業理念を掲げています。貴金属などの資源のリサイクルを通じて持続可能な循環経済への移行に繋げる「貴金属関連事業」と、食資源を安全・安心な品質で安定供給する「食品関連事業」を柱とし、事業を通じて社会課題に応えながら持続的な企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業理念を実践し持続的成長と企業価値の向上を図るため、経営上の基本方針として「顧客重視」「株主重視」「人間尊重」を掲げています。特に「人間尊重」「人間の能力は無限である」という理念のもと、従業員一人ひとりがその能力を最大限に発揮し、活き活きと働き続けることができる職場の実現を目指しており、多様な人材が活躍できる環境整備と組織文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は新たに「中期経営計画2028(2026-2028年度)」を策定し、2028年度を「その先」の長期成長を見据えた礎となる期間として設定しています。貴金属関連事業と食品関連事業の双方を成長の牽引役とし、収益基盤強化と新規収益源の創出等を図る方針です。最終年度となる2029年3月期の経営目標として、以下の数値を掲げています。
- 連結営業利益:280億円
- 連結営業キャッシュ・フロー:350億円(3カ年累計)
- 連結自己資本利益率(ROE):11.0%以上
- 連結総資産経常利益率(ROA):10.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
貴金属関連事業では、資源リサイクルの総合力を高め、環境負荷低減製品のラインナップ拡充などによる動脈プロセス(販売)の強化と、リチウムイオン電池のリサイクルスキーム構築等の静脈プロセス(回収)の強化によって循環バリューチェーンを構築します。食品関連事業では、グローバルな調達網の拡大による持続的な食資源の確保や、成長市場における販路拡大と高付加価値化を進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本の拡充を重要課題と位置づけ、「経営人材・リーダーシップ人材」および「グローバル人材」の育成に注力しています。戦略的な採用と従業員の能力を最大限に発揮させる「適所適材」の配置を推進し、組織の活性化と専門性の確保を両立させています。また、「キャリア研修」等を通じて自律的なキャリア開発を支援するほか、女性人材やシニア層の活躍推進、健康経営に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.7歳 | 12.1年 | 6,808,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.5% |
| 男性育児休業取得率 | 73.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 78.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(32.6%)、男女平均勤続年数差異(62.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要製品・商品の価格変動
貴金属関連事業で扱うリサイクル原材料の価格は貴金属地金の市場価格や為替相場の影響を受けます。また、食品関連事業で扱う外国産の食品加工原材料も需給や為替変動の影響を受けるため、先渡取引等でリスク回避を図っていますが、急激な価格変動や販売価格の下落が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食品関連事業に関わる品質問題等
水産品や農産品、畜産品などを輸入し食品メーカー等へ販売するにあたり、法令に基づく表示や海外産地の品質管理指導、異物混入対策を徹底しています。しかし、予期せぬ食品の安全性に係る問題が発生し、輸入禁止措置等がとられた場合には、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 廃棄物等の管理および法的規制への対応
環境関連の法的規制強化に伴い、追加の設備投資負担が生じる可能性があります。また、産業廃棄物の処理事業においては毒物や劇物を使用しており、工場の事故等により廃液や排出物の管理に問題が生じた場合や、関連法令の遵守状況に支障をきたした場合には、事業活動や業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) カントリーリスクおよび調達網の寸断
海外の様々な国や地域で事業を展開しているため、政治・経済・社会情勢等の環境変化が業績に影響するリスクがあります。また、地政学リスク等により特定のサプライヤーからの部材供給が滞り、代替調達が困難となった場合、製品の生産遅延やコスト増加を招く可能性があります。



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