サンゲツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンゲツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場および名証プレミア市場に上場するサンゲツは、壁紙や床材、ファブリックなどのインテリア商材を主力とするトータルインテリア企業です。近年は海外事業や空間総合事業にも注力しています。直近の業績は、価格改定の浸透や海外事業の好調により売上高・各段階利益ともに過去最高を更新する増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社サンゲツの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンゲツってどんな会社?


壁装材や床材などのトータルインテリア事業を主力とし、空間デザインから施工まで幅広く手がける企業です。

(1) 会社概要


1953年に個人商店から改組して設立され、1960年に壁紙の販売を開始しました。1980年に名証二部に上場、1996年に東証一部へ上場しました。2016年の米国企業買収を機に海外展開を加速し、2025年には全国規模の配送網強化に向けてSDSを子会社化するなど、事業領域と機能の拡大を続けています。

現在の同社グループは、連結従業員数3,299名、単体従業員数1,345名の体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には日比喜雄氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.94%
日本カストディ銀行(信託口) 5.29%
日比喜雄 2.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長執行役員は近藤康正氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
近藤康正 代表取締役社長執行役員兼海外事業部門ゼネラルマネージャー 三菱商事に入社後、同社合成樹脂部長や中央化学の代表取締役社長等を歴任。2022年に同社へ入社し、執行役員などを経て2024年4月より現職。
松尾豊 取締役常務執行役員事業部門ゼネラルマネージャー兼エクステリア事業担当兼経営戦略担当 1990年に同社へ入社。北関東支社長や関西支社長、ロジスティクス部門ゼネラルマネージャー等を歴任し、2026年4月より現職。
美根陽介 取締役(常勤監査等委員) 1984年に同社へ入社。中国四国支社長やロジスティクス本部長、同部門ゼネラルマネージャー等の要職を歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、浜田道代(名古屋大学名誉教授)、宇田川憲一(元東ソー社長)、寺田修(元清水建設副社長)、大鐘亜樹(元三井住友銀行監査部上席考査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内インテリア」「国内エクステリア」「海外」の3つの報告セグメントを展開しています。

国内インテリア


住宅から非住宅分野まで幅広く利用される壁装材や床材、カーテンなどのファブリック製品の企画・開発から販売までを主力としています。また、製品の提供にとどまらず、オフィスや商業施設などの設計・デザインから施工まで、空間づくり全体をプロデュースする空間総合事業も展開し、多様な顧客ニーズに対応しています。

収益の柱は、内装材メーカーや代理店等から仕入れた製品、および自社工場で製造した壁紙などを建設業者やハウスメーカー等へ販売することによる商品売上です。事業運営はサンゲツが中核を担い、壁紙の製造をクレアネイト、専門的な施工をフェアトーン、配送・物流をクロス企画およびSDSなどの子会社がそれぞれ担っています。

国内エクステリア


住宅市場から非住宅市場までを対象に、門扉やフェンス、カーポートをはじめとする多様なエクステリア商品の販売を手がけています。さらに、商品の提供だけでなく、建物の外構に関わる空間提案から実際の施工までを一貫して請け負うことで、住環境の価値向上に貢献するエクステリア事業を展開しています。

主な収益源は、エクステリア商品の販売代金および外構工事の設計・施工に伴う請負代金です。インテリア事業とのシナジーを活かして収益基盤の拡大を図っています。この事業の運営は、同社の子会社であるサングリーンが主体となっており、地域に密着した営業活動や空間提案を通じて事業基盤の強化を進めています。

海外


北米、東南アジア、中国・香港などのグローバル市場を対象に、壁装材や床材、ファブリックなどのインテリア商材を企画・製造・販売しています。また、東南アジア地域においては、オフィスや商業施設などを中心とした空間デザインおよび総合的な内装施工サービスを提供する海外空間総合事業も手がけています。

収益源は現地顧客へのインテリア商材の販売代金と内装施工の請負代金です。北米市場ではKOROSEAL INTERIOR PRODUCTS HOLDINGS, INC.が壁紙の製造・販売を担います。アジアではGoodrich傘下の子会社が販売を、D'Perception Pte Ltdが空間デザインと施工を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、約1.4倍の規模に拡大しています。経常利益も一時的な変動はあるものの概ね増加傾向にあり、当期は202億円と高水準を記録しました。価格改定の浸透や事業領域の拡大が奏功し、強固な収益基盤を構築していることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,495億円 1,760億円 1,899億円 2,004億円 2,064億円
経常利益 82億円 207億円 197億円 186億円 202億円
利益率(%) 5.5% 11.8% 10.4% 9.3% 9.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -14億円 148億円 133億円 115億円 121億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比3.0%増と順調に拡大し、売上総利益率も31.1%から31.4%へと改善しています。原材料高などのコスト上昇圧力を受けつつも、適切な価格改定や高付加価値商品の販売拡大が寄与し、営業利益率は9.1%から9.4%へと向上しました。収益性の高い事業構造が維持されています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,004億円 2,064億円
売上総利益 624億円 647億円
売上総利益率(%) 31.1% 31.4%
営業利益 181億円 194億円
営業利益率(%) 9.1% 9.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が174億円(構成比38%)、見本帳費が33億円(同7%)を占めています。また、売上原価は1,417億円で、売上高に対する構成比は69%となっています。

