※本記事は、伊藤忠食品株式会社 の有価証券報告書(2025年3月期、2024年4月1日 ~ 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
伊藤忠食品は、食料品卸売業として酒類・食品の卸売を主な事業としています。商品の保管、運送、情報提供、商品流通に関するマーチャンダイジングも手掛けています。
単体従業員数は897名、連結従業員数は1,188名です。
主な国内グループ会社は、伊藤忠商事(総合商社)、新日本流通サービス(貨物運送・取扱業)、ISCビジネスサポート(サービス業)、スハラ食品(酒類・食料品卸売業)、アイ・エム・シー(小売業)などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
伊藤忠食品は、食品流通の中核を担う卸売業として、安定した事業基盤を持つ企業です。従業員の皆さんが長期的に安心して働けるような環境づくりに力を入れていることがうかがえます。多様な働き方を支援し、個々の成長を後押しする制度も整備されています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高い傾向にあります。これは、長期にわたってキャリアを築きやすい環境が整っており、安定して働き続けたいと考える方にとって魅力的な職場であることを示唆しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,882,000円 |
| 平均勤続年数 | 16.0年 |
| 平均年齢 | 40.6歳 |
| 単体従業員数 | 897人 |
| 連結従業員数 | 1,188人 |
| 単体のグループ内比率 | 75.5% |
同社グループは、退職給付制度として確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両方を採用しています。これらの制度は、同社および連結子会社に適用されています。
退職一時金制度も設けられていますが、その支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、確定給付型の退職給付債務は45.9億円、年金資産は58.8億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
伊藤忠食品は、人材を持続的な企業価値向上の原動力となる財産と位置づけ、心身ともに健康で活力ある職場環境のもと、柔軟な発想で挑戦し成長できる人財の育成を基本方針としています。個々の多様性と創造性の活用、自律型人財の育成、働きがいのある職場環境の整備を通じて、人的資本経営の高度化を目指しています。
具体的には、2022年7月より新たな人事制度を導入し、職責と成果に応じたメリハリのある等級制度、評価制度、賃金制度を構築しています。また、新入社員から管理職までを対象とした階層別研修や、DX・ダイバーシティといったテーマ別の目的別研修を拡充し、社員の知識・スキル向上とエンゲージメント向上に努めています。
多様な働き方を推進するため、2023年度には「エリア総合職」を新設し、「スライドワーク」や「在宅勤務」を制度化しました。さらに、仕事と治療の両立支援、シニア活躍支援、ビジネスケアラー支援、育児との両立支援など、ライフステージに応じた多様な制度を整備し、社員が安心して長く働ける環境づくりを進めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男女の賃金の差異は、主に女性管理職登用推進の途上であることや、男性従業員に比べ女性従業員の平均年齢が低いことから生じています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性従業員の割合 | 14.7% |
| 男性従業員の育児休業取得率 | 60.0% |
| 従業員の男女の賃金の差異(全従業員) | 66.6% |
| 従業員の男女の賃金の差異(うち正規雇用従業員) | 67.6% |
| 従業員の男女の賃金の差異(うち有期雇用従業員) | 68.1% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社の数値のみ掲載します。
▼ 新日本流通サービス㈱
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性従業員の割合 | 3.4% |
| 男性従業員の育児休業取得率 | 100.0% |
| 従業員の男女の賃金の差異(全従業員) | 58.6% |
| 従業員の男女の賃金の差異(うち正規雇用従業員) | 70.6% |
| 従業員の男女の賃金の差異(うち有期雇用従業員) | 89.9% |
▼ ㈱アイ・エム・シー
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性従業員の割合 | 23.1% |
| 男性従業員の育児休業取得率 | 0.0% |
| 従業員の男女の賃金の差異(全従業員) | - |
| 従業員の男女の賃金の差異(うち正規雇用従業員) | - |
| 従業員の男女の賃金の差異(うち有期雇用従業員) | - |
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.1% |
自律型人財の育成
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 労働生産性 | 20百万円/人 |
社員の健康力向上
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 健康経営優良法人認定 | 健康経営優良法人2025認定取得、ホワイト500認定 |
働きがいのある職場環境の整備
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 社員エンゲージメントスコア | 65.4 |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
伊藤忠食品は、食料品卸売業を主軸とする同社グループの中核企業です。酒類や食品の卸売を中心に、商品の保管、運送、情報提供、商品流通に関するマーチャンダイジングなど、食料品流通全般にわたる事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、メーカーや親会社から酒類・食品を仕入れ、卸売を行う食料品卸売業を主な事業としています。この事業は、GMS・スーパーマーケットやドラッグストアといった多様な小売業態を主要な顧客とし、ビール類、和洋酒、調味料・缶詰、嗜好品・飲料、麺・乾物、冷凍・チルド、ギフトなど幅広い商品を取り扱っています。収益は、これらの商品の販売から得ています。
