※本記事は、株式会社第一興商の有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 第一興商ってどんな会社?
第一興商は業務用カラオケ「DAM」やカラオケ店舗「ビッグエコー」などを展開するリーディングカンパニーです。
■(1) 会社概要
1971年3月に創業し、1976年2月に第一興商として業務用カラオケ事業を開始しました。1988年9月にカラオケルーム店舗「ビッグエコー」の出店を開始し、1994年4月に通信型カラオケシステム「DAM」を発売しました。その後、レコード会社を子会社化して音楽ソフト事業を拡大し、現在に至ります。
同社グループの従業員数は連結で3,694名、単体で2,199名です。筆頭株主は創業者の保志忠郊氏で、第2位は創業者の保志治紀氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 保志忠郊 | 12.08% |
| 保志治紀 | 11.86% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は保志忠郊氏が務めています。社外取締役の比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 保志忠郊 | 代表取締役社長(社長執行役員) | 1997年まるよし入社。1999年第一興商入社。音楽ソフト事業本部副本部長等を経て、2007年取締役就任。2017年より現職。 |
| 大塚賢治 | 取締役営業統括本部長(専務執行役員) | 1985年太洋観光入社。1987年第一興商入社。各支店長や営業統括本部長等を経て、2017年取締役就任。2024年より現職。 |
| 飯島毅 | 取締役(専務執行役員) | 1989年川鉄リース入社。2000年第一興商入社。店舗開発部長等を経て、2019年取締役就任。2024年より現職。 |
| 國津洋 | 取締役管理本部長(専務執行役員) | 1989年川鉄リース入社。1997年第一興商入社。経営企画部長兼社長室長等を経て、2024年管理本部長。2025年より現職。 |
社外取締役は、垂石克哉(元オリコン社長)、高橋千恵子(元第一生命保険常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「業務用カラオケ」「カラオケ・飲食店舗」「音楽ソフト」および「その他」事業を展開しています。
■業務用カラオケ
スナック・バーなどのナイト市場やカラオケボックス向けに、通信カラオケ機器の販売や賃貸、音源・映像コンテンツの提供などを行っています。エルダー市場(介護施設など)向けの専用機器の拡販にも注力し、健康寿命の延伸などの社会課題解決にも貢献しています。
主な収益源は、カラオケ機器の販売代金や機器の賃貸料、情報提供料です。運営は同社および北海道第一興商などの国内地域子会社各社が担っており、海外でも韓国第一興商などが事業を展開しています。
■カラオケ・飲食店舗
一般の顧客向けにカラオケルームや飲食店舗の運営を行っています。主力ブランドである「ビッグエコー」をはじめとして、個室ダイニングなどの飲食店舗や、ダーツなどのアミューズメント設備を備えた店舗などを幅広く展開し、多様な客層の開拓を進めています。
主な収益源は、来店客からのカラオケルーム利用料や飲食物の代金などです。事業の運営は同社が主体となって行っており、メーカー直営店として音響設備などを充実させながら、顧客満足度の向上に努めています。
■音楽ソフト
音楽や映像ソフトの制作と販売を行っています。新人アーティストの発掘やヒット曲の創出に努めているほか、自社メディアを活用した音楽出版事業にも注力することで、堅実な収益モデルの構築を目指しています。
主な収益源は、制作したCDやDVDなどの音楽・映像ソフトの販売代金です。運営は同社のほか、日本クラウンや徳間ジャパンコミュニケーションズなどの子会社各社が担っています。
■その他
主力事業のほかに、成長事業としてパーキング事業などを展開しています。「ザ・パーク」ブランドでの駐車場運営や、光回線・モバイル回線を利用したBGM放送事業、不動産賃貸事業などを行っています。
主な収益源は、駐車場の利用者からの駐車料金や、BGMサービス等の契約者からの視聴料金などです。運営は同社のほか、クレストやディーケーファイナンスなどの関係会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
コロナ禍の影響から回復し、売上高は継続的な増加傾向にあります。利益面では、前期から当期にかけて販管費等の増加により経常利益は微減となりましたが、依然として高い水準を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 948億円 | 1,282億円 | 1,467億円 | 1,530億円 | 1,630億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 136億円 | 196億円 | 184億円 | 183億円 |
| 利益率(%) | 0.9% | 10.6% | 13.3% | 12.0% | 11.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 31億円 | 68億円 | 115億円 | 159億円 | 114億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大していますが、各種費用の増加により営業利益は横ばいとなり、営業利益率もわずかに低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,530億円 | 1,630億円 |
| 売上総利益 | 538億円 | 562億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.1% | 34.5% |
