※本記事は、日本瓦斯株式会社の有価証券報告書(第72期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本瓦斯ってどんな会社?
LPガス、電気、都市ガスの販売とプラットフォーム提供を主力とする総合エネルギー企業です。
■(1) 会社概要
1947年5月に設立され、1955年にLPガスおよび同機器の販売、ガス工事の設計施工を開始しました。1966年に都市ガス事業へ進出し、2001年に東京証券取引所市場第二部へ上場、のち2022年にプライム市場へ移行しました。2017年には全面自由化された都市ガス小売市場に参入し、2024年にグループ再編を実施してエネルギー小売事業の集約を図っています。
従業員数は連結で1,764名、単体で1,165名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位は資産管理等を行う外資系信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) | 16.50% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.30% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 (常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は柏谷邦彦氏です。社外取締役は2名(25.0%)選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柏谷邦彦 | 代表取締役社長執行役員 | Ernst&Young LLP、オリックス等を経て2012年同社入社。常務取締役等を経て2022年5月より現職。 |
| 吉田恵一 | 代表取締役専務執行役員エネルギーインフラ事業システム・プラットフォーム事業 | 1987年東京電力入社。東京電力パワーグリッド常務取締役等を経て2020年同社入社。2024年1月より現職。 |
| 土屋友紀 | 代表取締役専務執行役員 営業本部長 | 1993年同社入社。常務執行役員、東彩ガス代表取締役社長等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、山田剛志(成城大学大学院法学研究科教授)、里中恵理子(アバントグループ執行役員兼CHRO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「LPガス事業」「電気事業」「都市ガス事業」を展開しています。
■LPガス事業
家庭用・業務用・工業用・自動車用のLPガス、コミュニティーガスの販売のほか、ガス機器や太陽光・蓄電池などのデバイス販売、供給設備工事やリフォーム工事、自動検針や配送などを最適化したプラットフォームの提供を行っています。
収益は、LPガスの利用料金や機器の販売代金、システム提供等の手数料から得ています。事業の運営は同社を中心に、エナジー宇宙、日本瓦斯工事、エナトラ、雲の宇宙船などの子会社が担っています。
■電気事業
主に家庭用の電力の販売を行っています。また、戸建て住宅への太陽光発電システムや蓄電池システム等の普及を推進し、顧客が自律分散型エネルギーをマネジメントする仕組みを構築するエネルギーソリューション事業も展開しています。
収益は、家庭向けなどに提供する電力の販売料金から得ています。電力の調達に関しては、子会社のエナジー宇宙が東京電力グループと提携して行っています。運営は主に同社およびエナジー宇宙が担っています。
■都市ガス事業
家庭用・業務用・工業用の都市ガス販売のほか、関連するガス機器等の販売やガス設備の工事を行っています。また、都市ガスの供給や導管の維持管理など、インフラに関わるサービスも提供しています。
収益は、都市ガスの利用料金やガス機器の販売代金、受注工事代金から得ています。事業の運営は同社に加え、都市ガスの供給や導管維持管理を担うエナジー宇宙、導管工事を施工する日本瓦斯工事がそれぞれ分担して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、売上高は概ね増加傾向にあり、直近の2026年3月期には2,085億円に達しています。経常利益も順調に拡大しており、212億円を計上するなど収益力の強化が進んでいます。利益率も上昇傾向にあり、強固な成長基盤が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,626億円 | 2,079億円 | 1,944億円 | 2,001億円 | 2,085億円 |
| 経常利益 | 129億円 | 153億円 | 176億円 | 186億円 | 212億円 |
| 利益率(%) | 8.0% | 7.4% | 9.1% | 9.3% | 10.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 87億円 | 90億円 | 203億円 | 117億円 | 191億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴って売上総利益も拡大しています。営業利益率も着実に上昇しており、継続的なコストコントロールや利益率の高い事業へのシフトなどにより、安定した増益体質が構築されていることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,001億円 | 2,085億円 |
| 売上総利益 | 746億円 | 767億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.3% | 36.8% |
| 営業利益 | 185億円 | 213億円 |
