テンアライド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テンアライド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テンアライドは東証スタンダード市場に上場し、「旬鮮酒場天狗」や「テング酒場」「神田屋」など多様な飲食店を多店舗展開する外食企業です。直近の業績は、経済活動の正常化により来店客数が増加し増収となったものの、食材の仕入価格上昇や人件費の高騰が影響し、経常赤字となる減益決算となっています。


※本記事は、テンアライドの有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テンアライドってどんな会社?


テンアライドは「旬鮮酒場天狗」や「神田屋」など多様な業態の飲食店を展開する外食産業の企業です。

(1) 会社概要


1969年に天狗チェーンとして設立し、池袋で1号店「天狗」を開店したのが始まりです。1977年にテンアライドへ社名を変更し、1995年に東証一部(現スタンダード市場)へ上場しました。近年は多様なニーズに応えるため、「テング酒場」「神田屋」「てんぐ大ホール」など新たな業態の開発と転換を推進しています。

現在の従業員数は連結、単体ともに261名です。筆頭株主は同社の代表取締役会長である飯田永太氏で、第2位は岡永、第3位は山内薫氏となっています。

氏名 持株比率
飯田 永太 9.41%
岡永 3.61%
山内 薫 3.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
飯田 健太 代表取締役社長 2007年サッポロビール入社。2012年同社に入社し、関東城西事業部長や仕入部長などを歴任。2019年に代表取締役専務へ就任し、マーケティング本部長兼海外戦略室長を経て2025年6月より現職。
飯田 永太 代表取締役会長 1976年東京海上火災保険入社。1978年に同社へ入社し、1988年より代表取締役社長として長年同社を牽引。テンワールドトレーディング代表取締役社長などを兼任し、2025年6月より現職。
芳澤 聡 専務取締役管理本部長兼経営企画室長兼海外戦略室長 1996年同社入社。関東中央事業部長や人事・労務担当部長などを経て、2014年取締役人事部長に就任。2022年常務取締役管理本部長兼経営企画室担当を経て、2025年6月より現職。
藤岡 慶 常務取締役マーケティング本部長兼店舗開発本部長 1999年同社入社。関東南部や中部の事業部長などを歴任し、2018年取締役和食営業企画部長兼新業態立上担当に就任。マーケティング本部営業企画担当を経て2025年6月より現職。
吉田 守 取締役関東セントラルキッチン所長 1993年同社入社。旬鮮営業企画部長などを経て、2018年取締役に就任しテング酒場営業企画部長や仕入部長を兼務。2019年関東セントラルキッチン所長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、宗宮英恵(のぞみ総合法律事務所入所)、細見真智子(マクロミルCFOオフィス室長)です。

2. 事業内容


同社グループは、飲食店の経営を営む外食産業およびその補完的事業を展開し、単一のセグメントとして事業を行っています。

飲食店経営関連


同社グループは、「旬鮮酒場天狗」「和食れすとらん天狗」「テング酒場」「神田屋」「てんぐ大ホール」など、多様な業態の飲食店を多店舗展開しています。また、これらの店舗運営を補完する事業として、酒類や食料品などの輸入販売も手掛けています。

主な収益源は、直営店舗において来店客に飲食サービスを提供することで得られる代金です。店舗の運営は同社が行っており、関連する酒類や食料品などの輸入販売は連結子会社のテンワールドトレーディングが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は新型コロナウイルスの影響から回復し、経済活動の正常化や新規出店により増加傾向が続いています。一方、利益面では黒字化を達成した期間もありましたが、原材料価格や人件費の高騰による影響を大きく受け、直近では再び経常赤字となる厳しい事業環境となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 48億円 95億円 111億円 119億円 121億円
経常利益 -3億円 -9億円 2億円 2億円 -1億円
利益率(%) -6.0% -9.1% 1.5% 1.9% -1.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -3億円 -11億円 0.3億円 1億円 -5億円

(2) 損益計算書


売上高は前年を上回ったものの、売上総利益は微減となり、売上総利益率も低下しています。営業利益は前年の黒字から赤字へと転落し、利益確保に苦戦している状況が読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 119億円 121億円
売上総利益 85億円 85億円
売上総利益率(%) 71.6% 70.2%
営業利益 2億円 -1億円
営業利益率(%) 2.0% -1.0%


販売費及び一般管理費のうち、パートやアルバイトなどの雑給が26億円(構成比30.0%)、地代家賃が16億円(同18.3%)、給料及び手当が13億円(同14.7%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラスを確保していますが大幅に減少しており、その中で新規出店や改修等の設備投資(投資CFマイナス)を実施し、借入金の返済等(財務CFマイナス)を進める健全型のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3億円 0.5億円
投資CF -2億円 -3億円
財務CF -7億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.3%で、市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「食を通して『驚き』と『感動』を」という企業理念を掲げています。顧客が感じる驚きと感動が企業価値を決めるという考えのもと、常に日々の行いを自問自答し、謙虚に顧客の声に応えることを使命としています。食の先駆者として、持続可能な社会の発展に対する貢献と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


行動指針を決定する価値基準として、「お客様への四つの誓い(良いものを安く、早く、清潔に、最高の雰囲気で)」を基本理念に掲げています。また、「顧客満足は従業員満足から」という信念のもと、社員一人ひとりの成長の先に企業の発展があると考え、自律と成長を促すフラット型組織へ移行するなど、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(3) 経営計画・目標


目標とする経営指標として、株主に対する利益配当を経営の重要課題と位置付けています。具体的には、第一に1株当たりの当期純利益と株主資本利益率の増加、第二にキャッシュ・フローの増加を目指す方針を掲げています。短期的な利益確保だけでなく、中長期的な収益基盤の強化に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


ライフスタイルの変化に対応するため、既存の大型店舗における複数ブランド展開での小型店舗化や、業態転換による収益構造の改善を進めています。また、テーブルオーダーシステムなどのIT機器整備による店舗オペレーションの効率化や、プライベートブランド商品の拡大、セントラルキッチンでの自社製品の販売拡大にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営戦略の実現に向けた原動力を「人」とし、「多能工型人財」の育成や「自律型リーダー」の輩出を最優先課題としています。外国籍人材の日本語教育プログラムや特定技能2号取得支援、パート・アルバイトから正社員への積極的登用などを進めるほか、成果連動型の報酬制度を通じて従業員のエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.0歳 13.5年 6,158,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 63.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 97.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障害者雇用の割合(2.2%)、外国人労働者の割合(32.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食材調達と価格高騰のリスク


天候不順や異常気象、国際情勢の悪化に伴い、米や野菜、魚介類などの農水産物の不作や価格高騰が発生するリスクがあります。これにより食材の仕入価格が上昇し、安定的な調達が困難になった場合、利益が圧迫され業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食の安全と衛生管理に関わるリスク


外食産業において食の安全確保は最重要課題です。同社は衛生監査や細菌検査を全店で実施するなど管理を徹底していますが、万が一食中毒などの事故が発生した場合、営業停止や営業許可の取消し、信用の低下により業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材確保と人件費の上昇リスク


外食産業全体で深刻化する人手不足や人件費の高騰に直面しています。採用活動の強化など各種対策を実施していますが、必要とする十分な人材が確保できない場合や、関連法令の変更などで労働環境が変化し人件費が想定以上に増加した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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