※本記事は、ワタミ株式会社の有価証券報告書(第40期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ワタミってどんな会社?
国内外食事業や宅食事業を中心に、農業や環境事業など多角的なビジネスを展開しています。
■(1) 会社概要
1986年に設立され、翌年に居酒屋事業を開始しました。1992年には自社ブランドの居食屋和民を出店し、1998年に株式を上場しました。その後、2008年に宅食事業へ参入したほか、海外展開や環境事業、農業などへ事業領域を拡大しています。直近では海外でのM&Aやサブウェイ事業への参入を進めています。
現在の従業員数は、連結で1,624名、単体で1,119名体制となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の資産管理会社である乾為天で、第2位は事業会社であるサントリー、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 乾為天 | 24.33% |
| サントリー | 13.51% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長兼社長CEOの渡邉美樹氏が経営を牽引しています。社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邉美樹 | 代表取締役会長兼社長CEO | 1984年渡美商事設立、1986年同社設立・代表取締役社長。School Aid Japan理事長や郁文館夢学園理事長を歴任し、参議院議員も務める。2024年より現職。 |
| 清水邦晃 | 取締役副社長CHO | 1991年入社。東日本事業部部長、執行役員などを経てワタミの介護代表取締役社長に就任。同社代表取締役社長兼COO等を経て、2024年より現職。 |
| 渡邉将也 | 取締役常務執行役員 | 2012年入社。サントリー等を経て2020年執行役員海外事業本部長に就任。海外現地法人の代表等を歴任し、取締役CFO等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、肥塚俊成(元浜銀総合研究所社長)、大石美奈子(サステナビリティ日本フォーラム理事)、伊東利哉(東京科学大学名誉教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、以下の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■国内外食事業
居酒屋や焼肉業態、テイクアウト・デリバリー業態、ハレの場を提供する業態、サブウェイ等の直営およびフランチャイズ店舗を展開し、一般消費者向けに飲食サービスを提供しています。多様なニーズに対応する高い商品力が特徴です。
収益源は、店舗での飲食代金やテイクアウト商品の販売代金、加盟店からのロイヤリティなどです。事業の運営は、同社およびワタミファストカジュアルなどの子会社が担っています。
■宅食事業
少子高齢化や多様な働き方に対応し、高齢者や一般家庭向けに調理済み商品および食料品材料セットの製造、販売、宅配を行っています。健康に配慮した栄養バランスの良い商品を手頃な価格で届けています。
収益源は、宅配弁当や惣菜、ミールキットなどの商品販売代金です。自社工場での製造から販売、宅配までの事業運営は、主に同社が担っています。
■海外事業
香港、台湾、シンガポール、中国、フィリピン、韓国などで飲食店の経営やフランチャイズ展開を行うとともに、米国やシンガポールで食品加工卸売事業を展開しています。
収益源は、海外各地域における飲食店の売上、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ、および食肉魚介類や寿司等の卸売による販売代金です。和民國際有限公司やリーダーフードなどの子会社が運営しています。
■環境事業
地球環境の保全や脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーを利用した電力小売事業や風力発電事業、環境マネジメント事業を展開しています。
収益源は、法人および一般家庭向けの電力販売代金や発電した電力の売電収入などです。ワタミエナジーなどの子会社が事業を運営しています。
■農業
有機農業を通じた持続可能な社会への貢献を目指し、全国の農場や牧場で農産物の生産・販売、酪農畜産、農産加工品の製造・販売を行っています。
収益源は、生産した有機野菜や乳製品などの販売代金です。自社グループの集中仕込みセンターへの納入も行っており、ワタミファームや当麻グリーンライフなどの子会社が運営を担っています。
■その他
上記の報告セグメントに含まれない事業として、農業テーマパーク事業や労働者派遣事業などを展開しています。
収益源は、テーマパークの入場料や関連商品の販売、人材派遣に伴う手数料などです。ワタミオーガニックランドやワタミエージェントなどの子会社が事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、事業の回復と成長が伺えます。経常利益も改善基調にあり、直近では外食事業の客数増や宅食事業の伸長により、過去5年間で最高水準となる64億円の経常利益と41億円の当期利益を計上し、増収増益を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 644億円 | 779億円 | 823億円 | 887億円 | 933億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 39億円 | 60億円 | 52億円 | 64億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 5.0% | 7.3% | 5.9% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -26億円 | 17億円 | 40億円 | 31億円 | 41億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率はわずかに低下したものの、営業利益率は同水準を維持しており、着実な収益性の改善が進んでいることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 887億円 | 933億円 |
