※本記事は、株式会社グルメ杵屋 の有価証券報告書(第60期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. グルメ杵屋ってどんな会社?
うどん・そば等のレストラン事業と機内食等のODM・OEM事業を展開する飲食グループです。
■(1) 会社概要
1967年に両国食品として設立され、1971年に実演手打うどん「杵屋」1号店を出店しました。1986年にグルメと合併してグルメ杵屋に商号変更し、1989年に上場しました。その後、機内食事業や卸売市場の運営、地方鉄道事業などをグループ化し、多様な食関連ビジネスを展開しています。
従業員数は連結1150名、単体82名です。筆頭株主はMUKUMOTOで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は創業家出身とみられる代表執行役社長の椋本充士氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| MUKUMOTO | 25.12% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.68% |
| 椋本 充士 | 4.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性4名の計16名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表執行役社長CEOは椋本充士氏です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 椋本 充士 | 取締役代表執行役社長CEO(最高経営責任者)代表執行役社長 | 1990年同社入社。ベンチャー企画部長等を経て、2001年取締役、2010年代表取締役社長に就任。エイエイエスケータリング社長等を歴任し、2022年より現職。 |
| 寺岡 成晃 | 取締役総務部・人事部担当執行役CPO(最高生産性責任者)執行役 | 1992年同社入社。アーシーチャイニーズファクトリー社長等を歴任し、2010年取締役。システム開発室長等を経て、2022年CPO就任。2025年より現職。 |
| クレムソン ツァイ | 取締役戦略・経営企画室担当執行役CSO(最高戦略責任者)執行役 | Newell Global Sourcing Asia等を経て2020年入社。経営企画室長等を経て、2021年取締役および執行役。2022年CSO就任、2024年より現職。 |
| 島田 裕道 | 取締役大阪木津市場カンパニー担当経理・グループ統括室担当資本管理室担当執行役CFO(最高財務責任者)執行役 | 京阪電気鉄道やビジネス・ブレークスルー等を経て、2023年取締役および執行役に就任。大阪木津市場カンパニー担当を経て、2024年よりCFO等として現職。 |
| 藪 章代 | 取締役執行役 執行役 | 西日本旅客鉄道入社後、ジェイアール西日本ファッショングッズ社長や和歌山ステーションビルディング社長等を歴任。2024年より同社取締役および執行役として現職。 |
| 村上 剛志 | 取締役 | 塩崎繊維等を経て1997年イデアル設立。2008年同社入社。人材開発部長、監査役を経て、2021年より取締役および監査委員会委員長として現職。 |
社外取締役は、澤井恵(アクセンチュア出身)、木村元泰(公認会計士・税理士)、桐山朋子(南海電気鉄道出身)、星野聖子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「レストラン事業」「ODM・OEM事業」「不動産賃貸事業」「運輸事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) レストラン事業
実演手打うどん「杵屋」、信州そば処「そじ坊」、洋食、和食、アジア料理などの多様な飲食店を展開しており、一般消費者が主な顧客です。
顧客からの飲食代金が主な収益源です。運営は主にグルメ杵屋レストランやゆきむら壱番亭が行っています。
■(2) ODM・OEM事業
関西国際空港における航空機内食の調製・搭載や、業務用冷凍食品(冷凍おせち、冷凍宅配弁当など)の製造・加工を行っており、委託元企業が顧客です。
航空会社や食品メーカー等からの製造受託料・販売代金が収益源です。運営は主にエイエイエスケータリングやアサヒウェルネスフーズが行っています。
■(3) 不動産賃貸事業
大阪木津卸売市場の経営および不動産賃貸事業を行っており、市場のテナントや不動産の賃借人が顧客です。
テナントからの家賃や駐車場収入等が主な収益源です。運営は同社が行っています。
■(4) 運輸事業
鉄道事業および道路旅客運送業(バス)を行っており、地域住民や観光客が顧客です。
旅客運賃収益が主な収益源です。運営は水間鉄道が行っています。
■(5) その他
大阪木津卸売市場での生鮮水産物の卸売、米穀販売、加工調理、食品販売のほか、マレーシアでの中食食品の製造供給などを行っています。
商品の販売代金などが主な収益源です。運営は同社や日本食糧卸、GK ASIA SDN.BHD.などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が233億円から441億円へと回復傾向にあります。経常利益は一時赤字でしたが、直近3期は黒字に転換し、当期は6億円を計上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 233億円 | 299億円 | 370億円 | 421億円 | 441億円 |
