ゼンショーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼンショーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼンショーホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、「すき家」や「はま寿司」などフード業をグローバルに展開する企業です。直近の業績では、国内外の積極的な店舗網拡大やM&Aの推進により、売上高は前年同期比で増収、経常利益および当期純利益も増益を達成しており、堅調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社ゼンショーホールディングスの有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゼンショーホールディングスってどんな会社?


同社は「すき家」などの牛丼チェーンや「はま寿司」を中心とするフード業をグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


1982年に弁当店および牛丼チェーンの店舗を開店して設立されました。1997年の店頭登録を経て2001年に東証一部に上場し、ココスジャパンやなか卯などの株式を取得して事業領域を拡大しました。2011年に持株会社体制へ移行して現在の社名に変更し、近年も欧米でのテイクアウト寿司事業のM&Aを進めています。

従業員数は連結で20,626名、単体で1,129名です。筆頭株主は創業者および親族が議決権を所有する資産管理会社の日本クリエイトで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本クリエイト 36.16%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.92%
日本カストディ銀行(信託口) 2.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長兼CEOは小川洋平氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
小川洋平 代表取締役社長兼CEO兼グループデザイン室長 2004年財務省入省。2016年同社入社、経営戦略室長。グローバル事業推進本部長や取締役副社長等を経て、2025年6月より現職。
野々下信也 常務取締役グループIT本部長 1979年日本アイ・ビー・エム入社。2007年同社入社、執行役員グループIT本部長等を経て、2022年6月より現職。
小川一政 取締役日本文化研修センター代表 2001年日商エレクトロニクス入社。2006年同社入社。すき家代表取締役社長や同社取締役副社長等を経て、2023年6月より現職。
平野誠 取締役グループ食品安全追求本部顧問兼ゼンショーファクトリーホールディングス顧問 1982年ネスレ日本入社。2004年同社入社。食品安全追求本部長やグループ食品安全保証本部長等を経て、2025年9月より現職。


社外取締役は、伊東千秋(元富士通副社長)、安藤隆春(元警察庁長官)、山名昌衛(元コニカミノルタ社長兼CEO)、永妻玲子(元Twitter Japan社長)、渡辺秀雄(元大和証券専務取締役)、宮嶋之雄(元双日常務執行役員)、金子健一(元みずほ銀行執行役員)、丸山寿(元昭和電工マテリアルズ会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「グローバルすき家」「グローバルはま寿司」「グローバル中食」「グローバルファストフード」「レストラン」「小売」「本社・サポート」および「その他」の事業を展開しています。

グローバルすき家

日本国内および中国、東南アジア、中南米において牛丼チェーンの「すき家」を展開しています。家族やグループなど幅広い顧客層に対して、主力の牛丼を中心に安全で美味しい商品を手軽な価格で提供している点が特徴です。
収益源は、直営展開する各店舗での飲食代金です。同セグメントの運営は、主にすき家および泉盛餐飲(上海)有限公司、台湾善商股份有限公司などの海外子会社が担当しています。

グローバルはま寿司

日本国内と中国等において寿司チェーンの「はま寿司」を直営展開しています。新鮮な海産物を使用した寿司に加え、麺類やデザート、ドリンクなどのサイドメニューも充実させ、子どもから大人まで楽しめるメニューを提供しています。
収益源は、店舗での飲食およびテイクアウトを通じた商品販売代金です。同セグメントの運営は、主にはま寿司および泉盛餐飲(上海)有限公司、台湾善商股份有限公司などの海外子会社が担当しています。

グローバル中食

欧米を中心にテイクアウト寿司店を直営およびフランチャイズ(FC)で展開しています。多様化する食のニーズやライフスタイルに対応し、現地のスーパーマーケット等での販売を通じて顧客へ商品を提供しています。
収益源は、直営店での販売代金やFC加盟店からのロイヤルティ収入です。運営は、Advanced Fresh Concepts Corp.やWonderfield TopCo Limitedなどの海外子会社が担当しています。

グローバルファストフード

親子丼・京風うどんの「なか卯」、ハンバーガーチェーンの「ゼッテリア」、とんかつ専門店の「かつ庵」、武蔵野うどんの「久兵衛屋」などの多様なファストフード業態を国内およびマレーシア等の海外で直営およびFC展開しています。
収益源は、各店舗での飲食代金やFC展開によるロイヤルティ収入です。運営は、なか卯、バーガー・ワン、エイ・ダイニング、かつ庵、久兵衛屋、TCRS Restaurants Sdn.Bhd.などが担当しています。

レストラン

ファミリーレストランの「ココス」、ハンバーグ&ステーキレストランの「ビッグボーイ」、パスタ専門店の「ジョリーパスタ」、焼肉レストラン「熟成焼肉いちばん」、イタリア料理専門店「オリーブの丘」などを国内で展開しています。
収益源は、直営店舗での飲食代金およびFC店舗からのロイヤルティ収入です。運営は、ココスジャパン、ビッグボーイジャパン、ジョリーパスタ、TAG-1、オリーブの丘、華屋与兵衛などの事業会社が担当しています。

小売

スーパーマーケットの経営および青果の販売を主な事業として展開しています。地域に密着した店舗運営を通じ、生鮮食品を中心とした日常の生活に欠かせない食料品を一般消費者向けに提供しています。
収益源は、スーパーマーケット等での商品の販売代金です。運営は、スーパーマーケットの経営を行うジョイマートおよび青果の販売を主事業とするユナイテッドベジーズが担当しています。

