※本記事は、美津濃株式会社 の有価証券報告書(第112期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 美津濃ってどんな会社?
総合スポーツ品メーカーとして、野球やサッカー等の競技用品からライフスタイル品まで幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
1906年に水野兄弟商会として創業し、運動用服装品などの製造販売を開始しました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1972年には同第一部へ指定替えとなりました。1992年に大阪市住之江区に新本社ビルを完成させ事業を開始。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、2025年には株式分割を実施しています。
同グループの従業員数は連結3,649名、単体1,533名です。大株主構成については、筆頭株主はスポーツ振興を目的とする公益財団法人ミズノスポーツ振興財団で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人ミズノスポーツ振興財団 | 17.11% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社 | 13.05% |
| 株式会社日本カストディ銀行 | 8.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は水野明人氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 水野明人 | 代表取締役社長 | 1975年入社。常務取締役、専務取締役、取締役副社長を経て、1998年に代表取締役副社長に就任。2006年より現職。 |
| 福本大介 | 代表取締役専務執行役員 | 1981年入社。経理財務部長、常務取締役、MIZUNO (TAIWAN) CORPORATION 董事長などを経て2022年より現職。 |
| 七條毅 | 取締役専務執行役員 | 1984年入社。アパレル企画生産本部長、常務執行役員などを歴任し、コンペティションスポーツ事業などを担当。2023年より現職。 |
| 佐野治 | 取締役常務執行役員 | 1984年入社。ゴルフ事業部マーケティング部長、執行役員北米事業担当、MIZUNO USA INC.取締役CEOなどを経て2022年より現職。 |
| 原琢平 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年入社。人事総務部長、法務部長、営業統括本部副本部長などを経て2022年より現職。 |
社外取締役は、新居勇子(元ANAあきんど取締役副社長)、山添俊作(元住友不動産販売専務執行役員)、細川明子(公認会計士・神戸市監査委員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「欧州」「米州」「アジア・オセアニア」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
国内において、ベースボール品、スポーツウエア、スポーツシューズ、ゴルフ品などスポーツ品全般の製造及び販売を行っています。また、スポーツ施設の建設工事、運営・運営受託、スクールビジネス、スポーツ機器の製造・販売なども手がけています。
収益は、卸売先や消費者からの商品販売代金、施設利用者からの利用料、工事の発注者からの請負代金等から得ています。運営は同社およびミズノスポーツサービス、セノーなどが担っています。
■(2) 欧州
欧州地域において、スポーツシューズ、スポーツウエア、ゴルフ品およびライフスタイル品等の販売事業を展開しています。フットボールやランニングなどのカテゴリーに注力しています。
収益は、現地の卸売先や消費者への商品販売により得ています。運営は主にMIZUNO CORPORATION UK LIMITEDやMIZUNO EUROPE B.V.などの現地法人が行っています。
■(3) 米州
米国およびカナダ等の米州地域において、スポーツシューズ、スポーツウエア、ベースボール品およびゴルフ品等の製造または販売を行っています。特にゴルフ品やランニングシューズなどが主要商材です。
収益は、現地の卸売先や消費者への商品販売により得ています。運営は主にMIZUNO USA, INC.やMIZUNO CANADA LTD.などの現地法人が行っています。
■(4) アジア・オセアニア
アジアおよびオセアニア地域において、スポーツシューズ、スポーツウエア、ベースボール品、ゴルフ品およびライフスタイル品等の製造または販売、ならびにスポーツ施設の建設工事を行っています。
収益は、現地の卸売先や消費者への商品販売、および工事請負代金等から得ています。運営はSHANGHAI MIZUNO CORPORATION LTD.やMIZUNO (TAIWAN) CORPORATIONなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加傾向にあり、順調な拡大を続けています。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに増加基調を維持しており、収益性が向上しています。特に直近の決算では、売上高・各利益ともに過去最高水準に達しており、好調な業績推移を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,504億円 | 1,727億円 | 2,120億円 | 2,297億円 | 2,403億円 |
| 経常利益 | 60億円 | 110億円 | 140億円 | 193億円 | 214億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 6.4% | 6.6% | 8.4% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | 38億円 | 58億円 | 97億円 | 103億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。売上原価率の改善や販売費及び一般管理費のコントロールにより、営業利益率も上昇傾向にあります。特に売上総利益率の改善が利益拡大に寄与しており、収益性の高い体質への転換が進んでいます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,297億円 | 2,403億円 |
