グルメ杵屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グルメ杵屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証プライム市場に上場し、うどんの「杵屋」やそばの「そじ坊」などの飲食店経営を主力とする企業グループです。機内食や冷凍食品製造、不動産賃貸、運輸事業なども展開しています。直近の業績は、売上高が前期比13.6%増、経常利益が同147.7%増となり、増収増益を達成しました。


#記事タイトル:グルメ杵屋転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社グルメ杵屋 の有価証券報告書(第59期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. グルメ杵屋ってどんな会社?


実演手打うどん「杵屋」や信州そば処「そじ坊」などのブランドで全国に飲食店を展開する外食チェーンです。機内食事業や鉄道・バスなどの運輸事業も手がけています。

(1) 会社概要


1967年3月に両国食品(現グルメ杵屋)として設立され、1971年に「杵屋」1号店を出店しました。1989年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、1996年には東証一部・大証一部へ指定替えとなりました。2006年には水間鉄道を子会社化して運輸事業へ参入するなど、多角化を進めています。

2025年3月31日時点で、従業員数は連結で992名、単体で75名です。筆頭株主は資産管理会社とみられるMUKUMOTOで、第2位は信託銀行、第3位は代表執行役社長の椋本充士氏です。

氏名 持株比率
MUKUMOTO 25.12%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.39%
椋本 充士 4.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性4名の計16名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表執行役社長CEOは椋本充士氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
椋本 充士 取締役代表執行役社長CEO(最高経営責任者)代表執行役社長 1990年入社。取締役、常務を経て2010年より社長。2022年よりCEO現職。
寺岡 成晃 取締役総務部担当執行役CPO(最高生産性責任者)執行役 1992年入社。執行役員うどん部門長などを経て、2022年よりCPO現職。
クレムソン ツァイ 取締役戦略・経営企画室担当執行役CSO(最高戦略責任者)執行役 Newell Global Sourcing Asia等を経て2020年入社。2022年よりCSO現職。
島田 裕道 取締役大阪木津市場カンパニー担当経理・グループ統括室担当資本管理室担当執行役CFO(最高財務責任者)執行役 京阪電気鉄道入社。2023年同社取締役就任。2024年よりCFO現職。
藪 章代 取締役執行役 西日本旅客鉄道入社。ジェイアール西日本ファッショングッズ社長等を経て2024年より現職。
村上 剛志 取締役 塩崎繊維入社。イデアル代表取締役を経て2008年入社。2021年より現職。


社外取締役は、澤井恵(ATHENA代表取締役社長)、木村元泰(木村元泰会計事務所代表)、桐山朋子(南海電気鉄道執行役員)、星野聖子(鎧橋法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レストラン事業」「機内食事業」「業務用冷凍食品製造事業」「不動産賃貸事業」「運輸事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) レストラン事業

うどんの「杵屋」「麦まる」、そばの「そじ坊」「おらが蕎麦」、洋食の「グルメ」、和食の「丼丼亭」、アジア料理の「シジャン」「ティーヌン」など多様な業態の飲食店を運営しています。一般消費者が主な顧客です。

飲食代金が主な収益源です。運営は主に株式会社グルメ杵屋レストランが行っており、ラーメン業態などは株式会社ゆきむら壱番亭が担当しています。

(2) 機内食事業

関西国際空港において航空機内食の調製・搭載などを行っています。航空会社が主な顧客です。

航空会社からの機内食調製・搭載料金が収益源です。運営は株式会社エイエイエスケータリングが行っています。

(3) 業務用冷凍食品製造事業

業務用冷凍食品の製造・加工・販売を行っています。特に冷凍おせち料理や冷凍宅配弁当などの製造を手がけています。

製品の販売代金が収益源です。運営は株式会社アサヒウェルネスフーズが行っています。

(4) 不動産賃貸事業

大阪木津卸売市場の経営および不動産賃貸事業を行っています。市場内のテナント等が顧客です。

賃貸料収入などが収益源です。運営は同社(グルメ杵屋)が行っています。

(5) 運輸事業

大阪府貝塚市を中心とした鉄道事業および道路旅客運送業(バス)を行っています。地域住民や観光客が顧客です。

運賃収入が収益源です。運営は水間鉄道株式会社が行っています。

(6) その他

大阪木津卸売市場における生鮮水産物・加工品の卸売や、米穀販売、マレーシアでの中食食品製造などを行っています。

商品の販売代金などが収益源です。運営は同社(グルメ杵屋)、日本食糧卸株式会社、GK ASIA SDN.BHD.などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期以降、回復傾向にあり、特に2024年3月期から2025年3月期にかけて大きく伸長しています。経常損益も2023年3月期までは赤字でしたが、2024年3月期に黒字転換し、2025年3月期にはさらに利益幅を拡大させています。利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 222億円 233億円 299億円 370億円 421億円
経常利益 -47億円 -23億円 -5億円 4億円 9億円
利益率(%) -21.3% -9.8% -1.6% 1.0% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -46億円 23億円 -10億円 12億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の370億円から当期は421億円へと増加しました。売上総利益も134億円から151億円へ増加し、売上総利益率は36.2%から35.8%へと推移しています。営業利益は4億円から9億円へと倍増し、営業利益率は1.1%から2.3%へ改善しました。増収効果が利益拡大に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 370億円 421億円
売上総利益 134億円 151億円
売上総利益率(%) 36.2% 35.8%
営業利益 4億円 9億円
営業利益率(%) 1.1% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が57億円(構成比41%)、賃借料が31億円(同22%)を占めています。売上原価については内訳の詳細データがありません。

