松田産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松田産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。貴金属のリサイクルや産業廃棄物処理を行う貴金属関連事業と、水産品・畜産品等の加工原材料を扱う食品関連事業を展開。直近の決算では、金価格の上昇や取扱量の増加により、売上高は前期比30.0%増、経常利益は28.2%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、松田産業株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松田産業ってどんな会社?

貴金属リサイクルと食品加工原材料の卸売を柱とする商社兼メーカー機能を持つ企業です。

(1) 会社概要

1951年に竹善商事として設立され、1956年に松田商店(旧松田産業)を設立。1999年に東証二部に上場し、2001年に東証一部へ指定替えとなりました。2025年にはリチウムイオン電池リサイクル事業の拡大を目的に山陽レックおよびフラップリソースを子会社化するなど、事業拡大を進めています。

連結従業員数は1,698名、単体では1,186名です。筆頭株主は代表取締役社長の近親者が議決権の過半数を所有する松田物産、第2位は代表取締役社長の松田芳明氏であり、創業家が主要株主となっています。第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。

氏名 持株比率
松田物産 13.39%
松田芳明 11.70%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.27%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長社長執行役員は松田芳明氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松田芳明 代表取締役社長社長執行役員指名・報酬委員長サステナビリティ委員長 1984年沖電気工業入社、1988年日本水産入社を経て同年同社取締役就任。2003年より現職。
對馬浩二 取締役副社長副社長執行役員社長執行役員補佐・コーポレート部門統括兼経営企画室長兼人事部・総務部管掌 1992年東芝入社。2001年同社入社、経営企画室部長。2009年より現職。
山﨑隆一 取締役常務執行役員金属・環境営業本部長 1981年同社入社。環境事業部長、金属・環境営業本部長等を歴任。2023年より現職。
石禾健二 取締役上席執行役員食品事業部長兼営業管理部長 1988年同社入社。人事教育部長、食品事業部長兼水産部長等を歴任。2025年より現職。
上田雄大 取締役執行役員管理部長兼財務部長兼TRM委員長兼情報システム部・地金市場部管掌 1996年同社入社。経営企画室部長、管理部長兼財務部長等を経て2020年より取締役。2025年よりTRM委員長。
今井英人 取締役執行役員生産統括本部長兼品質保証室管掌 1998年同社入社。貴金属リサイクル事業部生産部長等を経て、2023年生産統括本部長。2024年より現職。


社外取締役は、畠山伸一(元新日本有限責任監査法人代表社員)、内山敏彦(元新日本有限責任監査法人代表社員)、小島敏幸(元埼玉県危機管理防災部長)、宮田礼子(オフィスWEG代表)です。

2. 事業内容

同社グループは、「貴金属関連事業」および「食品関連事業」を展開しています。

(1) 貴金属関連事業

半導体や電子部品業界などから発生する貴金属含有スクラップを回収・製錬し、金・銀・白金などの貴金属地金や電子材料として販売するほか、産業廃棄物の収集・運搬・処理を行っています。資源リサイクルを通じて循環型社会に貢献する事業です。

収益は、顧客から回収したスクラップから製錬した貴金属製品の販売代金や、産業廃棄物の処理受託に伴う処理費等が主な柱です。運営は主に松田産業が行い、マツダ環境などの子会社が各地域や機能において補完しています。

(2) 食品関連事業

水産品(すりみ、エビ等)、畜産品(鶏肉、鶏卵等)、農産品(乾燥・冷凍野菜等)などの食品加工原材料をグローバルに調達し、食品メーカーや中食・外食産業等へ提供しています。安全・安心な食資源の安定供給を担っています。

収益は、国内外から調達した食品原材料の販売代金です。運営は主に松田産業が行い、物流面ではマツダ流通、海外拠点では各国の現地法人が事業を補完しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、特に直近の第76期には大幅な増収となりました。利益面では第73期以降、安定した水準を維持していましたが、直近では経常利益が過去最高水準近くまで回復しています。当期利益も増加傾向にあり、全体として成長基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,316億円 2,723億円 3,510億円 3,605億円 4,688億円
経常利益 84億円 137億円 138億円 106億円 135億円
利益率(%) 3.6% 5.0% 3.9% 2.9% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 61億円 96億円 97億円 73億円 95億円

