アズワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アズワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、科学機器や医療・介護用品の卸売事業を主力としています。カタログやECサイトを通じた豊富な品揃えと即納体制を強みとし、研究・産業・医療分野を支援しています。2025年3月期は15期連続の増収を達成し、過去最高益を更新する増収増益の決算となりました。


※本記事は、株式会社アズワン の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アズワンってどんな会社?


科学機器、産業機器、病院・介護用品を総合的に取り扱う専門商社です。カタログとWebを駆使した販売網と高度な物流システムによる即納体制が特徴です。

(1) 会社概要


1933年に井内盛一氏が創業し、1962年に法人化されました。1995年に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、2001年に東京証券取引所市場第一部へ指定されています。2015年には商品検索サイト兼通販サイト「AXEL」をオープンし、EC事業を強化しました。2020年には千葉市に物流拠点「Smart DC」を開設するなど物流機能を拡充しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は731名、単体従業員数は555名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は有限会社井内盛英堂です。同社は創業者一族の資産管理会社と考えられます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.64%
有限会社井内盛英堂 10.54%
日本カストディ銀行(信託口) 6.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは井内卓嗣氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
井内 卓嗣 代表取締役社長CEO 1991年4月日鐵商事(現日鉄物産)入社。1994年3月同社入社。商品本部長、情報戦略本部長等を経て2009年6月代表取締役社長就任。2025年4月より現職。
山田 一人 常務取締役COO営業本部長兼中期経営計画推進室長 1989年4月トーレ・シリコーン入社。1990年3月同社入社。営業本部長、マーケティング本部長等を経て2014年4月常務取締役就任。2025年4月より現職。
原 俊樹 常務取締役CIO 1982年4月協和銀行(現りそな銀行)入行。りそなホールディングス代表執行役、AGS代表取締役社長等を経て2023年6月同社常務取締役就任。2025年4月より現職。
西川 圭介 取締役CFOコーポレート本部長兼中期経営計画推進室副室長兼サステナビリティ推進室担当役員兼健康経営担当役員 2000年4月同社入社。マーケティング本部長、経営企画部長等を経て2020年6月取締役就任。2025年4月より現職。


社外取締役は、小滝一彦(大学教授・元経済産業省)、鈴木一孝(元りそな銀行)、三原秀章(公認会計士・税理士)、金井美智子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ラボ・インダストリー部門」「メディカル部門」および「その他」事業を展開しています。

(1) ラボ・インダストリー部門


科学機器販売店に対し、研究者や技術者が使用する機器・備品などの商品を卸売しています。商品情報を紙カタログやWEBサイト等で提供し、販売店を経由してユーザーに販売するカタログ販売形態を主としています。

収益は、販売店への商品卸売による代金です。運営は主にアズワンが行っていますが、中国での販売は亜速旺(上海)商貿有限公司、プラスチック製容器等の製造・販売はニッコー・ハンセン、北米製品の輸出はAS ONE INTERNATIONAL, INC.、電子計測器の製造・販売はカスタムが担当しています。

(2) メディカル部門


医療および介護関係販売店に対し、看護・介護関係者が使用する機器・備品などの商品を卸売しています。販売形態としては、ラボ・インダストリー部門と同様のカタログ販売形態をとっています。

収益は、販売店への商品卸売による代金です。運営はアズワンが行っています。なお、同部門およびラボ・インダストリー部門での物流倉庫の運営は、連結子会社である井内物流に委託しています。

(3) その他


連結子会社のトライアンフ・ニジュウイチが、WEBシステムによる購買業務代行サービス等を提供しています。

収益は、そのシステムに参加する最終ユーザー等より受け取るシステム利用料です。運営はトライアンフ・ニジュウイチが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、順調に規模を拡大しています。利益面でも、経常利益、当期利益ともに増加基調を維持しており、高い収益性を保ちながら成長を続けています。特に直近の2025年3月期は、売上高が1,000億円を突破し、利益も過去最高水準となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 816億円 870億円 914億円 955億円 1,038億円
経常利益 102億円 96億円 116億円 108億円 121億円
利益率(%) 12.5% 11.0% 12.7% 11.3% 11.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 52億円 68億円 78億円 72億円 79億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しており、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しており、安定した収益性を維持しています。営業利益および営業利益率も前期から改善しており、増収効果と販管費のコントロールによって利益成長を実現しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 955億円 1,038億円
売上総利益 292億円 313億円
売上総利益率(%) 30.6% 30.2%
営業利益 104億円 116億円
営業利益率(%) 10.9% 11.2%


