**記事タイトル:美津濃転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**
※本記事は、美津濃株式会社の有価証券報告書(第113期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 美津濃ってどんな会社?
美津濃は、野球やゴルフなどのスポーツ用品全般の製造・販売をグローバルに展開する総合スポーツ企業です。
■(1) 会社概要
1906年4月に創業し運動用服装品の製造販売を開始、1942年に美津濃へ社名変更しました。1961年に大証二部へ上場、1972年に東証・大証一部へ指定されました。その後、欧米やアジアなど海外各地へ現地法人を設立しグローバル化を推進し、2025年にはインドやカンボジアに子会社を設立しています。
現在の従業員数は連結で3,682名、単体で1,507名です。大株主については、筆頭株主がミズノスポーツ振興財団であり、第2位および第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ミズノスポーツ振興財団 | 17.27% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 10.54% |
| 日本カストディ銀行 | 9.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は水野明人氏が務めており、社外取締役比率は37.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 水野 明人 | 代表取締役社長 | 1975年8月入社。1984年5月取締役、1998年6月代表取締役副社長を経て、2006年6月より現職。 |
| 七條 毅 | 代表取締役専務執行役員 | 1984年3月入社。2012年6月取締役、2021年6月コンペティションスポーツ事業担当などを経て、2025年6月より現職。 |
| 佐野 治 | 取締役常務執行役員 | 1984年3月入社。2017年1月執行役員北米事業担当、2021年6月常務執行役員を経て、2022年6月より現職。 |
| 中田 匠 | 取締役常務執行役員 | 1990年3月入社。2018年1月ミズノテクニクス代表取締役社長、2021年6月執行役員を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、新居勇子(元全日本空輸上席執行役員)、山添俊作(元住友不動産販売専務執行役員)、細川明子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」、「欧州」、「米州」、「アジア・オセアニア」の報告セグメントを展開しています。
■日本
ベースボール品、スポーツウエア、シューズ、ゴルフ品などスポーツ品全般の製造・販売を主軸としています。また、スポーツ施設の建設・運営、スクールビジネス、スポーツ機器やライフスタイル品、ワーキング品の製造販売など幅広く事業を展開しています。
スポーツ品等の販売代金や施設の運営・受託収入が主な収益源です。事業の運営は主に美津濃が担うほか、施設の運営をミズノスポーツサービス、スポーツ機器の製造販売をセノー等の子会社が担当し、グループ全体で収益を獲得しています。
■欧州
欧州市場の顧客に対して、スポーツシューズ、スポーツウエア、ゴルフ品およびライフスタイル品などを中心としたスポーツ関連用品の販売を行っています。地域の特性に応じたマーケティングを展開し、ブランド認知度の向上に努めています。
専門店チャネル等を通じたスポーツ用品の販売による代金が主な収益源です。運営は欧州事業統括子会社であるMIZUNO EUROPE B.V.を中心に、MIZUNO CORPORATION UK LIMITEDや各国の販売子会社が担当しています。
■米州
米国を中心とした米州地域において、スポーツシューズ、スポーツウエア、ベースボール品、およびゴルフ品等の製造・販売を行っています。特に高い評価を得ている鍛造アイアンのカスタムフィッティングなど、付加価値の高いサービスを提供しています。
スポーツ用品等の製品販売代金やカスタムサービスの提供による対価が主な収益源です。米州地域における事業運営は、特定子会社であるMIZUNO USA, INC.やカナダの子会社であるMIZUNO CANADA LTD.が主に担当しています。
■アジア・オセアニア
アジアやオセアニア地域において、スポーツシューズ、スポーツウエア、ベースボール品、ゴルフ品およびライフスタイル品等の製造・販売を手掛けています。また、同地域内でのスポーツ施設の建設工事等も事業の一環として展開しています。
スポーツ用品の販売代金および施設建設工事の請負代金が主な収益源です。運営はSHANGHAI MIZUNO CORPORATION LTD.やMIZUNO (TAIWAN) CORPORATIONをはじめとする各地域の子会社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に直近の事業年度では、国内外での競技用スポーツ品やスポーツスタイルシューズの販売が好調に推移し、利益率も着実に改善しており、過去最高の業績を記録しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,727億円 | 2,120億円 | 2,297億円 | 2,403億円 | 2,590億円 |
| 経常利益 | 110億円 | 140億円 | 193億円 | 214億円 | 240億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 6.6% | 8.4% | 8.9% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 58億円 | 97億円 | 103億円 | 130億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益ともに前期比で増加しています。直営店の強化やeコマースの拡充などDTC領域での販売拡大が功を奏し、売上総利益率および営業利益率の向上に貢献しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,403億円 | 2,590億円 |
