サンゲツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンゲツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場しており、壁紙や床材などのインテリア商品の卸売や空間デザイン・施工を主要事業としています。直近の決算では、北米事業の伸長や価格改定効果により増収となりましたが、仕入コストや販管費の増加により営業利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社サンゲツ の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンゲツってどんな会社?


インテリア商品の専門商社として、壁紙・床材・カーテン等の企画・販売から、空間デザイン・施工までを手掛けています。

(1) 会社概要


同社は1953年に株式会社山月堂として設立され、1970年に現社名へ変更しました。1996年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。2016年には米国KOROSEAL社を買収し海外事業を本格化させました。直近では2024年にシンガポールD'Perception社を子会社化するなど、グローバル展開を加速しています。

連結従業員数は3,001名、単体では1,298名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には、同社の取引先で構成される持株会であるサンゲツ共栄会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.40%
日本カストディ銀行(信託口) 4.66%
サンゲツ共栄会 2.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長執行役員は近藤康正氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
近 藤 康 正 代表取締役社長執行役員 三菱商事にて化学品部門等を担当し、中央化学代表取締役社長を経て、2022年に同社入社。2024年4月より現職。
髙 木 史 緒 取締役執行役員スペースプランニング部門ゼネラルマネージャー兼品質企画室長 1997年入社。社長室長、DX推進室長などを歴任し、2023年執行役員就任。2025年4月より現職。
美 根 陽 介 取締役(常勤監査等委員) 1984年入社。執行役員ロジスティクス本部長、常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、浜田道代(名古屋大学名誉教授・元公正取引委員会委員)、宇田川憲一(元東ソー代表取締役社長)、寺田修(元清水建設代表取締役副社長)、大鐘亜樹(元大和ネクスト銀行取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内インテリア」「国内エクステリア」「海外」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 国内インテリアセグメント


壁装材(壁紙)、床材、ファブリック(カーテン・椅子生地)等を主力商材とし、企画・開発から販売までを行っています。また、空間のデザイン・設計から施工までを一貫して手掛ける空間創造事業も展開しており、住宅から非住宅まで幅広い市場に対応しています。

収益は、ハウスメーカーや工務店、内装工事業者等への商品販売代金や、施主等からのデザイン・施工料によって構成されています。運営は主にサンゲツが行い、地域や専門分野に応じてサンゲツ沖縄、サンゲツヴォーヌ、クレアネイト(製造)、クロス企画(物流)、フェアトーン(施工)などのグループ会社が担っています。

(2) 国内エクステリアセグメント


住宅や非住宅の外構空間に向けた門扉、フェンス、カーポート、テラス等のエクステリア商品を幅広く取り扱っています。商品の販売に加えて、外構空間の提案や施工管理機能も提供しており、快適な外部空間づくりをサポートしています。

収益は、建材商社や工事店への商品販売代金や施工料から得ています。運営は、同社の子会社であるサングリーンが担っています。

(3) 海外セグメント


北米、東南アジア、中国・香港を中心に事業を展開しています。北米では壁紙の製造・販売を行い、アジア地域ではインテリア商材の販売に加え、オフィスや商業施設等の空間デザイン・総合内装施工を手掛けています。

収益は、現地の販売代理店や設計事務所、施主等からの商品販売代金および設計・施工料となります。運営は、米国ではKOROSEAL INTERIOR PRODUCTS HOLDINGS, INC.、アジアではGoodrich Global Holdings Pte. Ltd.やD'Perception Pte Ltdなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあります。特にここ数年は価格改定や海外事業の伸長により売上規模が拡大しています。利益面では、2023年3月期に大きく伸長しましたが、直近では原材料費や物流費の高騰などにより利益率はやや低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,453億円 1,495億円 1,760億円 1,899億円 2,004億円
経常利益 70億円 82億円 207億円 197億円 186億円
利益率(%) 4.8% 5.5% 11.8% 10.4% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 -14億円 148億円 133億円 115億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は5.5%増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は4.9%減少しました。特に販管費の増加が利益を圧迫しており、売上総利益率は改善したものの、営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,899億円 2,004億円
売上総利益 590億円 624億円
売上総利益率(%) 31.1% 31.1%
営業利益 191億円 182億円
営業利益率(%) 10.1% 9.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が166億円(構成比37%)、見本帳費が34億円(同8%)を占めています。また、運賃荷造費等を含むその他の経費が203億円(同46%)となっています。