販売費及び一般管理費のうち、運賃及び倉庫作業料が52億円(構成比26%)、役員報酬・給与及び賞与が45億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


ラボ・インダストリー部門、メディカル部門ともに前期比で増収となっており、全社的な成長に寄与しています。特にラボ・インダストリー部門は堅調な伸びを示しています。なお、同社は報告セグメントが単一であるため、セグメント別の利益情報は開示されていません。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ラボ・インダストリー部門 783億円 861億円
メディカル部門 167億円 171億円
その他 6億円 6億円
連結(合計) 955億円 1,038億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アズワンは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを重視しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、卸売事業やWEB購買業務代行事業を通じて生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、新商品開発を中心とした研究開発活動に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入等によって資金調達を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 65億円 93億円
投資CF -19億円 9億円
財務CF -90億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「革新と創造」という経営理念のもと、「顧客満足度の追求」を徹底することにより業容を拡大し、業務の効率化を推進することで収益力の強化・企業価値の増大を図ることを経営の基本方針としています。人・モノ・情報・サービスを繋ぎ、研究・産業・医療のフィールドでその成果を加速させることを目指しています。

(2) 企業文化


「顧客満足度の追求」を掲げ、多様化するユーザーニーズに対応するため、魅力ある幅広い品揃えや情報の提供に加え、商品のクイックデリバリーやサポートサービスを重視しています。ワンストップで解決できるプラットフォームを提供することで、顧客の利便性向上に努めています。また、データドリブンを強化し、業界のハブとしての役割を果たすことを目指しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「AS ONE VISION-2035」を見据え、中期経営計画(FY2025-27)を策定しています。2027年度の達成目標として以下を掲げています。

* 目標連結売上高:1,300億円
* 目標連結営業利益:148億円
* 連結営業利益率:11.4%
* 目標ROE:13.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画(FY2025-27)において、「ECの進化」「サプライチェーン上の価値の最大化」「事業領域の拡大」を重点施策として掲げています。EC領域の拡大や検索エンジンの刷新、商品情報の拡充を進めるとともに、在庫の見える化や物流機能の強化により調達革命を目指します。また、サービス事業やオリジナル商品の開発にも注力し、プラットフォームとしての価値向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、意欲と能力を持つ人財に教育機会を提供し、仕事を通じて成長する人財を育成する方針です。「AS ONE Career Design Program」などの研修や、新入社員向けの導入教育を通じて支援を行います。また、多様な価値観を支援する人事制度や、魅力ある職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.0歳 11.2年 7,174,113円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.4%
男性育児休業取得率 114.3%
男女賃金差異(全労働者) 61.8%
男女賃金差異(正規) 62.9%
男女賃金差異(非正規) 39.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均残業時間数(11.7時間/月)、従業員全体の有給休暇取得率(66.0%)、入社3年以内離職率(6.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業内容に関するリスク


同社グループは、多くの販売店やサプライヤーとの協力関係によって事業が成り立っています。取引先の経営状況の変化等により協力が得られない事態になった場合、販売機会の喪失や商品仕入への支障など、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、取引先の経営状況の把握や取引の分散に努めています。

(2) eコマースの推進に関するリスク


同社の成長を牽引するEC事業において、通信技術の革新やユーザーの購買習慣の変化により、価格競争やより利便性の高い流通システムの出現といったリスクがあります。同社がこれらに対応できず、提供価値の魅力が失われた場合、業績に影響が出る可能性があります。専門性の高い品揃えとIT・物流力の融合により差別化を図っています。

(3) 災害や停電に関するリスク


千葉、大阪、尼崎、埼玉、福岡に物流センターを設置していますが、地震や災害、停電等により操業が中断した場合、商品出荷能力の低下や調達への支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。リスク軽減のため、一部拠点が操業不能になった際に他拠点でバックアップするBCPプランを策定しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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