※本記事は、愛眼株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 愛眼ってどんな会社?
「メガネの愛眼」のブランドで知られる眼鏡専門店チェーンです。関西圏、関東圏を中心に全国へ店舗を展開しています。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1941年、大阪市で創業した「佐々栄商店」による眼鏡卸売業に始まります。1961年に瑞宝眼鏡光学を設立し、同年より眼鏡小売業へ進出しました。1987年に現在の愛眼へ商号を変更し、1989年には大阪証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。その後、2001年に東京証券取引所および大阪証券取引所市場第一部へ指定され、2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は683名、同社単体では676名です。大株主の構成は、筆頭株主が有限会社佐々興産、第2位が愛眼従業員持株会、第3位が愛眼共栄会となっており、創業家資産管理会社と従業員・関係者による持株比率が高くなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社佐々興産 | 11.02% |
| 愛眼従業員持株会 | 4.92% |
| 愛眼共栄会 | 4.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は佐々昌俊氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐々 昌俊 | 取締役社長(代表取締役) | 1994年同社入社。管理本部長、北京愛眼眼鏡有限公司董事長、専務取締役などを経て、2023年6月より現職。 |
| 佐々 雅彦 | 取締役管理本部長 | 1998年同社入社。営業部店長、総務課長、総務部長を経て、2023年6月より現職。 |
| 松本 隆行 | 取締役営業本部長 | 1994年同社入社。店舗開発部長、執行役員営業本部長、ネオック代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、森重洋一(公認会計士)、山田吉隆(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「眼鏡小売事業」、「眼鏡卸売事業」および「海外眼鏡販売事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■眼鏡小売事業
主力のセグメントであり、一般消費者向けに眼鏡、サングラス、補聴器等の販売を行っています。「メガネの愛眼」等の店舗をロードサイドやショッピングセンター、商業ビルなどに展開し、視力測定から加工・調整、アフターサービスまで対面販売によるサービスを提供しています。
収益は、来店した顧客への商品販売代金や補聴器等の関連商品販売から得ています。運営は主に同社が行っており、連結子会社のネオックも同セグメントに含まれます。
■眼鏡卸売事業
眼鏡専門店や小売店等に対し、眼鏡フレーム、サングラス、補聴器等の商品を供給する事業です。自社グループのスケールメリットを活かした商品調達や開発商品の卸売を行っています。
収益は、取引先小売店等への商品卸売による代金から得ています。運営は同社が行っています。
■海外眼鏡販売事業
中国の北京において眼鏡等の卸売事業を行っていましたが、連結子会社であった北京愛眼眼鏡有限公司は2024年8月に清算を結了しています。
収益は現地での商品販売によるものでしたが、清算結了に伴い、今後は同セグメントからの収益発生はありません。運営は北京愛眼眼鏡有限公司が行っていました。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は136億円から149億円へと緩やかに増加傾向にあります。利益面では、経常損失が続いていますが、赤字幅は縮小傾向にあります。当期は投資有価証券売却益などの特別利益を計上したことで、当期純利益は0億円となり、黒字転換を果たしました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 136億円 | 138億円 | 142億円 | 147億円 | 149億円 |
| 経常利益 | -4.5億円 | -4.4億円 | -3.9億円 | -0.6億円 | -0.5億円 |
| 利益率(%) | -3.3% | -3.2% | -2.7% | -0.4% | -0.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5.6億円 | -6.9億円 | -7.9億円 | -1.8億円 | 0.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、売上総利益率は67.9%と高い水準を維持しています。しかし、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回っており、営業段階では1億円の損失となっています。営業損失の額は前期と同水準で推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 147億円 | 149億円 |
| 売上総利益 | 100億円 | 101億円 |
| 売上総利益率(%) | 68.5% | 67.9% |
| 営業利益 | -1.2億円 | -1.3億円 |
| 営業利益率(%) | -0.8% | -0.9% |
コスト構造を見ると、販売費及び一般管理費のうち、給料が38億円(構成比37%)、賃借料が23億円(同23%)と大きな割合を占めています。これら店舗運営に関わる固定費の負担が重く、営業利益を圧迫する要因となっています。
■(3) セグメント収益
主力の眼鏡小売事業は、売上高145億円と増収を確保しましたが、セグメント損失は1億円となり赤字幅が拡大しました。眼鏡卸売事業は売上高4億円で安定していますが、利益面では若干の損失となっています。海外眼鏡販売事業は清算結了に伴い売上が消失しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 眼鏡小売 | 143億円 | 145億円 | -0.6億円 | -1.1億円 | -0.7% |