(2) 損益計算書

売上高は大幅に増加しましたが、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は増益となり、営業利益率も改善傾向にあります。売上原価の増加が見られますが、販管費の抑制効果もあり、利益成長につながっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,605億円 4,688億円
売上総利益 301億円 352億円
売上総利益率(%) 8.3% 7.5%
営業利益 94億円 127億円
営業利益率(%) 2.6% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が60億円(構成比27%)、運送費及び保管費が34億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益

貴金属関連事業は金価格の上昇などを背景に大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。一方、食品関連事業は売上高がほぼ横ばいでしたが、利益面では増益を確保しています。貴金属関連事業が収益の柱となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
貴金属関連事業 2,529億円 3,617億円 70億円 102億円 2.8%
食品関連事業 1,076億円 1,072億円 23億円 25億円 2.3%
調整額 △1億円 △0億円 - - -
連結(合計) 3,605億円 4,688億円 94億円 127億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業の営業活動で得た資金に加え、財務活動による資金調達も行い、投資活動へ積極的に資金を投じる「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 18億円 25億円
投資CF △80億円 △62億円
財務CF 81億円 2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「限りある地球資源を有効活用し、業を通じて社会に貢献する」という企業理念を掲げています。貴金属のリサイクルによる循環経済への移行や、安全・安心な食資源の供給を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。また、経営の基本方針として「顧客重視」「株主重視」「人間尊重」を掲げています。

(2) 企業文化

「人間尊重」と「人間の能力は無限である」を理念に置き、「人間なくして企業なし」という独自の原則を大切にしています。多様な人材が活き活きと働き、個々の能力を最大限に引き出し、個人と組織がともに成長し続ける企業文化の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標

「中期経営計画(2022-2025年度)」を推進しており、最終年度となる2025年度(2026年3月期)の業績目標を掲げています。なお、金価格上昇等の情勢変化を踏まえ、業績見通しを設定しています。
* 売上高:3,000億円(見通し4,900億円)
* 営業利益:130億円(見通し135億円)
* ROE:9.0%

(4) 成長戦略と重点施策

「積極投資の継続で収益基盤強化と新規収益源の創出」等を基本方針とし、貴金属関連事業ではリサイクル総合力の向上や海外市場の開拓、食品関連事業では調達網の拡充とサステナブルな商品開発を推進しています。また、経営基盤強化としてDX推進やガバナンス強化にも取り組んでいます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

中長期的視野を持つ「経営人材」と、組織横断的に連携できる「リーダーシップ人材」の育成に注力しています。また、従業員一人ひとりが能力を発揮できるよう、多様な人材の活躍推進や柔軟な働き方の導入、健康経営の推進など、職場環境の整備にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.7歳 12.1年 6,373,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 47.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.9%
男女賃金差異(正規雇用) 75.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(24.7%)、男女平均勤続年数差異(69.3%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要製品・商品の価格変動

貴金属関連事業では、貴金属地金の市場価格や為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。商品先渡取引等でリスク回避を図っていますが、完全な回避は困難です。食品関連事業でも、輸入商品の価格が市況や為替の影響を受け、販売価格への転嫁が難しい場合は業績に影響する可能性があります。

(2) 食品関連事業に関わる品質問題等

水産品や農畜産品などの食品加工原材料を輸入販売しており、法令遵守や品質管理を徹底していますが、予期せぬ食品の安全性に関わる問題が発生し、輸入禁止措置等がとられた場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制

環境関連の法的規制が強化された場合、追加の設備投資が必要になる可能性があります。また、産業廃棄物処理業など許認可を要する事業を行っており、法令違反等により許認可の取り消しや事業停止命令を受けた場合、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 廃棄物等の管理

製造過程において毒物や劇物を使用しており、廃液や排気などに対して環境に配慮した適切な処理を行っていますが、万が一工場の事故等によりこれらの管理に問題が生じた場合、社会的信用の失墜や対策費用の発生等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。