青山商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

青山商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

青山商事は東京証券取引所プライム市場に上場しており、ビジネスウェア事業を中核に、カード、印刷・メディア、総合リペアサービス、フランチャイジーなど多様な事業を展開しています。直近の業績では、主力のビジネスウェア事業がカジュアル化などの影響で苦戦し、全体として減収減益の決算となっています。


※本記事は、青山商事株式会社の有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 青山商事ってどんな会社?


同社はビジネスウェアの販売を中核に、多角的な事業展開で生活者のライフスタイルを支援しています。

(1) 会社概要


1964年に広島県府中市で設立され、1974年に郊外型紳士服専門店「洋服の青山」の1号店を開店しました。1992年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2000年には「ザ・スーツカンパニー」を出店しました。2015年には総合リペアサービスを展開するミニット・アジア・パシフィックを子会社化しています。

現在の従業員数は連結で6,666名、単体で2,856名体制です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行であり、第2位はHK、第3位も同様に資産管理業務を行う日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.49%
HK 8.00%
日本カストディ銀行(信託口) 5.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は遠藤泰三が務めており、取締役6名のうち社外取締役は3名です。

氏名 役職 主な経歴
青山理 代表取締役会長 1981年に同社に入社後、商品本部長や営業本部長などを歴任しました。2005年に代表取締役社長に就任し、2025年6月より現職。
遠藤泰三 代表取締役社長兼執行役員社長兼OMOリテール本部長 1990年に同社に入社後、人事部長や管理本部長などの要職を歴任しました。2025年4月に執行役員社長となり、2025年6月より現職。
小川誠 取締役兼専務執行役員 1993年に同社に入社後、人事部長や関連事業室長などを歴任しました。2025年4月に専務執行役員となり、2025年6月より現職。


社外取締役は、小林宏明(日東製網代表取締役)、加賀美由加里(元ランバン・ジャパン社長)、野上昌樹(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビジネスウェア事業」「カード事業」「印刷・メディア事業」「雑貨販売事業」「総合リペアサービス事業」「フランチャイジー事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

ビジネスウェア事業


国内の一般消費者向けにメンズおよびレディースのビジネスウェアや関連洋品の販売を行っています。また、既製服の補正加工や店舗演出物の企画、販売消耗品の企画なども手掛けており、自社工場での製造と供給も行っています。

主な収益源は、店舗やオンラインでのビジネスウェアの販売代金です。事業の運営は主に青山商事が担い、補正加工はブルーリバース、製造・供給は服良などが担当しています。

カード事業


小口金融やクレジットカードサービスの提供を行っています。主に同社グループの顧客に対する決済手段の提供や金融サービスの展開を通じて、顧客の利便性向上を支援しています。

クレジットカードの利用に伴う手数料や年会費、金融サービスの提供による利息などが主な収益源となっています。事業の運営は青山キャピタルが行っています。

印刷・メディア事業


全国の流通小売業を中心とした顧客に向けて、販売促進を支援する多様なサービスを提供しています。チラシやカタログなどの印刷物の企画・制作から発送までを幅広く担っています。

顧客となる小売企業などからの印刷物の制作代金やプロモーション支援の対価が主な収益源です。この事業の運営はアスコンが担当しています。

雑貨販売事業


日用雑貨品や加工食品の販売を行っています。大創産業と販売代理店契約を締結し、100円ショップ「ダイソー」の店舗を複数展開して一般消費者に商品を提供しています。

店舗での雑貨や食品の販売代金が主な収益源となっています。事業の運営は青五が行っています。

総合リペアサービス事業


日本やオーストラリア、ニュージーランドなどのアジア太平洋地域において、一般消費者に向けた靴の修理や鍵の複製など、生活に密着した各種リペアサービスを提供しています。

顧客からの修理サービスや鍵複製などのサービス提供に対する利用料金が主な収益源です。事業の運営はミニット・アジア・パシフィックが担っています。

フランチャイジー事業


外食産業を中心としたフランチャイズ店舗の運営を行っています。「焼肉きんぐ」や「ゆず庵」などの飲食店に加え、フィットネスジムやリユースショップなども展開しています。

店舗を利用する顧客からの飲食代金やサービス利用料、商品の購入代金が主な収益源です。事業の運営はglobが行っています。

不動産事業


所有する不動産および賃貸借不動産の総合的な管理や、転貸借に関する事業を展開しています。自社の店舗網を活用し、物件の有効活用を図っています。

他社への不動産の賃貸や転貸による賃貸収入が主な収益源となっています。この事業の運営は青山商事が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、ウェブメディアの運営などを行っています。生活者向けの各種情報発信を通じて新たな価値の提供を目指しています。

