※本記事は、株式会社ゼンショーホールディングス の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ゼンショーホールディングスってどんな会社?
国内外で「すき家」「はま寿司」「ココス」など多岐にわたる外食チェーンを展開する日本最大級のフード業グループです。
■(1) 会社概要
1982年に設立し、神奈川県横浜市にランチボックス(弁当店)やすき家1号店を開店しました。1999年に東京証券取引所第二部へ上場し、2001年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2011年に持株会社体制へ移行し、現社名に変更しています。2002年に回転寿司事業として「はま寿司」を設立し、近年では2023年にロッテリアや海外の寿司チェーンSnowFoxなどを子会社化し、事業を拡大しています。
連結従業員数は18,742名、単体では852名です。筆頭株主は代表取締役会長の小川賢太郎氏およびその親族が議決権の100%を所有する日本クリエイトで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本クリエイト | 38.42% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.85% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長兼CEOは小川洋平氏です。社外取締役比率は61.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小川 賢太郎 | 代表取締役会長 | 1982年同社設立代表取締役社長。日本クリエイト代表取締役。すき家、ココスジャパン等の会長・社長を歴任。2025年6月より現職。 |
| 小川 洋平 | 代表取締役社長兼 CEO兼 経営戦略本部長兼 グループデザイン室長兼 外事局 局長 | 2004年財務省入省。2016年同社入社。経営戦略本部長、グローバル事業推進本部長等を経て2025年6月より現職。 |
| 野々下 信也 | 常務取締役グループIT本部長 | 1979年日本アイ・ビー・エム入社。2007年同社入社執行役員。グループIT技術本部長等を経て2022年6月より現職。 |
| 平野 誠 | 取締役グループ食品安全基準本部長 | 1982年ネスレ日本入社。2004年同社入社。食品安全追求本部長、グループCC本部長等を経て2023年10月より現職。 |
| 小川 一政 | 取締役日本文化研修センター代表 | 2001年日商エレクトロニクス入社。2006年同社入社。グローバル事業推進本部長、すき家本部社長等を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、伊東千秋(元富士通代表取締役副社長)、安藤隆春(元警察庁長官)、山名昌衛(元コニカミノルタ社長兼CEO)、永妻玲子(元Twitter Japan社長)、渡辺秀雄(元大和証券専務取締役)、宮嶋之雄(元双日取締役)、金子健一(元東京アドエージェンシー社長)、丸山寿(元日立化成社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「グローバルすき家」「グローバルはま寿司」「グローバルファストフード」「レストラン」「小売」「本社・サポート」および「その他」事業を展開しています。
■(1) グローバルすき家
日本国内と中国、東南アジア及び中南米で牛丼チェーンの「すき家」を直営展開しています。幅広い客層に向けて、牛丼を中心に安全で美味しい商品を価格を抑えて提供しています。
収益は、来店客への飲食提供に対する対価です。運営は、株式会社すき家及び泉盛餐飲(上海)有限公司等の海外子会社が行っています。
■(2) グローバルはま寿司
日本国内と中国等で寿司チェーンの「はま寿司」を直営展開しています。新鮮な海産物を使用した寿司に加え、サイドメニューも充実させ、子供から大人まで楽しめる店舗作りを行っています。
収益は、来店客への飲食提供に対する対価です。運営は、株式会社はま寿司及び泉盛餐飲(上海)有限公司等の海外子会社が行っています。
■(3) グローバルファストフード
親子丼・京風うどんの「なか卯」、ハンバーガーチェーンの「ロッテリア」、とんかつ専門店の「かつ庵」などを直営及びFCで展開しています。また、海外ではテイクアウト寿司店やチキンライス専門店を展開しています。
収益は、来店客への飲食提供や商品販売に対する対価です。運営は、株式会社なか卯、株式会社ロッテリア、Advanced Fresh Concepts Corp.などが行っています。
■(4) レストラン
ファミリーレストランの「ココス」、パスタ専門店の「ジョリーパスタ」、ハンバーグ&ステーキレストランの「ビッグボーイ」などを直営及びFCで展開しています。その他、焼肉レストランやイタリア料理専門店なども含まれます。
収益は、来店客への飲食提供に対する対価です。運営は、株式会社ココスジャパン、株式会社ジョリーパスタ、株式会社ビッグボーイジャパンなどが行っています。
■(5) 小売
スーパーマーケットの経営や青果の販売を行っています。地域に密着した店舗展開を行い、生鮮食品などを提供しています。
収益は、顧客への商品販売に対する対価です。運営は、株式会社ジョイマート、株式会社ユナイテッドベジーズが行っています。
■(6) 本社・サポート
食品の製造・加工、食材の仕入・販売、物流機能、店舗設備のメンテナンス、備品の調達などを担い、グループ全体の事業活動をサポートしています。
収益は、グループ各社への製品・サービス提供に対する対価などです。運営は、株式会社GFF、株式会社グローバルフレッシュサプライなどが行っています。
■(7) その他
家庭用冷凍食品等の販売、醤油やドレッシングの製造・販売、介護事業の運営、玄米・精米の販売などを行っています。
収益は、顧客への商品販売やサービス提供に対する対価です。運営は、株式会社トロナジャパン、株式会社輝などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加しており、直近では1兆1,367億円に達しています。経常利益も右肩上がりで推移しており、当期は719億円と高い水準を記録しました。当期純利益についても増加傾向にあり、利益率も改善が進んでいます。全体として、事業規模の拡大とともに収益性も向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,950億円 | 6,585億円 | 7,800億円 | 9,658億円 | 11,367億円 |
| 経常利益 | 122億円 | 231億円 | 281億円 | 509億円 | 719億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | 3.5% | 3.6% | 5.3% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 26億円 | 139億円 | 133億円 | 307億円 | 393億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は前年より改善し、54.7%となりました。営業利益も大きく伸長しており、営業利益率は5.6%から6.6%へと上昇しました。収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,658億円 | 11,367億円 |
