橋本総業ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

橋本総業ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、管材類や衛生陶器、空調機器などの住宅設備機器販売を主力事業としています。直近決算では、建設業界の設備投資需要を取り込み、売上高は1,653億円、経常利益は35億円となり増収増益を達成しました。積極的な設備投資を行う一方で、自己資本比率は市場平均を下回る水準にあります。


※本記事は、橋本総業ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 橋本総業ホールディングスってどんな会社?


同社は管工機材や住宅設備機器の商社グループを持株会社体制で統括しています。「設備商品の流通とサービス」を軸に全国展開しています。

(1) 会社概要


1890年に個人商店として創業し、1938年に法人化されました。2004年にJASDAQ市場へ上場を果たし、2016年には持株会社体制へ移行して現在の社名となりました。その後、2022年の東証市場区分見直しを経て、2023年10月より東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

同社グループの連結従業員数は938名です。筆頭株主は代表取締役社長の親族が経営する有限会社ハット企画であり、第2位には橋本総業従業員持株会、第3位には橋本総業取引先持株会が名を連ねています。経営陣や従業員、取引先が株式を保有する安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社ハット企画 23.50%
橋本総業従業員持株会 7.02%
橋本総業取引先持株会 6.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は橋本政昭氏が務めています。社外取締役比率は43.8%です。

氏名 役職 主な経歴
橋本 政昭 代表取締役社長 住友金属工業を経て1978年入社。1990年より代表取締役社長。2016年より現職。
阪田 貞一 代表取締役副社長 新日本製鐵を経て1992年入社。2014年より代表取締役副社長。2022年より橋本総業社長。2025年より現職。
田所 浩行 取締役 1984年入社。各支店長やブロック長を歴任し、2019年取締役専務執行役員。2025年より現職。
佐山 秀一 取締役 1989年入社。北海道支店長などを経て2015年取締役常務執行役員。2025年より現職。
佐々木 地平 取締役 住友銀行を経て2010年入社。財務部長などを歴任し、2021年取締役常務執行役員。2025年より現職。


社外取締役は、松永和夫(元経済産業事務次官)、相亰重信(元SMBC日興証券会長)、宮川眞喜雄(元内閣官房国家安全保障参与)、宮内豊(元関税局長)、斎藤広志(元三菱UFJトラスト投資工学研究所社長)、芳賀日登美(Strategic Communication Research Institute社長)、吉田友佳(株式会社クローバー代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「管材類」「衛生陶器・金具類」「住宅設備機器類」「空調機器・ポンプ」の4つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

管材類


鋼管、ステンレス管、塩ビ管などの管類や、継手類、バルブ類、各種工具などを建設業者や工事業者向けに販売しています。建築現場やインフラ整備に不可欠な基礎資材を取り扱っています。

収益は、主に得意先である二次店(卸売)や大口需要先(サブコン・ゼネコン)への商品販売による対価から得ています。運営は、中核子会社である橋本総業株式会社のほか、大明工機株式会社などが担っています。

衛生陶器・金具類


便器、洗面器、バス、水栓金具などを取り扱っています。住宅やオフィスビル、商業施設などの水回り設備として、TOTO株式会社などの主要メーカー製品を供給しています。

収益は、商品の販売代金として得意先から得ています。この事業においても、橋本総業株式会社が中心的な役割を果たしており、同社の売上構成の中でも大きな割合を占める主力事業の一つです。

住宅設備機器類


給湯器やシステムキッチンなどの住宅設備機器を販売しています。リフォーム需要や新築住宅向けの需要に対応し、省エネ性能の高い給湯機や高機能な厨房機器などを提案しています。

収益は、商品販売による収益が主となります。運営主体としては、橋本総業株式会社に加え、サンセキ株式会社や株式会社永昌洋行といった地域の子会社もそれぞれのエリアで事業を展開しています。

空調機器・ポンプ


ルームエアコン、パッケージエアコンなどの空調機器や、各種ポンプ類を扱っています。住宅用から業務用まで幅広い空調ニーズに対応するとともに、インフラ設備としてのポンプも供給しています。

収益源は機器の販売代金です。橋本総業株式会社や若松物産株式会社、株式会社ムラバヤシなどが運営を行い、商品の流通とサービス提供を行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、物流受託、情報システム関連、不動産賃貸、軌道関係機器販売、旅行サービスなどを展開しています。

