※本記事は、イオン北海道の有価証券報告書(第48期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イオン北海道ってどんな会社?
同社グループは、ゼネラル・マーチャンダイズ・ストアを中心に、道内で小売事業を多角的に展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1978年に設立され、各種物品の販売を開始しました。1998年に東証二部および札証へ上場を果たしています。2007年にはイオンの吸収分割により北海道の総合小売事業を承継し、現在の社名に変更しました。2020年にマックスバリュ北海道と合併、2024年には西友の道内店舗を承継し事業を拡大しています。
従業員数は単体で3,095名です。筆頭株主は親会社であり事業会社のイオンで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はグループ企業のイオンフィナンシャルサービスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イオン | 65.62% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 3.58% |
| イオンフィナンシャルサービス | 0.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は青栁英樹氏が務めています。社外取締役は4名で、全体の28.6%を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青栁英樹 | 代表取締役社長 | 元イオンリテール執行役員デジタル推進リーダー。2018年10月より現職。 |
| 山本治 | 取締役執行役員商品本部長 | 同社執行役員衣料商品部長などを経て、2023年3月より現職。 |
| 小寺博之 | 取締役執行役員営業本部長 | 元イオンリテール東神奈川事業部長。2025年5月より現職。 |
| 近藤卓 | 取締役執行役員ディベロッパー本部長 | 元イオンモールCX創造ユニット新規テナント共創部長。2025年5月より現職。 |
| 田花康一 | 取締役執行役員管理本部長 | 元イオンリテール中四国カンパニー人事総務部長。2025年5月より現職。 |
| 古澤康之 | 取締役 | イオンリテール代表取締役社長などを兼任。2025年5月より現職。 |
社外取締役は、中田美知子(元エフエム北海道常務取締役)、廣部眞行(弁護士)、樋泉実(元北海道テレビ放送社長)、柚木和代(元博多大丸社長)です。
2. 事業内容
同社は「小売事業」の単一セグメントですが、主に以下の商品グループを展開しています。
■食品
野菜、鮮魚、精肉等の生鮮食品をはじめ、惣菜などのデリカ、米や調味料などのグロサリー、デイリー食品などを提供しています。消費者の簡便・即食化ニーズへの対応や、独自の惣菜ブランドの展開など、生活に密着した商品を展開しています。
収益源は一般顧客からの商品販売代金です。インフレ下での生活防衛意識に応えるため、プライベートブランド「トップバリュ」を活用した価格と価値の両面からの訴求を行っています。運営は同社が行っています。
■住居・余暇
化粧品や医薬品、日用雑貨からなるヘルス&ビューティケア用品、文具や家電、寝具などのホームファッション、自転車等を提供しています。美容や健康需要の高まりに対応する商品や、季節の変化に合わせたアイテムを取り揃えています。
収益源は一般顧客からの商品販売代金です。ライフスタイルの変化に合わせた商品提案に努め、多様なニーズに応える売場を構築して売上を確保しています。運営は同社が行っています。
■衣料品
婦人・紳士・子供用の衣料品から、靴、鞄などの服飾雑貨、肌着などを提供しています。ビジネスのカジュアル化への対応や、北海道特有の雪国に対応したオリジナル防滑シューズなど、地域性や季節性を考慮した品揃えを行っています。
収益源は一般顧客からの商品販売代金です。市場縮小や支出優先度低下の影響を受けやすい領域ですが、夏の猛暑対策商品や冬の防寒素材商品など、季節の気温変動に合わせた販売強化で収益化を図っています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は西友の店舗承継やディスカウントストア業態の堅調な推移により、直近の2026年2月期にかけて増加傾向にあり、過去最高を更新しました。経常利益も一時的な変動はあるものの、高水準で安定的に推移しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,216億円 | 3,173億円 | 3,332億円 | 3,540億円 | 3,801億円 |
| 経常利益 | 67億円 | 85億円 | 104億円 | 80億円 | 80億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | 2.7% | 3.1% | 2.3% | 2.1% |
| 当期純利益 | 38億円 | 47億円 | 62億円 | 36億円 | 37億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益・営業利益ともに着実に成長しています。生産性向上の取り組み効果が出始めており、各種コストが増加する中でも営業利益率は安定した水準を維持しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,540億円 | 3,801億円 |
| 売上総利益 | 894億円 | 951億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.3% | 25.0% |
| 営業利益 | 79億円 | 83億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が424億円(構成比38.1%)、賃借料が126億円(同11.4%)、修繕維持費が103億円(同9.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
食品が売上高の大部分を占め、全体の増収を牽引しています。住居・余暇も堅調に推移している一方、衣料品は消費者の支出優先度低下の影響等により、前期比でやや伸び悩む結果となっています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 食品 | 2,895億円 | 3,128億円 |
| 住居・余暇 | 441億円 | 470億円 |
| 衣料品 | 203億円 | 201億円 |
| その他 | 1億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 3,540億円 | 3,801億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROEは5.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.4%で、いずれも市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 129億円 | 227億円 |
| 投資CF | -340億円 | -177億円 |
| 財務CF | 217億円 | -38億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、パーパスとして「地域のみなさまお一人おひとりにとってのМY LIFE STOREとして、北海道の暮らしに寄り添い、地域とともに未来をつくる」を定めています。「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という基本理念のもと、小売業を通じて北海道の発展や自然環境の維持に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
北海道の地元企業として、「お客さまの視点に立った小売業を営むこと」を経営の基本としています。エリア・マーケットに基づく地産地消を中心とする、地域に密着した売場づくりや品揃えを推進する文化があります。ダイバーシティ経営や健康経営を重視し、従業員一人ひとりが自分らしく働き、共に成長できる環境づくりにも注力しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度よりスタートした5ヵ年の中期経営計画では、「地域でNO.1の信頼されるお店」としての更なる進化を目指しています。各施策の確実な実施により、最終年度の2030年度において以下の数値目標を掲げています。
・売上高:4,400億円以上
・営業利益:110億円以上
・ROE:6.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
市場競争が激化する中で営業力を高めるため、ディスカウントストア業態の強化やモール店舗の大型活性化など「業態ごとの進化」を図ります。また、プライベートブランド「トップバリュ」の拡充を中心とした「商品本位の改革」、物流の効率化やAI発注の導入などDXによる「強固な事業基盤の構築」、そして人的資本経営や環境保全を含む「サステナブル経営の推進」に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員一人ひとりが自らのライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を選択できるよう、「転居停止制度」や「ペア転勤制度」などの制度を整備しています。また、自己実現を支援する「イオンビジネススクール」や役割に応じた各種研修制度を充実させ、多様な人材がいきいきと活躍できるダイバーシティ経営と、心身の健康をサポートする健康経営を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 43.5歳 | 10.9年 | 5,091,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.7% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 100.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.31%)、エンゲージメントスコア(48.9)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競争激化及び消費動向による影響
個人消費の動向や天候不順、および営業基盤とする地域内における業態を超えた店舗間競争の激化により、同社の業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 気候変動に関するリスク
店舗運営におけるエネルギー使用や冷媒利用が多く、環境規制の強化や社会的要請による対策コストの増加、気候変動に伴う農水産物の品質・収量変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材の確保に関するリスク
事業活動は人材に大きく依存しており、少子高齢化による労働需給の逼迫等で採用計画が進まない場合や、人件費の増加、人的資本投資への対応不足が生じた場合、事業成長に影響を与える可能性があります。



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