※本記事は、株式会社ニトリホールディングス の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ニトリホールディングスってどんな会社?
「お、ねだん以上。」を掲げ、家具・インテリア用品の製造・物流・販売を一貫して行う「製造物流IT小売業」を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1972年に似鳥家具卸センターとして設立され、2002年に東証一部へ上場しました。2010年に持株会社体制へ移行し現社名に変更。2021年には島忠を完全子会社化しホームセンター事業を取り込みました。2023年にIFRS(国際会計基準)を適用し、2024年にはフィリピン、インドネシア、インドへ初出店するなど、アジアを中心としたグローバル展開を加速させています。
連結従業員数は19,967人、単体では939人です。筆頭株主は創業家の資産管理会社であるニトリ商事で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっており、創業家と機関投資家が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニトリ商事 | 18.34% |
| 日本マスタートラスト 信託銀行(信託口) | 17.83% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)は似鳥昭雄氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 似鳥 昭雄 | 代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO) | 1972年同社設立。2016年2月より現職。ニトリファニチャー会長兼社長等を兼任。 |
| 白井 俊之 | 代表取締役社長兼最高執行責任者(COO) | 1979年入社。専務執行役員、副社長を経て2016年2月より現職。カチタス取締役等を兼任。 |
| 武田 政則 | 取締役執行役員副社長 | 2004年入社。グローバル商品本部本部長等を経て2024年2月より現職。海外事業を管掌。 |
| 安孫子 尋美 | 取締役 | 1984年入社。商品部シーゾナルバイヤーマネジャー等を経て2021年5月より現職。 |
| 久保 隆男 | 取締役(常勤監査等委員) | 1977年入社。経営政策室室長、常勤監査役等を経て2016年5月より現職。 |
社外取締役は、宮内義彦(オリックスシニア・チェアマン)、吉澤尚子(元富士通執行役員常務)、井澤吉幸(元ブラックロック・ジャパン会長)、安藤久佳(元経済産業事務次官)、金髙雅仁(元警察庁長官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ニトリ事業」、「島忠事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。
■ニトリ事業
家具・インテリア用品の開発・製造・販売をはじめ、不動産賃貸業、広告サービス、物流サービス等を行っています。製造・物流・小売を一貫して行う独自のビジネスモデルにより、一般消費者を主な顧客として「お、ねだん以上。」の商品を提供しています。
収益は主に店舗およびECサイトでの商品販売による売上です。運営は主に株式会社ニトリが行い、海外では宜得利家居股份有限公司(台湾)、似鳥(中国)投資有限公司、NITORI FURNITURE VIETNAM EPEなどの現地法人が各地域の販売・製造・物流等を担っています。
■島忠事業
家具・インテリア雑貨およびホームセンター商品の販売等を行っています。家具専門店とホームセンターを融合した店舗展開を特徴とし、首都圏を中心に一般消費者の住まいに関するニーズに対応しています。
収益は主に店舗での商品販売による売上です。運営は株式会社島忠が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2期間の業績を見ると、売上収益は増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方、利益面では、円安進行による輸入コストの上昇や人的資本への投資、物流拠点新設に伴うコスト増などが影響し、税引前利益および当期利益は減少傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 8,967億円 | 9,288億円 |
| 税引前利益 | 1,248億円 | 1,174億円 |
| 利益率(%) | 13.9% | 12.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 902億円 | 825億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において、売上収益は3.6%増加し、売上総利益も増加しましたが、販売費及び一般管理費の増加率がこれらを上回ったため、営業利益は5.3%減少しました。売上総利益率は51.0%と高い水準を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 8,967億円 | 9,288億円 |
| 売上総利益 | 4,574億円 | 4,739億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.0% | 51.0% |
| 営業利益 | 1,243億円 | 1,177億円 |