ウェブメディア事業からの広告収入などが主な収益源となっています。事業の運営はカスタムライフが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復過程で売上高と利益は順調に拡大していましたが、直近の期間では市場のカジュアル化や猛暑などの影響により減収減益に転じています。利益率も改善傾向から一服しており、事業環境の変化への対応が課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1660億円 1856億円 1937億円 1957億円 1890億円
経常利益 52億円 87億円 125億円 126億円 109億円
利益率(%) 3.1% 4.7% 6.5% 6.5% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 23億円 77億円 85億円 51億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、価格の見直しや値引きの抑制により売上総利益率は上昇しています。一方で、事業規模の維持に伴うコスト負担が相対的に重くなり、営業利益および営業利益率は低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1957億円 1890億円
売上総利益 1006億円 982億円
売上総利益率(%) 51.4% 51.9%
営業利益 126億円 106億円
営業利益率(%) 6.4% 5.6%


販売費及び一般管理費(876億円)のうち、給料手当が276億円(構成比32%)、賃借料が165億円(同19%)、広告宣伝費が95億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるビジネスウェア事業は市場のカジュアル化などの影響で減収となりましたが、カード事業やフランチャイジー事業、総合リペアサービス事業などは増収となり、多角化された事業基盤が売上の下支えに貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ビジネスウェア事業 1330億円 1242億円
カード事業 53億円 55億円
印刷・メディア事業 82億円 82億円
雑貨販売事業 151億円 153億円
総合リペアサービス事業 140億円 145億円
フランチャイジー事業 162億円 175億円
不動産事業 28億円 27億円
その他 11億円 10億円
連結(合計) 1957億円 1890億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.9%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 138億円 100億円
投資CF 57億円 -88億円
財務CF -211億円 -190億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「持続的な成長をもとに、生活者への小売・サービスを通じてさらなる社会への貢献を目指す」ことをグループ経営理念として掲げています。社会との共通価値を創造し、持続可能な社会の実現に向けて、すべてのステークホルダーへの貢献を重視した事業運営を行っています。

(2) 企業文化


同社は、「働く人のために働こう」とする「青山マインド」を基本軸とした使命と行動原則を掲げています。働く人を応援し、社会を明るく元気にしていくとともに、一人でも多くの青山ファンを増やしていくことで、持続的に企業価値を高めていくことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期を最終年度とする中期経営計画において、財務目標として以下の数値を設定し、持続的な成長を目指しています。また、非財務指標としてCO2排出量の削減や女性管理職比率の向上、Sedex登録工場数の目標なども掲げて経営を推進しています。

* 連結売上高:2100億円
* 連結営業利益:170億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:126億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、既存店の収益力の維持・向上、新規出店によるシェア拡大、利益重視経営の推進、グループガバナンスの強化、サステナビリティへの取組みという5つの基本戦略を推進しています。市場のカジュアル化による客数減少という課題に対しては、「みんなのスーツ」や「みんなのシリーズ」を軸にブランディングを強化し、新たな顧客接点の創出と変化するニーズへの迅速な対応を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を最大の経営資本と定め、育成・評価・処遇を通じて個々の成長やチャレンジ意欲を促し、高い競争力を実現するとともに従業員の豊かな人生を創成する」という人事基本理念を定めています。具体的な戦略として、「機動的な人材ポートフォリオの構築」「個の能力の最大化」「外部専門人材の積極的な登用」を重点テーマに掲げ、次世代経営人材や自律型人材の育成などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.7歳 14.2年 5,091,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.1%
男性育児休業取得率 86.0%
男女賃金差異(全労働者) 53.0%
男女賃金差異(正規雇用) 55.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 153.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用における女性比率(51.9%)、役職者に占める女性割合(40.3%)、エンゲージメント診断スコア(4.95)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 天候や景気変動による消費低迷


ビジネスウェア事業は、国内外の景気や個人の消費動向、さらには猛暑や暖冬といった異常気象による影響を大きく受けます。これらの要因によって販売動向が左右され、同社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) ビジネスウェア市場の競争激化


主要商品であるビジネスウェアは、価格および品揃えの両面で厳しい競争にさらされています。競合他社からの新商品発売や新規参入の増加に加え、オフィスウェアのカジュアル化などのニーズの変化への対応が遅れた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 顧客情報の漏洩に伴う信用低下


各事業において顧客の個人情報を含む機密情報を多数保有しており、情報の保管や利用について厳格な管理を行っています。しかし、サイバー攻撃やシステム障害などにより情報の漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償の発生により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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