本社・サポート

グループ各業態のインフラ機能として、店舗運営を支える様々なサポート業務を担っています。具体的には、食品の製造・加工、食材の仕入れ・販売、全国への物流網の提供、店舗設備の設計・施工やメンテナンス、備品の調達などを行っています。
収益源は、主にグループ内各社への商品供給や各種サービスの提供による内部取引代金です。運営は、GFF、ゼンショー商事、グローバルフレッシュサプライ、テクノ建設などが担当しています。

その他

報告セグメントに含まれない事業として、外販製造卸売事業、介護事業、および畜産水産事業などを展開しています。家庭用冷凍食品や醤油・ドレッシングの製造販売、シニア向け介護施設の運営などを行っています。
収益源は、冷凍食品等の販売代金や介護サービスの利用料などです。運営は、トロナジャパン、サンビシ、輝、ゼンショーライスなどの事業会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、積極的な店舗網拡大やM&Aによる事業領域の拡張により持続的な増収傾向にあります。コロナ禍の影響を脱した後は利益面でも大幅な成長を遂げており、経営効率化や価格戦略が奏功し、経常利益や当期利益は拡大し続けています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,585億円 7,800億円 9,658億円 11,367億円 12,641億円
経常利益 231億円 281億円 509億円 719億円 783億円
利益率(%) 3.5% 3.6% 5.3% 6.3% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 54億円 120億円 75億円 84億円 296億円

(2) 損益計算書


売上高は国内外での積極的な店舗展開を背景に堅調に成長し、それに伴い売上総利益や営業利益も増加しています。原材料価格の上昇等によるコスト負担増があるものの、適切なメニュー見直しなどにより、売上総利益率および営業利益率は前年と同水準を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 11,367億円 12,641億円
売上総利益 6,222億円 6,864億円
売上総利益率(%) 54.7% 54.3%
営業利益 751億円 814億円
営業利益率(%) 6.6% 6.4%


販売費及び一般管理費のうち、雑給が1,884億円(構成比31.1%)、給与手当が682億円(同11.3%)、地代家賃が643億円(同10.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントにおいて、既存店の堅調な推移やM&Aを通じた海外事業の拡大により、主力事業を中心に売上高が増加しています。特に「グローバルはま寿司」セグメントの増収幅が大きく、グループ全体の業績成長を牽引する結果となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
グローバルすき家 2,958億円 3,145億円
グローバルはま寿司 2,485億円 3,203億円
グローバル中食 2,099億円 2,219億円
グローバルファストフード 1,042億円 1,128億円
レストラン 1,561億円 1,713億円
小売 760億円 770億円
本社・サポート 49億円 107億円
その他 413億円 356億円
連結(合計) 11,367億円 12,641億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 790億円 1,012億円
投資CF -665億円 -781億円
財務CF -162億円 198億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.5%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という創業当初からの企業理念を進化させ、「食を通じて、人類社会の安定と発展に責任をおう」企業であり続けることを使命としています。人種や宗教、文化による対立を乗り越え、人類が平和的に共生できる「食のインフラ」の構築を通じて、世界中の人々に安全でおいしい食を手軽な価格で提供することを目指しています。

(2) 企業文化


人材を「人財」(付加価値を生み出す資本)と位置づけ、「多様性、主体性、独創性を尊び、ひとりひとりがいきいきと働ける活力組織」を目指すべき組織像として掲げています。また、持続可能な世界の実現に貢献するため、独自の直接提携型フェアトレードに取り組み、社会開発資金を活用して教育やインフラ整備を支援するなど、社会課題の解決に責任を持って行動する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期を含む3か年の中期経営計画を策定し、中長期的に資本コストを上回るROEの向上を重要な指標と位置づけています。既存事業の収益改善、国内外での新規出店による業容拡大、人材育成および職場環境の改善を推進し、以下の目標を掲げています。

* ROE:10%の安定的達成

(4) 成長戦略と重点施策


食の安全を最優先とした「食のインフラ」を提供するため、食材調達から製造、物流、店舗販売までを一貫して運営するマス・マーチャンダイジング・システム(MMD)の強化を進めます。国内外の既存業態の収益力を高めつつ積極的な出店を継続し、同時にM&Aを活用して新規事業領域への進出を図ります。また、DXの推進による業務効率化や省人化、グローバルな調達網の再編を通じたリスク対応に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業理念に共感する優秀な人材を採用し、持続的な成長を推進する「人財」として育成することを基本方針としています。ジョブ・ローテーション制や専門分野ごとの教育制度を通じて能力形成を図るほか、グローバル展開を担う人材の育成に向け、日本文化研修センターでの研修や語学学習支援を積極的に行っています。また、多様な人材が活躍できる職場環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.4歳 8.5年 8,302,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 13.8%
男性労働者の育児休業取得率 48.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 69.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 73.6%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 102.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、直近5年間の累計賃上げ率(50.9%)、ベースアップ連続実施年数(14年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外展開におけるカントリーリスク

中国、米州、東南アジア、欧州などの海外市場での事業拡大を成長戦略の一つとしていますが、展開国における戦争、政情不安、経済変動、法規制の変更等の予測できない変動リスクが存在します。これらカントリーリスクにより事業運営に影響が生じた場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 取引先との契約及び取引慣行に関するリスク

国内外の多数の仕入先や取引先と継続的に取引を行っています。品質基準や価格条件などの契約条件が不十分または不明確な場合に取引上の紛争が発生するリスクや、原材料価格の変動に伴う価格改定の際に適切な合意形成がなされず、安定的な商品調達に支障が生じる可能性があります。

(3) サプライチェーン及び仕入先に関するリスク

国内外から原材料を調達し安定供給と品質確保に努めていますが、仕入先における品質管理の不備や事故の発生により、商品の安全性に問題が生じるリスクがあります。また、海外調達における労働環境や人権問題などの社会的要請への対応が不十分な場合、企業評価やブランド価値を毀損する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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