| 売上総利益 | 986億円 | 1,085億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.0% | 41.9% |
| 営業利益 | 208億円 | 226億円 |
| 営業利益率(%) | 8.6% | 8.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が95億円(構成比11.1%)、広告宣伝費が73億円(同8.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて前期比で増収を達成しています。主力の日本市場では競技スポーツ品やワークビジネスが好調を維持し、欧州やアジア・オセアニアでもスポーツスタイルシューズなどの販売が大きく伸びており、グローバルでの成長が売上拡大を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 1,473億円 | 1,552億円 |
| 欧州 | 237億円 | 308億円 |
| 米州 | 360億円 | 377億円 |
| アジア・オセアニア | 333億円 | 354億円 |
| 連結(合計) | 2,403億円 | 2,590億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を元に、将来に向けた投資や借入等による積極的な事業拡大を行っている「積極型」の状態といえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 70億円 | 173億円 |
| 投資CF | -35億円 | -53億円 |
| 財務CF | -40億円 | 11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
美津濃は「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念(パーパス)を掲げています。スポーツの振興と発展のために積極的な役割を果たし、社会貢献と企業の発展の両立を目指すとともに、新たなビジョンとして「“ええもん”を世界に届け続ける」ことを宣言しています。
■(2) 企業文化
創業以来「利益の利より道理の理」の精神を大切にする「Fair Play」、規律とリスペクトに基づく「Friendship」、絶えず変革を志し結果にコミットする「Fighting Spirit」の3つのバリューズ(大切な価値観)を制定し、グローバルで統一された行動基準として全従業員に共有しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は主たる経営指標としてROA(総資産事業利益率)およびROE(自己資本利益率)を採用しており、収益力と資産・資本効率のバランスを向上させることで企業価値の増大を図っています。
* 2028年度 目標売上高:3,300億円
* 2028年度 目標営業利益:310億円
* 2028年度 目標ROA:11.5%
* 2028年度 目標ROE:11.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
ゴルフ、ランニング、フットボール等の各カテゴリーでの成長と、DTC領域の拡大に向けた直営店出店やeコマース向上、成長市場への投資を強化します。また、スポーツの知見を応用し、ワークアパレルや健康寿命延伸支援など新ビジネスモデルの構築も推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を経営戦略実現の重要基盤と位置づけ、従業員の能力・専門性の向上を重視しています。階層別教育による経営人材やグローバル人材、イノベーション人材の育成を進めるほか、自律的なキャリア形成支援や働きやすい職場環境の整備を行い、事業ポートフォリオの競争力を高める多様な人材の確保と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.6歳 | 17.3年 | 7,488,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 62.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバルな事業展開において潜在するリスク
同社は世界各地域に販売・生産拠点を有していますが、進出先での予測不能な法令変更やテロ・暴動、政治的・社会的混乱などが発生した場合、事業展開が継続できなくなり、売上高の減少など業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品の欠陥によるブランド毀損リスク
スポーツやアウトドアなどアクティブな状況で使用される製品において、想定を上回る破損等によりリコールが発生した場合、回収や交換に伴う多大なコスト増加に加え、社会的評価の低下による業績悪化を招くリスクがあります。
■(3) 原材料価格の高騰リスク
製品の製造に使用する天然皮革、木材、金属および石油製品などの原材料は資源価格の変動リスクに晒されており、不測の価格上昇が発生した場合には製造コストが増大し、グループの収益性を圧迫する可能性があります。
■(4) 情報セキュリティに関するリスク
顧客情報等の保護に向けたシステム防御を実施していますが、第三者の意図的な侵入やシステム停止により個人情報の漏洩・流出が発生した場合、損害賠償請求や信用の失墜により多額の対応コストが生じるリスクが存在します。



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