※本記事は、愛眼株式会社の有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 愛眼ってどんな会社?
眼鏡、サングラス、補聴器などの販売を主たる業務とし、国内を中心に店舗展開を行う企業です。
■(1) 会社概要
同社は1941年に個人経営の商店として創業し、1961年に眼鏡卸売販売業として会社を設立しました。1964年に小売専門店の第1号店を開設以降、チェーン展開を推進しています。1987年に愛眼へ商号変更し、2001年には東証市場第一部へ指定されました。現在は東証スタンダード市場に上場しています。
現在の従業員数は連結で666名、単体で659名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社とみられる有限会社佐々興産で、第2位は愛眼従業員持株会、第3位は愛眼共栄会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社佐々興産 | 11.02% |
| 愛眼従業員持株会 | 4.89% |
| 愛眼共栄会 | 4.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は佐々昌俊氏が務めており、取締役5名のうち2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐々 昌俊 | 取締役社長(代表取締役) | 1994年同社入社。営業部長、営業企画室長、管理本部長などを歴任。2022年専務取締役を経て、2023年6月より現職。 |
| 松本 隆行 | 取締役営業本部長 | 1994年同社入社。営業部長、店舗開発部長、執行役員営業本部長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 佐々 雅彦 | 取締役管理本部長 | 1998年同社入社。営業部店長、総務課長、総務部長を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、森重洋一(のぞみ合同会計社公認会計士)、山田吉隆(山田吉隆税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「眼鏡小売」および「眼鏡卸売」事業を展開しています。
■(1) 眼鏡小売
店舗展開を通じて、眼鏡、サングラス、補聴器などを一般消費者に販売しています。ロードサイドやショッピングセンターなどの商業施設に出店し、対面販売によるカウンセリングを通じたサービスを重視し、高い視力・聴力補正技術を提供しています。
収益源は店舗やネット通販における顧客からの商品代金やオプション代金などです。商品の引き渡し時またはサービス提供時に収益を認識しています。運営は主に同社およびネオックが行っています。
■(2) 眼鏡卸売
全国の眼鏡小売店やフランチャイズ加盟店等を対象に、自社が取り扱う眼鏡、サングラス、補聴器等の卸売販売を行っています。新商品の投入や販売支援による既存取引先との関係強化、新規取引先の開拓に努めています。
収益源は加盟店などの取引先企業からの商品仕入代金です。商品の出荷時などの支配移転時に収益を認識しています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は138億円から153億円へと緩やかな増加傾向にあります。経常利益はマイナスが続いていましたが、当期は既存店を中心とした販売力向上や価格改定等の効果により3億円の黒字へと転換を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 138億円 | 142億円 | 147億円 | 149億円 | 153億円 |
| 経常利益 | -4億円 | -4億円 | -0.6億円 | -0.5億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | -3.2% | -2.7% | -0.4% | -0.3% | 2.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -7億円 | -8億円 | -2億円 | -0.3億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の149億円から当期は153億円へと増加しています。売上総利益も伸びており、売上総利益率は67.9%から69.1%へ改善しました。これにより営業利益は黒字転換しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 149億円 | 153億円 |
| 売上総利益 | 101億円 | 106億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.9% | 69.1% |
| 営業利益 | -1億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | -0.9% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が38億円(構成比36.4%)、賃借料が23億円(同21.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の眼鏡小売事業は既存店舗の販売力向上やレンズオプション販売の好調により増収増益となり、黒字転換しました。一方、眼鏡卸売事業は新商品投入等に努めたものの減収となり、損失が続いています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 眼鏡小売 | 145億円 | 149億円 | -1億円 | 2億円 | 1.5% |
| 眼鏡卸売 | 4億円 | 4億円 | -0.1億円 | - | - |
| 調整額 | -0.6億円 | -0.5億円 | -0.1億円 | -0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 149億円 | 153億円 | -1億円 | 2億円 | 1.5% |
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2億円 | 3億円 |
| 投資CF | 1億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | - | - |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客さまの暮らしを、より快適に、より豊かにする企業となること」を目指し、「安心の技術、納得の商品、気持ちに寄り添うサービスを提供します。」を経営方針として掲げています。眼鏡専門店の本来の使命と責任である「快適な視力補正」の提供と、T.P.O.に応じた「オシャレの楽しさ」を提案し、持続的な成長をする企業として社会的責任を果たすことを理念としています。
■(2) 企業文化
従業員をはじめ、顧客、取引先、メーカー等の仕入先と「共存・共栄」を図ることを基本理念としています。お客様の要望や問題をカウンセリングによって解決し、安心と信頼を付与することでロイヤルカスタマー化を図っています。また、明るく清潔な店内演出やロールプレイング学習を通じ、ハード・ソフト両面から真心を込めた接客サービスを追求する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
新規店舗の開発、既存店の活性化、コストパフォーマンスに優れた商品の開発、従業員教育の充実などの事業基盤を強化するとともに、営業体制の整備や経費コントロールの徹底による経営効率の改善を推進しています。これらの取り組みにより、中長期的な経営指標数値として以下の確保を目標として掲げています。
・売上高経常利益率 5.0%
・ROE 4.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
ミドル・シニア世代に加え、ニューファミリー世代からも支持を得る「愛眼ブランド」の構築を目指し、顧客の嗜好やライフスタイルに合った最適な商品を提供する「アイ・スタイリング・サービス」を推進しています。また、フレームとレンズが一体となった明瞭な価格表示による「スマートプライス」を並行して展開し、付加価値の高い商品の投入や販売促進活動の多様化を通じて企業価値の向上を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
2027年を中期目標として「人材を大切に育てる企業」を目指し、「多様性を活かす」「目標を持ち挑戦を促す」「成長を実感できる」を人材戦略の柱に掲げています。多様なバックグラウンドを活かし、接客スキルや技術向上の機会を設け、社内公募制度による役割転換や階層別研修を実施することで、社員の成長が企業の成長へつながる仕組みづくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.9歳 | 21.9年 | 4,191,128円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 93.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員の女性比率(30.9%)、女性正規雇用労働者の育児・介護短時間勤務利用者(46名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 消費動向の変化と経済情勢の影響
実質賃金の上昇や金融政策の正常化、インフレによる可処分所得の増減が顧客の購買意欲に大きな影響を与えます。また、世界情勢の影響により仕入先の海外拠点での製造や出荷運搬状況が悪化し、商品の適時提供が困難になる場合や、仕入れ値の高騰による販売価格の上昇が消費マインドに影響を与える可能性があります。
■(2) 出店計画の遅れと立地環境の変化
立地条件が個店の売上高を左右する大きな要因と位置づけており、商圏人口や競合店状況、賃借料等を検討して出店を決定しています。しかし、条件に合致する物件がなく計画通りに出店できない場合や、出店後に商業集積地や道路網などの立地環境に変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 低価格帯での競争激化と代替手段の普及
顧客獲得のための低価格帯での競争や市場規模の縮小が続いています。さらに、利便性が増した使い捨てコンタクトレンズの若年層への普及や、レーザー角膜切除屈折手術などの手術治療が安全な方法として一般に浸透した場合、眼鏡需要が縮小し、同社の事業に少なからず影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 同業他社等との激しい競合関係
周辺の同業他社との間で品揃え、品質、価格、サービス面で激しい競合が生じています。さらに、サングラスを取り扱うファッション雑貨店やコンタクトレンズ販売店とも競合関係にあります。コスト削減や技術力・接客力の向上で競争力の確保に努めていますが、相対的に競争力が低下した場合には業績に影響を受ける可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。