収益は、物流業務の受託料やシステム利用料、不動産賃貸料など多岐にわたります。運営は、みらい物流株式会社、株式会社みらい旅行社などの専門子会社や橋本総業ホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期着実に増加しており、成長トレンドにあります。経常利益は33億円から38億円の範囲で推移しており、安定した収益力を維持しています。当期純利益も増加傾向にあり、直近では過去最高益水準となっています。利益率は低位安定していますが、これは卸売業という業態特性によるものです。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,317億円 1,376億円 1,482億円 1,556億円 1,653億円
経常利益 33億円 34億円 38億円 34億円 35億円
利益率(%) 2.5% 2.5% 2.6% 2.2% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 24億円 26億円 26億円 29億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約10.5%程度で推移しており、大きな変動はありません。営業利益についても増益となっており、本業での収益力が維持されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,556億円 1,653億円
売上総利益 164億円 174億円
売上総利益率(%) 10.6% 10.5%
営業利益 23億円 24億円
営業利益率(%) 1.5% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、その他が66億円(構成比44%)、給与手当が56億円(同37%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上高が増加しています。特に「空調機器・ポンプ」セグメントは2桁増収となっており、利益面でも最大の稼ぎ頭となっています。「住宅設備機器類」も増収増益で好調です。「管材類」と「衛生陶器・金具類」は安定成長を示しています。全体として各事業がバランスよく成長しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
管材類 456億円 467億円 61億円 61億円 13.2%
衛生陶器・金具類 457億円 472億円 47億円 49億円 10.3%
住宅設備機器類 269億円 294億円 25億円 27億円 9.2%
空調機器・ポンプ 362億円 406億円 33億円 37億円 9.0%
その他 13億円 14億円 -1億円 0億円 3.0%
連結(合計) 1,556億円 1,653億円 164億円 174億円 10.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金と、財務活動による調達資金を合わせて、積極的な投資活動に充てている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 37億円 25億円
投資CF -3億円 -73億円
財務CF -13億円 41億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「設備商品の流通とサービスを通じて、快適な暮らしを実現する」を企業理念として掲げています。この理念のもと、社会に貢献できる企業を目指しています。具体的には、「設備のベストコーディネーター」「流通としてベストパートナー」「会社としてベストカンパニー」という3つのベストを追求しています。

(2) 企業文化


同社は「みらい会活動」「進化活動」などを通じて、ステークホルダーとの協調や生産性向上を重視する文化を持っています。特に「みらい会」活動では、得意先や仕入先と一体となったネットワーク作りを推進しています。また、HSDGCG活動(Health、Society、Digital、Green、Comfortable、Global)として、健康経営や社会貢献、DX推進などにも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期的な経営指標として以下の目標を掲げています。

* 前期対比売上高成長率:2.5%以上
* 前期対比経常利益成長率:3.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中期的な成長に向け、「3つのフル」の追求、「みらい会活動」、「進化活動」の3つを基本戦略としています。

* **3つのフルの追求**:「フルカバー(全国展開と物流網整備)」「フルライン(ワンストップでの商品提供)」「フル機能(ソリューション機能の充実)」により成長を図ります。
* **みらい会活動**:業界最大級のネットワークを構築し、販促やサービス展開を強化します。
* **進化活動**:商流・物流・情報の「しくみ作り」、人材育成の「ひと作り」、IT活用などの「しかけ作り」により生産性を向上させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本への投資を最も重要な投資と位置づけ、自ら決定し行動できる人材の育成を目指しています。具体的には、「みらいアカデミー」を通じたリアルとオンデマンドの研修により業界のプロを育成する「ひと作り」を推進しています。また、「健康経営宣言」を掲げ、社員が健康で安心して働ける環境整備に取り組んでおり、「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」に認定されています。

(2) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

A. 必須記載事項(法定開示)

項目 数値
女性管理職比率 14.9%
男性育児休業取得率 35.7%
男女賃金差異(全労働者) 71.8%
男女賃金差異(正規雇用) 74.6%
男女賃金差異(非正規) 45.8%


※データは連結子会社である橋本総業株式会社の実績です。

B. 任意記載事項

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有休消化率(58.7%)、平均残業時間(18.38時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設投資動向の影響


同社グループが取り扱う管工機材や住宅設備機器は、民間住宅投資や公共投資などの建設投資に関連して需要が発生します。そのため、景気変動や金利動向などによる建設投資の増減が、グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) 特定仕入先への依存


仕入総額の約30%がTOTO株式会社からの仕入となっており、衛生陶器部門の大部分を同社製品が占めています。そのため、何らかの要因で同社との取引に支障が生じた場合、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 仕入価格の変動


取扱商品の仕入価格は、メーカーの原材料価格変動等の影響を受けます。価格が短期間に大きく変動した場合、販売価格への転嫁にタイムラグが生じ、十分な価格転嫁ができずに売上総利益率が低下するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。