| 売上総利益 | 909億円 | 986億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.6% | 41.0% |
| 営業利益 | 173億円 | 208億円 |
| 営業利益率(%) | 7.5% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が214億円(構成比28%)、広告宣伝費が119億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントにおいて増益を達成しており、特にアジア・オセアニア地域での利益成長が著しいです。日本セグメントも堅調に推移し、全社利益の柱となっています。米州や欧州でも収益性の改善が見られ、グローバル全体での業績向上が確認できます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,414億円 | 1,473億円 | 120億円 | 133億円 | 9.0% |
| 欧州 | 256億円 | 237億円 | 5億円 | 7億円 | 2.9% |
| 米州 | 339億円 | 360億円 | 23億円 | 28億円 | 7.7% |
| アジア・オセアニア | 288億円 | 333億円 | 23億円 | 40億円 | 12.1% |
| 連結(合計) | 2,297億円 | 2,403億円 | 173億円 | 208億円 | 8.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済を進めつつ、投資活動も行っている「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 214億円 | 70億円 |
| 投資CF | 1億円 | -35億円 |
| 財務CF | -140億円 | -40億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念(パーパス)を掲げています。また、「“ええもん” を世界に届け続ける」というビジョンのもと、スポーツの振興と発展のために積極的に使命と役割を果たし、社会への貢献と企業の発展を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、創業以来大切にしてきた価値観を「バリューズ」として定めています。「Fair Play(フェア・プレー)」精神を大事にし、「Friendship(フレンドシップ)」で自身とチームを高め、「Fighting Spirit(ファイティング・スピリット)」というフロンティア精神で変革を志す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2027年度を最終年度とする中期経営計画において、収益力を高めつつ資産効率・資本効率を向上させることで企業価値の増大を目指しています。
* 売上高:3,100億円
* 営業利益:280億円(営業利益率9.0%)
* ROA(総資産事業利益率):11.0%
* ROE(自己資本利益率):11.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「品質」と「技術力」を強みに、国内外でのシェア拡大を目指しています。国内では競技スポーツ品のシェア向上や事業多角化、海外ではフットボール事業の拡大やランニング事業の再成長、新規地域の開拓を進めます。また、イノベーションセンター「MIZUNO ENGINE」を活用し、変化に対応した商品開発を加速させるとともに、スポーツ以外の分野にも挑戦します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を競争力の源泉と位置づけ、多様な従業員の能力向上と開発を支援しています。特に「経営人材」「グローバル人材」「イノベーション人材」の育成に注力しています。また、従業員エンゲージメントの向上を目指し、ダイバーシティ&インクルージョンの推進や、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 18.0年 | 6,990,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.7% |
| 男性育児休業取得率 | 70.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 77.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職における中途入社比率(15.7%)、女性管理職比率目標(10%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバルな事業展開において潜在するリスク
世界各地域での事業展開に伴い、進出先での予測不能な法令変更、テロ・戦争等の政治的・社会的混乱が発生する可能性があります。これらの事象が生じた場合、事業継続が困難となり、売上高の減少等を通じて業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
■(2) 為替レートの変動
海外での製造・販売活動において、外貨建取引を行っています。為替リスクヘッジを行っていますが、予想を超える大幅な為替変動が生じた場合、売上高の減少やコスト増加、為替差損の発生などにより、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 製品の欠陥
厳格な品質管理を行っていますが、スポーツ用品等の特性上、破損等による事故のリスクがあります。製造物責任保険に加入していますが、リコール等が発生した場合には、回収コストの増大やブランドイメージの毀損により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティに関するリスク
顧客情報の管理には万全を期していますが、サイバー攻撃やシステム障害等により情報漏洩が発生するリスクがあります。万一の場合、損害賠償や信用の失墜、対応コストの増加等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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