(3) セグメント収益


国内インテリアセグメントは価格改定効果等により増収となりました。海外セグメントは北米事業の好調やM&A効果により大幅な増収となっています。国内エクステリアセグメントも微増収を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
国内インテリア 1,592億円 1,640億円
国内エクステリア 64億円 66億円
海外 243億円 298億円
その他・調整額 0億円 0億円
連結(合計) 1,899億円 2,004億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動によるキャッシュ・フローの創出力向上を目指し、サプライチェーンマネジメントの強化や資金回収の早期化に取り組んでいます。投資活動では、将来の成長を見据え、新工場設立や事業領域拡大のための投資を実行しています。財務活動では、借入れによる資金調達と株主還元をバランス良く実施しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 128億円 193億円
投資CF -18億円 -69億円
財務CF -112億円 -40億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、Purpose(存在意義)として「すべての人と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する。」を掲げています。事業の中心である空間創造を通じて経済価値と社会価値を創出し、これらを実現する未来像をDreamとして定めています。

(2) 企業文化


同社は「誠実」を旨とし、創業の精神を尊重しつつ、変化する事業環境に対応するための「変革」や「挑戦」を重視する文化を持っています。Purposeを形づくる信念(Belief)や社員の姿勢(Way)を定め、社員一人ひとりが企業活動の変革を進める当事者となるよう、ボトムアップでの企業理念浸透に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「BX 2025」では、最終年度である2026年3月期の目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:2,100億円
* 連結営業利益:190億円
* 連結当期純利益:130億円
* ROE:11.5%
* ROIC:14.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「スペースクリエーション企業」への転換を目指し、中核事業(インテリア、エクステリア、海外、空間総合)の深化・変革と、新規事業の探索・創出を推進しています。特に人的資本、デジタル資本、ソリューション提供力、エクステリア・海外事業、社会価値の5つを重要施策と位置付け、成長投資を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の拡大・高度化・活躍支援」を経営の最重要施策と位置付けています。専門性の高いキャリア採用の拡大や、組織別人事担当者の配置によるきめ細かな人材マネジメント、教育・研修の拡充を通じて、社員一人ひとりの成長とエンゲージメント向上を図っています。また、多様な人材が活躍できる職場環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.9歳 15.4年 7,895,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.8%
男性育児休業取得率 116.7%
男女賃金差異(全労働者) 71.3%
男女賃金差異(正規雇用) 74.6%
男女賃金差異(パート・有期) 77.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、非喫煙率(78.6%)、キャリア採用者数(39名)、エンゲージメントスコア(57.7)、障がい者雇用率(3.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境について


同社事業は建設需要の影響を強く受けます。国内の人口減少や少子高齢化に伴う新設住宅着工戸数の減少、建築コストの高騰や人手不足による工期の遅れなどは、市場規模の縮小や需要の減退を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、シェア拡大や価格適正化、エクステリア・海外事業の拡大により対応しています。

(2) 品質管理について


同社の商品は一部を除き外部メーカーに製造を委託しています。そのため、商品の品質不具合が発生した場合、ブランドへの信頼低下や補償費用の発生につながるリスクがあります。これに対し、開発段階でのデザインレビューや仕入先工場の品質監査、クレーム情報の分析・共有を通じて、品質トラブルの未然防止に努めています。

(3) 安定調達・安定供給について


主力商品は見本帳を通じた販売を行っており、有効期間内の安定供給が不可欠です。仕入先工場の火災や生産トラブル等により供給が滞った場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、在庫の確保や代替品の準備、自社グループ工場の能力増強、調達先の分散化などにより、サプライチェーンの強靭化を図っています。

(4) 物流機能について


全国への配送網は同社の強みですが、ドライバー不足や物流コストの上昇(物流2024年問題など)は、配送能力の低下やコスト増につながるリスクがあります。これに対し、物流子会社の活用や荷役作業の省人化、配送体制の最適化などを進め、持続可能で効率的な物流体制の構築に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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