マルシェ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マルシェ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、「酔虎伝」「八剣伝」「居心伝」等の居酒屋チェーンを展開する飲食企業です。当連結会計年度の業績は、売上高46億円(前期比2.0%減)、経常利益0.3億円(同65.9%減)、当期純利益0.3億円(同0.1%増)となり、減収減益でした。


#記事タイトル:マルシェ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、マルシェ株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マルシェってどんな会社?


関西を拠点に全国展開する居酒屋チェーン企業です。「心の診療所を創造する」を理念に掲げ、「酔虎伝」「八剣伝」などのブランドを直営およびフランチャイズで運営しています。

(1) 会社概要


1972年に設立され、1977年に居酒屋「酔虎伝」のフランチャイズ展開を開始しました。1984年には串焼酒場「八剣伝」を立ち上げ、1996年に株式を店頭登録。2000年に低価格居酒屋「居心伝」を出店し、2017年にはチムニーと資本業務提携契約を締結しました。2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。

同社(単体)の従業員数は124名です。大株主構成は、筆頭株主が資本業務提携先のチムニー、第2位が取引先のアサヒビール、第3位が証券金融会社の日本証券金融となっています。

氏名 持株比率
チムニー 11.89%
アサヒビール 7.62%
日本証券金融 3.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は加藤 洋嗣氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 洋嗣 代表取締役社長 1996年同社入社。関西八剣伝統括部長、執行役員社長等を経て、2014年6月より現職。
熨斗 和之 取締役 1987年同社入社。メニュー開発部長、商品本部長兼新業態開発部長等を経て、2024年4月より開発部長兼直営推進部管掌として現職。
森下 篤史 取締役 1971年東京電気(現東芝テック)入社。テンポスホールディングス代表取締役社長等を歴任し、2025年6月より現職。
清水 一成 取締役 1991年ブレス(現プロントコーポレーション)入社。イートアンドホールディングス執行役員、ヤマトサカナ社長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、持永 政人(摂南大学副学長)、茨田 篤司(チムニー代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「料飲部門」「FC部門」「商品部門」および「その他部門」事業を展開しています。

(1) 料飲部門


「酔虎伝」「八剣伝」「居心伝」「餃子食堂マルケン」および新業態の「やきとり ええねん」「ハッケン酒場」などの飲食店を直営で運営し、来店客に対して飲食サービスを提供しています。

収益は、来店客からの飲食代金として受け取ります。運営はマルシェが行っています。

(2) FC部門


フランチャイズ加盟店に対して、「酔虎伝」「八剣伝」などのブランド使用権を与え、店舗運営ノウハウの提供や経営指導を行っています。

収益は、加盟店から受け取る加盟金、契約更新料、および店舗売上高に応じたロイヤリティ等です。運営はマルシェが行っています。

(3) 商品部門


直営店およびサプライヤーを通じてフランチャイズ加盟店に対し、店舗運営に必要な食材や酒類などを供給しています。

収益は、フランチャイズ加盟店等への食材・酒類等の販売代金として受け取ります。運営はマルシェが行っています。

(4) その他部門


上記以外の事業として、フランチャイズ加盟店への設備販売や、管理部門に関連する事業などを行っています。

収益は、加盟店への設備販売代金や賃貸収入などから構成されています。運営はマルシェが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年3月期に大きく落ち込んだ後、回復傾向にありましたが、当期は微減となりました。利益面では赤字が続いていましたが、2024年3月期に黒字転換し、当期も少額ながら黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 39億円 26億円 46億円 47億円 46億円
経常利益 -7.4億円 -2.5億円 -3.7億円 1.0億円 0.3億円
利益率(%) -19.1% -9.4% -8.1% 2.1% 0.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -15億円 -3.2億円 -5.9億円 0.3億円 0.3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益率は改善しています。一方、営業利益は前期の約半分に減少しており、利益率も低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 47億円 46億円
売上総利益 28億円 28億円
売上総利益率(%) 59.2% 60.9%
営業利益 0.9億円 0.4億円
営業利益率(%) 2.0% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比39.3%)、その他経費が10億円(同34.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


料飲部門は直営店数の増加等により増収となりましたが、FC部門は加盟店数の減少により減収となりました。商品部門も加盟店への販売減により減収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
料飲部門 30億円 30億円
FC部門 3.6億円 3.4億円
商品部門 12億円 11億円
その他部門 1.0億円 1.1億円
連結(合計) 47億円 46億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスであり、本業での現金支出に加え、投資や借入返済等の財務活動でも資金が流出している末期型の状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -0.4億円 -0.8億円
投資CF -0.2億円 -1.1億円
財務CF 2.8億円 -2.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は12.0%で市場平均を大きく下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「心の診療所を創造する」を経営理念として掲げています。これは、飲食の提供と場を通じて、顧客同士の健全なコミュニケーションに役立ち、希薄化する人々の絆を深め、地域社会に貢献することを目的としています。また、中長期的な経営ビジョンとして「マルシェは世界の心の診療所を目指しダイバーシティ経営のリーディングカンパニーとなる」ことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は重点方針として「ダイバーシティ・マルシェ」を掲げています。これは、食を通じて様々な可能性を持つ人や考え方、文化を寛容に受け入れ、個人の持つ能力(カラー)を湧き出させることができる会社への挑戦を意味します。「新生マルシェ」として、国内だけでなく世界のマーケットを見る視点を持つことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は重点方針「ビジョン2028」を掲げ、2028年3月期の数値目標を設定しています。

* 売上高:65億円
* 営業利益率:4%以上
* 当期純利益率:3%以上
* 自己資本比率:25%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「ビジョン2028」の実現に向け、「既存直営店の収益力向上」「FC事業の強化」「新業態パッケージの挑戦」などを重点施策としています。直営店では「本物をおいしくちゃんとやる」を掲げ商品力向上を図るとともに、新業態「やきとり ええねん」「ハッケン酒場」への転換を推進します。FC事業では「KIZUNAプロジェクト」によるサポート強化や、新たな経営者育成支援制度「ドリームコース」を通じて事業活性化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ダイバーシティ・マルシェ」の方針のもと、年齢、性別、国籍等を問わず多様な人材の活用を進めるダイバーシティ・マネジメントに取り組んでいます。女性が活躍できる職場環境の整備や、外国人材の積極的な雇用促進のため管理部内に「ダイバーシティ推進課」を設置し、適正な受入体制の構築とキャリアステップのための教育制度を実施しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 12.9年 4,607,417円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.5%
男性育児休業取得率 0.9%
男女賃金差異(全労働者) 80.3%
男女賃金差異(正規) 86.7%
男女賃金差異(非正規) 98.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合競争について


同社が属する居酒屋業界では、同業他社に加え、中食を中心とした外食企業や小売業界との間で激しい競争が展開されています。独自の経営施策で差別化を図っていますが、競合の出現による客数減少や、物流経費の上昇、原材料高騰等により利益が圧迫された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人員の確保について


少子高齢化による労働需給の逼迫に伴い、採用教育費が上昇傾向にあります。新規出店や既存店運営に必要な人員確保に努めていますが、確保が困難となり出店計画が実行できない場合や、適正人員を欠く状況が継続し店舗運営が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 食品事故について


店舗事故予防委員会の設置や衛生検査の実施など、安全性には万全を期していますが、万一食中毒等の食品事故が発生した場合、営業停止等を余儀なくされ、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、飲酒運転や未成年飲酒等の事故についても、社会的信用の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。