オートバックスセブン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オートバックスセブン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のカー用品最大手。カー用品の卸売・小売、車検・整備、車買取・販売を主力事業とします。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比8.6%増、経常利益が同54.6%増となり、積極的なM&Aや既存事業の回復により増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社オートバックスセブン の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オートバックスセブンってどんな会社?


カー用品店「オートバックス」を国内外にフランチャイズ展開する業界のリーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1947年に自動車部品卸売として創業し、1974年に日本初のカー用品ワンストップショップ「オートバックス」第1号店を出店しました。その後、1989年に株式上場を果たし、フランスやアジアなど海外へも進出しています。近年では、ライフスタイル提案型の「A PIT AUTOBACS」やガレージブランド「GORDON MILLER」の展開、他社との提携によるDX推進など、事業領域の拡大を進めています。

同グループの連結従業員数は5,201名、単体では884名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は創業家資産管理会社の株式会社スミノホールディングス、第3位は公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.84%
株式会社スミノホールディングス 5.40%
公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団 5.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役 社長は堀井勇吾氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
堀井 勇吾 代表取締役 社長オートバックスチェン本部長 1995年同社入社。法務部長、海外事業担当、事業企画担当などを歴任。2022年より代表取締役社長執行役員、2023年4月より現職。
藤原 伸一 専務取締役マーケティング管掌マーケティング部長 1984年同社入社。マーケティング担当、関東事業部長などを歴任。2023年4月より専務取締役。
西川 征宏 取締役国内営業管掌 1984年同社入社。子会社代表取締役社長、南日本事業部長などを経て、2024年6月より取締役。
池田 知明 取締役(常勤監査等委員) 北海道拓殖銀行、ファミリーマート執行役員財務・IR部長を経て、2019年同社入社。管理統括などを経て2023年6月より現職。


社外取締役は、三村孝仁(元テルモ代表取締役会長)、松田洋祐(元スクウェア・エニックス・ホールディングス代表取締役社長)、小泉正己(元ユナイテッドアローズ取締役専務執行役員)、金丸絢子(弁護士法人大江橋法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「オートバックス事業」「コンシューマ事業」「ホールセール事業」「拡張事業」を展開しています。

(1) オートバックス事業


国内のフランチャイズ加盟法人に対するカー用品(タイヤ、ホイール、カーエレクトロニクス等)の卸売に加え、一般消費者向けにカー用品の販売、取付サービス、車検・整備、板金・塗装、車買取・販売を行っています。店舗ブランドには「オートバックス」「スーパーオートバックス」などがあります。

収益は、加盟店への商品卸売代金やロイヤリティ、および直営店における一般消費者からの商品代金・サービス料等から得ています。運営は、同社および株式会社オートバックス東日本販売、株式会社オートバックス関西販売などの地域販売子会社、およびフランチャイズ加盟法人が行っています。

(2) コンシューマ事業


オートバックス事業以外の小売チャネルとして、自社サイトや公式アプリを通じたカー用品の販売、および法人顧客への販売を行っています。また、新車・中古車の買取・販売事業や、車検・整備、板金事業なども展開しています。

収益は、一般消費者や法人顧客からの商品販売代金、車両販売代金、整備サービス料等から構成されます。運営は、同社および株式会社オートバックス・ディーラーグループ・ホールディングス、株式会社バックスeモビリティなどの子会社が行っています。

(3) ホールセール事業


国内のホームセンター等に対するカー用品の卸売や、海外のフランチャイズ加盟店・小売業者への卸売・輸出を行っています。また、プライベートブランド商品やライフスタイルブランド商品の卸売も手がけています。

収益は、ホームセンターや海外提携先、小売業者に対する商品の卸売代金から得ています。運営は、同社および株式会社CAPスタイル、株式会社ホットスタッフコーポレーションなどの子会社が行っています。

(4) 拡張事業


フランチャイズ加盟店向けの店舗設備・備品のリース、クレジット関連事業、保険代理店業務、提携カードの発行などを行っています。また、不動産開発事業や次世代マイクロモビリティの取り扱いなども含みます。

収益は、加盟店からのリース料、クレジット手数料、保険手数料などから構成されます。運営は、株式会社オートバックス・マネジメントサービス、株式会社オートバックスフィナンシャルサービスなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は2,200億円台から2,400億円台で推移してきましたが、当期は約2,500億円まで伸長しました。利益面では、経常利益が前期に一時的に落ち込んだものの当期は回復し、120億円台となっています。当期利益も前期比で大幅に増加し、収益性の改善が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,204億円 2,286億円 2,362億円 2,299億円 2,495億円
経常利益 112億円 112億円 116億円 81億円 125億円
利益率(%) 5.1% 4.9% 4.9% 3.5% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 51億円 58億円 54億円 12億円 65億円

