※本記事は、株式会社第一興商 の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 第一興商ってどんな会社?
業務用カラオケ「DAM」や「ビッグエコー」を展開する業界のリーディングカンパニーです。
■(1) 会社概要
1971年に音響機器販売として創業し、1976年に業務用カラオケ事業を開始しました。1988年にはカラオケルーム「ビッグエコー」の第1号店を出店し、1994年に通信カラオケ「DAM」を発売しました。2015年に東京証券取引所市場第一部へ指定替えし、2024年にはパーキング事業を展開するクレストを完全子会社化しています。
同社グループの従業員数は連結3,516名、単体2,038名です。筆頭株主は代表取締役社長の保志忠郊氏で、第2位は創業家出身の保志治紀氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 保志忠郊 | 11.96% |
| 保志治紀 | 11.71% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は保志忠郊氏です。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 保志忠郊 | 代表取締役社長(社長執行役員) | 1999年に入社し、制作管理部やレコード子会社管理等を担当。営業統括本部長を経て、2017年6月より現職。 |
| 大塚賢治 | 取締役営業統括本部長(専務執行役員) | 1987年に入社し、松山営業所長や広島・大阪支店長等を歴任。2015年4月より営業統括本部長を務め、2024年6月より現職。 |
| 飯島毅 | 取締役店舗事業本部長(専務執行役員) | 東京センチュリーを経て2000年に入社。店舗開発・管理部門を歩み、2017年4月より店舗事業本部長を務め、2024年6月より現職。 |
| 國津洋 | 取締役管理本部長(専務執行役員) | 東京センチュリーを経て1997年に入社。営業企画や制作管理、経営企画等を担当。2024年6月より管理本部長を務め、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、垂石克哉(オリコン顧問)、高橋千恵子(元第一生命保険常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「業務用カラオケ」「カラオケ・飲食店舗」「音楽ソフト」および「その他」事業を展開しています。
■業務用カラオケ
業務用カラオケ機器「DAM」シリーズの販売、賃貸および通信カラオケシステムを通じた音源・映像コンテンツの提供を行っています。スナック・バーやカラオケボックス、介護施設などのエルダー市場が主な顧客です。
収益は、機器の販売代金や賃貸料、通信カラオケの情報提供料(配信料)等から得ています。運営は主に第一興商および北海道第一興商などの地域販売子会社が行っています。
■カラオケ・飲食店舗
カラオケルーム「ビッグエコー」や「カラオケマック」、および飲食店舗の運営を行っています。直営店ならではの質の高いサービスと設備を提供し、一般消費者を主な顧客としています。
収益は、来店客からのルーム利用料や飲食代金等から得ています。運営は、第一興商およびカラオケマックを展開するAirsideなどが行っています。
■音楽ソフト
演歌・歌謡曲からJ-POPまで幅広いジャンルの音楽・映像ソフトの制作、販売を行っています。また、音楽出版事業にも注力し、著作権管理等も手掛けています。
収益は、CD・DVD等の商品販売代金や著作権使用料等から得ています。運営は第一興商、日本クラウン、徳間ジャパンコミュニケーションズなどが行っています。
■その他
「ザ・パーク」ブランドで展開するパーキング事業、不動産賃貸、BGM放送事業などを行っています。パーキング事業は新たな収益の柱として育成を進めています。
収益は、駐車料金、不動産賃貸料、BGM視聴料等から得ています。運営は第一興商、クレスト、ディーケーファイナンスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の推移を見ると、売上高は順調に回復・拡大基調にあり、直近では過去最高を記録しています。利益面では、経常利益は前期比で減少したものの、高い水準を維持しており、当期純利益は特別利益の計上などもあり増加傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 933億円 | 948億円 | 1,282億円 | 1,467億円 | 1,530億円 |
| 経常利益 | -12億円 | 9億円 | 136億円 | 196億円 | 184億円 |
| 利益率(%) | -1.3% | 0.9% | 10.6% | 13.3% | 12.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -150億円 | 52億円 | 83億円 | 126億円 | 182億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、増収により売上総利益は増加しましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少しました。一方、固定資産売却益などの計上により、当期純利益は大きく伸長しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,467億円 | 1,530億円 |
| 売上総利益 | 526億円 | 538億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.8% | 35.1% |
| 営業利益 | 186億円 | 179億円 |