| 眼鏡卸売 | 4.0億円 | 4.0億円 | -0.1億円 | -0.1億円 | -1.2% |
| 海外眼鏡販売 | 0.1億円 | 0.0億円 | -0.2億円 | -0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 147億円 | 149億円 | -1.2億円 | -1.3億円 | -0.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金は商品の購入費用や販売費及び一般管理費、投資資金は新規出店や改装に係る設備投資に充当し、これらは自己資金で賄う方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益の計上や棚卸資産の増加、仕入債務の減少等によりマイナスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や敷金及び保証金の回収等によりプラスに転じました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得等によりほぼゼロとなりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.9億円 | -1.6億円 |
| 投資CF | -1.7億円 | 0.9億円 |
| 財務CF | 0.0億円 | 0.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様の暮らしを、より快適に、より豊かにする企業となることを目指し、安心の技術、納得の商品、気持ちに寄り添うサービスを提供します。」を経営方針として掲げています。眼鏡専門店の使命として「快適な視力補正」の提供と、「オシャレの楽しさ」の提案を行い、地域社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来、「共存・共栄」を基本理念とし、顧客、取引先、従業員との信頼関係を重視しています。顧客に対しては、単に商品を販売するのではなく、カウンセリングを通じて最適な商品とサービスを提供する「アイ・スタイリング・サービス」を推進しています。また、「スマートプライス」による明瞭な価格表示など、顧客の安心と信頼を高める取り組みを行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中長期的な経営目標として以下の数値を掲げています。新規店舗開発や既存店活性化、商品開発力の強化、従業員教育の充実等を通じて経営効率の改善を図り、これらの目標達成を目指しています。
* 売上高経常利益率:5.0%
* ROE:4.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「アイ・スタイリング・サービス」の推進を核に、ミドル・シニア層に加えニューファミリー世代へのブランド訴求を強化しています。また、「目の健康」をテーマとした高付加価値商品の開発や、WEB等を活用した情報発信、人材育成に注力しています。
* アイ・スタイリング・サービスの推進:顧客のライフスタイルに合った提案力の強化
* スマートプライス:レンズ込みの明瞭な価格表示による安心感の提供
* 付加価値商品の投入:「目の健康」をテーマとした機能性レンズ・フレームの拡充
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
2027年を中期目標に「人材を大切に育てる企業」を目指しています。「多様性を活かす」「目標を持ち挑戦を促す」「成長を実感できる」を柱とし、ジョブローテーションや外部研修等の機会を提供しています。特にカウンセリング力の向上を最重点育成項目とし、顧客からの信頼獲得に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.8歳 | 21.8年 | 4,186,817円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 2.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 72.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 76.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 95.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員の女性比率(29.4%)、労働者に占める女性労働者の割合目標(50.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客の消費動向について
眼鏡小売市場は、実質賃金や消費マインドの影響を強く受けます。販売数は顧客の嗜好変化や可処分所得の増減に左右されやすく、経済状況や世界情勢による仕入値の高騰などが業績に影響を与える可能性があります。計画通りに進捗しない場合、減損処理や出店ペースの鈍化につながる恐れがあります。
■(2) 出店地域について
出店に際しては商圏人口や競合状況等を慎重に検討していますが、希望条件に合致する物件がなく計画通りに出店できない場合や、出店後に周辺環境の変化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 業界の動向について
眼鏡業界では低価格競争による単価下落や市場縮小が続いています。また、コンタクトレンズの普及や視力矯正手術(レーシック等)の技術進歩により眼鏡需要そのものが減少し、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 競合店の影響について
同業他社に加え、ファッション雑貨店やコンタクトレンズ専門店とも競合関係にあります。価格、品質、サービス面での競争が激化し、同社の競争力が相対的に低下した場合、業績に影響が出る可能性があります。これに対し同社は、技術力や接客サービスによる差別化を図っています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。