(2) 損益計算書


売上高が増加する中、売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益率は前期の3.5%から当期は4.9%へと上昇しており、本業の収益力が回復しています。販売費及び一般管理費は増加していますが、売上総利益の伸びがそれを上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,299億円 2,495億円
売上総利益 754億円 884億円
売上総利益率(%) 32.8% 35.4%
営業利益 80億円 121億円
営業利益率(%) 3.5% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が281億円(構成比37%)、地代家賃が52億円(同7%)、減価償却費が51億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のオートバックス事業が増収増益となり、全社の業績を牽引しました。コンシューマ事業は増収ながら赤字が続いていますが、赤字幅は縮小しています。ホールセール事業は減収減益となりましたが、拡張事業は増収増益で推移し、特に利益面での成長率が高くなっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
オートバックス事業 1,773億円 1,921億円
コンシューマ事業 237億円 290億円
ホールセール事業 251億円 245億円
拡張事業 38億円 39億円
連結(合計) 2,299億円 2,495億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、M&A投資や設備投資資金の調達のため、長期借入金などを活用した財務戦略を展開しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益から非資金損益項目等を調整し、法人税等の支払いを差し引いた金額となっています。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得や有形・無形固定資産の取得、貸付け等により支出超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れや自己株式の売却による収入が、配当金の支払いなどを上回りました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 144億円 39億円
投資CF -4億円 -180億円
財務CF -74億円 140億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現」をパーパスに掲げています。モビリティライフにおける社会課題を解決し、人とモビリティが調和する持続可能な社会を目指します。また、進化の方向性として「出かける楽しさを提案し続ける会社へ」を明示し、モビリティ社会のインフラとしての存在を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、環境変化を脅威ではなく機会と捉え、柔軟かつ機動的に対応する姿勢を重視しています。これまでの延長線上ではない抜本的な変革への挑戦と、それを迅速に推進する力を重視し、タスクフォースの編成や若手人材の主導による計画推進など、実行力とスピードを重視する組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2024中期経営計画「Accelerating Towards Excellence」において、2026年度を最終年度とする目標を設定しています。また、長期ビジョンとして2032年度の連結売上高5,000億円を掲げ、既存事業の成長と新規事業の創出による事業規模の倍増を目指しています。

* 2026年度 連結売上高:2,800億円
* 2026年度 連結営業利益:150億円
* 2026年度 ROIC:7.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「小売り」と「卸売り」の2軸に経営資源を集中し、グローバル展開と周辺領域への拡張を進めます。具体的には、店舗出店やM&Aによるタッチポイントの拡大、商品調達・開発機能の集約等によるサプライチェーン改革、およびZEVディーラーやEV充電インフラなどの新規事業ドメインの確立を重点施策として推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の最大化」「イノベーションを創出する組織の変革」「戦略的な人員配置」を基本方針としています。多様な人材の採用や登用、リスキリングを含む人材育成、従業員エンゲージメントの向上を重点課題とし、これらを通じてグループ全体の稼ぐ力の向上を目指しています。また、次世代経営人材の育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.7歳 16.6年 7,014,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.5%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.5%
男女賃金差異(正規) 75.4%
男女賃金差異(非正規) 54.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、喫煙者比率(27.7%)、社員いきいき度(2.7点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内市場環境に関するリスク


カー用品の卸売・小売等を主力事業としているため、国内外の情勢変化に伴う商品調達難、為替変動による経済悪化、個人消費の低迷などが業績に影響を与える可能性があります。これに対し、リスクマネジメント委員会を通じて重要リスクの選定と対処を行い、リスク低減を図っています。

(2) 店舗運営に関するリスク


店舗におけるピット作業中の事故や、廃棄物処理、有害物質の取り扱いに関連するリスクがあります。事故等は直接的な損害だけでなく、顧客の心証悪化による客数減少など間接的な影響も懸念されます。これに対し、作業マニュアルの徹底や教育研修、コンプライアンスチェックによる点検を継続しています。

(3) 技術革新に関するリスク


自動運転技術やEVの普及など自動車技術の進化により、交換部品の需要や市場構造が変化する可能性があります。顧客ニーズの変化に柔軟に対応できない場合、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。対応策として、自動車メーカーとの協業やEV市場への参入、特定整備認証の取得などを推進しています。

(4) 情報セキュリティに関するリスク


事業活動がITシステムに依存しているため、サイバー攻撃や災害によるシステム障害、個人情報の漏えいが発生した場合、業務停止や社会的信用の低下を招く可能性があります。これに対し、通信監視やセキュリティ教育の徹底、データのバックアップ体制整備などの対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。