※本記事は、株式会社クレディセゾンの有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. クレディセゾンってどんな会社?
同社はペイメント事業を中核に、金融をコアとした総合生活サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1951年に設立され、1981年にセゾングループのクレジット・ファイナンス基幹会社としてスタートしました。1982年にセゾンカードを発行し、1989年に現在のクレディセゾンに商号変更しています。近年はインドや東南アジアを中心としたグローバル展開も加速させています。
同社の従業員数は連結で6,346名、単体で3,446名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。第3位には、総合金融サービスの開発や提供を目的とした資本業務提携を締結している大和証券グループ本社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 24.56% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 11.37% |
| 大和証券グループ本社 | 5.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役会長CEOは林野宏氏、代表取締役(兼)社長執行役員COOは水野克己氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林野宏 | 代表取締役会長CEO | 1965年西武百貨店入社。1982年同社入社。2000年代表取締役社長を経て、2019年より現職。 |
| 水野克己 | 代表取締役(兼)社長執行役員COO | 1992年同社入社。セゾンカード部長、海外事業部長などを歴任し、2021年より現職。 |
| 高橋直樹 | 代表取締役(兼)副社長執行役員CHO | 1974年富士銀行入行。2005年同社入社。専務取締役などを経て、2020年より現職。 |
| 小野和俊 | 取締役(兼)専務執行役員CDO(兼)CTO | 1999年サン・マイクロシステムズ入社。アプレッソ代表取締役社長等を経て、2019年同社入社。2023年より現職。 |
| 森航介 | 取締役(兼)専務執行役員 | 2000年日本興業銀行入行。2013年同社入社。グローバル事業部長等を経て、2022年より現職。 |
| 中山直喜 | 取締役(兼)常務執行役員 | 1989年清水建設入社。モルガン・スタンレー証券等を経て、2014年同社入社。2023年より現職。 |
| 足利駿二 | 取締役(兼)常務執行役員 | 1994年ユーシーカード入社。2006年同社入社。セゾンAMEX事業部長等を経て、2024年より現職。 |
| 加藤広亮 | 取締役(非常勤) | 1989年日本生命保険入社。ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、2023年スルガ銀行代表取締役社長。同年より現職。 |
社外取締役は、横倉仁氏(早稲田リーガルコモンズ法律事務所弁護士)、坂口英治氏(シービーアールイー代表取締役会長(兼)CEO)、干場弓子氏(BOW&PARTNERS代表取締役社長)、牧山浩三氏(元パルコ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ペイメント事業」「リース事業」「ファイナンス事業」「不動産関連事業」「グローバル事業」「エンタテインメント事業」の報告セグメントを展開しています。
■(1) ペイメント事業
クレジットカード事業やサービサー(債権回収)事業を展開しています。高稼働・高単価の顧客基盤の構築や、法人向けのビジネスカード提供に注力しています。
顧客である加盟店からの手数料や、カード会員からのリボルビング払い等の手数料、年会費などを主な収益源としています。同社を中心に、セゾンファンデックスやセゾン債権回収などのグループ各社が運営を行っています。
■(2) リース事業
事業者の設備投資計画に合わせ、OA通信機器を中心としたファイナンスリースや、厨房機器のメンテナンス付きリースなどを提供しています。
顧客へのリース取引から生じる利息相当額を収益源としています。リース契約残高に対する手数料等を受け取っており、同社が主体となって運営を行っています。
■(3) ファイナンス事業
金融機関向けのフリーローンや住宅ローン保証などを提供する信用保証事業と、「フラット35」や投資用不動産向けローンなどを提供するファイナンス関連事業を展開しています。
提携金融機関が融資する際の債務保証に伴う保証料や、顧客に直接金銭を貸し付ける際の利息、債権管理業務手数料等を収益源としています。同社やセゾンファンデックスなどが運営を行っています。
■(4) 不動産関連事業
不動産物件の販売事業や、不動産賃貸事業を展開しています。堅調な市況を背景に、賃貸物件などの運用・販売を行っています。
不動産物件の引き渡し時に得られる販売収益や、保有する不動産からの賃貸料収入を主な収益源としています。セゾンファンデックスやセゾンリアルティなどのグループ各社が運営を行っています。
■(5) グローバル事業
インド、東南アジア、ラテンアメリカ地域を中心に、現地のアンダーサーブド層をターゲットとしたレンディング(貸付)事業と、有望なスタートアップ等へのインベストメント(投資)事業を展開しています。
顧客への貸し付けから生じる金利収益や、金融資産の投資・評価から生じる運用益を主な収益源としています。Saison International Pte. Ltd.などの現地法人を通じて運営を行っています。
■(6) エンタテインメント事業
遊技場の運営を中心としたアミューズメント事業や、チケット販売などのエンタテインメント関連事業を展開しています。
店舗における役務提供や各種ライブ・公演に関連するサービス提供に伴う対価を収益源としています。コンチェルトやイープラスなどの関連会社が運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近5年間で継続して拡大し、堅調な成長を遂げています。一方、税引前利益は2024年3月期をピークに減少傾向にあり、投資評価損やアミューズメント事業の損失計上等の影響により、直近では利益率も低下傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,990億円 | 3,226億円 | 3,616億円 | 4,228億円 | 4,728億円 |
| 税引前利益 | 499億円 | 610億円 | 980億円 | 928億円 | 900億円 |