(3) セグメント収益


当期は全セグメントで増収となりました。主力のレストラン事業は売上高が増加したものの、コスト増により減益となりました。一方、機内食事業は航空需要の回復により大幅な増収となり、黒字転換を果たしました。業務用冷凍食品製造事業、不動産賃貸事業も堅調に推移し増益となりました。運輸事業は増収ながらも赤字が継続しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
レストラン事業 233億円 246億円 5億円 4億円 1.7%
機内食事業 38億円 71億円 -3億円 4億円 5.9%
業務用冷凍食品製造事業 64億円 66億円 3億円 3億円 4.5%
不動産賃貸事業 7億円 7億円 3億円 3億円 46.7%
運輸事業 4億円 4億円 -1億円 -1億円 -12.6%
その他 24億円 27億円 -1億円 -0億円 -1.8%
調整額 -9億円 -11億円 -3億円 -4億円 -
連結(合計) 370億円 421億円 4億円 9億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や借入返済に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15億円 16億円
投資CF 6億円 -16億円
財務CF -28億円 -68億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.4%で市場平均(24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「仕事を通じて人生を楽しみ、社会に貢献する」を経営理念として掲げ、「食」を通じて社会に貢献する企業を標榜しています。また、今後も安定収益企業として、顧客、株主、取引先、従業員それぞれの期待に応える「バランスのとれた経営」を行うことを目指しています。

(2) 企業文化


「人が育てば企業が育つ」という信念に基づき、経営のあらゆる場面において「教育」を最重点課題として取り組む文化があります。また、グループビジョン「おもてなしで付加価値の創造を紡ぐ」を掲げ、関係者間の「対等と尊重」「和」などを重んじる企業風土の変革と付加価値の創造を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2030年3月期の目標達成に向けて各事業で施策に取り組んでいます。経営上の目標達成状況を判断する指標として、売上高経常利益率、自己資本当期純利益率、自己資本比率、配当性向を掲げています。

* 売上高経常利益率:5%以上
* 自己資本当期純利益率:8%以上
* 自己資本比率:50%
* 配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では再成長のための戦略実行を徹底し、M&Aを含めたグループシナジーの創出を目指します。レストラン事業では投資効率を重視した出店やオペレーション改革を行い、機内食事業ではインバウンドやハラール対応を強化します。業務用冷凍食品製造事業では冷凍宅配弁当市場のODM・OEM事業を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人が育てば企業が育つ」の信念に基づき、教育を最重点課題としています。多様な強みを持ち、情熱を持って未来を切り開ける人材の採用・育成を行い、従業員のエンゲージメント向上を目指しています。また、職場の安全と心身の健康を守り、人権を尊重した健全な職場環境の確保に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.0歳 9.3年 5,588,364円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 13.5%
男性労働者の育児休業取得率 -%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 69.6%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 71.7%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 61.8%


※男性労働者の育児休業取得率は、有価証券報告書に数値の記載がありません(「-」表記)。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(8.5% ※連結)、男性労働者の育児休業取得率(100.0% ※連結)、労働者の男女の賃金の差異(58.9% ※連結)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 固定資産の減損損失

保有する固定資産の価値下落やキャッシュ・フロー低下により減損処理が必要となる可能性があります。特にレストラン事業の店舗資産において、経営環境の悪化等により将来キャッシュ・フローが見積もりを下回った場合、減損損失の計上が経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

(2) レストラン事業の出退店方針

建築費や人件費等の高騰を踏まえ、投資効率を重視した出店を行っていますが、適切な出店地の確保が困難な場合や、出店後の環境変化により計画通りの収益が確保できない可能性があります。また、業績不振による退店が増加した場合、退店損失が発生し経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 外食産業における競争激化

外食産業は参入障壁が低く、市場の成熟や顧客ニーズの多様化により競争が激化しています。同社は独自性のある店舗運営で差別化を図っていますが、競争が一層激化した場合、事業活動や成長が阻害され、経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 自然災害による影響

大規模な地震や台風などの自然災害が発生した場合、店舗の営業停止や設備の損壊、物流の寸断などにより事業活動に支障が生じる可能性があります。また、原材料の産地が被災した場合には調達難や価格高騰のリスクがあり、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。