| 経常利益 | -23億円 | -5億円 | 4億円 | 9億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | -9.8% | -1.6% | 1.0% | 2.2% | 1.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 23億円 | -10億円 | 12億円 | 5億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は堅調に推移し、売上総利益も増加していますが、営業利益は減少傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 421億円 | 441億円 |
| 売上総利益 | 151億円 | 151億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.8% | 34.2% |
| 営業利益 | 9億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | 1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が59億円(構成比40%)、賃借料が31億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
レストラン事業は退店などの影響で微減収・減益となりました。一方、ODM・OEM事業は機内食の搭載食数増加などにより増収増益となり、業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| レストラン事業 | 246億円 | 244億円 | 4億円 | 2億円 | 1.0% |
| ODM・OEM事業 | 137億円 | 150億円 | 7億円 | 8億円 | 5.5% |
| 不動産賃貸事業 | 7億円 | 7億円 | 3億円 | 3億円 | 45.0% |
| 運輸事業 | 4億円 | 5億円 | -0.5億円 | -0.3億円 | -6.1% |
| その他 | 27億円 | 36億円 | -0.5億円 | -0.7億円 | -1.9% |
| 連結(合計) | 421億円 | 441億円 | 9億円 | 5億円 | 1.2% |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「仕事を通じて人生を楽しみ、社会に貢献する」を経営理念として掲げています。「食」を通じて社会に貢献する企業を標榜し、安定収益企業として顧客、株主、取引先、従業員それぞれの期待に応えるバランスのとれた経営を目指しています。
■(2) 企業文化
「人が育てば企業が育つ」という固い信念に基づき、経営のあらゆる場面において教育を最重点課題として取り組んでいます。また、関係者間において対等と尊重、ならびに和を重んじる企業風土の醸成に継続的に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2025年5月に2030年3月期を最終期とする5ヶ年の中期経営計画を公表しました。持続的に成長する企業グループであることを目指し、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高経常利益率:5%
* 自己資本当期純利益率:8%
* 配当性向:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
グループビジョン「おもてなしで付加価値の創造を紡ぐ」の実現に向け、再成長戦略の実行とM&Aを含めたシナジー創出を図ります。レストラン事業では投資効率を重視した出店と既存店のリブランディングを推進します。また、ODM・OEM事業では神戸物産との合弁会社を通じて機内食関連企業の株式取得を進め、グローバル展開を加速させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な視点で継続的に付加価値の創造を担う高度な専門人材の採用および育成を人材戦略の中核に位置付けています。キャリア形成を見据えた公平な報酬制度を含めた人事改革制度の設計を進めるほか、特定技能制度を活用した外国人材の採用・育成を推進し、事業拡大に対応可能な人材基盤の構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.9歳 | 10.4年 | 5,719,224円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 91.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 119.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 店舗資産の減損リスク
減損の兆候が識別されたレストラン事業の店舗資産について、さらなる経営環境の悪化等により将来キャッシュ・フローが減少し、減損処理が必要になった場合、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 飲食業における競争激化
外食産業は参入障壁が低く、顧客ニーズの多様化により厳しい競争環境にあります。他社との差別化や収益性の高い業態への集約を図っていますが、競争激化が進行した場合、事業活動や成長が阻害されるリスクがあります。
■(3) 出退店と保証金に関するリスク
出店は投資効率を重視していますが、立地環境の変化等で計画収益が確保できない場合や退店損失が発生するリスクがあります。また、賃貸人への差入保証金について、相手方の経営破綻等により貸倒損失が発生する可能性があります。



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