| 営業利益率(%) | 9.3% | 10.2% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が177億円(構成比32%)、給料及び手当が88億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各事業セグメントにおいて、電気事業が契約数や販売量の増加により売上高と利益ともに堅調に推移しています。LPガス事業や都市ガス事業も顧客件数の拡大や機器販売の好調により、全体として安定した収益基盤を支えています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| LPガス事業 | 892億円 | 908億円 |
| 電気事業 | 485億円 | 514億円 |
| 都市ガス事業 | 623億円 | 663億円 |
| 連結(合計) | 2,001億円 | 2,085億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスの「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 279億円 | 282億円 |
| 投資CF | -88億円 | -72億円 |
| 財務CF | -184億円 | -167億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「地域社会に対する貢献、企業の持続的成長を目指す、人的資源の尊重」を経営理念として掲げています。環境負荷の少ないエネルギーを最適な方法で安全かつ安定的に供給し、適正価格で提供することで地域社会に貢献するとともに、企業の持続的成長と従業員など人的資源の幸福の増進を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、細かいマニュアルを設けず一人ひとりに大きな裁量を持たせ、個人が主人公になれる企業風土を重視しています。新しいことに挑戦する人材を育成するため、失敗を受け入れて挑戦を促す文化が根付いています。年齢や経験を問わず、未経験からでも新たな業務に挑戦できる環境が整えられています。
■(3) 経営計画・目標
2027年3月期から2029年3月期までの新3カ年計画を策定し、高い資本効率を堅持しつつさらなる利益成長を追求しています。主力事業に加え、都市ガス事業やプラットフォーム事業を成長させ、最終年度には過去最高益の更新を目指しています。
* ROE 22.0%程度
* 営業利益 250億円
* 純利益 175億円
■(4) 成長戦略と重点施策
LPガス業界の集約化を最重要戦略と位置づけ、営業力を活かした顧客基盤と最適化されたインフラ基盤、高い資本効率を活用して再編を主導します。また、電気とガスを組み合わせたハイブリッド給湯器や蓄電池等を活用するエネルギーの最適利用(NICIGAS3.0)を推進し、地域コミュニティ全体のエネルギー最適利用の構築に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の人材戦略は、エネルギーソリューションの展開と業界の集約化という成長戦略の実現を目指し、人的資本の最大化を図ることを基本方針としています。これを達成するための重点施策として、「スキルの多様化」「モチベーション向上」「業務効率化」の3つを掲げ、未経験でも挑戦できる機会の提供や自発的な成長を促す環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.8歳 | 13.3年 | 7,027,848円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.2% |
| 男性育児休業取得率 | 70.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 68.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 92.8% |
また、同社は「人的資本、多様性に関する取り組み方針」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(56.9%)、管理職におけるキャリア採用比率(50.0%)、女性従業員比率(19.9%)、エンゲージメントスコア(67)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原料等の安定調達
ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢などの地政学リスクにより、LPガスをはじめとするエネルギー調達価格や為替相場の変動が生じるリスクがあります。同社は複数の取引先からの調達によるリスク分散や、東京電力グループとのアライアンスを通じた安定的な電源・都市ガス原料の確保に努めています。
■(2) エネルギー利用の変化
気候変動や原料価格の高騰、消費者の省エネ意識の高まりにより、顧客のエネルギー消費量が減少するリスクがあります。同社はこれに対し、電気とガスのセット販売やハイブリッド給湯器、太陽光発電などの分散型エネルギー設備を普及させ、エネルギー最適利用を提案する新たなサービスへの転換を進めています。
■(3) 大規模災害
大規模な地震や豪雨などの自然災害が発生した場合、エネルギーの安定供給に支障をきたすリスクがあります。同社は、マイコンメーターや感震遮断弁の設置、スマートメーターによる常時監視等の事前対策を進めるとともに、災害時の緊急対応体制や自家発電機等の設備を整備し、早期復旧を図る体制を構築しています。
■(4) 保安上のリスク
点検時の確認不足等に起因するガス漏洩や不完全燃焼事故が発生した場合、社会的評価の低下や損害賠償などにより事業収支に影響を及ぼす可能性があります。同社はスマート保安システムやスマートメーターを活用した常時監視を導入し、資格取得による保安教育の徹底とあわせ、事故の未然防止と迅速な対応に努めています。



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