近年では、物価上昇による消費者の節約志向や、低価格・PB商品と付加価値商品の消費の二極化といった市場の変化に対応しています。具体的には、デジタルサイネージを活用した情報提供による売り場づくりや、冷凍食品の「凍眠凍結酒」「凍眠フルーツ」といった商品開発に注力しています。また、物流分野では、トラック積載効率の改善やドライバーの労働負荷軽減、デジタル技術を活用したサプライチェーンの効率化にも取り組んでいます。
同社グループの事業は国内市場に強く根ざしており、外部顧客への売上高の大部分が本邦に集中しています。特定の顧客への売上集中も見られ、株式会社セブン-イレブン・ジャパンや株式会社コスモス薬品が主要な取引先となっています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、過去5期にわたり売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加傾向を示しています。特に直近の連結会計年度では、売上高が前期から増加し、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益も大きく伸びています。経常利益の増加には、一過性の持分法投資利益の増加も寄与しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,567億円 | 6,127億円 | 6,430億円 | 6,725億円 | 6,994億円 |
| 経常利益 | 62.6億円 | 72.7億円 | 89.4億円 | 92.2億円 | 113億円 |
| 経常利益率 | 1.0% | 1.2% | 1.4% | 1.4% | 1.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 40.3億円 | 43.1億円 | 48.4億円 | 66.0億円 | 82.0億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 317.94 | 340.09 | 381.69 | 520.09 | 646.67 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高(連結)は、前期から当期にかけて増加しています。また、従業員1人あたり営業利益(連結)も同様に改善が見られます。これらの指標の推移は、同社グループの事業活動における効率性の向上を示しており、組織全体の生産性が高まっている傾向にあると言えます。
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 570.4百万円 | 588.7百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 6.5百万円 | 7.2百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務基盤と資金の流れは、事業の安定性と将来への投資状況を映し出しています。直近のキャッシュフローは一時的な変動が見られますが、全体的な財務健全性を確認することが重要です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率が非製造業のプライム市場平均を上回る水準で推移しています。純資産は増加傾向にあり、安定した経営基盤を維持していることが示されています。ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均を下回っていますが、前期からは改善しています。手元資金である現金及び預金は減少していますが、事業運営に必要な流動性は確保されています。これらの財務状況は、長期的な雇用や給与の安定性に関わる重要な要素となります。
| 指標 | 2024年3月期(前期) | 2025年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 1,093億円 | 1,156億円 |
| 自己資本比率 | 39.8% | 42.6% |
| ROE(自己資本利益率) | 6.3% | 7.3% |
| 現金及び預金 | 16.1億円 | 14.5億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュフローは△37.3億円のマイナスとなりました。これは前期末日が休日であったことの反動が主な要因とされています。投資活動によるキャッシュフローは5.0億円のプラスとなり、貸付金の回収による収入が主な要因です。財務活動によるキャッシュフローは△20.4億円のマイナスで、配当金の支払いとリース債務の返済による支出が影響しています。
これらの結果、フリーキャッシュフローは△32.3億円のマイナスとなりました。本業の資金創出力は一時的に減少しているものの、その要因は明確に説明されています。資金の流動性を確保しつつ、事業運営に必要な投資は継続的に実施している状況です。
| 項目 | 2024年3月期(前期) | 2025年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 105.3億円 | △37.3億円 |
| 投資CF | △16.6億円 | 5.0億円 |
| 財務CF | △17.2億円 | △20.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 88.7億円 | △32.3億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、食品流通業界における事業環境の変化をリスクとして認識しています。具体的には、少子高齢化による労働人口減少やEC取引増加に伴う宅配便の増加により、トラックドライバーの需給ギャップ拡大や物流費の高騰が業績に影響を与える可能性があります。また、食料品卸売事業者間の競争激化もリスク要因として挙げられています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、食品流通業界における事業環境変化の一つとして、少子高齢化による労働人口減少をリスクとして認識しています。これは、トラックドライバーの需給ギャップ拡大に繋がる可能性があり、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
