ワタミ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワタミ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、国内外での外食事業や弁当宅配の宅食事業を中心に、農業、環境事業などを展開しています。直近の業績は、外食事業の回復や宅食事業の堅調な推移により増収となり、営業利益も増加しました。一方で、為替の影響等により経常利益は減益となっています。


※本記事は、ワタミ株式会社 の有価証券報告書(第39期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ワタミってどんな会社?


国内外で「焼肉の和民」などの外食チェーンを展開するほか、高齢者向け弁当宅配「ワタミの宅食」を手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1984年に有限会社渡美商事を設立し、居酒屋「つぼ八」に加盟して創業しました。1986年にワタミを設立し、1992年に自社ブランド「居食屋 和民」を展開開始。2000年に東証一部へ上場しました。2002年には農業法人を設立して農業に参入し、2008年にはタクショク(現ワタミタクショク)を子会社化して宅食事業を開始しました。2024年には日本サブウェイを子会社化しています。

同社グループは連結従業員1,614名、単体1,120名の体制です。筆頭株主は創業者である渡邉美樹氏の資産管理会社である有限会社アレーテーで、第2位は主要な取引先であるサントリー、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業者の影響力を保持しつつ、事業パートナーとの関係も構築しています。

氏名 持株比率
有限会社アレーテー 24.36%
サントリー 13.53%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長兼社長CEOは渡邉美樹氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
渡邉 美樹 代表取締役会長兼社長CEO 1984年有限会社渡美商事設立。1986年ワタミ設立し社長就任。参議院議員を経て2019年会長兼グループCEO。2024年4月より現職。
清水 邦晃 取締役副社長CHO 1991年入社。介護事業やフードサービス事業の社長を歴任。2015年社長兼COO。2024年4月より現職。
渡邉 将也 取締役常務執行役員 2012年入社。サントリー等を経て2020年執行役員海外事業本部長。CFO等を歴任し、2024年7月より現職。


社外取締役は、肥塚俊成(元横浜銀行人財部長)、大石美奈子(元日本消費生活アドバイザーコンサルタント相談員協会代表理事副会長)、伊東利哉(元東京工業大学技術部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内外食事業」「宅食事業」「海外事業」「環境事業」「農業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 国内外食事業


日本国内および米国グアムにおいて、「焼肉の和民」「鳥メロ」「ミライザカ」「TGI FRIDAYS」「SUBWAY」などの飲食店経営を行っています。また、飲料類の仕入れやフランチャイズ事業の展開も手掛けています。

顧客への飲食提供による対価やフランチャイズ加盟店からのロイヤリティ等が主な収益源です。運営は主にワタミ、WATAMI FAST CASUAL、WATAMI USA GUAMなどが行っています。

(2) 宅食事業


高齢者世帯等を対象とした「ワタミの宅食」ブランドにおいて、日替わり弁当や惣菜などの食料品材料セットおよび調理済み商品の製造、販売、宅配を行っています。

利用者への商品販売代金が主な収益源です。運営は主にワタミが行っています。

(3) 海外事業


香港、台湾、シンガポール、フィリピンなどの海外各地域において、日本食を中心とした外食事業の直営店経営やフランチャイズ展開を行っています。また、シンガポールや米国において食品加工卸売事業も展開しています。

飲食サービスの提供による対価やフランチャイズ収入、食品卸売による販売収入が収益源です。運営は和民國際有限公司、Watami Food Service Singapore Pte.Ltd.などが行っています。