| 営業利益率(%) | 12.7% | 11.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与が80億円(構成比22.2%)、販売促進費が18億円(同5.0%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入等が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに概ね堅調ですが、特にパーキング事業を含む「その他」セグメントが大幅な増収増益となりました。業務用カラオケは増収ながら減益、音楽ソフトは減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 業務用カラオケ | 611億円 | 623億円 | 124億円 | 117億円 | 18.7% |
| カラオケ・飲食店舗 | 647億円 | 666億円 | 71億円 | 63億円 | 9.5% |
| 音楽ソフト | 67億円 | 56億円 | 4億円 | 3億円 | 5.9% |
| その他 | 142億円 | 186億円 | 15億円 | 24億円 | 12.7% |
| 調整額 | - | - | -27億円 | -28億円 | - |
| 連結(合計) | 1,467億円 | 1,530億円 | 186億円 | 179億円 | 11.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入返済を進めつつ投資は手元資金や営業CFで賄う健全型です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 268億円 | 247億円 |
| 投資CF | -559億円 | -114億円 |
| 財務CF | 69億円 | -209億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.2%でプライム市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.6%でプライム市場平均(非製造業)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「もっと音楽を世に もっとサービスを世に」を社是とし、「カラオケを通じた音楽文化の振興」、「楽しいコミュニケーションの場の提供」を基本方針としています。この方針のもと、カラオケ事業を核として事業拡大と高収益確保を目指しています。
■(2) 企業文化
すべての事業において、「わかりやすい、使いやすい」サービスを基本としています。また、創業以来培ったノウハウとコンテンツをベースに、ステークホルダーの期待に応え、広く社会に貢献する企業を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、継続的・安定的な成長と企業価値の向上を図るため、以下の指標を重視しています。
* 自己資本当期純利益率(ROE)
* 各事業の営業利益率
* 1株当たり利益(EPS)の増加
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的な戦略として、高いシェアを持つ業務用カラオケ事業とカラオケ・飲食店舗事業に経営資源を投入し、「DAM」および「ビッグエコー」のブランド価値向上を図ります。また、パーキング事業を成長事業として育成するほか、本社機能の集約によるイノベーション創出を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業の発展に不可欠なものは何よりも人材である」との方針に基づき、学歴や新卒・中途にこだわらず門戸を開く採用を行っています。実力主義を徹底し、管理職登用においても中途採用者が多く活躍しています。また、研修体制の充実や長時間労働の削減など、働きやすい環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.2歳 | 12.4年 | 6,105,843円 |
※平均年間給与は基準外給与及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.2% |
| 男性育児休業取得率 | 22.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 48.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 82.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 89.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者の割合(81%)、正社員に占める女性労働者の割合(13%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業務用カラオケ市場の変動
スナック・バーやカラオケボックスの閉店による市場縮小や、競合との競争激化により、業務用カラオケ機器の出荷・設置台数が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、機器賃貸の比重を高めるなど安定収益基盤の構築に努めています。
■(2) 店舗展開における競争とコスト
カラオケ・飲食店舗事業において、出店候補物件の確保状況や店舗間競争の激化、アルバイト人件費の上昇などが業績に影響を与える可能性があります。コスト削減やIT化による効率化、付加価値の高い店舗展開により競争力強化を図っています。
■(3) 音楽ソフト市場の変化
音楽CD等の販売数量の変動や、インターネット配信など媒体の変化、再販制度の変更などが音楽ソフト事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、各事業セグメントとの連携強化により相乗効果を上げる施策を行っています。



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