| 利益率(%) | 16.7% | 18.9% | 27.1% | 21.9% | 19.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 354億円 | 436億円 | 730億円 | 664億円 | 617億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の収益動向を見ると、売上収益は前期から約500億円増加し、順調なトップライン成長を実現しています。一方、利益面を示す項目は開示フォーマットの都合上記載がありませんが、事業規模の拡大が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,228億円 | 4,728億円 |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が337億円(構成比12.3%)、貸倒引当金繰入額が312億円(同11.4%)、従業員給料及び賞与が245億円(同8.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のペイメント事業は、高稼働・高単価顧客の獲得やリボルビング払い手数料改定が寄与し、増収増益となりました。ファイナンス事業や不動産関連事業も好調に推移しましたが、グローバル事業はインベストメント事業での評価損計上などにより損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ペイメント | 2,528億円 | 2,772億円 | 301億円 | 306億円 | 11.0% |
| リース | 133億円 | 148億円 | 41億円 | 47億円 | 31.8% |
| ファイナンス | 726億円 | 827億円 | 389億円 | 473億円 | 57.2% |
| 不動産関連 | 283億円 | 313億円 | 163億円 | 192億円 | 61.3% |
| グローバル | 515億円 | 624億円 | 34億円 | -14億円 | -2.2% |
| エンタテインメント | 67億円 | 70億円 | 14億円 | 26億円 | 37.1% |
| 調整額 | -24億円 | -27億円 | -6億円 | -10億円 | - |
| 連結(合計) | 4,228億円 | 4,728億円 | 936億円 | 1,020億円 | 21.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に営業債権及びその他の債権の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2,492億円 | -1,357億円 |
| 投資CF | -153億円 | -269億円 |
| 財務CF | 2,973億円 | 1,391億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は12.5%となっており、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「サービス先端企業」として、「顧客満足主義の実践」「取引先との相互利益の尊重」「創造的革新の社風創り」の3点を共通の価値観として浸透させ、競争に打ち勝ち、お客様、株主、そしてすべての取引先の期待に添うようにチャレンジを続け社会的責任を果たすことを掲げています。
■(2) 企業文化
「オープン・フランク・イノベーティブ」な企業文化のもと、若手社員にも裁量権のある仕事を任せ、失敗を恐れず挑戦できる環境を重視しています。また、変化を楽しみ価値創造にチャレンジし続けられる多様な人材を「夢中力人材」と定義し、社員の自律的な成長を後押しする風土の醸成に注力しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に目指す姿として「GLOBAL NEO FINANCE COMPANY〜金融をコアとしたグローバルな総合生活サービスグループ〜」を掲げています。企業価値の向上にあたり、財務の健全性維持を優先課題とし、連結事業利益とROEを重要指標としています。
* 中長期的な親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE):10%超
* 2027年3月期の連結事業利益:1,100億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「Innovative」「Digital」「Global」を基本コンセプトとし、提携先との「セゾン・パートナー経済圏」の確立と事業シナジーによる価値創造を目指しています。ペイメント事業の持続的成長、ファイナンス事業の多角化、グローバル事業の基盤強化、DX推進によるオペレーション業務の効率化を重点方針として進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」と「組織」を「事業」へつなぎ、双方の成長を実現することを人事のミッションとし、「ビジネスを創り拡大させる“夢中力人材”」を増やすことに注力しています。「クレディセゾンの人事ポリシー」のもと、社内公募制度「オープンチャレンジ」や次世代リーダー育成プログラムを展開し、エンゲージメントの向上と多様な人材の活躍支援を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.4歳 | 15.4年 | 6,668,835円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.1% |
| 男性育児休業取得率 | 88.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 71.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(73.7%)、一人当たりの人材育成投資額(174千円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバル事業と資本配分における不確実性
インドや東南アジアを中心とするグローバル事業では、景気変動や法規制、為替変動のリスクが日本国内よりも高く、不確実性が伴います。また、成長分野への投資や事業ポートフォリオの見直しが適切に行われない場合、投資損失や減損損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 決済・金融市場の競争激化と法規制対応
ペイメント事業での異業種参入やコード決済の普及による競争激化、ファイナンス事業での金融機関との取引条件を巡る競争が収益低下を招くリスクがあります。また、割賦販売法や貸金業法、個人情報保護法など多岐にわたる国内外の法規制変更への対応遅れは、追加的なシステム投資や行政処分に繋がる懸念があります。
■(3) サイバー攻撃と大規模なシステム障害リスク
決済処理や与信審査など主要業務がコンピュータシステムに高度に依存しているため、外部からのサイバー攻撃やランサムウェア、システム不具合などが発生した場合、情報漏えいや業務停止を招くリスクがあります。損害賠償や行政対応、復旧費用の発生等により、社会的信用や財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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