(3) セグメント収益


主力の国内インテリアは、需要の弱含みや供給制約があったものの、価格改定や商品ポートフォリオの改善により増収増益を確保しました。海外は北米事業が好調に推移し、東南アジアの黒字転換も寄与して売上高が大きく伸長し、営業赤字幅が縮小するなど着実な業績改善が進んでいます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内インテリア 1,640億円 1,641億円 189億円 193億円 11.8%
国内エクステリア 66億円 73億円 0.2億円 1億円 1.6%
海外 298億円 350億円 -8億円 -0.5億円 -0.1%
連結(合計) 2,004億円 2,064億円 181億円 194億円 9.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で得た資金から将来に向けた投資を行い、さらに借入金の返済なども進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況となっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%、財務の安定性を測る自己資本比率は64.3%であり、いずれもプライム市場の平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 193億円 143億円
投資CF -69億円 -46億円
財務CF -40億円 -83億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業以来の根源的な価値観である「誠実(INTEGRITY)」を社是として掲げています。「事業を通じて日本のインテリアを良くし、人々の暮らしを豊かにすることで社会の発展に貢献したい」という強い思いを原点とし、社員一人ひとりが高い倫理観を持ち、自らの信念に忠実に行動することで、持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


1960年以来の社是である「誠実」に加えて、「常に新しいことに挑戦するフロンティアスピリット」が脈々と受け継がれています。長年培ってきた「トータルインテリア」の強みを基盤とし、「変革と挑戦」および「イノベーションの創出」をスローガンに据え、過去の成功体験に依存することなく自己変革を遂げる風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画 2029」において、「素材とデザインを起点に、インテリアから文化をつくる企業」を目指す企業像として掲げています。インテリア事業を中核として収益基盤を強固なものにするとともに、空間総合事業やエクステリア事業の育成、海外事業の成長を加速させる計画です。

* 連結売上高:2,500億円
* 連結営業利益:250億円
* 連結当期純利益:170億円
* ROE:14.0%
* ROIC:11.0%

(4) 成長戦略と重点施策


コアである「トータルインテリア」をさらに深化させ、経済価値と社会価値の両立を果たしながら成長を図ります。インテリア事業では商品ポートフォリオの拡充やパートナー企業との連携を強化し、海外事業では北米とアジアでの成長を加速させます。また、人的資本とデジタル資本(DX)の強化により資本効率の最大化を推進します。

* 成長投資:450〜550億円
* 株主還元:350〜450億円(安定配当、配当性向60%以上)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人的資本の強化」を最重要施策の一つと位置づけ、「構想力・実行力・倫理観」を備えた自律的な『人財』の育成と、「オープンマインド・共創・心理的安全性」が確保された『組織』づくりを推進しています。「持続的成長を支える人材基盤強化」「事業戦略をリードする人材の強化」「DE&Iの深化」「ウェルビーイングの向上」を重点テーマに設定し、積極的な人材投資と人事施策を展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.0歳 15.3年 7,881,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.1%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 72.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 75.7%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 76.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用者数(110名)、エンゲージメントスコア(59.4)、障がい者雇用率(3.7%)、非喫煙率(80.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化によるビジネス機会の損失


同社グループの事業は建設需要に大きく左右されるため、国内の景気動向や政府の住宅政策、人口減少に伴う新設着工戸数の減少などがリスクとなります。これに対し、成長が期待される分野への注力や空間総合事業・エクステリア事業の育成、海外事業の成長加速を図り、次世代事業の探索による収益力の強化を進めています。

(2) 国際情勢の不安定化に伴う調達・コスト影響


中東情勢の緊迫化などによるサプライチェーンの混乱や原材料・物流コストの高騰が、商品の供給制限や納期遅延、収益圧迫のリスクとなります。同社は調達力と在庫力を活かした安定供給に努めるとともに、継続的なコスト削減と適切な価格改定を実施し、事業の継続性と安定的な供給体制の確保に取り組んでいます。

(3) 環境・気候変動による移行・物理的リスク


サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減の遅れによるコスト増加や、化学物質規制への対応遅延、低環境負荷商品へのニーズ不適合がビジネス機会の損失を招く可能性があります。対策として、脱炭素に向けた省エネ活動や再生可能エネルギーの導入、環境配慮型商品の開発・販売体制の整備を強力に推進しています。

(4) 製品の品質トラブルやクレームの発生


商品の品質は同社のブランドと競争力の基盤であり、製造工程の不備や検証不足により重大な品質トラブルが発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下を招くリスクがあります。これに対し、開発段階での厳格なデザインレビューの実施や、仕入先工場の監査、製造委託先における品質管理基準の明確化を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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