| 売上総利益 | 502億円 | 520億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.6% | 55.7% |
| 営業利益 | 46億円 | 48億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が148億円(構成比31%)、販売手数料が70億円(同15%)を占めています。売上原価の内訳では、当期製品製造原価が281億円(構成比87%)、当期商品仕入高が35億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内外食事業は消費回復による客数増加で増収となりました。宅食事業は低価格商品の供給等により増収となったほか、海外事業や農業なども増収を記録しています。一方、環境事業は減収となりましたが、全体としては全社的な売上高の成長に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内外食事業 | 344億円 | 377億円 |
| 宅食事業 | 402億円 | 410億円 |
| 海外事業 | 109億円 | 115億円 |
| 環境事業 | 24億円 | 20億円 |
| 農業 | 6億円 | 7億円 |
| その他 | 2億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 887億円 | 933億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる健全型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 69億円 | 76億円 |
| 投資CF | -66億円 | -49億円 |
| 財務CF | -0億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も40.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」というスローガンを掲げています。また、「地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供すること」をミッションとして事業活動を展開し、社会の課題解決に貢献して存在対効果の最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
基本的人権を守ることを根底に据え、従業員一人ひとりが理念を共有し、自身の夢や目標を実現できる組織づくりを重視しています。「従業員の幸せ日本一」を目指して、人材の多様性の確保や働きやすい環境整備を推進し、異なる価値観を反映することが持続的な成長と企業価値向上につながるという文化が特徴です。
■(3) 経営計画・目標
同グループは財務の健全性と安定性を維持しながら経営を行うため、「純有利子負債(ネットD/Eレシオ)」や「総資産営業利益率(ROA)」、「株主資本利益率(ROE)」を客観的な経営指標として設定しています。また、戦略目標として「2048年1兆円グループ」を掲げ、逆算の考え方で日々の業務に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
外食事業では多様なニーズに対応する業態の展開やサブウェイ事業への投資を進めて拡大を図ります。宅食事業では冷凍総菜の拡充や高齢者向け低価格商品の提供により成長基盤を整備します。海外事業では現地ニーズに即した新業態開発や食品加工卸売でのM&Aを通じたサプライチェーンの強化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な価値創出を担う人材の採用と育成、エンゲージメント向上を人材戦略の中核に据えています。「従業員の幸せに関する7つの項目」を柱とした人事施策を展開し、採用から教育まで一気通貫の仕組みを構築しています。専門職コースの導入や労働環境の改善を通じて、多様な人材が長く活躍できる環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.5歳 | 11.7年 | 5,549,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.8% |
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 85.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.9%)、年次有給休暇取得率(54.0%)、60歳以上の雇用者数(747名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 仕入・生産の変動に関するリスク
伝染病、天候不順、自然災害、為替の大幅な変動などにより食材の需給が逼迫し、仕入単価が高騰した場合に業績に影響が及ぶ可能性があります。また、自社工場や集中仕込みセンターが食中毒や火災で稼働不能となった場合、商品供給に支障をきたす恐れがあります。
■(2) 各事業領域における競争激化と環境変化
外食事業では顧客ニーズの多様化や物価上昇圧力への対応遅れ、宅食事業では新規参入増加による競争激化や物流コストの上昇などがリスクとなります。海外事業においても日本食市場の競争激化や不動産施設費の高騰等が収益環境を悪化させる可能性があります。
■(3) 情報セキュリティ・システムに関するリスク
販売活動や生産管理を支えるネットワークシステムに障害や不具合が生じた場合、業務効率や生産性の低下を招きます。また、巧妙化するサイバー攻撃や不正アクセスにより顧客や従業員の個人情報が流出した場合、ブランドイメージや社会的信用の低下につながる恐れがあります。



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