| 売上総利益 | 5,241億円 | 6,222億円 |
| 売上総利益率(%) | 54.3% | 54.7% |
| 営業利益 | 537億円 | 751億円 |
| 営業利益率(%) | 5.6% | 6.6% |
販売費及び一般管理費のうち、雑給が1,686億円(構成比30.8%)、給与手当が664億円(同12.1%)、地代家賃が625億円(同11.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全ての報告セグメントで売上高が増加しました。特に「グローバルファストフード」と「グローバルはま寿司」の大幅な増収増益が全体の業績を牽引しています。「グローバルすき家」も堅調に推移し、利益貢献度が高い状態です。「レストラン」セグメントも増収増益となり、回復傾向が見られます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| グローバルすき家 | 2,653億円 | 2,958億円 | 185億円 | 245億円 | 8.3% |
| グローバルはま寿司 | 1,971億円 | 2485億円 | 114億円 | 214億円 | 8.6% |
| グローバルファストフード | 2,438億円 | 3,141億円 | 140億円 | 292億円 | 9.3% |
| レストラン | 1,408億円 | 1,561億円 | 74億円 | 114億円 | 7.3% |
| 小売 | 784億円 | 760億円 | -9億円 | -18億円 | -2.4% |
| 本社・サポート | 45億円 | 49億円 | 39億円 | -74億円 | -151.8% |
| その他 | 360億円 | 413億円 | -6億円 | -20億円 | -4.8% |
| 調整額 | - | - | -0億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 9,658億円 | 11,367億円 | 537億円 | 751億円 | 6.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFで得た資金の範囲内で投資を行い、借入返済も進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 860億円 | 790億円 |
| 投資CF | -1,254億円 | -665億円 |
| 財務CF | 546億円 | -162億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という創業当初からの企業理念を進化させ、「人類社会の安定と発展に責任をおう」企業であり続けることを目指しています。そのために、人類全体が平和的に共生できる「食のインフラ」を構築し、世界中の人々に安全でおいしい食を手軽な価格で提供することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、メニュー開発から食材調達、製造・加工、物流、販売に至る全過程を自ら企画・設計し、一貫してコントロールする「MMD(マス・マーチャンダイジング・システム)」の構築と実践を重視しています。このシステムを通じて、安全で質の高い商品とサービスを提供し、より幅広い層の顧客に利用される店舗づくりを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期経営計画において、2028年3月期を最終年度とする数値目標を設定しています。また、中期目標としてROE10%の安定的達成を掲げています。
* 売上高:1兆4,810億円
* 営業利益:1,165億円
* 経常利益:1,097億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:629億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「食のインフラ」としての使命を果たすため、MMD(マス・マーチャンダイジング・システム)の進化、海外拠点による調達網の強化、積極的な出店とM&Aによる成長を推進しています。特に、食の安全性の追求を最重要課題としつつ、グローバルな事業展開とDXの活用による業務効率化・自動化に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を付加価値を生み出す人的資本「人財」と位置づけ、企業理念に共感する優秀な人材の採用と育成に注力しています。女性活躍推進やグローバル人財の採用・育成、多様な働き方の促進を進めるとともに、日本文化研修センターを通じて多文化共生の理解を深める取り組みも行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.1歳 | 9.1年 | 8,167,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.4% |
| 男性育児休業取得率 | 31.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 106.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品の安全
同社グループは食の安全を最重要課題とし、専用組織の設置や検査体制の構築を行っています。しかし、万一、異物混入や集団食中毒などの問題が発生した場合、企業イメージの失墜などにより、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の調達及び価格変動
食材の調達において産地の開拓や分散を行っていますが、地政学的リスク、疫病、自然災害、為替変動などにより、調達不安や価格高騰が発生した場合、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人財の確保
店舗オペレーション維持のために人財確保は重要であり、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。しかし、労働需給バランスの悪化などにより十分な人財が確保できない場合、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外展開におけるカントリーリスク
中国、米州、東南アジア、欧州などで事業を展開しており、現地の戦争、政情不安、経済変動、法規制、自然災害などのリスクが存在します。これらが発生した場合、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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