伊藤忠食品は、「健康で豊かな食生活創りを通じて消費者と社会に貢献する」ことを企業理念としています。食を中心とする領域で共有価値を創造し、社会と経済の両面で持続的な成長を目指す会社です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「常に時代の変化と要請を先取りし、健康で豊かな食生活創りを通じて消費者と社会に貢献すること」を企業理念としています。
新中期経営計画「Transform 2025~創造と循環~」では、「食を中心とする領域での共有価値の創造と循環」を目指す姿として掲げています。
消費者を含めたサプライチェーン全体での共有価値の創造と、事業を通じた社会課題解決への取り組みを推進しています。
「消費者起点」でビジネスを推進し、持続的な企業価値の向上に努める方針です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、中期経営計画の単年度副題を“Catch the Market”とし、市場の変化に適切に対応しながらビジネスを拡大することに注力しています。
人的資本経営の高度化にも取り組み、女性活躍や心身の健康維持・増進、仕事と育児・介護の両立支援策の強化などを実施しています。
「えるぼし認定」の最高位である3つ星や「健康経営優良法人 ホワイト500」に認定されるなど、働きやすい環境づくりを進めています。
「心身ともに健康で活力ある職場環境のもと、柔軟な発想をもち、失敗を恐れずチャレンジしながら自ら成長できる人財」の育成を人的資本に関する基本方針としています。
個々の多様性と創造性の活用、自律型人財の育成、働きがいのある職場環境の整備を通じて、人的資本経営の高度化を目指しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
食品流通業界では、物価上昇による消費者の生活防衛的節約志向や、低価格・PB商品と付加価値商品の消費の二極化傾向が鮮明になっています。
同社グループは、市場の変化に適切に対応することでビジネスの拡大に注力しています。
重点分野を支える基盤の強化として、人的資本経営の高度化に取り組んでいます。
女性活躍や心身の健康維持・増進、仕事と育児・介護の両立支援策の強化、健康セミナーの充実による啓発活動などを実施しています。
これにより、「えるぼし認定」の最高位である3つ星を取得し、「健康経営優良法人 ホワイト500」にも初めて認定されました。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
伊藤忠食品は監査役制度を採用しており、取締役会は複数の社外取締役を含めて構成されています。経営の透明性と責任の明確化を重視し、独立した立場からの監督体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
伊藤忠食品の筆頭株主は伊藤忠商事であり、同社グループの経営に大きな影響力を持つ資本構成となっています。上位株主には信託銀行や事業会社が名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 伊藤忠商事 | 52.46% |
| 日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・アサヒビール退職給付信託口) | 6.42% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.24% |
| 味の素 | 2.67% |
| アサヒビール | 2.34% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は11名(男性9名・女性2名)で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は岡本均氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡本 均 | 代表取締役社長 (社長執行役員) | 1980年伊藤忠商事入社、執行役員、常務執行役員、代表取締役専務執行役員などを経て、2018年より同社代表取締役社長社長執行役員より現職。 |
| 福嶋 義弘 | 取締役 (専務執行役員) 管理統括部門部門長 コンプライアンス担当 サステナビリティ担当 | 1985年伊藤忠商事入社、コンバースフットウェア代表取締役社長、伊藤忠商事執行役員などを経て、2021年より同社取締役、2025年より専務執行役員管理統括部門部門長より現職。 |
| 魚住 直之 | 取締役 (専務執行役員) 営業統括部門部門長 | 1985年同社入社、西日本営業本部本部長、執行役員、常務執行役員などを経て、2022年より同社取締役、2025年より専務執行役員営業統括部門部門長より現職。 |
| 中村 洋幸 | 取締役 | 1990年伊藤忠商事入社、株式会社リーテイル・ネット代表取締役社長、株式会社日本アクセス執行役員などを経て、2023年より同社取締役、2024年より伊藤忠商事執行役員食品流通部門長より現職。 |
社外取締役は、宮坂泰行氏(宮坂泰行公認会計士事務所所長)、奥田高子氏(元東京電力エナジーパートナーCX推進担当)、中条薫氏(SoW Insight代表取締役社長)です。
同社は監査役制度を採用しています。社外取締役は独立・公正な立場から業務執行を監督し、経営の監督機能強化に貢献しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、月額固定の基本報酬と業績連動報酬で構成されています。業績連動報酬は、全社連結ベースの売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益などの定量指標と定性評価に基づいて決定されます。報酬体系の妥当性はガバナンス委員会で定期的に検証されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 6名 | 2.6億円 | 42.7百万円 |
| 社外取締役 | 3名 | 18百万円 | 6.0百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 23百万円 | 11.5百万円 |
| 社外監査役 | 2名 | 12百万円 | 6.0百万円 |
なお、業績連動報酬は当事業年度に係る役員賞与支給予定額です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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