| 営業利益 | 179億円 | 179億円 |
| 営業利益率(%) | 11.7% | 11.0% |
■(3) セグメント収益
業務用カラオケ事業は新機種の投入などにより増収増益となり、カラオケ・飲食店舗事業も集客の好調により売上・利益ともに伸長しました。一方で音楽ソフト事業は減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 業務用カラオケ | 623億円 | 653億円 | 117億円 | 119億円 | 18.3% |
| カラオケ・飲食店舗 | 666億円 | 710億円 | 63億円 | 66億円 | 9.3% |
| 音楽ソフト | 56億円 | 55億円 | 3億円 | 1億円 | 2.6% |
| その他 | 186億円 | 212億円 | 24億円 | 28億円 | 13.3% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -28億円 | -36億円 | -% |
| 連結(合計) | 1,530億円 | 1,630億円 | 179億円 | 179億円 | 11.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 247億円 | 251億円 |
| 投資CF | -114億円 | -110億円 |
| 財務CF | -209億円 | -72億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.2%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も56.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「もっと音楽を世に もっとサービスを世に」を社是として掲げています。この考えのもと、「カラオケを通じた音楽文化の振興」と「楽しいコミュニケーションの場の提供」を基本方針としており、創業以来培ったノウハウと蓄積したコンテンツをベースに、カラオケ事業を核とした社会貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「第一興商グループ行動規範」を策定し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を重視しています。顧客や取引先、従業員などのすべてのステークホルダーとの信頼関係を醸成し、顧客とグループの共生につながるサービスや商品を提供することで、長期安定的な成長を実現していくことを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、継続的・安定的な成長と企業価値の向上を図るため、自己資本当期純利益率(ROE)および各事業の営業利益率を重視するとともに、1株当たり利益(EPS)の増加を目指しています。具体的な数値目標は設定していませんが、利益率と資本効率の向上を意識した経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力事業において「DAM」および「ビッグエコー」のブランド価値を高め、競争力と収益力の強化に努めています。また、成長事業であるパーキング事業においてM&Aを含む新規施設開拓を進め、持続的な成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、「企業の発展に不可欠なものは何よりも人材である」との方針に基づき、人材育成と働きやすい職場環境の整備を目指しています。学歴や新卒・中途にこだわらず広く門戸を開く採用方針をとっており、実力主義に基づく人材登用を実施するとともに、教育や研修の充実により個人の能力発揮を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.5歳 | 11.8年 | 6,162,590円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.9% |
| 男性育児休業取得率 | 28.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 51.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 90.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理的地位にある労働者に占める中途採用者の割合(79.2%)、正社員に占める女性労働者の割合(14.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向と競争激化のリスク
スナック・バー等の閉店による業務用カラオケ市場の縮小や、ユーザーニーズの変化によるカラオケ・店舗の客数減少などにより、業績が影響を受ける可能性があります。同社は機器の入れ替えやエルダー市場への資源投入、複合店舗化により安定収益の確保に努めています。
■(2) 自然災害や感染症等の影響リスク
大規模な地震や台風、感染症の流行等により、店舗等の長期休業や営業時間の短縮を余儀なくされた場合、正常な事業活動が困難となり業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はグループ危機管理規程等を整備し、対策本部の設置など迅速な対応を図っています。
■(3) システムダウンや情報管理のリスク
ネットワークを通じたコンテンツ配信に依存しているため、自然災害やサイバー攻撃等によるシステムダウンが発生した場合、サービスの停止や重要情報の漏洩が生じる可能性があります。同社はシステムの冗長化や多層防御等のセキュリティ強化に努めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。