※本記事は、株式会社丸井グループ の有価証券報告書(第88期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 丸井グループってどんな会社?
小売とフィンテックを融合させた独自のビジネスモデルを展開し、すべての人がしあわせを感じられる社会の共創をめざす企業です。
■(1) 会社概要
1931年に家具の割賦販売業として創業し、1937年に法人へ改組しました。1960年には日本初のクレジットカードを発行し、1965年に東京証券取引所市場第一部へ指定されています。2006年に「エポスカード」の発行を開始し、翌2007年には持株会社体制へ移行して現商号となりました。2018年にはtsumiki証券を設立し、金融サービスの幅を広げています。
2024年3月31日現在の連結従業員数は4,290名、単体では270名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様の信託銀行です。第3位は創業家の資産管理会社である青井不動産です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 22.98% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 13.15% |
| 青井不動産 | 3.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長代表執行役員は青井浩氏です。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青井 浩 | 代表取締役社長代表執行役員 | 1986年同社入社。常務取締役営業本部長、代表取締役副社長等を経て2005年より社長。2019年より現職。 |
| 加藤 浩嗣 | 取締役常務執行役員 | 1987年同社入社。経営企画部長、IR部長、上席執行役員CDO等を歴任。2024年2月より現職。 |
| 小島 玲子 | 取締役上席執行役員 | 2000年古河電気工業専属産業医。2011年同社専属産業医。ウェルネス推進部長等を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、岡島悦子(プロノバ代表取締役社長)、中神康議(みさき投資代表取締役社長)、ピーター D.ピーダーセン(大学院大学至善館専任教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売」「フィンテック」事業を展開しています。
■(1) 小売
商業施設の賃貸・運営管理、衣料品・装飾雑貨等の仕入販売、空間プロデュース、広告宣伝、物流、ビルマネジメント等を行っています。顧客は店舗に来店する消費者やテナント企業です。店舗を「オンラインとオフラインの融合」のプラットフォームと位置づけ、体験型テナントやイベントの導入を進めています。
収益源は、商業施設の定期借家テナント収入、商品売上高、消化仕入売上高、受託販売手数料、関連事業収入などです。運営は主に株式会社丸井、株式会社エイムクリエイツ、株式会社ムービング、株式会社マルイファシリティーズなどの連結子会社が行っています。
■(2) フィンテック
クレジットカード業務、カードキャッシング、家賃保証、情報システムサービス、不動産賃貸、投資信託の販売、保険業等を行っています。エポスカード会員や加盟店を主な顧客とし、家賃払いやEC決済などの家計シェア最大化に取り組んでいます。
収益源は、加盟店手数料、リボ・分割払い手数料、キャッシング利息、家賃保証料、年会費などです。運営は主に株式会社エポスカード、株式会社エムアールアイ債権回収、株式会社マルイホームサービス、tsumiki証券株式会社、株式会社エポス少額短期保険などの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2020年3月期から2024年3月期までの推移を見ると、売上収益は2021年3月期に減少しましたが、その後は回復基調にあり、2024年3月期には2,352億円となりました。経常利益もコロナ禍の影響を受けた2021年3月期以外は300億円台後半から400億円台で推移し、安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,476億円 | 2,062億円 | 2,093億円 | 2,179億円 | 2,352億円 |
| 経常利益 | 404億円 | 145億円 | 355億円 | 364億円 | 388億円 |
| 利益率(%) | 16.3% | 7.0% | 17.0% | 16.7% | 16.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 254億円 | 23億円 | 178億円 | 215億円 | 247億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上収益の増加に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は87%台の高い水準を維持しています。営業利益も増益となりましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益率はやや低下しました。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2,179億円 | 2,352億円 |
| 売上総利益 | 1,917億円 | 2,056億円 |
| 売上総利益率(%) | 88.0% | 87.4% |
| 営業利益 | 388億円 | 410億円 |
| 営業利益率(%) | 17.8% | 17.4% |
販売費及び一般管理費のうち、ポイント引当金繰入額が356億円(構成比22%)、その他が338億円(同21%)、給料及び手当が268億円(同16%)を占めています。売上原価については内訳の詳細な金額記載はありません。
■(3) セグメント収益
