※本記事は、アズワン株式会社の有価証券報告書(第65期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アズワンってどんな会社?
研究者や医療従事者向けに機器・消耗品等を提供する専門商社です。
■(1) 会社概要
1962年に科学機器の販売を目的として井内盛栄堂を設立しました。1985年には病院用看護用品カタログを発刊し、医療・介護分野へ進出しました。1999年に東証・大証第二部に上場し、2001年にアズワンへ社名変更し第一部に指定されました。2015年に検索サイト「AXEL」をオープンしています。
従業員数は連結で758名、単体で576名です。筆頭株主は信託業務を行う金融機関であり、第2位は資産管理業務を行うと見られる有限会社井内盛英堂です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.82% |
| 有限会社井内盛英堂 | 10.58% |
| JP MORGAN CHASE BANK 380055(常任代理人 みずほ銀行) | 5.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長CEOは井内卓嗣氏が務めています。社外取締役比率は55.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井内卓嗣 | 代表取締役社長CEO | 1991年日鐵商事入社後、1994年同社入社。国際部長、商品本部長等を歴任し2009年代表取締役社長に就任。営業本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 原俊樹 | 専務取締役CIO | 1982年協和銀行入行。りそな銀行代表取締役副社長等を経て、2020年同社社外監査役就任。2025年4月常務取締役CIOに就任し2026年4月より現職。 |
| 山田一人 | 常務取締役COO | 1989年トーレ・シリコーン入社。1990年同社入社。営業本部長、マーケティング本部長等を歴任し、2012年取締役就任。2025年4月より現職。 |
| 西川圭介 | 取締役CFOコーポレート本部長兼サステナビリティ推進室担当役員兼健康経営担当役員 | 2000年同社入社。マーケティング部長等を経て2020年コーポレート本部長及び取締役就任。サステナビリティ推進室長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、小滝一彦(日本大学経済学部教授)、中小路久美代(公立はこだて未来大学教授)、鈴木一孝(元りそな銀行支店長)、金井美智子(大江橋法律事務所弁護士)、三浦由布子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ラボ・インダストリー部門」「メディカル部門」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ラボ・インダストリー部門
各種研究所や生産施設等において使用される科学機器や備品、消耗品などを取り扱っています。商品情報を紙のカタログやWEBサイト等で提供し、科学機器販売店を経由して研究者や技術者などのエンドユーザーへ卸売を行っています。
商品販売に伴う対価が主な収益源です。運営はアズワンが中心となり、中国での販売を亜速旺(上海)商貿、北米製品の輸出をAS ONE INTERNATIONAL、製品製造等をニッコー・ハンセンやカスタムが行っています。
■(2) メディカル部門
医療施設や介護施設などを対象に、看護・介護関係者が使用する機器や備品、消耗品などを提供しています。販売形態はラボ・インダストリー部門と同様に、カタログやWEBサイトを活用した販売店経由での卸売形態をとっています。
医療・介護関係販売店に対する商品の卸売販売により収益を得ています。本事業の運営は主にアズワンが担っています。なお、同社は両部門の物流倉庫の運営業務を連結子会社である井内物流に委託しています。
■(3) その他
WEBシステムを活用した購買業務代行サービスやシステム提供を行っています。大規模企業向けの集中購買システムなどを通じて、顧客が物品を購入する際の発注管理や在庫管理にかかる業務の効率化とコスト削減を支援しています。
システムに参加する最終ユーザー等からシステム利用料を受け取ることで収益を上げています。本事業の開発および運営は、子会社であるトライアンフ・ニジュウイチが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は870億円から1,107億円へと毎期着実な成長を続けています。利益面でも、経常利益が100億円台で安定して推移し、直近では132億円まで拡大するなど、高い収益性を維持しながら事業規模の拡大を実現しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 870億円 | 914億円 | 955億円 | 1,038億円 | 1,107億円 |
| 経常利益 | 96億円 | 116億円 | 108億円 | 121億円 | 132億円 |
| 利益率(%) | 11.0% | 12.7% | 11.3% | 11.6% | 11.9% |
| 当期利益 | 68億円 | 78億円 | 72億円 | 79億円 | 87億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況では、売上高が約69億円増加する中で、売上総利益率は30.2%と安定した水準を保っています。営業利益も128億円へと成長し、営業利益率も11.6%へと改善するなど、収益力の向上が見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,038億円 | 1,107億円 |
| 売上総利益 | 313億円 | 335億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.2% | 30.2% |
| 営業利益 | 116億円 | 128億円 |
