#記事タイトル:日本瓦斯転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、日本瓦斯株式会社 の有価証券報告書(第71期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本瓦斯ってどんな会社?
関東圏を地盤とする総合エネルギー企業です。ガス・電気の販売に加え、DXを活用したプラットフォーム事業やエネルギーソリューション事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1955年に設立しLPガス等の販売を開始、1973年に東証二部、1979年に東証一部へ上場しました。2017年の都市ガス小売全面自由化に伴い同市場へ参入し、同年東京電力グループとの合弁会社を設立しました。2021年には世界最大規模のLPガスハブ充填基地を完成させ、2024年にグループ再編を実施しています。
連結従業員数は1,696名、単体従業員数は1,135名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は事業提携関係にある電力小売事業者です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 18.00% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.30% |
| 東京電力エナジーパートナー | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は柏谷邦彦氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柏谷邦彦 | 代表取締役社長執行役員 | Ernst&Young LLP、オリックスを経て2012年同社入社。常務取締役、代表取締役専務等を経て2022年5月より現職。 |
| 吉田恵一 | 代表取締役専務執行役員 | 東京電力入社後、同社執行役員等を経て2020年同社入社。専務執行役員等を歴任し、2024年1月より現職。 |
| 土屋友紀 | 代表取締役専務執行役員 営業本部長 | 1993年同社入社。常務執行役員、エナジー宇宙代表取締役社長等を歴任。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、山田剛志(弁護士・成城大学大学院教授)、里中恵理子(アバントグループ執行役員兼CHRO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「LPガス事業」「電気事業」「都市ガス事業」事業を展開しています。
■(1) LPガス事業
家庭用・業務用・工業用・自動車用のLPガスおよびコミュニティーガスの供給を行っています。関東圏を主要な供給エリアとし、自社開発のシステムによる配送効率化や、他事業者との共創に向けたプラットフォーム提供を推進しています。
収益は、顧客からのガス料金、ガス機器の販売代金、受注工事代金等から得ています。また、他事業者へのプラットフォーム提供による利用料も収益源としています。運営は主に日本瓦斯、エナジー宇宙および日本瓦斯運輸整備が行っています。
■(2) 電気事業
主に家庭向けに電力の販売を行っています。また、戸建て住宅への太陽光発電システムや蓄電池システムの普及を通じ、顧客が自律分散型エネルギーをマネジメントする仕組みの構築に取り組んでいます。
収益は、顧客からの電気料金およびエネルギーソリューション機器の販売代金から得ています。電源調達においては東京電力グループと提携しています。運営は主に日本瓦斯およびエナジー宇宙が行っています。
■(3) 都市ガス事業
家庭用・業務用・工業用の都市ガスの販売を行っています。また、ガス機器の販売やガス設備の受注工事も手掛けています。
収益は、顧客からの都市ガス料金、ガス機器の販売代金および工事代金から得ています。導管の維持管理や供給は子会社が担当しています。運営は主に日本瓦斯、エナジー宇宙および日本瓦斯工事が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、利益面でも経常利益、当期純利益ともに安定的に推移しています。直近では増収増益を達成しており、堅調な成長を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,435億円 | 1,626億円 | 2,079億円 | 1,944億円 | 2,001億円 |
| 経常利益 | 141億円 | 129億円 | 153億円 | 176億円 | 186億円 |
| 利益率(%) | 9.8% | 8.0% | 7.4% | 9.1% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 94億円 | 100億円 | 106億円 | 108億円 | 115億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益も増加しました。販売費及び一般管理費は微減し、営業利益率は改善傾向にあります。効率的な経営が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,944億円 | 2,001億円 |
| 売上総利益 | 736億円 | 746億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.9% | 37.3% |
| 営業利益 | 174億円 | 185億円 |
| 営業利益率(%) | 9.0% | 9.3% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が191億円(構成比34.1%)、給料及び手当が84億円(同14.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
LPガス事業は売上高が増加し、安定した収益基盤となっています。電気事業は大幅な増益となり、利益率も向上しました。都市ガス事業は減益となりましたが、一定の利益率を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| LPガス事業 | 848億円 | 892億円 | 495億円 | 497億円 | 55.8% |
| 電気事業 | 425億円 | 485億円 | 37億円 | 52億円 | 10.8% |
| 都市ガス事業 | 671億円 | 623億円 | 205億円 | 196億円 | 31.4% |
| 調整額 | - | - | - | - | - |
| 連結(合計) | 1,944億円 | 2,001億円 | 736億円 | 746億円 | 37.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、株主還元と借入返済に充当できるフリー・キャッシュ・フローを創出しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益の増加や消費税支払いの縮小、再編費用の反動により増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、システム開発の一服とICT投資の減少があった一方、グループ会社への出資・貸付が増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、株主還元や有利子負債の返済により支出が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 234億円 | 279億円 |
| 投資CF | -92億円 | -88億円 |
| 財務CF | -87億円 | -184億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「地域社会に対する貢献」「企業の持続的成長を目指す」「人的資源の尊重」を経営理念として掲げています。環境負荷の少ないエネルギーを安全かつ適正価格で提供し、地域社会の環境保全や防災活動に貢献するとともに、従業員の能力を最大限に発揮できる経営を目指しています。
■(2) 企業文化
同社には「個人が主人公になる」企業風土があります。一人ひとりに大きな裁量を持たせ、失敗を受け入れ挑戦を促す文化を醸成しています。また、年齢や経験にかかわらず新たな業務に挑戦できる環境があり、創業当時からの実力主義に基づく公平な評価制度を通じて、社員の成長意欲を高めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2024年3月期から2026年3月期までの3か年計画を発表し、資産規模を大きく増やさずに利益を拡大することを目指しています。
* 2026年3月期 営業利益:200億円
* 2026年3月期 純利益:140億円
* ROE:22%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「社会課題の解決と業界集約」を掲げ、LPガスの充填・配送インフラやシステムの効率化を推進し、業界の集約を牽引していく方針です。また、同業他社や異業種との「共創のスケールアップ」を図り、エネルギーソリューションやプラットフォーム事業を拡大させることで、地域社会への貢献と企業の更なる飛躍を目指しています。
* 2026年3月期 営業利益:200億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本の最大化を通じて成長戦略を発展させることを目標とし、社員のモチベーション向上と必要なスキルの確保に注力しています。個人が主人公になる企業風土の醸成、実力主義に基づく公平な評価、安全で健康的な職場環境の整備を進めています。また、グループ再編による人材配置やスキルの再開発、多様な人材の活躍推進(DE&I)に取り組み、企業価値向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.7歳 | 13.3年 | 6,715,845円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 98.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(20.7%)、エンゲージメントスコア(65)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原料等の安定調達
同社は輸入等の上流事業を行っておらず、他社からエネルギーを調達しています。地政学リスクや為替変動による調達への影響に対し、複数の取引先からの調達や価格転嫁の仕組みにより対応していますが、供給途絶や大幅な価格変動が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) エネルギー利用の変化
気候変動や省エネ意識の高まりにより、顧客のエネルギー利用が変化し、消費量が減少する可能性があります。同社は需要側からのアプローチとして、エネルギーソリューション事業を推進し、新たな価値提供に取り組んでいますが、想定以上の需要減少が生じた場合、収益に影響を与える可能性があります。
■(3) 大規模災害への対応
大規模地震や豪雨災害等が発生した場合、エネルギーの安定供給に支障をきたす恐れがあります。同社はマイコンメーターの設置や災害時対応体制の整備、分散型エネルギーの普及によりレジリエンスの強化を図っていますが、甚大な被害が生じた場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。