Joshin 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Joshin 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、家電製品等の小売業並びにこれらの付帯業務を主要事業としています。2025年3月期の連結業績は、売上高4,033億円(前期比微減)、営業利益37億円(同56%減)、親会社株主に帰属する当期純利益34億円(同30%減)の減益となりました。


※本記事は、上新電機株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

なお、同社は現在、株式会社Joshinに商号変更しています。

1. 上新電機ってどんな会社?


関西を地盤とする家電量販店「Joshin」を運営し、リアル店舗とECの連携で事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1948年に上新電気商会として創業し、1950年に設立されました。1972年に大証二部、1985年に東証一部へ上場しています。2025年6月の株主総会承認を経て、2026年4月に商号を「Joshin」へ変更する予定です。

連結従業員数は4,295名、単体では3,741名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は上新電機社員持株会、第3位は日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.55%
上新電機社員持株会 6.75%
日本カストディ銀行 (信託口) 4.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性4名の計8名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役兼社長執行役員は高橋徹也氏です。社外取締役比率は75.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高橋 徹也 代表取締役社長執行役員 1986年同社入社。関西営業部、営業本部長等を経て、2021年代表取締役兼専務執行役員。2025年6月より現職。
金谷 隆平 代表取締役会長 1979年同社入社。経営企画本部長、代表取締役副社長等を経て、2019年代表取締役兼社長執行役員。2025年6月より現職。


社外取締役は、山平恵子(元サンヨーホームズ社長)、河野純子(元リクルート)、西川清二(元ドコモ・システムズ社長)、内藤欣也(弁護士)、吉川和美(公認会計士)、大槻和子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「家電製品等の小売業並びにこれらの付帯業務」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 家電製品等の小売事業(コア事業)


関西・東海・関東・北信越エリアを中心に「Joshin」などの店舗を展開する「リアル店舗」と、インターネットショップ「Joshin webショップ」を運営する「EC」事業が連携し、家電製品、情報通信機器、エンタテインメント商品、住宅設備機器などを一般消費者向けに販売しています。

収益は、顧客への商品販売代金やリフォーム工事代金等が主な源泉です。運営は主に上新電機が行っていますが、ジェー・イー・ネクストがエンタテインメント専門店を運営し、J・P・S商事が販売業務の一部を担っています。また、東海ジョーシンなどの地域子会社へ店舗運営の一部を委託しています。

(2) サービスインフラ・その他付帯事業


商品の販売に伴う配送、据付、修理、保守、情報通信機器の取付・設定、保険代理店業務、長期修理保証制度に関する業務など、顧客のアフターサービスやサポートを行っています。また、FC契約締結先への商品供給や経営指導も行っています。

収益は、配送・工事・修理等のサービス料、保険手数料などが源泉です。運営は、ジョーシンサービスが配送・工事・修理等を、ジャプロが通信機器設定を、ジョーシンテックが保険・保証関連業務を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上高は2021年3月期の4,491億円をピークに減少傾向にあり、直近は4,033億円となっています。利益面では、経常利益が2021年3月期の166億円から減少が続き、2025年3月期は35億円まで低下しました。利益率も低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,491億円 4,095億円 4,085億円 4,037億円 4,033億円
経常利益 166億円 97億円 83億円 83億円 35億円
利益率(%) 3.7% 2.4% 2.0% 2.0% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 69億円 62億円 43億円 38億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高は前期とほぼ横ばいですが、売上総利益が減少し、売上総利益率も低下しています。営業利益は前期の84億円から37億円へと半減以下となり、営業利益率も0.9%に低下しました。販売費及び一般管理費の増加などが利益を圧迫している状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,037億円 4,033億円
売上総利益 1,051億円 1,022億円
売上総利益率(%) 26.0% 25.3%
営業利益 84億円 37億円
営業利益率(%) 2.1% 0.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が255億円(構成比26%)、物流費が143億円(同15%)、賃借料が137億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントのため、連結の数値を記載します。売上高は微減となりましたが、利益面では大幅な減益となりました。家電カテゴリの販売低迷や、将来に備えた人的資本・システム関連への投資継続による販管費の増加が主な要因です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
連結(合計) 4,037億円 4,033億円 84億円 37億円 0.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示します。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却など、将来の事業基盤強化に向けた資金の動きを表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する動きを示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 23億円 164億円
投資CF -48億円 -18億円
財務CF 36億円 -107億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、長期的な視点で未来を考え、2030年にあるべき姿「地域社会の成長を支え、人と環境の未来に貢献する企業」の実現を目指し、経営理念を「人と社会の未来を笑顔でつなぐ」と定めています。また、経営ビジョンとして「家電とICTの力で生活インフラのHubになる」を掲げています。

(2) 企業文化


同社は、理念体系の根幹である社是「愛」(常に相手の立場に立って考え行動する)の基本精神を重視しています。この精神に基づき、「持続可能で誰ひとり取り残さない社会」を未来世代に引き継ぐことを目指し、お客様をはじめとするすべてのステークホルダーからの親しみの気持ちや創業の精神を大切にする風土があります。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画「JT-2025 経営計画」を推進しており、「お客さまの暮らしに寄り添う『コンシェルジュ』へ」をスローガンに掲げています。最終年度の数値目標は以下の通りです。
* 売上高:4,200億円
* 営業利益:110億円
* 売上高営業利益率:2.6%
* ROE:8.0%以上
* ROA:5.0%以上
* ROIC:5.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「ファンベース戦略」の実践とジョーシン経済圏の拡充を骨子とし、量の拡大から質の向上への変革を図ります。具体的には、既存店の販売力強化とスクラップアンドビルド、ECとのシナジー効果の追求、物流・サービスインフラの拡充を推進します。また、「電機」の枠にとらわれない柔軟な組織体制への移行を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きやすさ」を「働きがい」へ、そして「従業員オーナーシップ」「従業員エンゲージメント」へと高める戦略を推進しています。多様な人材の確保に加え、パートタイム従業員の正社員登用、成長分野への人材配置を行います。また、「家電製品アドバイザー」等の資格取得推進やDX教育により専門性を高め、自律的成長を支援します。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.6歳 18.6年 5,948,000円


※平均年間給与には賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.8%
男女賃金差異(正規雇用) 72.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、家電製品アドバイザー(AV情報家電)資格保有者数(1,983名)、家電製品アドバイザー(生活家電)資格保有者数(2,090名)、スマートマスター資格保有者数(1,617名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 季節商品への依存と気象条件の影響


同社が取り扱う冷蔵庫・エアコン・暖房機などの家電製品は、季節感との相関関係が強く、特に夏や冬の天候によって売上が大きく左右されます。冷夏や暖冬などの天候不順が発生した場合、主力商品の販売が伸び悩み、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 顧客情報の管理とサイバーセキュリティ


ポイントカード発行等により大量の顧客情報を保有しているため、サイバー攻撃や不正アクセスによる情報漏洩リスクがあります。万が一、情報の流出やシステムの破壊が発生した場合、社会的信用の低下や業務停止による損害が生じ、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人財の確保と育成


事業活動は人材に大きく依存していますが、少子高齢化による労働人口の減少や採用難が進行しています。優秀な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、または労働需給の逼迫により人件費が増加した場合、事業運営や店舗展開に支障をきたし、成長戦略の実現が困難になる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。