| 営業利益率(%) | 11.2% | 11.6% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃及び倉庫作業料が54億円(構成比26%)、役員報酬・給与及び賞与が46億円(同22%)、不動産賃借料が19億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの直近2期間の売上推移を見ると、主力となるラボ・インダストリー部門が全体の約84%を占め、成長を牽引しています。メディカル部門やその他事業も安定した売上規模を維持しており、全体として堅調な推移を示しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ラボ・インダストリー部門 | 861億円 | 932億円 |
| メディカル部門 | 171億円 | 169億円 |
| その他 | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 1,038億円 | 1,107億円 |
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 93億円 | 65億円 |
| 投資CF | 9億円 | -25億円 |
| 財務CF | -7億円 | -81億円 |
企業の収益力を測るROEは13.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も69.4%となっており、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「革新と創造」を経営理念に掲げ、研究・産業・医療のフィールドにおいてヒト・モノ・情報・サービスをつなぎ、研究者や医療従事者の活動を後押しすることを目的としています。「顧客満足度の追求」を経営方針とし、顧客の利便性向上を実現するために多様化するニーズに対応しています。
■(2) 企業文化
サプライヤー・販売店・エンドユーザーをつなぐハブとして機能し、研究や医療活動を支える流通事業者としての社会的使命を果たす価値観を持っています。魅力ある商品・サービスの提供や業務効率化を進め、適正な利益を確保することで企業価値の拡大を図ることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「AS ONE VISION-2035」において、あらゆる研究リソースが「見える・つながる・手に入る」プラットフォームの創造を目指しています。2035年3月期の目標として連結売上高2,000億円〜3,000億円、ROE17.0%以上を掲げています。
・売上高:1,300億円
・営業利益:148億円
・営業利益率:11.4%
・ROE:13.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「ECの進化」「サプライチェーン上の価値の最大化」「事業領域の拡大」を事業上の重点テーマに位置づけています。AI搭載型検索エンジンの導入によるECの利便性向上や、取扱商品点数の拡充、自社開発のプライベートブランド品などオリジナル商品の投入加速に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
意欲と能力を持つ人材に幅広く教育の機会を提供し、仕事を通じて成長する働きがいを持った人材を育成する方針です。階層別や課題別の研修プログラムのほか、柔軟な働き方を可能とする多様な価値観を支援する独自性のある人事制度・福利厚生制度の構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は東証プライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.1歳 | 11.3年 | 7,123,443円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.6% |
| 男性育児休業取得率 | 81.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 42.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均残業時間数(10.7時間/月)、従業員全体の有給休暇取得率(64.5%)、入社3年以内離職率(6.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客ニーズの変化
研究開発や医療分野などにおいて、ECの導入による購買の業務負荷軽減ニーズが高まっています。商品に対する顧客の志向や購入方法に関するニーズに変化が生じ、同社が提供するECツールなどの強みが失われた場合、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 物流センターの操業影響
同社は売上高の多くを全国5か所の物流センターからの出荷で賄っています。マテリアルハンドリング機器の故障や作業スタッフの不足、配送業者との連携不備などにより物流センターの操業が停止し、出荷に支障をきたした場合には、事業活動が停止する可能性があります。
■(3) サプライチェーンの寸断
国内外の幅広いサプライヤーとの取引ネットワークを構築し、多種多様な商品を調達しています。何らかの理由により原材料や商品の調達に支障が発生した場合や、物流経路において障害が発生して商品調達に滞りが生じた場合、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティおよびシステム障害
受発注や倉庫管理、ECツールの運用などにおいてシステム化による効率的なオペレーションを行っています。業務システムがウイルス感染などで停止した場合や、機密情報・商品データベースが棄損または流出した場合には、競争力の低下につながる可能性があります。



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