小売セグメントは、店舗客数の増加やテナント導入による収益改善で売上・利益ともに増加しました。フィンテックセグメントは、取扱高の伸長により増収となりましたが、ポイント費用等の増加で利益は横ばいとなりました。
| 区分 | 売上(2023年3月期) | 売上(2024年3月期) | 利益(2023年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小売 | 758億円 | 773億円 | 36億円 | 70億円 | 9.0% |
| フィンテック | 1,506億円 | 1,671億円 | 425億円 | 424億円 | 25.3% |
| 調整額 | -86億円 | -92億円 | -73億円 | -83億円 | - |
| 連結(合計) | 2,179億円 | 2,352億円 | 388億円 | 410億円 | 17.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
丸井グループでは、収益性・健全性の指標として、営業キャッシュ・フローから営業債権等の増減を控除した基礎営業キャッシュ・フローを重視しています。
営業活動では、カードクレジット取扱高の拡大に伴う営業債権の増加などにより、営業キャッシュ・フローは支出となりました。投資活動では、固定資産や投資有価証券の取得により、投資キャッシュ・フローは支出となりました。財務活動では、有利子負債の増加があった一方、自己株式の取得や配当金の支払いなどにより、財務キャッシュ・フローは収入となりました。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 167億円 | 380億円 |
| 投資CF | -224億円 | -183億円 |
| 財務CF | 183億円 | -79億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客さまのお役に立つために進化し続ける」「人の成長=企業の成長」という経営理念を掲げています。この理念に基づき、すべての人が「しあわせ」を感じられるインクルーシブな社会をステークホルダーと共に創ることをミッションとしています。
■(2) 企業文化
「対話の文化」や「手挙げの文化」を重視し、社員一人ひとりの自主性を促すことでイノベーションを創出する企業文化を醸成しています。また、自らを「社会実験企業」と位置づけ、「失敗を許容し、挑戦を奨励する」ことで、成功のためのノウハウを蓄積する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の財務目標を掲げています。
* EPS:200円以上
* ROE:13%以上
* ROIC:4%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
小売、フィンテックに「未来投資(共創投資・新規事業投資)」を加えた三位一体のビジネスモデルを推進しています。小売では店舗を「売らない店」や「イベントフルな店」へ転換し、体験価値を提供します。フィンテックでは、家賃払いやEC決済などを中心に家計シェアの最大化を図り、取扱高の拡大をめざしています。未来投資では、サステナビリティやWell-beingなどのインパクトと利益の両立に向けたイノベーション創出に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人の成長=企業の成長」の理念のもと、人的資本投資を重視しています。社員が自ら手を挙げて参画する「手挙げの文化」をベースに、グループ会社間の職種変更異動や、公認プロジェクト等の機会を提供し、自律的なキャリア形成を支援しています。また、プロジェクト型組織や早期管理職登用を通じ、イノベーションを創出しやすい組織づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 39.4歳 | 15.5年 | 6,341,400円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 22.4% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 77.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 72.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 91.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の上位職志向(58%)、男性の産休取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 小売・フィンテック環境に関するリスク
人口減少や個人消費の低迷、競合の発生、EC市場拡大、キャッシュレス化に伴う決済手段の多様化などが、店舗入店客数や取扱高の減少、市場シェアの縮小をもたらす可能性があります。また、不動産市況の悪化による空室率上昇や、経済状況悪化による貸倒損失の増加などが業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 共創投資に関するリスク
社外からのイノベーション導入を目的に共創投資を推進していますが、対象企業における未認識の問題の発生や、事業成績の悪化、株式市場の変動などにより、期待する成果が得られず、減損損失が発生する可能性があります。十分な事前審査を行っていますが、投資効果には不確実性があります。
■(3) 気候変動に関するリスク
台風・豪雨等の水害による店舗・施設の被害や、規制強化に伴う炭素税導入による費用増加のリスクがあります。物理的リスクとして店舗休業による賃貸収入減少や建物被害、移行リスクとしてエネルギーコスト増加や増税などが想定されており、これらが顕在化した場合には、財務状況および業績に影響を与える可能性があります。



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