| 営業利益率(%) | 13.9% | 12.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,318億円(構成比37.8%)、減価償却費及び償却費が661億円(同19.0%)、発送配達費が357億円(同10.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ニトリ事業は、国内外での出店やヒット商品の創出により増収となりましたが、円安や人件費等のコスト増により減益となりました。島忠事業は売上収益が微増し、利益面では依然として赤字ですが、前年に比べ赤字幅は縮小しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ニトリ事業 | 7,863億円 | 8,209億円 | 1,286億円 | 1,190億円 | 14.5% |
| 島忠事業 | 1,193億円 | 1,196億円 | -44億円 | -13億円 | -1.1% |
| 連結(合計) | 8,967億円 | 9,288億円 | 1,243億円 | 1,177億円 | 12.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「積極型」です。本業の営業活動で安定的に資金を稼ぎ出しつつ、将来の成長に向けた設備投資を積極的に行っています。不足分は借入金等で調達しており、成長投資を継続する姿勢が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,812億円 | 1,444億円 |
| 投資CF | -1,331億円 | -1,279億円 |
| 財務CF | -554億円 | 13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均とほぼ同じである一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「暮らしの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマン(志)を掲げています。これは従来の「住まいの豊かさ」から、より広範な「暮らし」全般へと領域を広げ、顧客の生活を変革する存在になるという決意を示したものです。このロマンを社員全員の行動の原点としています。
■(2) 企業文化
製造・物流・小売を一貫して行う「製造物流IT小売業」という独自のビジネスモデルを基盤とし、現状を否定し、常に「観察・分析・判断」を行う姿勢を重視しています。また、従業員の成長を企業の成長の原動力と考え、ロマンの実現に向けて「3C(Change, Challenge, Competition)」の精神で改革に取り組む風土があります。
■(3) 経営計画・目標
中長期ビジョンとして「2032年3,000店舗・売上高3兆円」を掲げ、その通過点として「2025年度買上客数2億人以上」を目標としています。この壮大なビジョンに向け、5ヶ年計画(2021年度〜2025年度)を策定・実行しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内市場の縮小を見据え、海外展開の加速を最重要課題としています。特にアジア地域への出店を強化し、2024年にはフィリピン、インドネシア、インドへ進出しました。また、国内では家電やアパレル(Nプラス)などの事業領域拡大を進めるとともに、サプライチェーンのIT化・効率化によるビジネス基盤の改革を推進しています。
* 2025年度アプリ会員数目標:2,500万人
* 2025年度EC売上高目標:1,500億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多数精鋭」の組織づくりを目指し、配転教育を通じて幅広い視野と専門性を持つ「ニトリ型スペシャリスト」を育成しています。教育投資額は上場企業平均の5倍以上とし、独自の「ニトリ大学」での研修やアメリカセミナー等を実施。また、グローバル展開に対応できる人材の確保や、多様な人材が活躍できるダイバーシティ&インクルージョンの推進にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.6歳 | 12.2年 | 7,812,000円 |
※平均年間給与は、専門職及び嘱託社員を含まず、基準外給与及び賞与を含めています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.5% |
| 男性育児休業取得率 | 77.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 92.3% |
※上記数値は、ニトリホールディングス、ニトリ、ホームロジスティクス、ホームカーゴ、ニトリファシリティ、Nプラスの6社合算の数値です。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替変動に関するリスク
商品の約90%を海外から輸入しているため、急激な為替変動(特に円安)は仕入コストの上昇に直結し、業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、為替予約の活用や海外子会社での決済通貨の工夫によりリスク軽減を図っています。
■(2) 商品の海外調達に関するリスク
商品の大半をアジア諸国等で生産しているため、現地の政治情勢、災害、感染症拡大等によりサプライチェーンが寸断されるリスクがあります。生産国の分散や複数のサプライヤーからの調達体制構築により、安定供給の維持に努めています。
■(3) 品質に関するリスク
独自の商品開発を行う中で、予期せぬ品質問題やリコールが発生した場合、ブランドイメージの毀損や対策コストが発生する可能性があります。厳格な品質基準に基づく工場選定や、「企画設計評価会」等による多段階のチェック体制で未然防止に取り組んでいます。



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