(4) 環境事業


電力の小売事業や風力発電事業、環境マネジメント事業を展開しています。再生可能エネルギーの普及や環境負荷低減に取り組んでいます。

電力販売による料金収入などが収益源です。運営は主にワタミエナジーが行っています。

(5) 農業


有機野菜などの農産物の生産・販売、農産加工品の製造・販売を行っています。また、グループ内の集中仕込みセンターへの農産物の納入も行っています。

農産物や加工品の販売収入が収益源です。運営はワタミファーム、当麻グリーンライフが行っています。

(6) その他


上記セグメントに含まれない事業として、農業テーマパーク事業や労働者派遣事業などを展開しています。

各サービスの利用料や派遣料などが収益源です。運営はワタミオーガニックランド、ワタミエージェントなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は回復基調にあり、特に直近ではコロナ禍の影響からの脱却が進んでいることが窺えます。利益面では、過去には大幅な赤字を計上した時期もありましたが、直近数期は黒字を維持しています。ただし、利益率は依然として低い水準で推移しており、収益性の向上が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 609億円 644億円 779億円 823億円 887億円
経常利益 -82億円 27億円 39億円 60億円 52億円
利益率(%) -13.4% 4.1% 5.0% 7.3% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -103億円 -26億円 17億円 40億円 31億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は若干低下しています。一方、営業利益は増加しており、本業の収益力は改善傾向にあります。販管費のコントロールが進んでいるものの、売上原価の上昇が利益率を圧迫している状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 823億円 887億円
売上総利益 479億円 502億円
売上総利益率(%) 58.2% 56.6%
営業利益 38億円 46億円
営業利益率(%) 4.6% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が144億円(構成比31%)、販売手数料が73億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントを見ると、主力の国内外食事業と宅食事業が売上の大半を占めています。宅食事業は高い利益率を維持し、グループ全体の利益を牽引しています。海外事業は増収となり黒字転換しました。一方、農業部門は赤字が続いており、環境事業は減益となるなど、セグメント間での収益性のばらつきが見られます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内外食事業 320億円 344億円 13億円 16億円 4.7%
宅食事業 401億円 402億円 41億円 47億円 11.7%
海外事業 69億円 109億円 -2億円 1億円 1.3%
環境事業 25億円 24億円 6億円 2億円 8.2%
農業 6億円 6億円 -1億円 -2億円 -25.0%
その他 3億円 2億円 -0億円 0億円 3.0%
調整額 -11億円 -15億円 -18億円 -20億円 -
連結(合計) 823億円 887億円 38億円 46億円 5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得たキャッシュを借入金の返済や投資に回しており、**健全型**と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 47億円 69億円
投資CF -31億円 -66億円
財務CF 1億円 -0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」というスローガンを掲げています。また、「地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供すること」をミッションとし、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、1次産業(農業)、2次産業(加工)、3次産業(販売)を統合した「ワタミモデル」と呼ばれる独自の6次産業モデルを推進しています。また、「従業員の幸せ日本一」の職場づくりを目指し、理念の共有やミッションツリーの活用などを通じて、従業員の成長と夢の実現を支援する風土があります。

(3) 経営計画・目標


経済環境の不確実性が高いため、現在新しい中期経営計画を策定中です。経営上の目標達成状況を判断する指標として、純有利子負債(ネットD/Eレシオ)、総資産営業利益率(ROA)、株主資本利益率(ROE)の基準を設定し、財務の健全性と資産効率の向上を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


国内外食事業では、日本サブウェイの子会社化による事業拡大や、居酒屋・焼肉等の多様な業態展開を進めるとともに、テイクアウト・デリバリー対応を強化します。宅食事業では、冷凍惣菜宅配の拡大や製造工場の省人化による生産性向上に取り組みます。海外事業では、M&Aにより獲得した生産・卸売拠点を活用し、サプライチェーンと販売力の強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材確保と教育を重要課題とし、採用と教育を一体化した組織体制を整備しています。スキル研修に加え、ハラスメント対策やコミュニケーション研修など幅広い教育を強化し、従業員満足度の向上を図っています。また、多様な働き方の推進や処遇改善、省人化投資による業務効率化を進め、安心して長く働ける職場づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 11.6年 5,425,000円


※平均年間給与は基準外賃金及びインセンティブを含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.8%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.3%
男女賃金差異(正規雇用) 79.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.7%)、年次有給休暇取得率(53.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 仕入の変動要因に関するリスク


伝染病や天候不順、自然災害、為替変動などにより食材の需給が逼迫し、仕入単価が高騰した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、水産資源等の枯渇による入荷困難もリスク要因となります。

(2) 人事労務に関するリスク


労働市場の需給が逼迫する中、労働基準法違反やハラスメント等が発生した場合、人材の流出や確保困難を招き、業績に影響する可能性があります。同社は教育研修や内部監査等でモニタリング体制を強化しています。

(3) 国内外食事業に関するリスク


居酒屋市場の縮小や顧客ニーズの多様化、物価上昇等の環境変化に対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はテイクアウト強化や新業態開発、M&Aによる事業拡大で対応を進めています。

(4) 宅食事業に関するリスク


高齢化に伴い市場は拡大していますが、新規参入の増加により競争が激化しています。競争環境に適切に対応できない場合、市場シェアの低下を招く可能性があります。同社は商品力強化や製造の省人化等で競争力向上を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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